変圧器の計算は「α²」で全部解ける──L形等価回路と一次換算の極意
電験三種「機械」科目で必ず出る変圧器の計算を、L形等価回路と一次換算という2つの軸で完全攻略。暗記フレーズ『二次は一次へ換算、抵抗もリアクタンスもα²』を起点に、合成巻線抵抗・合成漏れリアクタンスまで一気に整理し、電圧変動率・効率・短絡試験の応用問題で確実に得点するための1記事です。
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この記事で身につくこと
変圧器の計算を前にして、手が止まってしまった経験はありませんか。
「一次側と二次側、どっちの値で計算すればいいんだ?」 「この抵抗、そのまま足していいのか?」
そう感じたなら、それはあなたの理解力の問題ではありません。変圧器という機器が、そもそも鉄心で左右に分断されていることが原因です。左と右で電圧も電流も違う、そんな回路をそのまま計算しようとすれば、誰だって混乱します。
そこで先人たちが考えたのが、「二次側を一次側へお引っ越しさせて、1つの回路にまとめてしまう」という発想でした。これがL形等価回路であり、一次換算です。
この記事を読み終えると、次の状態になります。
| 読む前 | 読んだ後 |
|---|---|
| 一次と二次、どちらで計算するか毎回迷う | 迷わず「全部一次側」に統一できる |
| α を掛けるのか α² なのか思い出せない | 電圧・電流・インピーダンスで機械的に振り分けられる |
| 合成抵抗の式が丸暗記で不安 | なぜ足せるのか、意味から説明できる |
| 電圧変動率・効率の問題で土台が崩れる | 共通の土台(一次換算)から取りかかれる |
覚えることは、実はたった1つです。それを先にお伝えします。
暗記フレーズ:二次は一次へ換算、抵抗もリアクタンスもα²
二次は一次へ換算、抵抗もリアクタンスも α²!
この一行が、今回の記事のすべてです。
変圧器の計算で問われることは山ほどありますが、その入口はほぼ例外なく「二次側の値を一次側に直す」という作業から始まります。そしてそこで最も間違えやすいのが、抵抗やリアクタンスだけ α ではなく α²(二乗)になるという一点。
試験問題は、まさにここを狙って作られています。逆に言えば、この一行さえ体に入っていれば、変圧器の計算問題は「怖い問題」から「点を取りに行く問題」に変わります。

ステップ1:なぜ「一次側にそろえる」必要があるのか
まずは、そもそもの動機から押さえましょう。ここを飛ばして公式だけ覚えると、必ずどこかで崩れます。

変圧器の内部を思い浮かべてください。鉄心があり、その左に一次巻線、右に二次巻線が巻かれています。両者は電線でつながっているわけではなく、磁束というバトンだけでつながった、別々の回路です。
この状態のまま負荷電流や電圧変動率を求めようとすると、こうなります。
- 一次側だけで計算する
- 二次側だけで計算する
- その2つを、あとで巻数比を使ってすり合わせる
工程が3つに分かれ、そのたびに換算のミスが入り込みます。だったら最初から、二次側の要素をぜんぶ一次側に引っ越させて、1つの回路として計算してしまえばいい。 これが等価回路という考え方の出発点です。
引っ越しには手続きが必要ですよね。住む場所が変われば、届け出も基準も新しい土地のものに合わせる。変圧器の換算も、まったく同じ発想です。一次側という土地のルールに合わせて、二次側の値を書き換えてあげるわけです。
なお、この「磁束というバトンでつながっている」というイメージがぼんやりしている方は、先に変圧器は「電気のバトン」で一発理解|電磁誘導と巻数比に目を通しておくと、この先の理解が一段深くなります。
ステップ2:鉄則は「全部一次側にそろえる」

