捨てた熱でもう一度発電!コンバインドサイクルの効率62%の正体
電験三種「電力」科目で必出のコンバインドサイクル発電を完全攻略。ブレイトン+ランキンの二段リレーで効率55〜62%を叩き出す仕組みと、総合効率式 η=ηg+ηs(1-ηg) の導出を、エネルギーの流れの図解で直感的に理解できる1記事です。
🎥 動画でも解説しています > YouTubeで開く
この記事で身につくこと
「コンバインドサイクル発電」と聞いて、まず身構えてしまう方は多いと思います。カタカナが長い。ブレイトンだのランキンだのと知らない名前が出てくる。そして極めつけが、あの効率の式です。
似たようなギリシャ文字が並んでいて、初見だと呪文にしか見えません。私も初めて見たときは「これを暗記するのか……」とうんざりしました。
ですが、安心してください。この式は、暗記するものではありません。 意味が分かれば、試験会場でその場で作れます。しかも作るのに必要なのは、小学校の算数レベルの足し算と掛け算だけです。
この記事を読み終えると、次のことができるようになります。
| ゴール | 到達点 |
|---|---|
| 仕組みの説明 | 「燃料1回で発電2回」という一文で説明できる |
| 機器の役割 | 圧縮機・ガスタービン・排熱回収ボイラ・蒸気タービン・復水器の順番と役目が言える |
| 効率式の導出 | η=ηg+ηs(1−ηg) を、覚えていなくてもその場で導ける |
| 数値の相場 | 汽力発電が約40%台、コンバインドが55〜62%と即答できる |
| 引っかけ対策 | 「排ガスと蒸気の流路」「所内率」「冷却水量」の3大トラップを回避できる |
苦手そうに見える単元ほど、実は覚えることが少ない。コンバインドサイクルはまさにその代表です。
暗記フレーズ:ガスで発電、排熱で蒸気、二段で高効率
この単元は、この一文にすべてが詰まっています。
ガスで発電、排熱で蒸気、二段で高効率
分解すると、こうなります。
| フレーズ | 対応する内容 |
|---|---|
| ガスで発電 | 燃焼ガスでガスタービンを回す(一次発電・効率 ηg) |
| 排熱で蒸気 | 約500〜600℃の排ガスで排熱回収ボイラを動かし、蒸気を作る |
| 二段で高効率 | その蒸気で蒸気タービンを回して二次発電(効率 ηs)。合計55〜62% |

普通の発電所は、タービンを回し終えた熱を「もう用済み」として捨ててしまいます。コンバインドサイクルは、その捨てるはずだった熱をつかまえて、もう一度働かせる。ケチといえばケチですが、そのケチさが20ポイント以上の効率差を生んでいるわけです。
ステップ1:全体像をつかむ — 燃料を入れるのは1回だけ
細かい機器に入る前に、全体の流れを一度だけ通しで見てしまいましょう。ここが頭に入っていると、あとの話が全部「あの図のどの部分か」で整理できます。

流れはこうです。空気を圧縮機で押し縮め、燃焼器で燃料と一緒に燃やす。できた約600℃の燃焼ガスがガスタービンを回して、まず一度目の発電。タービンを出た排ガスはまだ熱いので、排熱回収ボイラに送って水を蒸気に変える。その蒸気が蒸気タービンを回して、二度目の発電。最後は復水器で蒸気を水に戻し、またボイラへ帰っていきます。
ここで押さえたいのは、燃料を燃やしているのは最初の1回だけという点です。二度目の発電のために燃料を足したりはしません。あくまで、一度目で余った熱を使い回しているだけ。だから効率が上がるのです。
ステップ2:空気圧縮機(コンプレッサ)— 燃やす前の下ごしらえ

最初の機器は空気圧縮機です。吸い込んだ空気をぎゅっと高圧に圧縮し、燃焼器へ送り込む準備をします。
試験ではここが狙われる
地味な機器に見えますが、試験ではしっかり出ます。ポイントは一つだけです。
ガスタービンが生み出した動力のうち、大部分をこの空気圧縮機が食べてしまう。
タービンが回して得た力を、そのまま圧縮機の駆動に回している、というイメージです。「タービンの出力=そのまま発電量」ではない、というところが引っかけどころになります。
なお、燃焼に必要な空気の量そのものを問う問題も電力科目では頻出です。そちらが手薄な方は、先に理論空気量は「Cは1、H₂は1/2、空気は100/21倍」の合言葉で5分攻略を読んでおくと、燃焼まわりの話が一気につながります。
ステップ3:ガスタービン(一次発電・効率 ηg)

