変圧器の効率は「鉄損は一定、銅損はI²」だけで全部解ける
電験三種「機械」科目で頻出の変圧器の効率を、長い公式の丸暗記ではなく『鉄損は一定、銅損はI²、効率は損失しだい』という1つの魔法のフレーズで攻略。1/n負荷時の銅損の2乗、全日効率の24PiとPcTの使い分け、効率最大の条件まで一気通貫で解説します。
🎥 動画でも解説しています > YouTubeで開く
変圧器の効率の問題を開いた瞬間、分母と分子にびっしり項が並んだ長い分数式が出てきて、そっとページを閉じた経験はありませんか。
大丈夫です。あの式、実は覚えるべき場所は2箇所しかありません。しかもその2箇所は、たった一言のフレーズで説明できてしまいます。長さに怯えていただけで、中身はとてもシンプルなのです。
この記事で身につくこと
| 身につくこと | 到達点 |
|---|---|
| 鉄損と銅損の性格の違い | 「どっちが変わる損失か」で迷わなくなる |
| 効率の基本式 | 出力÷入力を、出力÷(出力+損失)に書き換えられる |
| 1/n 負荷時の式 | どこに (1/n)² がかかるのかを理屈で判断できる |
| 効率最大の条件 | 鉄損=銅損から負荷率を逆算できる |
| 全日効率 | 24Pi と PcT の使い分けが説明できる |
長い公式を丸暗記するのではなく、損失の性質から公式を組み立て直すのがこの記事のやり方です。組み立て方さえ分かれば、基本式も、1/n 負荷の式も、全日効率も、全部同じ1本の筋でつながります。

暗記フレーズ:鉄損は一定、銅損はI²、効率は損失しだい
この単元で覚えることは、結論から言えばこれだけです。
鉄損は一定、銅損は I²、効率は損失しだい
三つに区切って読んでみてください。前の2つは損失の性質、最後の1つは効率の正体です。この3つを押さえておくと、公式の形がどう変わっても対応できます。
なぜかというと、試験で出てくる式の違いは、すべて損失をどう数えるかの違いでしかないからです。1/n 負荷の式も、全日効率の式も、「鉄損と銅損をどう数えたか」が違うだけで、効率という考え方そのものは1ミリも変わっていません。

なぜ丸暗記だと挫折するのか
多くの人がつまずくのは、次の3つのパターンです。
| つまずきポイント | 何が起きているか |
|---|---|
| 1/n をどこにかけるか迷う | 式を形で覚えていて、意味で覚えていない |
| 鉄損と銅損のどちらが変動するか混乱する | 2つの損失の性格を区別していない |
| 全日効率の 24 と T の使い分けでパニック | なぜ24なのか、なぜ T なのかを説明できない |
どれも「式を3つ別々に丸暗記した」ことが原因です。逆に言えば、損失の性質という共通の土台を1つ持てば、3つとも同じ道具で処理できます。
ステップ1:鉄損と銅損、2つの損失の性格を分ける
まずは登場人物の紹介からです。変圧器の損失は、性格のまったく違う2人組だと思ってください。

| 項目 | 鉄損 Pi | 銅損 Pc |
|---|---|---|
| 別名 | 無負荷損 | 負荷損 |
| 発生する場所 | 鉄心 | 巻線(銅線) |
| 発生の条件 | 電圧をかけるだけで発生 | 電流が流れると発生 |
| 負荷との関係 | 負荷によらず一定 | 電流の2乗に比例 |
| 式のイメージ | Pi = 一定 | Pc = I²R |
鉄損は、変圧器に電圧をかけた瞬間からずっと同じ大きさで発生し続けます。負荷をつないでいようがいまいがお構いなしです。一方の銅損は、巻線の抵抗に電流が流れることで発生するので、電流が増えれば一気に増え、減れば一気に減ります。
鉄損はじっと動かない。銅損は電流しだいで暴れる。
この一文が頭に入っていれば、この単元の半分は終わったようなものです。損失そのものの分類(鉄損・銅損・機械損)が少しあやしいという方は、先に変圧器の損失分類を魔法の暗記フレーズ「鉄・銅・機械」で一発攻略を読んでおくと、この先の話が驚くほどスムーズに入ってきます。
ステップ2:効率の基本式は「出力÷入力」だけ
ここからが公式の話です。といっても、出発点はごく当たり前の一行です。

ここで、入力されたエネルギーは「出力として出ていく分」と「損失として消える分」に分かれます。つまり 入力 = 出力 + 損失 です。これを代入すると、こうなります。
長い効率公式の正体は、これだけです。分母がごちゃごちゃして見えるのは、損失の中身(鉄損+銅損)を書き下しているからにすぎません。
出力が交流の場合の書き方
二次側の電圧・電流・力率で出力を書くと、分子が少し長くなります。
見た目は複雑になりましたが、やっていることは「出力÷(出力+損失)」のままです。分子と分母の第1項はいつも同じもの、と覚えておくと、式を書き写すときの事故が減ります。
ステップ3:1/n 負荷では、銅損だけが (1/n)² 倍
多くの人が一番混乱するのがここです。定格の 1/n の負荷で運転したときの効率を求める問題ですね。

