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電力 第10回 ⏱ 約11分で読めます

エンタルピー vs エントロピー|9割が混同する熱力学の壁を越える

電験三種「電力」科目で頻出のエンタルピーとエントロピー。名前が似ていて毎回混乱する2つの指標を、『hはどれだけ仕事できるか、sはどれだけ理想からズレているか』という暗記フレーズで完全に切り分けます。ランキンサイクルを『1kgの蒸気の旅』として捉え、計算問題の本質まで一気に攻略する1記事です。

🃏 暗記フレーズ:hは仕事量、sは理想からのズレ

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この記事で身につくこと

電験三種「電力」科目・火力発電分野で立ちはだかる最大の壁、それが エンタルピーとエントロピー です。 名前が似すぎていて、ここで毎回混乱する受験生は本当に多い。でも安心してください。両者は 全くの別物、今日で完全に切り分けます。

本記事を読み終えたら、

  • エンタルピー H・比エンタルピー h・エントロピー s の3つを即答で区別できる
  • ランキンサイクルの計算問題で「何の差を取れば仕事が出るか」が分かる
  • 「理想からのズレ」をエントロピーで評価する意味が腹落ちする

ようになります。

暗記フレーズ:h は仕事量、s は理想からのズレ

エンタルピー(h)はどれだけ仕事できるか、エントロピー(s)はどれだけ理想からズレているか

これだけ覚えれば、もう2度と混同しません。 ゴロで覚えるなら、エンタルピーは「タルタルソースのエネルギー」(タルが多いほどエネルギーも多い)、エントロピーは「とろとろしてんじゃねぇ!」(乱雑さ・忙しく動き回るさま)。 覚えたもん勝ちです。語呂でも何でも使って、頭に刻みましょう。

エンタルピー H = 物質が持つ熱エネルギーの総量

まずはエンタルピー、記号 H

H = U + pV

  • U:内部エネルギー(分子の熱運動エネルギー)
  • pV:押し退け仕事(圧力 × 体積)
  • 単位:[J]

エンタルピーは「物質が持つ熱エネルギーの総量」を表します。 ボイラで蒸気が高温高圧になればなるほど、この H は大きくなる。ランキンサイクルでは「蒸気がどれだけエネルギーを持っているか」を根本的に表す量 と覚えてください。

イメージは、エビフライに乗っかったタルタルソースの量。タルタル(熱エネルギー)が多ければ多いほど、後でできる仕事も大きい。

試験で実際に使うのは「比エンタルピー h」(1kgあたり)

H をそのまま使うことはほぼなく、電験で実際に登場するのは 1kgあたりの比エンタルピー h です。

h = H / m  単位:[kJ/kg]

なぜ「1kgあたり」に割るのか? 全体のエネルギー量 H だけ示されても、それが大きいのか小さいのかが分からないからです。同じエネルギー量でも、片方は1kg、もう片方は1000kgなら、価値は全く違いますよね。基準(1kg)を揃えることで初めて比較できる ようになります。

⚠️ 「」がついたら 1kg あたり ── これは熱力学全般で超重要な感覚。

蒸気を扱う実務・試験では、この h が 最重要指標 です。

🃏 暗記シート
Q. 比エンタルピー h と、その式・単位は?

エントロピー s = 乱雑さ・不可逆性の度合い

続いてエントロピー、記号 s。エンタルピーと 全くの別物 です。

Δs = ΔQ / T  単位:[kJ/(kg・K)]

エントロピーは「乱雑さ」と「不可逆性の度合い」を示します。 低エントロピー(秩序が保たれた状態)から、熱の出入りが行われると、高エントロピー(無秩序)の状態へと進む。システム内の乱雑さ、つまり不可逆性の増加を表す指標 です。

ランキンサイクルでは「蒸気の状態変化の方向性」を示す指標として使われます。 ここで重要なのが、

エンタルピー(エネルギー量)とは全く別物。混同しないこと。

エンタルピーは「エネルギー量」、エントロピーは「乱雑さ」。名前は似ていても、物理的意味は完全に別物です。

3つの指標を比較マトリクスで完全に切り分ける

混同しやすい3つの指標を、ここで一気に整理します。

指標意味単位用途
エンタルピー H物質が持つエネルギーH = U + pV[J]全体量の評価
比エンタルピー h1kgあたりのエンタルピーh = H / m[kJ/kg]蒸気の実用値(最頻出)
エントロピー s乱雑さ・熱の出入りに比例Δs = ΔQ / T[kJ/(kg・K)]理想サイクルとの比較・不可逆性の評価

⚠️ 似ているので混同注意。 エンタルピーは「エネルギー量」、エントロピーは「乱雑さ」。名前は似ていますが、物理的意味は全く異なります。

🃏 暗記シート
Q. エンタルピー H とエントロピー s、それぞれ何を表す指標?
💡 エネルギー量 vs 乱雑さ

ランキンサイクルを「1kgの蒸気の旅」として捉える

ここからが本番。ランキンサイクルを 「1kgの蒸気の旅」 として追いかけると、一気に理解が進みます。

場所状態比エンタルピー h
ボイラ水 → 蒸気(加熱)h が大きい(エネルギー満タン)
タービン蒸気が膨張・仕事h が 減少(仕事をした分だけ落ちる)
復水器蒸気 → 水(冷却)h が小さい
→ ボイラへ戻る水を再加熱エネルギー補給

つまりタービンでは、「蒸気がタービンで仕事をした分だけ h が下がる」。 比エンタルピーの大小関係は、

h(ボイラ出口・蒸気)> h(タービン出口)> h(復水器・水)

そして、タービン入口と出口の h の落差 が、まさにタービンが外部にした仕事量そのものになります。

計算問題の鉄則:各ポイントの h を求めて、引き算する。

これがランキンサイクル計算の核です。

🃏 暗記シート
Q. ランキンサイクルで、タービンが外部にした仕事はどう求める?

理想的な膨張の基準は「等エントロピー」変化

最後にエントロピーの使いどころ。タービンの 「理想的な膨張」 は、無駄な熱の出入りや摩擦がない状態 ── すなわち 等エントロピー(s 一定) が基準になります。

  • 理想のタービン:s が変化しない(垂直に下がる)
  • 現実のタービン:摩擦・ロスで s が 必ず増加する 方向にズレる

つまり、

エントロピー s = 理想からのズレを測るセンサー

理想(s 一定)の線を基準に、現実の蒸気が右にどれだけズレたかを見れば、損失の度合いが評価できる。これが s の本当の使い方です。

まとめ|hは仕事量、sは理想からのズレ

ランキンサイクルは、結局この2つの本質で解けます。

  • 比エンタルピー h は「どれだけ仕事できるか
    • h の 落差 を利用して仕事を取り出す
    • 計算問題では各ポイントの h を求めて引き算するのが基本
  • エントロピー s は「どれだけ理想からズレているか
    • 理想サイクル(s 一定)を基準に、s の増加で損失の度合いを評価
    • 理想と現実のズレを測るセンサーの役割

暗記フレーズ:h は仕事量、s は理想からのズレ ゴロで覚えるなら:エンタルピーはタルタルソース、エントロピーはとろとろしてんじゃねぇ!

名前が似ているだけで、中身は全くの別物。今日でしっかり切り分けて、比エンタルピー h の落差を追え! を合言葉に、計算問題を確実に得点源にしていきましょう。

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