理論空気量は「Cは1、H₂は1/2、空気は100/21倍」の合言葉で5分攻略
電験三種「電力」科目の頻出論点・理論空気量を、魔法の合言葉『Cは1、H₂は1/2、空気は100/21倍』と『燃料→酸素→空気』の一本道5ステップで完全攻略。化学反応式を覚えずに、抽出→翻訳→合算→膨張→逆算の手順だけで確実に得点する解法を解説します。
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この記事で身につくこと
「理論空気量」と聞いて、思わずページを飛ばした経験はありませんか。化学反応式、モル、原子量……高校の化学で挫折した記憶がよみがえって、「ここは捨て問でいいや」と決めてしまう。電力科目でいちばん多い、もったいないパターンです。
でも、安心してください。理論空気量の計算は、化学の問題ではありません。決まった数字を、決まった順番で掛けて足すだけの「単位換算のリレー」です。しかも覚える数字は、たった3つ。
この記事を読み終えると、次のことができるようになります。
| 身につくこと | 具体的には |
|---|---|
| 全体の流れが見える | 「燃料 → 酸素 → 空気」の一本道として計算をイメージできる |
| 3つの数字で解ける | 「Cは1、H₂は1/2、空気は100/21倍」だけで必要な倍率が全部そろう |
| 5ステップで手が動く | 抽出 → 翻訳 → 合算 → 膨張 → 逆算、の順に機械的に処理できる |
| 落とし穴を避けられる | 単位変換忘れ・10⁻³忘れ・最後の逆算忘れ、という3大ミスを封じられる |
化学反応式を書く必要は、一切ありません。そこだけ先に約束しておきます。

暗記フレーズ:Cは1、H₂は1/2、空気は100/21倍
この記事でいちばん大事なのは、この一行です。
Cは1、H₂は1/2、空気は100/21倍
理論空気量の計算に出てくる「掛ける数」は、結局この3つしかありません。
| 合言葉の部分 | 意味すること | 使うステップ |
|---|---|---|
| Cは1 | 炭素1molを燃やすのに、酸素は1mol必要 | Step3(合算) |
| H₂は1/2 | 水素1molを燃やすのに、酸素は1/2mol必要 | Step3(合算) |
| 空気は100/21倍 | 酸素の体積を、空気の体積に割り戻す倍率 | Step5(逆算) |
残りの処理は「12で割る」「2で割る」「22.4×10⁻³を掛ける」という、問題文と関係なく毎回同じことをするだけの作業です。つまり、判断が必要な場面はほとんどない。ここが理論空気量のありがたいところなんです。

そもそも理論空気量とは何か
火力発電所では、ボイラで燃料を燃やして蒸気をつくります。燃やすためには当然、酸素が要る。その酸素をどこから持ってくるかというと、外の空気を押し込むわけです。
このとき、「この燃料を燃やし切るには、いったいどれだけの空気を送り込めばいいのか」を計算したものが理論空気量です。設備でいえば、押込通風機(ファン)でどれだけの空気を吸い込むかという、実務にも直結する数字になります。
「理論」の意味
理論、という言葉がついているのは、過不足なく完全燃焼するちょうどの量という意味です。実際のボイラでは、これより少し多めに空気を入れます(そうしないと燃え残るため)。ただし電験三種の計算問題では、まず理論値を出せることが出発点になります。
求めるのは「酸素」ではなく「空気」
ここが最初の勘所です。燃料が欲しがっているのは酸素ですが、送り込むのは空気です。空気のうち酸素は体積で約21%、残りの約79%は窒素などで、燃焼には寄与しません。
つまり計算の骨格はこうなります。
- 燃料が必要とする酸素の量を求める
- その酸素を含むためには空気がいくら要るかに割り戻す
この2段構えを最初に頭に入れておくと、最後の「100/21倍」が理屈として腑に落ちます。
5ステップの全体マップ
いきなり計算に入る前に、地図を見ておきましょう。理論空気量は、次の5つの工程を上から順に流すだけです。

