汽力発電の各効率を「エネルギーのバケツリレー」で完全攻略
電験三種「電力」科目で頻出の汽力発電・ランキンサイクルの各効率を、ボイラ→タービン→発電機→発電端→送電端の5段階バケツリレーで完全整理。複雑な公式も『効率=出力÷入力』の大原則と単位の相殺マジックで一気に攻略できる、計算問題対策の決定版です。
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この記事で身につくこと
電験三種「電力」科目の汽力発電で、毎年のように出題されるのが ランキンサイクルの各効率。 ボイラ効率・タービン効率・発電機効率・発電端熱効率・送電端効率…と種類が多く、添字も ηB・ηt・ηT・ηG・ηP・ηS とゴチャゴチャしていて、ここで挫折する受験生が後を絶ちません。
ですが安心してください。本質は エネルギーが燃料 → 蒸気 → 回転 → 電気 → 送電 へとバケツリレーで渡っていくだけ。
本記事を読み終えたら、
- 5つの効率を 黄金フレーズ1本 で順番に思い出せる
- 公式に圧倒されず、どこの効率を聞かれているか を一瞬で判別できる
- 「タービン効率」と「タービン室効率」の引っかけを 確実に見抜ける
ようになります。
暗記フレーズ:燃料→蒸気→回転→電気→送電
燃料 → 蒸気 → 回転 → 電気 → 送電
この5段階がバケツリレーの順番。そして全体効率は、
ηP = ηB × ηT × ηG(さらに送電損失を掛けると ηS)
と、ただの掛け算 で求まります。これさえ覚えていれば、あとは「どの場所の効率を聞かれているか」を式に当てはめるだけです。
すべての公式に通じるたった1つの大原則
ηB、ηt、ηT…と添字が変わっても、本質はすべて同じ。
η = 出力 ÷ 入力
これだけです。電験三種に登場する変数 Z、h、P などに圧倒される必要はありません。分母が「使ったエネルギー(入力)」、分子が「目的のエネルギーとして取り出せた量(出力)」 を表しているだけ。
何を代入するか迷ったら、まずこの大原則に戻ってきてください。
① ボイラ効率 ηB:燃料の熱をどれだけ蒸気に変えられたか
ボイラに 燃料発熱量 BH を投入して、ボイラ水の吸熱量 Z(hs − hw) が出てくる。
ηB = Z(hs − hw) / BH
- 入力:燃料発熱量 BH
- 出力:ボイラ水が吸収して蒸気になった熱量 Z × Δh
ボイラの性能そのものを表す指標なので、添字も「Boiler の B」と覚えれば十分です。
② タービン効率 ηt:蒸気の熱を回転の力へ
考え方はボイラ効率とまったく同じ。消費熱量 Z(hs − ht) が入り、機械的出力 Pt が出てくる。
ηt = 3600 Pt / Z(hs − ht)
ここで「なぜ 3600 を掛けるのか?」が最初の関門です。
- 分母 Z(hs − ht) は 1時間あたり の熱量 [kJ/h]
- 分子 Pt [kW] は 1秒あたり のエネルギー [kJ/s]
単位が揃わないので、1時間 = 3600秒 を分子に掛けて [kJ/h] に統一しているだけ。
タービンのように出力が大きい設備は、秒単位だと数値が大きくなりすぎるため「毎時」でまとめるのが慣例です。電力量 [kWh] の計算と同じ発想ですね。
③ タービン効率 ηt と タービン室効率 ηT ── 引っかけ注意
ここが 電験三種で最頻出の引っかけポイント です。
| 効率 | 分母(消費熱量) | 範囲に含む設備 |
|---|---|---|
| タービン効率 ηt(小文字 t) | hs − ht | タービンのみ |
| タービン室効率 ηT(大文字 T) | hs − hw | タービン + 復水器 |
「タービン室」という言葉が出たら、復水器まで含む と即判断してください。 ランキンサイクルではタービンの次に復水器が来るので、計算のスタート地点(分母の引き算の基準点)が 復水器出口の給水 hw まで下がる のです。
1文字の違いで分母がガラッと変わる。試験本番では問題文の「室」の有無を必ず確認!
