変圧器の損失分類を魔法の暗記フレーズ「鉄・銅・機械」で一発攻略
電験三種「機械」科目で頻出の変圧器の損失分類を、無負荷損=鉄損/負荷損=銅損/補機損=機械的、というシンプルな対応で整理。ヒステリシス損・渦電流損の公式の覚え方、漂遊負荷損の引っかけまで、9割が混乱するポイントを一気に攻略します。
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この記事で身につくこと
変圧器の損失は、テキストを開いた瞬間に「無負荷損」「負荷損」「補機損」「鉄損」「銅損」「ヒステリシス損」「渦電流損」「漂遊負荷損」と、聞き慣れない言葉が一気に押し寄せてきます。ここで手が止まってしまう方は本当に多いのですが、実は正体は驚くほど単純です。
この単元でやっていることは、たったひとつ。「その損失は、いつ・どこで出ているのか」で仕分けているだけです。仕分けの箱は3つしかありません。箱の名前さえ決まってしまえば、あとは出てきた用語をポイポイ放り込むだけの作業になります。
この記事を読み終えると、次の状態になります。
| 読む前 | 読んだ後 |
|---|---|
| 用語が多すぎて何が何だか分からない | 3つの箱に仕分けるだけの話だと分かる |
| 鉄損と銅損のどちらが一定か迷う | 鉄損=電圧で決まるから一定、と説明できる |
| 漂遊負荷損の分類でいつも間違える | 名前ではなく「電流で発生するか」で判断できる |
| ヒステリシス損と渦電流損の式が覚えられない | 式の形(シルエット)で瞬時に見分けられる |
暗記量を増やすのではなく、判断の軸をひとつ持つ。それがこの単元の攻略法です。
暗記フレーズ:鉄損は一定、銅損はIの2乗、補機損は設備由来
先に結論を渡してしまいます。この単元で覚えるのは、この1行だけです。
鉄損は一定、銅損は I の2乗、補機損は設備由来
このフレーズを、もう少し分解した形が次の3行です。試験会場でど忘れしたら、この3行を余白に書き出してください。それだけで選択肢が絞れます。
| 覚える3行 | 意味 |
|---|---|
| 無負荷 = 鉄 | 電圧を加えただけで出る損失は鉄損 |
| 負荷 = 銅 | 電流が流れて出る損失は銅損 |
| 補機 = 機械 | ファンやポンプなど周辺機器の損失 |
「鉄・銅・機械」。材質と機械という、耳になじむ3語です。難しい言葉を覚え直す必要はありません。
ステップ1:つまずきの正体は「用語が二重になっている」こと

この単元が難しく感じる理由は、実力不足ではありません。同じものを指す言葉が2種類あるからです。
「無負荷損」と「鉄損」はほぼ同じものを指しますし、「負荷損」と「銅損」もほぼ同じものを指します。テキストによって呼び方が揺れるので、初めて読むと「別の損失が4種類あるのか」と誤解してしまうわけです。
ここを「分類名(無負荷損・負荷損・補機損)と、中身の名前(鉄損・銅損・ファン損)の2階建て」だと理解すると、視界が一気に開けます。
覚え方は「丸暗記」ではなく「タイミングと場所」
仕分けの軸は次の2つだけです。
- タイミング … 電圧を加えた瞬間から出るのか、電流が流れてから出るのか
- 場所 … 変圧器の本体(鉄心・まき線)で出るのか、周辺機器で出るのか
この2つを聞かれていると思って問題文を読むと、知らない用語が出てきても分類できるようになります。
ステップ2:3行の法則で全部つながる