| Step | 名前 | やること | 単位の変化 |
|---|---|---|---|
| 1 | 抽出 | 燃料中のCとH₂の質量を取り出す | t・kg → g |
| 2 | 翻訳 | 質量を原子量で割ってモル数へ | g → mol |
| 3 | 合算 | 必要な酸素のモル数を求める | mol → mol |
| 4 | 膨張 | 酸素のモル数を体積へ | mol → m³ |
| 5 | 逆算 | 酸素の体積を空気の体積へ | m³ → m³ |
注目してほしいのは、右端の「単位の変化」の列です。5つのステップは全部、単位を1段ずつ乗り換えていく作業になっています。今どの単位にいるのかさえ見失わなければ、迷子になりようがありません。
Step1:抽出 — 単位は絶対にグラム[g]へ

最初にやるのは、燃料の組成(質量パーセント)から、炭素Cと水素H₂の純粋な重さを取り出すことです。
そのとき絶対に守るルールが1つ。単位はグラム[g]に直してから始めること。
たとえば燃料が1トンなら、
この燃料の炭素分が80%なら、炭素の質量は
となります。水素分についても同じように、その割合を掛けるだけです。
超重要ルール:計算のスタートラインは、必ずグラム[g]にそろえる。ここで手を抜くと、以降のステップの桁がすべて狂います。
なぜグラムでなければならないのかは、次のStep2を見れば一発で分かります。
Step2:翻訳 — 重さ[g]を「個数」であるモル数[mol]へ

化学反応は「粒がいくつ結びつくか」で決まります。ですから重さのままでは扱えません。重さを、粒の数(モル数)に翻訳するのがStep2です。
使う式は1本だけです。
| 対象 | 割る数 | 式 |
|---|---|---|
| 炭素 C | 原子量 12 | Cのmol=Cの質量[g] ÷ 12 |
| 水素 H₂ | 分子量 2 | H₂のmol=H₂の質量[g] ÷ 2 |
原子量の単位は[g/mol]です。だからこそ、Step1で質量をグラムにそろえておく必要があったわけですね。ここがつながると、単位変換が「面倒な決まり事」ではなく「必然」に見えてきます。
そして実務的にありがたいのは、割る数が問題ごとに変わらないこと。炭素なら常に12、水素分子なら常に2。覚えるのは2つだけです。
Step3:合算 — 合言葉で必要な酸素量をあぶり出す

ここで、いよいよ合言葉の前半が発動します。
なぜこの倍率になるのか、理屈だけ確認しておきましょう。
炭素に酸素が1mol必要な理由
炭素が燃えると二酸化炭素になります。
Cが1個に対して、O₂が1セット。だから Cは1倍です。
水素に酸素が1/2molで足りる理由
水素が燃えるとできるのは水です。
水H₂Oには酸素が1個しか入っていません。ですからO₂1セットで、H₂を2個分まかなえてしまう。H₂ 1molあたりに直せば、酸素はその半分の 1/2倍というわけです。
「水素のほうが酸素をたくさん食いそう」という直感とは逆なので、ここは意識してひっくり返しておいてください。
大事なのは、本番でこの化学反応式を書く必要はないということ。理由が分かったら、あとは「Cは1、H₂は1/2」を掛けて足すだけの作業に落とし込んでしまってOKです。
Step4:膨張 — モル数を体積[m³]へスケールアップ

酸素が何mol要るかは分かりました。ただ、問題が聞いてくるのは「量」=体積です。そこで、モル数を体積に変換します。
ここで使うのが、気体の絶対ルール。標準状態では、どんな気体も1molあたり22.4Lを占めます。
ところが電験で答える単位は立方メートル[m³]です。1L=10⁻³m³ですから、
したがって酸素の体積は、
ミスが多発するポイント:22.4を掛けただけで満足すると、答えは[L]のままです。10⁻³を掛け忘れると、答えが1000倍になります。桁が3つずれた選択肢は、たいてい用意されています。
熱の流れそのものの考え方があやふやだと感じる人は、先に〈エンタルピー vs エントロピー|9割が混同する熱力学の壁を越える〉を読んでおくと、火力の計算全体が見通しやすくなります。
Step5:逆算 — 酸素の世界から空気の世界へ