④ 発電機効率 ηG:機械の回転を電気エネルギーに
機械的出力 Pt を投入して、発電端電力 PG が出てくる。
ηG = PG / Pt
ここは 電力 [kW] ÷ 電力 [kW] で単位がそろっているので、3600 などの換算は不要。式もシンプルです。
実際の発電機効率は 95〜99% と非常に高く、汽力発電の中で 最もロスが少ない工程 です。
⑤ 発電端熱効率 ηP:発電所という巨大な箱の総合力
ここで「バケツリレーの結合」が起こります。燃料発熱量 BH を入れて、発電端電力 3600 PG を取り出す。
ηP = 3600 PG / BH = ηB × ηT × ηG
ボイラ・タービン室・発電機の3つの効率を 掛け算するだけ で、発電所内部の最終スコアが出る。
「燃料からどれだけ電気を作れたか」を表す、発電所の総合力指標 です。
⑥ 送電端効率 ηS:最終的に街へ届くエネルギー
発電所で作った電気も、送電線の途中で一部が失われます。送電損失率を L、送電損失を PL とすると、
ηS = ηP × (1 − L)
ηS = 3600 (PG − PL) / BH
電験三種で 最終的に問われるのは、たいていこの ηS。問題文に「送電端」とあったら、ηP からさらに送電損失を引く一段階を忘れずに。
なぜ掛け算で全体効率が出るのか ── 単位の相殺マジック
「効率を掛け算するだけで全体効率になる」のは直感に反するかもしれません。種明かしは 約分 です。
ηB × ηT × ηG
= (蒸気の熱 / 燃料の熱) × (機械の力 / 蒸気の熱) × (電気の力 / 機械の力)
= 電気の力 / 燃料の熱
= ηP
中間で作られた「蒸気の熱」と「機械の回転」は、次の工程の 入力として消費される ため、数式上できれいに相殺されます。これがバケツリレーの正体。「効率」という共通単位を介すことで、工程をまたいだ掛け算が成立するわけです。
効率を下げる最大の要因は「復水器の排熱」
汽力発電の総合効率は、最新鋭の超々臨界圧プラントでも 約40〜45%程度 にとどまります。その最大の犯人が 復水器で捨てている熱 です。
復水器が単位時間あたりに奪う熱量 W は、
W = Q × c × ρ × ΔT
(Q:冷却水流量、c:比熱、ρ:密度、ΔT:温度上昇)
これだけ大きな熱を海や川に捨てているからこそ、ηP は理論上の上限から大きく下回ります。
「だったら復水器なんて無くせばいい?」── ところがそうもいきません。
復水器は蒸気を水に戻す過程で 凝縮による吸引力(≒巨大なポンプ作用) を生み出しており、これが ランキンサイクルの水循環を支える命綱 になっています。エネルギーを失う代償に、サイクルを回し続ける役割を担っているわけです。
保存版:ランキンサイクル熱効率マスターマトリクス
最後に、5つの効率を1枚に整理します。試験直前の総ざらいに使ってください。
| 場所 | 効率 | 入力 | 出力 | 公式 |
|---|---|---|---|---|
| ボイラ | ηB | 燃料発熱量 BH | ボイラ水の吸熱量 | Z(hs − hw) / BH |
| タービン室 | ηT | 消費熱量 Z(hs − hw) | 機械的出力 3600 Pt | 3600 Pt / Z(hs − hw) |
| 発電機 | ηG | 機械的出力 Pt | 発電端電力 PG | PG / Pt |
| 発電端 | ηP | 燃料発熱量 BH | 発電端電力 3600 PG | 3600 PG / BH = ηB×ηT×ηG |
| 送電端 | ηS | 燃料発熱量 BH | 送電端電力 | ηP × (1 − L) |
迷ったらこの表に戻ってきてください。すべては 「どの場所か」「何のエネルギーへの変換か」 に帰着します。η の添字は区別のためのラベルにすぎないので、暗記対象ではありません。
まとめ
- 汽力発電の効率は 「燃料 → 蒸気 → 回転 → 電気 → 送電」のバケツリレー
- 大原則は η = 出力 ÷ 入力、迷ったらここに戻る
- 発電端熱効率は ηP = ηB × ηT × ηG、送電端は ηS = ηP × (1 − L)
- タービン効率 ηt と タービン室効率 ηT は復水器を含むかどうかで分母が変わる ── 引っかけ注意
- 効率を下げる最大要因は 復水器の排熱 だが、復水器はサイクル循環の命綱でもある
暗記フレーズ:燃料 → 蒸気 → 回転 → 電気 → 送電
このリレーが頭に入っていれば、汽力発電の計算問題で添字に振り回されることはなくなります。電力科目の得点源にしていきましょう。
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