圧縮された空気に燃料を吹き込んで燃やすと、高温高圧のガスができます。これがガスタービンを勢いよく回し、発電機を駆動する。ここが一次発電で、このときの効率が ηg です。
普通のガスタービン発電なら、話はここで終わりです。回し終えた排ガスは煙突から出ていきます。ところが、この排ガスの温度がまだ約600℃もある。給湯どころか工場の熱源にもなる温度です。これをそのまま空に逃がすのは、いかにももったいない。
そこで「もう一段いこう」と発想したのが、コンバインドサイクルというわけです。
ステップ4:排熱回収ボイラ(HRSG)— この単元の主役

コンバインドサイクルで一番大事な設備が、この排熱回収ボイラです。英語の頭文字をとって HRSG とも呼ばれます。特徴を3つにまとめます。
| 特徴 | 内容 |
|---|---|
| 熱源 | ガスタービンの排ガス(約600℃) |
| 燃料の追加 | ゼロ。すでにある熱だけで蒸気を作る |
| 位置づけ | ランキンサイクルにおける「ボイラ」に相当する |
普通のボイラは、燃料を燃やして水を沸かします。HRSG は燃料を一切足しません。燃やし終わった後の熱風を通すだけで蒸気ができる。言ってみれば「無料の熱源」です。ここが、コンバインドサイクルが高効率になる仕掛けの核心です。
ステップ5:蒸気タービンと復水器(二次発電・効率 ηs)

HRSG で作られた蒸気は、蒸気タービンへ送られてもう一度発電します。このときの効率が ηs です。仕事を終えた蒸気は復水器で冷やされて水に戻り、またボイラへ。
お気づきのとおり、この後半部分は汽力発電のランキンサイクルとまったく同じ構成です。つまり、コンバインドサイクルの後半は、すでに学習済みの内容なのです。ランキンサイクルの流れがあやふやな方は、先に汽力発電の各効率を「エネルギーのバケツリレー」で完全攻略で復習しておくと、この先の効率式が驚くほど素直に入ってきます。
ステップ6:効率式を絵で導く — まずはガスタービン段だけ
いよいよ本丸の効率式です。ただし、いきなり式は書きません。エネルギーが何割どこへ行ったかを追うだけで、式は勝手に出てきます。

入力エネルギー(燃料)を とします。ガスタービンの効率が なら、電気になる分はこれだけです。
では、残りはどうなったか。全体が で、そのうち が電気になったのですから、残っているのは差し引きです。
この という係数が、この単元の主人公です。「電気になれなかった残りカスの割合」 だと思ってください。普通のガスタービン発電なら、これが丸ごと捨てられて終わりです。
ステップ7:残りカスに、もう一度効率を掛ける