最後の仕上げです。ここで合言葉の後半、「空気は100/21倍」が登場します。
空気の組成は、酸素が約21%、窒素などそれ以外が約79%。いま手元にあるのは「酸素の体積」ですから、この酸素を含むために必要な空気全体の体積へ割り戻してやります。
100を21で割ると約4.76。「約4.76倍」と丸ごと覚えてしまってもかまいません。ただし試験では「酸素の割合は21%とする」のように条件が与えられることが多いので、4.76を暗記する必要はありません。
それよりも怖いのは、21/100と逆に計算してしまうミスです。空気は酸素より多いのですから、答えは必ず酸素の体積より大きくなる。ここだけ押さえておけば、向きを間違えても計算の途中で気づけます。
一筆書きで確認する全体フロー
ここまでの5ステップを、1本の線につなげてみます。
この矢印の並びを、頭の中のホワイトボードに描けるようになれば完成です。応用問題が出ても、聞かれているのがこの一本道の「どこ」なのかを探せば済みます。
たとえば「理論酸素量を求めよ」と言われたら3つ目の矢印まで、「必要な空気を求めよ」なら最後まで、というだけの違いです。
例題:炭素12kgを燃やすのに必要な空気は?
実際に手を動かしてみましょう。
問題:ある燃料に、純粋な炭素Cが12kg含まれている(燃料はすべて炭素とし、H₂は含まれないものとする)。この炭素を完全燃焼させるために必要な理論空気量[m³]を求めよ。原子量C=12、空気中の酸素の割合は21%とする。
いきなり答えを見ないで、5ステップに沿って自分で書き出してみてください。目安は5分です。
解答
| Step | 処理 | 計算 |
|---|---|---|
| ①抽出 | gへ換算 | 12 kg = 12,000 g |
| ②翻訳 | モル数へ | 12,000 ÷ 12 = 1,000 mol |
| ③合算 | 必要なO₂ | 1,000 × 1 = 1,000 mol |
| ④膨張 | 体積へ | 1,000 × 22.4×10⁻³ = 22.4 m³ |
| ⑤逆算 | 空気量へ | 22.4 × (100/21) ≒ 106.6 m³ |
答えは約106.6 m³です。
1つひとつの計算は、電卓があれば中学生でもできる四則演算にすぎません。難しいのは計算そのものではなく、「いま何の単位から何の単位へ移っているのか」を見失わないこと。それだけです。
まとめ
理論空気量は、複雑そうに見えて、実は「解体して、モルにして、酸素を出して、空気に膨らませる」という一本道でしかありません。最後に要点を確認しておきましょう。
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| 暗記フレーズ | Cは1、H₂は1/2、空気は100/21倍 |
| 計算の起点 | 必ずグラム[g]に変換してから始める |
| 割る数 | C=12、H₂=2(毎回同じ) |
| 体積化 | 22.4×10⁻³を掛ける(10⁻³の掛け忘れ注意) |
| 全体像 | 燃料 → O₂ → 空気 の順に進む |
化学が苦手だからと敬遠していた単元が、たった3つの数字と5つの手順で得点源に変わります。1回で完璧にできなくても、まったく気にしないでください。この流れを3回なぞれば、手が勝手に動くようになります。
なお、燃焼の話は理論空気量だけで終わりません。燃やしたあとに何が出てくるか、それをどう抑えるかは〈火力発電の公害対策|「発生は燃料・燃焼、排出は装置で止める」で2段攻略〉でまとめています。燃焼計算とセットで押さえると、火力分野の得点が一段安定します。
⚠ ここを間違える人が多い
理論空気量で失点する人の原因は、ほぼ決まっています。実力ではなく「手順の抜け」なので、知っているだけで防げます。