先ほどの3行を、もう少し実戦的にまとめたのが次の表です。試験直前はこの表だけ見返せば十分です。
| 分類 | 発生条件 | 性質 | 中身 |
|---|---|---|---|
| 無負荷損 | 電圧のみで発生 | 常に一定 | 鉄損(ヒステリシス損・渦電流損)、励磁電流によるまき線抵抗損、絶縁物の誘電体損 |
| 負荷損 | 電流が流れて発生 | I² に比例 | 銅損(抵抗損)、漂遊負荷損 |
| 補機損 | 付帯設備が稼働 | 機械的 | 冷却ファン損、送油ポンプ損 |
表の「発生条件」の列が、この単元の心臓部です。電圧が引き金なら一定、電流が引き金なら2乗で効いてくる。この対比さえ身体に入れば、あとの細かい用語はぶら下がっているだけです。
ステップ3:無負荷損は「スイッチを入れた瞬間から出続ける」

無負荷損のイメージは、コンセントに挿しただけの状態です。二次側に何もつないでいない、つまり負荷電流が流れていない状態でも、一次側に電圧を加えているだけで損失は発生し続けます。
なぜかというと、電圧を加えれば鉄心の中に磁束ができ、その磁束が交流で向きを変え続けるからです。この「磁束を作って揺らし続ける」行為そのものが、鉄心の中で熱を生みます。これが鉄損です。
無負荷損に隠れている伏兵
無負荷損は鉄損が主役ですが、脇役も一緒に入っています。ここが問題で狙われます。
| 中身 | どこで出るか |
|---|---|
| ヒステリシス損 | 鉄心の磁化が反転するとき |
| 渦電流損 | 鉄心の中を渦状に流れる電流 |
| 励磁電流によるまき線抵抗の損失 | 無負荷でも流れている励磁電流が一次巻線を通るとき |
| 絶縁物の誘電体損 | 絶縁物に交流電圧がかかるとき |
3行目に注目してください。「まき線の抵抗の損失なのに無負荷損?」と混乱しやすいところですが、無負荷のときに流れている励磁電流によるものなので、無負荷損に含めます。ここは理屈で押さえておくと引っかかりません。
ステップ4:ヒステリシス損と渦電流損は「式のシルエット」で覚える

鉄損の中身を式で問われることがあります。ここが最大の罠で、真面目な方ほど全部を暗記しようとして力尽きます。結論から言うと、式の形(シルエット)だけ覚えれば足ります。
まずヒステリシス損です。
磁束密度 は電圧 を周波数 で割った形に比例します。つまり式の中に「 で割る」という動作が残るのが、ヒステリシス損の顔つきです。
次に渦電流損です。
こちらは を代入すると が約分されて消え、最後は電圧の2乗だけが残ります。
見分け方はこの1行
| 損失 | 式のシルエット | ひとことで |
|---|---|---|
| ヒステリシス損 | f で割る(f が残る) | |
| 渦電流損 | f が消える(V の2乗だけ) |
「ヒステリシス損は f で割る、渦電流損は f が消える」。この対比で十分に試験へ対応できます。式を1文字ずつ暗記するのではなく、輪郭で覚える。これが働きながら学ぶ大人の戦い方です。
ステップ5:負荷損は電流の2乗で効いてくる

負荷損は、電流が流れることで発生する損失です。一次・二次のまき線には必ず抵抗があるので、そこに電流が流れれば熱になります。これが銅損(抵抗損)です。
大事なのは2乗という点です。電流が2倍になれば損失は4倍、半分になれば4分の1になります。「電流に比例」ではありません。この違いが、計算問題では合否を分けます。
漂遊負荷損も、ここに入る
負荷損には、銅損のほかに漂遊負荷損という仲間がいます。漏れ磁束が金属部分に当たって生じる追加の損失で、こちらも負荷電流が流れることで発生します。だから負荷損です。
なお、変圧器を複数台つないで運転するときの電流の分かれ方が怪しい方は、先に変圧器の並列運転|4条件は「循環電流」だけで全部つながるを読んでおくと、負荷損の話がぐっと入りやすくなります。
ステップ6:補機損は「本体の外」で使われている電気