変圧器の計算における大原則は、次の一文です。
変圧器の計算は、全部一次側にそろえる。
なぜ二次側ではなく一次側なのか
「逆に、一次側を二次側に換算してもいいのでは?」と思われたなら、それは鋭い疑問です。理屈のうえでは可能です。
ただし実務でも試験でも、上流である一次側にそろえるのが定石とされています。電源側から見た特性(電圧変動率、効率、短絡インピーダンスなど)を問われる場面が多く、一次側に立って計算したほうが式が素直に流れるからです。
この鉄則が効いてくる場面
| 出題テーマ | 一次換算がどう効くか |
|---|---|
| 電圧変動率 | 合成抵抗r・合成リアクタンスxを使って電圧降下を求める |
| 効率(銅損) | 一次に集約した合成抵抗rで銅損をまとめて計算できる |
| 短絡試験 | 短絡インピーダンスは一次換算した値として扱う |
| 負荷電流 | 二次負荷を一次側から見た値に直して電流を求める |
バラバラに見えていた出題テーマが、すべて「一次側への集約」という1本の軸でつながります。だからこそ、この鉄則を最初に据えるのです。
ステップ3:完成形「L形等価回路」を先に見ておく

回路図が出てきた瞬間に閉じたくなる気持ち、よく分かります。ですが、この図は要素が3つしかありません。
| 部分 | 中身 | 役割 |
|---|---|---|
| 左の並列部分(励磁回路) | 鉄損電流Ii・磁化電流Im | 鉄損の発生と、主磁束をつくる |
| 直列に並ぶ抵抗 | r1 と α²r2 | 巻線の銅損・電圧降下 |
| 直列に並ぶリアクタンス | x1 と α²x2 | 漏れ磁束による電圧降下 |
左に縦の枝(励磁回路)があり、そこから右へ横棒が伸びる。この形が「L」の字に見えることから、L形等価回路と呼ばれます。名前の由来は、それだけです。
そして注目してほしいのは、右側に並ぶ二次側の要素に、すべて α² が掛かっているという点。二次側の抵抗もリアクタンスも、一次側の土地に合わせて書き換えられた姿でここに並んでいます。
変圧器の基本公式(巻数比と起電力の関係)があやふやなまま進むと、この α の意味自体が揺らぎます。心当たりがあれば、電圧は巻数比、起電力は4.44fNΦ|変圧器計算の必須4公式で足場を固めてから戻ってきてください。
ステップ4:換算の基本ルール(電圧と電流)

まずは易しいほうから。すべての換算の基準になるのが、巻数比 α です。
この α を使って、電圧と電流を次のように書き換えます。
| 要素 | 換算式 | 掛ける倍率 | 覚え方 |
|---|---|---|---|
| 電圧 E, V | E2’ = αE2 | α | 巻数比そのまま |
| 電流 I | I2’ = I2 / α | 1 / α | 巻数比の逆 |
電圧が α 倍になるなら、電流は逆に 1/α 倍。電力(電圧×電流)が保存されると考えれば、この向きは自然です。 電圧を上げたぶん電流が減る、変圧器の本質そのものですね。
「ダッシュ」の意味を軽く見ない
換算後の値には、E2’、I2’ のようにダッシュ(‘)を必ず付けます。 見た目の飾りではありません。同じ E2 という記号のままでは、換算済みの値なのか、生の二次側の値なのかが区別できなくなるからです。
答案でも計算メモでも、ダッシュを付ける習慣そのものが、換算ミスを防ぐ最大の予防線になります。
ステップ5:最重要ルール「インピーダンス類はα²」

ここが、この記事でいちばん大事な場所です。
抵抗・リアクタンス・負荷インピーダンス。これらインピーダンスの仲間を換算するときだけ、倍率が α ではなく α²(二乗)になります。
なぜ二乗になるのか
丸暗記でも点は取れますが、理由を知っておくと絶対に忘れません。
インピーダンスは、オームの法則より「電圧 ÷ 電流」です。換算後の値も同じ形で書けます。
分子が α 倍、分母が 1/α 倍。割り算をした結果、α が2回ぶん効いて α² になる。 ただそれだけです。二乗は天から降ってきたルールではなく、電圧と電流の換算から自動的に出てくる帰結なのです。
ここまで来れば、冒頭のフレーズの重みが分かるはずです。
二次は一次へ換算、抵抗もリアクタンスも α²!
ステップ6:合成巻線抵抗 r = r1 + α²r2