❌ トンやkgのまま割り算を始めてしまう
❌ 燃料150tと書いてあるので、150をそのまま12で割った。 ✅ 原子量は[g/mol]の数値です。tのままだと、モル数が100万分の1になってしまいます。gに直してから割る。問題文に「t/h」のように時間あたりで書かれている場合は、質量の単位換算と時間の換算を別々に、両方きちんと処理してください。片方だけ処理すると、それらしい数値になってしまうのが厄介なところです。
❌ 水素のモル数を、そのまま酸素のモル数として足す
❌ Cが100mol、H₂が60molだから、酸素は160mol。 ✅ 水素に必要な酸素は半分です。正しくは 100×1 + 60×0.5 = 130 mol。合言葉の「H₂は1/2」は、ここを守るためだけにあると言ってもいいくらいです。
❌ 酸素の体積を出したところで答えにしてしまう
❌ 22.4 m³と出たので、選択肢から22.4を選んだ。 ✅ 聞かれているのは理論空気量です。最後に100/21倍して、106.6 m³にして初めて完成します。選択肢には「逆算前の値」がわざと混ぜてあることが多いので、答えを書く前に「これは酸素の話か、空気の話か」を一度だけ確認する習慣をつけてください。
過去問ではこう出た
理論空気量を含む火力の燃焼計算は、電力科目の問15(B問題)という定位置で繰り返し出題されています。
| 出題年度 | 問番号 |
|---|---|
| 令和5年度 上期 | 問15 |
| 令和6年度 下期 | 問15 |
| 令和7年度 下期 | 問15 |
B問題ですから、(a)(b)の2問構成で配点も大きい。しかも問われ方はほぼ固定で、燃料の消費量や発熱量から効率を求めさせたうえで、必要な空気量や燃焼で生じる気体の量を計算させる、という流れが定番です。
つまりこの単元は、一度手順を身につければ、そのまま複数年ぶんの得点になるタイプの投資効率が高い項目です。効率の計算とセットで問われることも多いので、〈捨てた熱でもう一度発電!コンバインドサイクルの効率62%の正体〉で熱効率の考え方も並行して確認しておくと、B問題まるごと取り切れる可能性が上がります。
よくある質問
Q. 化学反応式は本当に覚えなくていいのですか?
覚えなくても解けます。必要なのは「Cは1、H₂は1/2」という倍率だけで、その根拠が反応式にあるというだけの話です。
ただし、理由を一度だけ確認しておくことはおすすめします。丸暗記だと本番の緊張で「1/2はCのほうだったか?」と迷いますが、「水はH₂Oで酸素が1個だから、O₂ひとつでH₂が2個分」と理解していれば、その場で作り直せるからです。暗記の保険として理屈を持っておく、という位置づけで十分です。
Q. 22.4という数字は、必ず使っていいのですか?
標準状態が前提であれば使えます。標準状態とは、気体1molが22.4Lを占める状態のことです。電験三種の問題では、この条件で出題されるのが通例です。
注意したいのは単位のほうで、22.4はリットル[L]での値だという点です。答えを[m³]で求められている以上、必ず10⁻³を掛けます。「22.4×10⁻³」をひとかたまりの数字として覚えてしまうのが、いちばん事故が少ない方法です。
Q. 実際のボイラでも、この理論空気量ちょうどを送り込むのですか?
いいえ、実際にはこれより多めの空気を送ります。理論空気量は「過不足なくちょうど燃え切る量」という計算上の値で、現実の炉の中では燃料と空気が完璧には混ざらないため、そのままの量だと燃え残りが出てしまうからです。
とはいえ、実際に何倍にするかを問う前に、まずは理論値を正しく出せることが土台になります。この記事の5ステップが、その土台にあたる部分です。
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