ここからがコンバインドサイクルの本領です。捨てるはずだった を、そっくり蒸気タービン側へ渡します。蒸気タービンの効率が ですから、そこから取り出せる電力は、
やっていることは、残りカスに、もう一度効率を掛けているだけです。難しい理屈は何もありません。「余った分に、次の人の取り分の割合を掛ける」。これだけです。
そして、ここでもさらに残ったものが、最終的に捨てられる排熱になります。
ステップ8:総合効率式の完成
材料はそろいました。あとは「出力の合計 ÷ 入力」を計算するだけです。
分子・分母に共通して がいるので、きれいに約分できます。
冒頭で呪文に見えていた式が、たった3行で出てきました。しかも各項の意味がはっきりしています。
| 項 | 意味 |
|---|---|
| ガスタービン単体の効率(一次発電の取り分) | |
| 使い切れなかった排熱から回収できた分(二次発電の取り分) |
丸暗記していた式が、意味のある足し算に変わった瞬間です。試験本番で式を忘れても、「一次の取り分+残りカス×次の効率」と思い出せば、その場で書けます。
なお、蒸気側で「熱がどれだけ仕事に変わったか」を厳密に追う場面では、エンタルピーとエントロピーの区別が必要になります。この2語が毎回ごちゃつくという方は、エンタルピー vs エントロピー|9割が混同する熱力学の壁を越えるで整理しておくと、蒸気サイクル全体の見通しがよくなります。
ステップ9:ηg が上がると、蒸気タービンの出番は減る?
少し考える問題です。ガスタービンの性能が上がって が大きくなったら、蒸気タービン側はどうなるでしょうか。
が大きくなれば は小さくなります。つまり、蒸気タービンに回ってくる熱そのものが減るので、二次発電の寄与は小さくなります。
| ケース | 蒸気タービンの寄与 | 総合効率 η |
|---|---|---|
| ηg が普通 | 大きい | 単独ガスタービンより高い |
| ηg が高い | 小さくなる | それでも単独ガスタービンより高い |
大事なのは表の右列です。 は、 が 1 にならない限り必ずプラスの値になります。つまり 総合効率は、どんな場合でも単独のガスタービンを上回る。これが二段利用の強さです。ガスタービンがどれだけ優秀になっても排熱はゼロにならないので、追加で取り出せる分は必ず残る、というわけです。
ステップ10:従来型との比較と、実社会での活躍
従来の汽力発電と並べると、違いがはっきりします。
| 比較項目 | 従来型(汽力発電) | コンバインドサイクル |
|---|---|---|
| 段数 | 単段(一次発電のみ) | 複合・二段 |
| 熱源 | 燃料の燃焼のみ | 燃料の燃焼 + 排熱の再利用 |
| 総合効率 | 約40%台 | 55〜62% |
| 排熱の扱い | 復水器で海に捨てる | 排熱回収ボイラで使い切る |
効率で20ポイント以上の差。発電所の規模で考えれば、これは途方もない燃料の節約です。
実社会での強み
| 強み | 内容 |
|---|---|
| 高効率・省エネ | 1回の燃料から2回発電し、エネルギーを最大限に引き出す |
| 環境負荷が小さい | 効率が高いぶん、発電量あたりのCO₂排出量が少ない |
| 機動性が高い | 起動・停止が速く、需要変動への調整能力が高い |
この3つ目は実務上とても重要です。GTCC(Gas Turbine Combined Cycle) と呼ばれ、電力需要の上下が激しい都市部近郊の発電所で主力として使われています。「効率がいいから」だけでなく「立ち上がりが速いから」選ばれている、という点も一緒に覚えておくと、記述の正誤判定で迷いません。
まとめ
コンバインドサイクル発電の要点を、最後にもう一度並べます。
| 論点 | 覚えること |
|---|---|
| 仕組み | 燃料1回で発電2回。ブレイトン(ガス)+ランキン(蒸気)のリレー |
| 排ガス温度 | 約500〜600℃。これを捨てないのが最大の工夫 |
| 主役の設備 | 排熱回収ボイラ(HRSG)。燃料の追加ゼロで蒸気を作る |
| 効率の記号 | ηg=一次(ガスタービン)、ηs=二次(蒸気タービン) |
| 総合効率式 | η = ηg + ηs(1 − ηg) |
| 効率の相場 | 汽力 約40%台 ↔ コンバインド 55〜62% |
| 圧縮機の注意 | ガスタービン消費動力の大部分を占める |
そして、頭に焼き付けてほしい一文は、やはりこれです。
捨てた熱で、もう一度発電。
この一文さえ残っていれば、式は現場で作れます。
⚠ ここを間違える人が多い