換算ができれば、あとは足すだけです。
一次側の抵抗 r1 は、もともと一次側の住人ですからそのまま。二次側の抵抗 r2 だけ、α² を掛けて一次側の値に直してから足す。これで、バラバラだった2つの抵抗が1つの 合成巻線抵抗 r になります。
この r は、次の計算でそのまま使えます。
| 使いどころ | 何を求めるか |
|---|---|
| 銅損 | 負荷電流の二乗 × r |
| 電圧降下 | 電流 × r(抵抗ぶんの降下) |
| 効率計算 | 銅損の値を通じて効率へ |
ブロックを2つ積んで1つにまとめるようなもの。ただし、片方(二次側)だけはサイズを α² 倍してから積む——このイメージで覚えてしまってください。
ステップ7:合成漏れリアクタンス x = x1 + α²x2

安心してください。リアクタンスも、抵抗とまったく同じです。
| 記号 | 名称 | 主な用途 |
|---|---|---|
| r | 合成巻線抵抗 | 銅損、抵抗ぶんの電圧降下 |
| x | 合成漏れリアクタンス | 電圧変動率、短絡試験 |
新しい理屈を1つも増やさずに済むのが、一次換算という考え方の強みです。ルールは「インピーダンス類は α²、そして足す」——これだけで、抵抗もリアクタンスも負荷も同じ手つきで処理できます。
ステップ8:確認クイズで手を動かす
読んで分かった気になるのが、この単元の最大の落とし穴です。1問だけ、解いてみましょう。
問題 ある変圧器の一次巻数を N1、二次巻数を N2 とし、巻数比を α = N1 / N2 = 10 とする。 二次巻線抵抗 r2 が 0.05 Ω であるとき、一次側に換算した二次巻線抵抗 r2’ の値は?
(A) 0.5 Ω (B) 5 Ω (C) 50 Ω
答えを見る前に、10秒だけ考えてみてください。
解答:(B) 5 Ω
手順は3ステップだけです。
| Step | やること | 中身 |
|---|---|---|
| 1 | フレーズを思い出す | 「抵抗もリアクタンスも α²!」 |
| 2 | 公式に当てはめる | r2’ = α² × r2 |
| 3 | 数値を代入 | 10² × 0.05 = 100 × 0.05 = 5 Ω |
もし (A) 0.5 Ω を選んでいたら、α を1回だけ掛けてしまったということ。責める必要はまったくありません。むしろ今この瞬間に間違えられたのは幸運です。本番で同じ罠を踏まずに済むのですから。
まとめ
変圧器の計算は、覚えることが多いように見えて、幹は3本しかありません。
| # | 押さえること | 内容 |
|---|---|---|
| 1 | 目的 | L形等価回路は、内部損失を一次側に集約して計算を簡単にするモデル |
| 2 | 大原則 | 変圧器の計算は「全部一次側にそろえる」ことから始まる |
| 3 | 最強フレーズ | 二次は一次へ換算、抵抗もリアクタンスも α² |
そして、換算ルールの早見表がこちらです。迷ったらここに戻ってきてください。
| 要素 | 換算式 | 掛ける倍率 |
|---|---|---|
| 電圧 E, V | E2’ = αE2 | α |
| 電流 I | I2’ = I2 / α | 1 / α |
| 抵抗・リアクタンス・インピーダンス r, x, Z | r2’ = α²r2 | α² |
回路図は、一度で理解できなくて当たり前です。手で何度か書いてみると、ある日ふっと「あ、そういうことか」と腑に落ちる瞬間が来ます。 その日まで、何度でもこの記事と動画に立ち寄ってください。
⚠ ここを間違える人が多い
一次換算そのものは単純なルールですが、応用問題に混ぜ込まれた瞬間に取り違えるポイントがいくつかあります。実際に選択肢が用意されている場所を、先に見ておきましょう。
❌ 二乗すべき場面で、α を1回しか掛けない
いちばん多いのがこれです。電圧の換算(α倍)を直前にやったあと、その勢いのまま抵抗にも α を1回だけ掛けてしまう。
✅ 正しくは、単位に注目してください。Ω が付くもの、つまり抵抗・リアクタンス・インピーダンス・負荷は、例外なく α²。電圧(V)と電流(A)だけが α と 1/α です。単位で振り分ければ、勢いで間違えることはなくなります。
