変圧器の負荷分担は『相手の%インピーダンス』で一瞬攻略
電験三種「機械」科目で頻出の変圧器並列運転と負荷分担を、魔法のフレーズ『相手の%インピーダンス』と水道管イメージで完全攻略。基準容量換算→分担電流→負荷分担の3ステップ公式を、ひっかけポイントごと整理した記事です。
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変圧器の並列運転。テキストを開くと、似た形の分数がずらっと3つも4つも並んでいて、「どれがどれだか分からない」と手が止まった経験、ありませんか。
しかもこの単元、厄介なことに分子に自分の値を書くか、相手の値を書くかで答えが真逆になります。1文字違うだけで不正解。だから「なんとなく覚えている」状態が一番危ないんです。
でも安心してください。この単元は、覚えることがたった2つしかありません。「換算は容量比を掛けるだけ」「分担の分子は必ず相手」。この2つさえ身体に入れば、あとはどんな出題パターンでも同じ手順で処理できます。難しく見えるのは、公式の数が多いからではなく、似た形の式を別物として暗記しようとしているからなんです。
この記事で身につくこと
| 身につくこと | ゴールの状態 |
|---|---|
| 基準容量換算 | 「掛けるんだっけ、割るんだっけ」で止まらなくなる |
| %インピーダンスと容量の関係 | シーソーのイメージで大小関係を即答できる |
| 分担電流の式 | 分子が「相手」であることに迷いがなくなる |
| 負荷分担の式 | 電流と同じ形だと分かり、覚える公式が1つ減る |
| 出題パターン | 換算→分担の2ステップで機械的に処理できる |
数式の暗記量を増やすのではなく、むしろ減らすのがこの記事の目的です。
暗記フレーズ:%インピーダンスは容量で換算、分担は「相手の%インピーダンス」で決まる
まずはこの一文を、声に出して読んでみてください。
%インピーダンスは容量で換算、分担は「相手の%インピーダンス」で決まる
そして、その裏にある本質はもっと短く言えます。
並列運転は%インピーダンス勝負。%インピーダンスが小さい方が、たくさん働く。

「小さい方がたくさん働く」——なんだか健気ですよね。この感情のフックが、本番で効いてきます。人間は無味乾燥な数式より、意味のあるイメージの方をずっと長く覚えていられるからです。
なぜ丸暗記だと本番で崩れるのか
この単元でつまずく人の大半は、公式そのものを知らないわけではありません。知っているのに、本番で分子と分母が入れ替わってしまうんです。

典型的な詰まり方は、次の3つに集約されます。
| 罠 | 頭に浮かぶ迷い | この記事での解消法 |
|---|---|---|
| 罠1 | 換算式は掛ける?割る? | 容量比を「掛ける」だけと確定させる |
| 罠2 | 分担の分子は自分?相手? | 水道管とオームの法則で理屈から納得する |
| 罠3 | 電流と電力で式は違う? | 全く同じ形だと知る |
裏を返せば、この3つさえ潰せば、この単元は終わりということです。順番に片付けていきましょう。
ステップ1:基準容量換算は「容量比」を掛けるだけ

まず、そもそもなぜ換算という作業が必要なのでしょうか。
%インピーダンスという値は、その変圧器自身の定格を基準にした「相対値」です。つまり、100kVAの変圧器の3%と、500kVAの変圧器の3%は、同じ「3%」でも中身の重みが全く違います。身長170cmの人の「体重の10%」と、力士の「体重の10%」が違うのと同じ理屈ですね。
比べられないものを比べるために、物差しをそろえる。それが基準容量換算です。
ダッシュ(‘)が付いているのは、「換算済みですよ」という自分への目印です。付けておくと、計算の途中で元の値と混ざる事故を防げます。
掛けるのか割るのかで迷わないコツ
覚え方はシンプルで、分数の上が「そろえたい先(基準容量)」、下が「もともとの自分(自己容量)」です。
| 状況 | 容量比 | 換算後の%Z |
|---|---|---|
| 自己容量より基準容量が大きい | 1より大きい | 大きくなる |
| 自己容量より基準容量が小さい | 1より小さい | 小さくなる |
| 自己容量=基準容量 | 1 | そのまま(換算不要) |
並列運転の問題での鉄則は一つ。同じ基準容量にそろえてから比較する。ここを飛ばして生の%Zのまま比べると、その先の計算は全部ずれます。
ステップ2:容量と%インピーダンスは「シーソーの関係」

同じ基準容量にそろえたとき、換算後の%インピーダンスがどう動くかを整理しておきます。ここは計算しなくても、大小関係だけで答えが出る問題がよく出ます。
| 変圧器の自己容量 | 換算後の%Z’ | ひとことで言うと |
|---|---|---|
| 大きい | 小さくなる | 余力のある大型機 |
| 小さい | 大きくなる | 手一杯の小型機 |
容量が大きいほど%Zは小さくなる。容量が小さいほど%Zは大きくなる。上がれば下がる、シーソーの関係です。
なぜそうなるかは、換算式の分母を見れば一目瞭然です。自己容量が分母にいるので、そこが大きい機械ほど計算結果は小さくなります。理屈もイメージも一致しているので、ここは忘れにくいはずです。
大型機は%Zが小さい → 後で出てくる「%Zが小さい方がたくさん働く」とつながる。つまり大きい変圧器がたくさん働く。当たり前の結論に着地しますよね。式が正しく使えている証拠です。
ステップ3:水道管で考える、電流の流れ方