どこに何がかかっているかを一覧で
| 項目 | かかる係数 | 理由 |
|---|---|---|
| 出力 | 1/n | 負荷が 1/n になったのだから、出力もそのまま 1/n |
| 鉄損 Pi | かからない | 負荷によらず一定だから |
| 銅損 Pc | (1/n)² | 電流が 1/n になり、銅損は電流の2乗に比例するから |
覚えるべき違いは、この表の右2行だけです。同じ「1/n 負荷」という言葉でも、鉄損には何もかからず、銅損には2乗でかかる。 ここが分かれば、式を丸暗記する必要はまったくありません。
そしてこの表から、もう一つ大事な結論が読み取れます。負荷を軽くしていくと、銅損は2乗で急激に小さくなるのに対し、鉄損は最初と同じ大きさのまま居座り続けます。つまり、軽負荷の変圧器では鉄損が損失の主役になるわけです。この感覚は、後で出てくる全日効率でそのまま効いてきます。
ステップ4:効率が最大になるのは「鉄損=銅損」のとき
ここは試験で本当によく出るところです。しかも、覚えることは条件式ひとつだけという、ありがたい単元です。

天秤の絵を思い浮かべてください。片方の皿に一定の重さの鉄損、もう片方に負荷しだいで増減する銅損が乗っています。この2つがちょうど釣り合った瞬間が、損失の合計 Pi + Pc が最も小さくなるポイントであり、効率が最大になる運転点です。
計算問題での使い方
最大効率条件が出てきたら、やることは決まっています。
- 「今の銅損」を、鉄損と同じ値まで落とすには何倍にすればよいかを考える
- 銅損は負荷率の2乗に比例するので、 と式を立てる
- これを解いて負荷率 1/n を求める
この3ステップで、最大効率時の負荷率はほぼ機械的に出ます。「鉄損=銅損」と書いた瞬間に、あとは2乗の計算だけ、と考えておけば十分です。
ステップ5:全日効率は「鉄損は24時間、銅損は T 時間」
配電用変圧器でよく問われるのが全日効率です。1日を通してどれだけ効率よく働いたかを表す指標ですね。

24 と T の使い分けは、性格の違いそのもの
| 損失 | かける時間 | なぜそうなるか |
|---|---|---|
| 鉄損 Pi | 24(時間) | 電圧をかけている限りずっと発生するから、24時間分 |
| 銅損 Pc | T(時間) | 負荷がかかっている時間だけ発生するから |
配電用変圧器は、夜間など負荷がほとんどない時間帯でも電圧はかかりっぱなしです。だから鉄損は24時間ぶんきっちり積み上がる。一方の銅損は、負荷がつながっている T 時間のあいだしか発生しない。この違いをそのまま式にしただけなのです。
分子の PT も同じ考え方です。出力 P が T 時間続いたのだから、1日の総出力は PT。分子が「1日の仕事量」、分母が「1日の仕事量+1日の損失量」という構造になっています。
なお、複数台の変圧器で負荷を分け合う場合の考え方が不安な方は、単巻変圧器は「差分だけ」で攻略 — 自己容量と負荷容量の罠を一発回避も併せて確認しておくと、容量と負荷の関係でつまずきにくくなります。
ステップ6:例題で通しで解いてみる
言葉だけでは実感がわかないので、実際に手を動かしてみましょう。