❌ 2台並行運転で、循環電流を片方のインピーダンスだけで割る
変圧器を2台並列にしたとき、起電力の差ΔEによって循環電流が流れます。このとき、電流が通る道は2台のインピーダンスを続けてくぐる1つの輪です。
✅ 正しくは、割る相手は Z1 と Z2 を足した値。片方だけ、あるいは2台の平均値で割ると、答えはおよそ2倍にふくらみます。しかも選択肢にはその「2倍の値」がちゃんと用意されているので、気づかずに選んでしまいます。回路を一周する道すじを指でなぞってから、分母を決める。 これだけで防げます。
❌ アドミタンスも、インピーダンスと同じ向きに換算してしまう
励磁回路を扱う問題では、アドミタンス(インピーダンスの逆数)が登場します。
✅ 正しくは、逆数なのだから倍率も逆向きです。インピーダンスが α² 倍になる向きなら、アドミタンスは 1/α² 倍の向きになる。「逆数のものは、倍率も引っくり返る」と一言添えて覚えておけば、ここでの取り違えは起きません。
過去問ではこう出た
変圧器の計算は、機械科目の中でも出題が安定している単元です。ここから直結する過去問として、次の2問が公開されています。
| 出題年度 | 問番号 |
|---|---|
| 令和1年 | 問8 |
| 令和5年下期 | 問8 |
問番号が両方とも「問8」で並んでいるとおり、機械科目の前半、変圧器の定位置で出題されています。
出題のされ方には共通の型があります。等価回路の値がいくつか与えられ、まず一次換算をして、そのうえで電圧降下・電流・損失のどれかを求めるという二段構えです。つまり、一次換算そのものが直接問われるというより、すべての計算の入口として毎回通らされるイメージ。だからこそ、ここでの取りこぼしは致命傷になります。
逆に言えば、換算さえ正確にできれば、その先はオームの法則の世界です。難しいのは最初の一歩だけ——そう考えると、少し気が楽になりませんか。
なお、変圧器の結線がからむ問題(V-V結線など)も同じ機械科目の頻出テーマです。合わせて仕上げておきたい方はV-V結線は2台で三相|0.866と0.577の正体を完全攻略もどうぞ。
よくある質問
Q. 二次側にそろえて計算したら、答えは間違いになりますか?
いいえ、計算そのものは成立します。 一次を二次に換算する場合は、電圧が 1/α 倍、電流が α 倍、インピーダンス類が 1/α² 倍と、すべての向きが引っくり返るだけです。
ただし試験対策としては、一次側に統一することを強くおすすめします。 理由は2つ。ひとつは、参考書も過去問の解説も一次換算で書かれているため、答え合わせのときに混乱しないこと。もうひとつは、本番で「どちらにそろえるか」を毎回考える余地を残さないことです。迷う場面を1つでも減らすのが、独学の鉄則です。
Q. L形等価回路と、簡易等価回路は何が違うのですか?
L形等価回路は、励磁回路を電源のすぐ近く(入口側)に寄せて、二次側の要素を一次に集約したモデルです。これをさらに割り切って、励磁電流を無視してしまうのが簡易等価回路にあたります。
電圧変動率や短絡インピーダンスを求める問題では、励磁電流は負荷電流に比べてごく小さいため、無視しても結果がほとんど変わりません。問題文が「励磁回路(励磁電流)は無視するものとする」と断っていたら、それは簡易版で解いていいという合図です。この一文は必ず読み落とさないようにしてください。
Q. 巻数比αと、電圧比は同じものと考えていいですか?
理想変圧器として扱う限り、同じものと考えて構いません。 巻数比 α = N1 / N2 は、そのまま一次電圧と二次電圧の比 V1 / V2 になります。
厳密には、実際の変圧器には巻線抵抗や漏れリアクタンスによる電圧降下があるため、負荷をかけた状態の端子電圧の比は、巻数比とわずかにズレます。 そのズレを数値で表したものが、まさに電圧変動率です。
とはいえ試験問題では、巻数比が与えられていなくても「一次電圧6600V、二次電圧210V」といった定格値から α を出して進める場面がほとんどです。定格電圧の比を見たら α と読み替える——この反射を持っておくと、問題文を読む速度が上がります。
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