エンタルピー vs エントロピー|9割が混同する熱力学の壁を越える
電験三種「電力」科目で頻出のエンタルピーとエントロピー。名前が似ていて毎回混乱する2つの指標を、『hはどれだけ仕事できるか、sはどれだけ理想からズレているか』という暗記フレーズで完全に切り分けます。ランキンサイクルを『1kgの蒸気の旅』として捉え、計算問題の本質まで一気に攻略する1記事です。
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この記事で身につくこと
電験三種「電力」科目・火力発電分野で立ちはだかる最大の壁、それが エンタルピーとエントロピー です。 名前が似すぎていて、ここで毎回混乱する受験生は本当に多い。でも安心してください。両者は 全くの別物、今日で完全に切り分けます。
本記事を読み終えたら、
- エンタルピー H・比エンタルピー h・エントロピー s の3つを即答で区別できる
- ランキンサイクルの計算問題で「何の差を取れば仕事が出るか」が分かる
- 「理想からのズレ」をエントロピーで評価する意味が腹落ちする
ようになります。
暗記フレーズ:h は仕事量、s は理想からのズレ
エンタルピー(h)はどれだけ仕事できるか、エントロピー(s)はどれだけ理想からズレているか
これだけ覚えれば、もう2度と混同しません。 ゴロで覚えるなら、エンタルピーは「タルタルソースのエネルギー」(タルが多いほどエネルギーも多い)、エントロピーは「とろとろしてんじゃねぇ!」(乱雑さ・忙しく動き回るさま)。 覚えたもん勝ちです。語呂でも何でも使って、頭に刻みましょう。
エンタルピー H = 物質が持つ熱エネルギーの総量
まずはエンタルピー、記号 H。
H = U + pV
- U:内部エネルギー(分子の熱運動エネルギー)
- pV:押し退け仕事(圧力 × 体積)
- 単位:[J]
エンタルピーは「物質が持つ熱エネルギーの総量」を表します。 ボイラで蒸気が高温高圧になればなるほど、この H は大きくなる。ランキンサイクルでは「蒸気がどれだけエネルギーを持っているか」を根本的に表す量 と覚えてください。
イメージは、エビフライに乗っかったタルタルソースの量。タルタル(熱エネルギー)が多ければ多いほど、後でできる仕事も大きい。
試験で実際に使うのは「比エンタルピー h」(1kgあたり)
H をそのまま使うことはほぼなく、電験で実際に登場するのは 1kgあたりの比エンタルピー h です。
h = H / m 単位:[kJ/kg]
なぜ「1kgあたり」に割るのか? 全体のエネルギー量 H だけ示されても、それが大きいのか小さいのかが分からないからです。同じエネルギー量でも、片方は1kg、もう片方は1000kgなら、価値は全く違いますよね。基準(1kg)を揃えることで初めて比較できる ようになります。
⚠️ 「比」がついたら 1kg あたり ── これは熱力学全般で超重要な感覚。
蒸気を扱う実務・試験では、この h が 最重要指標 です。
エントロピー s = 乱雑さ・不可逆性の度合い
続いてエントロピー、記号 s。エンタルピーと 全くの別物 です。
Δs = ΔQ / T 単位:[kJ/(kg・K)]
エントロピーは「乱雑さ」と「不可逆性の度合い」を示します。 低エントロピー(秩序が保たれた状態)から、熱の出入りが行われると、高エントロピー(無秩序)の状態へと進む。システム内の乱雑さ、つまり不可逆性の増加を表す指標 です。
ランキンサイクルでは「蒸気の状態変化の方向性」を示す指標として使われます。 ここで重要なのが、
※ エンタルピー(エネルギー量)とは全く別物。混同しないこと。
エンタルピーは「エネルギー量」、エントロピーは「乱雑さ」。名前は似ていても、物理的意味は完全に別物です。
3つの指標を比較マトリクスで完全に切り分ける
混同しやすい3つの指標を、ここで一気に整理します。
| 指標 | 意味 | 式 | 単位 | 用途 |
|---|---|---|---|---|
| エンタルピー H | 物質が持つエネルギー | H = U + pV | [J] | 全体量の評価 |
| 比エンタルピー h | 1kgあたりのエンタルピー | h = H / m | [kJ/kg] | 蒸気の実用値(最頻出) |
| エントロピー s | 乱雑さ・熱の出入りに比例 | Δs = ΔQ / T | [kJ/(kg・K)] | 理想サイクルとの比較・不可逆性の評価 |
⚠️ 似ているので混同注意。 エンタルピーは「エネルギー量」、エントロピーは「乱雑さ」。名前は似ていますが、物理的意味は全く異なります。
ランキンサイクルを「1kgの蒸気の旅」として捉える
ここからが本番。ランキンサイクルを 「1kgの蒸気の旅」 として追いかけると、一気に理解が進みます。
| 場所 | 状態 | 比エンタルピー h |
|---|---|---|
| ボイラ | 水 → 蒸気(加熱) | h が大きい(エネルギー満タン) |
| タービン | 蒸気が膨張・仕事 | h が 減少(仕事をした分だけ落ちる) |
| 復水器 | 蒸気 → 水(冷却) | h が小さい |
| → ボイラへ戻る | 水を再加熱 | エネルギー補給 |
つまりタービンでは、「蒸気がタービンで仕事をした分だけ h が下がる」。 比エンタルピーの大小関係は、
h(ボイラ出口・蒸気)> h(タービン出口)> h(復水器・水)
そして、タービン入口と出口の h の落差 が、まさにタービンが外部にした仕事量そのものになります。
計算問題の鉄則:各ポイントの h を求めて、引き算する。
これがランキンサイクル計算の核です。
理想的な膨張の基準は「等エントロピー」変化
最後にエントロピーの使いどころ。タービンの 「理想的な膨張」 は、無駄な熱の出入りや摩擦がない状態 ── すなわち 等エントロピー(s 一定) が基準になります。
- 理想のタービン:s が変化しない(垂直に下がる)
- 現実のタービン:摩擦・ロスで s が 必ず増加する 方向にズレる
つまり、
エントロピー s = 理想からのズレを測るセンサー
理想(s 一定)の線を基準に、現実の蒸気が右にどれだけズレたかを見れば、損失の度合いが評価できる。これが s の本当の使い方です。
まとめ|hは仕事量、sは理想からのズレ
ランキンサイクルは、結局この2つの本質で解けます。
- 比エンタルピー h は「どれだけ仕事できるか」
- h の 落差 を利用して仕事を取り出す
- 計算問題では各ポイントの h を求めて引き算するのが基本
- エントロピー s は「どれだけ理想からズレているか」
- 理想サイクル(s 一定)を基準に、s の増加で損失の度合いを評価
- 理想と現実のズレを測るセンサーの役割
暗記フレーズ:h は仕事量、s は理想からのズレ ゴロで覚えるなら:エンタルピーはタルタルソース、エントロピーはとろとろしてんじゃねぇ!
名前が似ているだけで、中身は全くの別物。今日でしっかり切り分けて、比エンタルピー h の落差を追え! を合言葉に、計算問題を確実に得点源にしていきましょう。
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