問題:ある変圧器の鉄損が 200 W、定格時の銅損が 800 W である。効率が最大となるのは、負荷率がいくらのときか。
いきなり効率の式を書き始めてはいけません。聞かれているのは「効率が最大になる条件」なので、使う道具は最大効率条件ひとつです。
手順1:目標を決める
効率最大は 鉄損=銅損。つまり、今 800 W ある銅損を、鉄損と同じ 200 W まで落とせばよい、ということです。
手順2:式を立てる
銅損は負荷率 1/n の2乗に比例するので、
手順3:解く
答え:負荷率 50 %(1/2)のとき
効率の長い分数式は、一度も書いていません。「銅損を 1/4 にするには電流を半分にすればよい」という一本道だけで答えが出ました。これが、損失の性質を押さえておくことの威力です。
まとめ
ここまでの内容を1枚に凝縮します。試験直前は、この表だけ見返せば十分です。
| 論点 | 結論 |
|---|---|
| 鉄損 Pi | 電圧で決まり、負荷によらず一定(無負荷損) |
| 銅損 Pc | 電流の2乗に比例して変化(負荷損、Pc=I²R) |
| 効率の基本式 | η = 出力 ÷ (出力+損失) × 100 |
| 1/n 負荷時 | 出力は 1/n 倍、鉄損はそのまま、銅損だけ (1/n)² 倍 |
| 効率最大の条件 | 鉄損=銅損(Pi=Pc) |
| 全日効率 | ηd = PT ÷ (PT+24Pi+PcT) × 100 |
| 軽負荷のとき | 銅損が激減し、鉄損が損失の主役になる |
試験本番で式が思い出せなくなったら、この一言を唱えてください。
鉄損は一定、銅損は I²、効率は損失しだい
変圧器の効率は、正直なところ一度でスッと入ってくる単元ではありません。1回で完璧にしようと気負わなくて大丈夫です。何度も動画に戻り、手を動かしているうちに、ある日ふっと「あ、そういうことか」と腑に落ちる瞬間が来ます。そのときまで、何度でも戻ってきてください。
⚠ ここを間違える人が多い
理屈は分かっていても、答案の途中でつまずく人が多いポイントが3つあります。ここだけは意識して読んでください。
出力を定格のままにしてしまう
❌ こう思いがち:最大効率条件から負荷率を求めたあと、効率の計算では定格容量の値をそのまま分子に入れる。
✅ 正しくはこう:負荷を絞ったのなら、出力も同じ割合で小さくなっています。定格 50 kVA の変圧器を半分の負荷で使うなら、出力は 25 kVA として計算しなければいけません。損失だけ 1/2 や 1/4 に直して、出力を定格のまま置き忘れると、効率がありえないほど高く出ます。答えが 99 % 台になったら、まず出力を疑ってください。
損失を「出力×(1-η)」で出してしまう
❌ こう思いがち:効率が分かっているのだから、損失=出力×(1-η) でいいはずだ。
✅ 正しくはこう:効率の定義は η=出力÷(出力+損失) です。ここから損失を解くと、損失=出力×(1-η)÷η になります。割るべき η を落とすと、損失がわずかに小さく出て、そのあとの銅損・鉄損の配分もまとめて狂います。定義式から機械的に変形する癖をつけましょう。
巻線抵抗の温度換算で分母分子を逆にする
❌ こう思いがち:抵抗の温度換算で、(235+低い温度)÷(235+高い温度) を掛けてしまう。
✅ 正しくはこう:銅の抵抗は温度が上がると大きくなります。計算に入る前に「高温側の抵抗のほうが大きいはずだ」と当たりをつけておけば、比を逆に立てた瞬間に自分で気づけます。答えが元の値より小さくなっていたら、その時点で立て直してください。
過去問ではこう出た
変圧器の効率は、機械科目で安定して出題され続けているテーマです。この動画にひも付く範囲だけでも、次の出題実績があります。
| 年度 | 問番号 |
|---|---|
| 平成28年 | 問8 |
| 平成29年 | 問8 |
| 令和3年 | 問15 |
| 令和5年 上期 | 問9 |
| 令和5年 下期 | 問9 |
| 令和7年 上期 | 問9 |
| 令和7年 下期 | 問15 |
問8・問9といったA問題での出題と、問15というB問題での出題の両方があるのが特徴です。A問題では「最大効率となる負荷率」「全日効率の値」といった単発の計算、B問題では損失の内訳を求めてから効率を出す、といった複数段階の設問になりやすい傾向があります。どちらにしても、使う道具は今日の3つ(基本式・(1/n)²・鉄損=銅損)から出ません。
出題形式に慣れるには、実際の問題を解いてみるのが一番の近道です。
よくある質問
Q. 鉄損が「一定」というのは、本当にどんなときでも変わらないのですか?
試験で扱う範囲では「一定」と考えて問題ありません。鉄損は鉄心の中の磁束によって生じるもので、その磁束は一次側にかける電圧でほぼ決まります。電源電圧が定格で保たれている限り、負荷が半分になろうがゼロになろうが、鉄心の中で起きていることは変わらないというイメージです。逆に言えば、電圧や周波数が変わる問題文が出てきたときは、鉄損も動く可能性があると身構えてください。
Q. 「負荷率」と「1/n」は同じものと考えてよいですか?
はい、この単元では同じものと考えて大丈夫です。定格の半分の負荷なら負荷率 50 %、これを分数で書けば 1/2 なので、n=2 ということになります。問題文が「負荷率 60 %」と書いてきたら 0.6 を、「定格の 3/4 の負荷」と書いてきたら 0.75 を、そのまま 1/n の位置に入れてください。大事なのは、この値を銅損には2乗して、鉄損には掛けないという使い分けのほうです。
Q. 全日効率が普通の効率より低くなりやすいのはなぜですか?
配電用変圧器は、負荷がほとんどない時間帯でも電圧をかけっぱなしにしています。その間も鉄損は発生し続けるのに、出力はほとんどありません。分子(1日の総出力)が伸びないまま、分母の 24Pi だけが積み上がるので、全日効率は下がりやすくなるのです。だから配電用変圧器では、鉄損の小さい設計が特に重視されます。三相の結線ごとの特徴とあわせて整理したい方は、変圧器の三相結線を「魔法のフレーズ」で一発攻略も読んでおくと、実際の配電設備の姿がつかみやすくなります。
Webの何倍も覚えやすい
紙のフルラミネート加工の
暗記シートがあります
実績2,000部突破。
お風呂や電車のスキマ時間でサクッと勉強できます。
付属の練習用紙で無限に練習できます♪

🛒関連教材ショーケース
学習の効率を上げる、紙の本格教材ラインナップ。


この記事を読み終えたら、進捗を記録しましょう