ここが、この単元でいちばん大事な感覚です。
並列運転を、2本の水道管で同時に水を流している状態だと思ってください。
| 水道管のたとえ | 電気の世界 | 結果 |
|---|---|---|
| 太い管 | %インピーダンスが小さい | 水(電流)がたくさん流れる |
| 細い管 | %インピーダンスが大きい | 水(電流)が少ししか流れない |
%インピーダンスは、言ってしまえば流れにくさ(抵抗)です。抵抗が小さい方に電流がたくさん流れるのは、理論科目でさんざんやった並列回路の話とまったく同じ。新しい理屈は何一つ増えていません。
電気は目に見えないので、どうしても抽象的に感じます。でも水に置き換えた瞬間、身体感覚で分かるようになる。これがこの単元の攻略法です。
だから結論はこうなります。
%インピーダンスの大小が分担比率を決める。小さい方(=太い管)がたくさん働く。
なお、そもそも並列運転をするために満たすべき条件(極性・電圧比・%インピーダンスなど)が別途あります。「なぜその条件が要るのか」がぼんやりしている方は、変圧器の並列運転|4条件は「循環電流」だけで全部つながるを先に読んでおくと、この記事の内容がきれいに接続します。
ステップ4:分担電流の式は「相手側」が分子に来る

いよいよ最大の関門です。1号機に流れる分担電流 を求める式は、こうなります。
見てください。(自分)の分子に、(相手)が入っています。
初めて見ると「自分の式なのに、なぜ相手の値?」と気持ち悪く感じるはずです。この違和感こそが、多くの受験者を転ばせている正体です。
なぜ分子が「相手」なのか
理由は、たった一行で説明できます。電流はインピーダンスに反比例するからです。
オームの法則そのままですね。1号機のインピーダンスが小さければ小さいほど、1号機にはたくさん流れてほしい。ところが「自分の%Z」を分子に置くと、自分が小さいときに分担も小さくなってしまい、事実と逆になります。
そこで相手の値を分子に置くことで、反比例の関係を再現しているわけです。ひっかけでも意地悪でもなく、物理的に正しい形になっているだけなんです。
| 覚え方 | 中身 |
|---|---|
| 数字の目印 | 自分が「1」なら、分子は「2」 |
| 理屈の目印 | 電流は抵抗に反比例するから、相手が分子 |
| 分母 | 分母は自分も相手も同じ(%Z₁’ + %Z₂’) |
分母は両者の合計なので、どちらの式でも共通です。変わるのは分子だけ、と押さえておけば混乱しません。
ステップ5:負荷分担も、電流とまったく同じ比率

ここは朗報です。負荷分担(kVAやkW)の式は、電流の式と完全に同じ形をしています。
分子はやはり「相手の%インピーダンス」。新しく覚える公式はゼロです。
考えてみれば当然で、並列運転している2台には同じ電圧がかかっています。電圧が共通なら、電力の比は電流の比とそのまま一致します。だから式が同じ形になるんですね。
| 求めたいもの | 全体量 | 分子 | 分母 |
|---|---|---|---|
| 分担電流 I₁ | 全電流 I | 相手の%Z₂’ | %Z₁’ + %Z₂’ |
| 負荷分担 P₁ | 全負荷 P | 相手の%Z₂’ | %Z₁’ + %Z₂’ |
表にすると、違いは「全体量が電流か電力か」だけ。3つあると思っていた公式が、実質2つに減りました。
ステップ6:例題で手を動かす
例題1|基準容量への換算