補機損だけは、少し性格が違います。変圧器本体ではなく、周辺機器を動かすために消費されるエネルギーだからです。
大型の変圧器は、放っておくと自分の発熱で壊れてしまいます。そこで冷却ファンを回したり、送油ポンプで油を循環させたりして冷やします。この装置を動かす電力が補機損です。
| 補機損の例 | 役割 |
|---|---|
| 冷却ファン損 | 空気を送って放熱を助ける |
| 送油ポンプ損 | 絶縁油を循環させて熱を運び出す |
つまり「ファンやポンプは機械(補機)だから補機損」。名前がそのまま答えになっている、この単元でいちばん親切な項目です。ここは深追いせず、名前だけ覚えて次に進んで構いません。
ステップ7:漂遊負荷損の分類(クイズ①)

ここで理解度を確認しましょう。
問 次のうち、「漂遊負荷損」はどこに分類されるか。 A. 無負荷損 B. 負荷損 C. 補機損
正解は B. 負荷損 です。
「漂遊」という言葉の響きから、ふわふわ漂っている=負荷と関係なさそう、と感じてしまうのがこの問題の狙いです。しかし漂遊負荷損は、漏れ磁束などによって発生する損失で、そもそも負荷電流 が流れなければ生まれません。発生の引き金が電流である以上、行き先は負荷損です。
判断の順番を固定しておきましょう。
- 名前を見ない
- 「電流が流れないと発生するか?」と自問する
- 電流が必要なら負荷損、電圧だけで出るなら無負荷損、周辺機器なら補機損
ステップ8:鉄損と銅損の対比(クイズ②)