この単元は「なんとなくのイメージ」で選択肢を読むと、きれいに引っかかります。よく出る勘違いを3つ挙げます。
❌ 排ガスが蒸気タービンを回している気がする
図をざっと眺めていると、燃焼ガスがそのまま右へ流れて蒸気タービンまで回している、という誤ったイメージができあがりがちです。
✅ 正しくは、排ガスと蒸気は別々の通り道です。ガスタービンを出た排ガスは、排熱回収ボイラの中を通って水に熱を渡し、そこで役目を終えます。蒸気タービンを回すのは、あくまでその熱で作られた蒸気のほうです。「熱は渡すが、ガス自体は蒸気タービンへ行かない」と押さえてください。
❌ 設備が2種類あるから所内率も高そう
ガスタービンと蒸気タービンが両方あるのだから、所内で使う電力も汽力より多いはず——という直感は外れです。
✅ 実際は逆で、所内率は汽力発電より小さくなります。 コンバインドサイクルは補機の数が少なくて済むためです。汽力発電のような大型の給水ポンプや重油設備を抱えていない、と考えると納得しやすいはずです。
❌ 複合設備なのだから冷却水も多いはず
これも「設備が多い=何もかも多い」という思い込みから来る誤りです。
✅ 正しくは、単位出力あたりの冷却水量は汽力より少なくなります。 理由は2つ。ガスタービン側は復水器を必要としないこと、そして熱効率そのものが高く、捨てる熱の量が少ないことです。冷やす必要があるのは蒸気側だけ、と思い出せば迷いません。
この3つは、いずれも「イメージ先行」でやられるパターンです。図の中の流れの向きとどの設備が何個必要かを意識して選択肢を読むだけで、正答率がぐっと上がります。
過去問ではこう出た
コンバインドサイクル発電は、電力科目で安定して出題される定番テーマです。当チャンネルの動画と電験ジムで扱っている範囲だけでも、次の4問が該当します。
| 年度 | 問番号 |
|---|---|
| 令和1年 | 問5 |
| 令和4年 下期 | 問3 |
| 令和5年 上期 | 問2 |
| 令和6年 上期 | 問3 |
数年おきではなく、ほぼ毎年どこかの回で顔を出すレベルの頻度です。出題の形は大きく2通りに分かれます。
1つは、仕組みや特徴の正誤を問う文章題。ここでは前節で挙げた「排ガスと蒸気の流路」「所内率」「冷却水量」といった、イメージで判断すると外す論点が狙われます。もう1つは、 と の数値が与えられて総合効率を求めさせる計算題。こちらは式さえ導ければ電卓を叩くだけの得点源です。
文章題は本記事の「間違える人が多い」節、計算題は効率式の導出。この2本柱を押さえておけば、どちらの形で出ても対応できます。
よくある質問
Q. 総合効率の式は、なぜ ηg + ηs の単純な足し算ではないのですか?
と が、別々のものを分母にした割合だからです。 は「入力した燃料全体のうち何割か」ですが、 は「蒸気タービンに入ってきた熱のうち何割か」を表しています。基準がそろっていないものは、そのままでは足せません。
そこで、蒸気タービンに入ってくる熱が燃料全体の何割かを表す を掛けて、基準を「燃料全体」にそろえてやる。これが という形の意味です。単位をそろえてから足す、という当たり前の話にすぎません。
Q. 排熱回収ボイラで、燃料を足して蒸気をもっと作ってはいけないのですか?
技術的には、燃料を追加する方式(補助燃焼)も存在します。ただし電験三種の学習範囲としては、排熱回収ボイラ=燃料の追加なしと割り切って覚えるのが安全です。
理由は単純で、「燃料ゼロで蒸気が作れる」という点こそがコンバインドサイクルの効率が高い理由そのものだからです。試験でこの設備が問われるときも、そこが論点になります。まずは基本形を、きれいな状態で頭に入れてください。
Q. ηg と ηs、どちらが ガスでどちらが蒸気か、いつも混乱します
添え字を英単語の頭文字として読んでしまうのが一番確実です。
| 記号 | 読み替え | 担当 |
|---|---|---|
| g as(ガス) | ガスタービン・一次発電 | |
| s team(スチーム) | 蒸気タービン・二次発電 |
そのうえで、式の中で単独で置かれているほうが先に働く 、と紐づけておくと万全です。順番どおり、ガスが先で蒸気が後。実際の設備の流れと式の並びが一致しているので、図さえ思い浮かべば取り違えることはありません。
Webの何倍も覚えやすい
紙のフルラミネート加工の
暗記シートがあります
実績2,000部突破。
お風呂や電車のスキマ時間でサクッと勉強できます。
付属の練習用紙で無限に練習できます♪

🛒関連教材ショーケース
学習の効率を上げる、紙の本格教材ラインナップ。


この記事を読み終えたら、進捗を記録しましょう