自己容量100kVA、%インピーダンス3%の変圧器を、基準容量500kVAに換算したときの%Z’は?
容量比を掛けるだけでしたね。
容量が5倍になったので、%インピーダンスも5倍の15%。それ以上でも以下でもありません。「割るんだったかな」と迷った瞬間に 0.6% という誤答が生まれますが、シーソーの関係を思い出せば、基準を大きく取れば%Zも大きく出ると納得できます。
例題2|どちらが多く負荷を持つか
換算後の%インピーダンスが「小さい変圧器」と「大きい変圧器」。並列運転時により多くの負荷を担当するのはどちら?
水道管を思い浮かべてください。太い管と細い管、どちらに水がたくさん流れるか。
答えは%インピーダンスが小さい変圧器です。%Z(流れにくさ)が小さい=太い管なので水が流れやすく、その分だけ多くの負荷を受け持ちます。計算不要、イメージだけで即答できる問題です。
まとめ
変圧器の並列運転で使う道具を、最後にひと目で確認しましょう。
| ステップ | 式 | 覚えるポイント |
|---|---|---|
| Step1 基準容量換算 | %Z’ = %Z ×(基準容量÷自己容量) | 容量比を掛けるだけ |
| Step2 分担電流 | I₁ = I ×%Z₂’/(%Z₁’+%Z₂’) | 分子は相手 |
| Step3 負荷分担 | P₁ = P ×%Z₂’/(%Z₁’+%Z₂’) | 電流と同じ形 |
そして、迷ったときに戻る場所はここです。
%インピーダンスは容量で換算、分担は「相手の%インピーダンス」で決まる
%インピーダンスが小さい(管が太い)方が、たくさん働く。
水道管のイメージと「相手の%Z」。この2つだけで、この単元の問題は全部解けます。3つの公式を別々に暗記していた頃と比べたら、負担は半分以下になったはずです。
なお、変圧器の計算全般でつまずきやすい一次換算(α²の話)が不安な方は、変圧器の計算は「α²」で全部解ける──L形等価回路と一次換算の極意も合わせて読むと、換算という考え方そのものが得意分野になります。
⚠ ここを間違える人が多い
実際の答案でよく起きている取り違えを、3つだけ挙げておきます。どれも「知らなかった」ではなく「うっかり」で落とす類のものです。
❌ 換算を飛ばして、生の%Zのまま比べてしまう
問題文に「2台の変圧器の%インピーダンスはそれぞれ3%と4%」と書いてあると、そのまま分担の式に放り込みたくなります。しかし自己容量が違う以上、その2つは同じ物差しで測られていません。
✅ 正しくは、必ずどちらかの容量(または問題が指定する基準容量)にそろえてから比較します。換算を飛ばした答えは、たまたま容量が同じでない限り必ず外れます。
❌ 分担の分子に「自分の%Z」を入れてしまう
これが最多の失点パターンです。 の式なのだから分子も1番、と手が勝手に動いてしまうんですね。
✅ 正しくは、分子は相手側。判定は簡単で、計算結果が「%Zの小さい方が大きな負荷を持っている」形になっているかを確認するだけです。もし%Zが小さい機械の分担が小さく出ていたら、分子を取り違えています。この検算は10秒でできるので、必ず入れてください。
❌ 電流と電力で別の公式を探してしまう
「電流の式は覚えたけど、kWのときはどうするんだ?」と、試験中に存在しない公式を探し始めてしまうケースです。
✅ 正しくは、同じ形をそのまま使います。並列なら電圧は共通なので、電流の比=電力の比。頭の中の引き出しは1つで足ります。
過去問ではこう出た
この単元は、機械科目のB問題・A問題のどちらでも顔を出す定番です。実際の出題実績を並べてみます。
| 年度 | 問番号 |
|---|---|
| 令和7年 上期 | 問9 |
| 令和7年 下期 | 問9・問15 |
| 令和6年 上期 | 問8・問9 |
| 令和6年 下期 | 問8・問9 |
| 令和5年 上期 | 問15 |
テーマで照合すると、電験ジムの収録範囲では39問がこの領域に該当します。
傾向としては、A問題では「換算後の%Zを求めさせる」「どちらが多く分担するかを問う」といった単発型が中心。B問題(問15前後)では、換算→分担電流→負荷分担と、この記事のStep1〜3をそのまま順番に踏ませる複合型が出ます。
つまり、手順を1本の流れとして体に入れておけば、A問題でもB問題でも同じ動きで対応できる単元です。実際の問題文で手を動かして確認してみてください。
よくある質問
Q. 基準容量は、自分で好きに決めていいのですか?
はい、比較の物差しなので全機で同じ値にそろえてさえいれば、いくつでも構いません。1号機の自己容量に合わせても、10MVAのようなキリのいい値を使っても、最終的な分担比は同じになります。
ただし試験では、問題文が基準容量を指定している場合と、「2台のうち一方に合わせる」流れになっている場合があります。指定があればそれに従うのが安全です。自分で選ぶ場合は、計算が楽になる方(片方の自己容量)を取るのがおすすめです。
Q. %インピーダンスが同じ2台なら、負荷はどう分かれますか?
換算後の%Zが等しければ、分担は自己容量に比例して分かれます。式に入れてみれば分かりますが、分子と分母が同じ値で構成されるため、比率は容量比だけで決まる形になるからです。
これは理想的な状態で、どちらの変圧器も同じ「働き具合」になります。逆に%Zがずれていると、片方だけが先に定格いっぱいになり、もう片方に余力が残っていても、それ以上は負荷を増やせなくなります。並列運転で%Zをそろえたい理由は、ここにあるわけです。
Q. 3台以上の並列運転でも、同じ式が使えますか?
考え方は同じですが、「相手の%Z」という言い方は2台のときの表現です。3台以上では、各機のアドミタンス(%Zの逆数)の比で分けていると考えるのが素直です。2台の式も、突き詰めれば逆数の比を分数の形に整理したものにすぎません。
とはいえ電験三種の出題は2台の並列運転が圧倒的多数なので、まずは「分子は相手」を完全に固めるのが得点効率としては最優先です。
なお、変圧器を「複数台の組み合わせで使う」という発想が面白いと感じた方は、V-V結線は2台で三相|0.866と0.577の正体を完全攻略もぜひどうぞ。台数と容量の関係という、似た筋肉を使う単元です。
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