もう1問いきましょう。
問 負荷に関係なく「常に一定」なのが鉄損。では、電流の2乗に比例して増える損失は?
正解は 銅損(抵抗損) です。
イメージとしては、シーソーを思い浮かべてください。片側の鉄損はどっしり動かず一定のまま。もう片側の銅損は、負荷が増えるほど重くなってシーソーが傾いていきます。
| 鉄損 | 銅損 | |
|---|---|---|
| 発生の引き金 | 電圧(と周波数) | 電流 |
| 負荷との関係 | 無関係(常に一定) | I² に比例 |
| 出る場所 | 鉄心 | まき線 |
「鉄損は f、銅損は I の2乗」。この対比は試験で本当によく出ます。ここだけは確実に押さえてください。
なお、この鉄損と銅損の性質は、そのまま次の単元である効率計算につながります。続けて理解したい方は変圧器の効率は「鉄損は一定、銅損はI²」だけで全部解けるへ進むと、学んだことがそのまま計算問題で使える実感が得られるはずです。
まとめ
変圧器の損失は、覚えることが多い単元に見えて、実際に必要なのは3行だけでした。
| 分類 | ひとことで | 中身 |
|---|---|---|
| 無負荷損(鉄損) | 電圧だけで発生・常に一定 | ヒステリシス損、渦電流損、励磁電流による抵抗損、誘電体損 |
| 負荷損(銅損) | 電流が流れて発生・I² に比例 | 銅損(抵抗損)、漂遊負荷損 |
| 補機損(機械損) | 周辺機器を動かす電力 | 冷却ファン損、送油ポンプ損 |
迷ったら、いつでもこの言葉に戻ってきてください。
鉄損は一定、銅損は I の2乗、補機損は設備由来
変圧器そのものの構造や結線が不安な方は、変圧器の三相結線を「魔法のフレーズ」で一発攻略も合わせて読むと、損失がどこで発生しているのかがより立体的に見えてきます。
一度で完璧に理解しようと気負う必要はありません。3つの箱の名前だけ持ち帰って、問題を解きながら中身を足していけば十分です。
⚠ ここを間違える人が多い
この単元で実際に点を落とすポイントは、だいたい次の3つに集まります。
❌ 銅損が「電流に比例する」と思い込む
❌ こう思いがち:電流が2倍になれば損失も2倍。 ✅ 正しくは:電流が2倍なら損失は4倍です。 の2乗を忘れたまま連立方程式を立てると、答えがきれいな数字になってしまうので、間違いに気づかないまま進んでしまいます。負荷電流が変わったときの銅損を比べる問題では、必ず電流の比の2乗で計算してください。半分の負荷なら銅損は4分の1、という感覚を持っておくと検算にも使えます。
❌ 名前の響きで分類してしまう
❌ こう思いがち:「漂遊」負荷損は、ふわっとした損失だから無負荷損。 ✅ 正しくは:負荷損です。名前ではなく「電流が流れないと発生しないか」で判断します。逆に「励磁電流によるまき線抵抗の損失」は、まき線の抵抗の話なのに無負荷損側です。用語に含まれる文字ではなく、発生の引き金で仕分ける。この癖をつけるだけで、この分野の失点はかなり減ります。
❌ 損失を発生させる試験の仕組みを取り違える
❌ こう思いがち:巻線をつなぎさえすれば、電流が流れて損失が測定できる。 ✅ 正しくは:つなぐ向きで結果がまったく変わります。起電力が互いに打ち消し合う向きにしてしまうと電流が流れず、測りたかった損失そのものが発生しません。損失の測定に関する問題では、まず「どちらの損失を発生させたい設定なのか」を読み取ってから回路を追ってください。
過去問ではこう出た
変圧器の損失分類は、単独の知識問題としても、効率計算の前提としても繰り返し出題されています。この記事の内容にひも付く出題は、次のとおりです。
| 年度 | 問番号 |
|---|---|
| 令和1年 | 問9 |
| 令和4年下期 | 問8 |
| 令和5年上期 | 問15 |
傾向としては、「どの損失がどの条件で変化するか」を問う形が中心です。鉄損が負荷に無関係で一定であること、銅損が電流の2乗に比例することを取り違えていると、選択肢の途中で必ず詰まる作りになっています。
また、問15のようなB問題では、損失分類そのものではなく分類を前提にした計算として出てきます。つまりこの記事の3行は、覚えて終わりではなく、計算問題の入口として使う知識です。分類が曖昧なままだと、計算に入る前の段階でつまずくことになります。
実際の出題形式で手を動かして確認したい方はこちらへどうぞ。
よくある質問
Q. 無負荷損と鉄損は、まったく同じものと考えていいですか?
ほぼ同じものとして扱って構いませんが、厳密には少し違います。無負荷損という「箱」の中身の大部分が鉄損(ヒステリシス損+渦電流損)で、そこに励磁電流によるまき線抵抗の損失や絶縁物の誘電体損が少量加わったものが無負荷損です。試験では「無負荷損=鉄損」と考えて解いて問題ありませんが、「無負荷損に含まれるものはどれか」と中身を問われたときだけ、この脇役たちを思い出せるようにしておくと万全です。
Q. 鉄損が「常に一定」というのは、どんな場合でも一定という意味ですか?
いいえ。ここでの「一定」は、負荷の大きさに対して一定という意味です。電圧と周波数が変われば鉄損も変わります。実際、ヒステリシス損の式には が入っていますし、渦電流損は電圧の2乗に比例する形になります。試験問題では電源電圧・周波数は一定として扱われることが多いので、その前提のもとで「負荷が変わっても鉄損は変わらない」と理解しておけば十分です。
Q. 補機損は、実際の計算問題でも考える必要がありますか?
電験三種の計算問題では、効率を求める際に無負荷損(鉄損)と負荷損(銅損)だけを使うことがほとんどで、補機損まで計算に入れる場面はまれです。ただし分類を問う知識問題では確実に登場します。「冷却ファンや送油ポンプの損失はどこに分類されるか」という形です。計算のためというより、3分類を完成させるためのピースとして押さえておいてください。大型の変圧器ほど冷却設備が大がかりになり、無視できない量になる、という背景まで知っておけば理解が定着します。
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