BWRとPWRの違いは「蒸気の作り方」だけで全部解ける
電験三種「電力」科目の原子炉BWR・PWRの違いを、9割が混同する独立暗記からの脱出をテーマに整理。『BWR=直接蒸気、PWR=二次系蒸気』という1つの法則で、圧力・制御棒・放射線管理区域まで論理的につながる完全保存版の比較記事です。
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原子力発電の問題を解いていて、こんな経験はありませんか。
「制御棒は……BWRが上からだっけ、下からだっけ」 「加圧器って、どっちの方式の設備だったかな」 「ホウ酸水はたしかPWR……いや、逆かもしれない」
選択肢を前にして、記憶をひっくり返すように探す。あの感覚は、本当につらいものです。
でも、安心してください。BWRとPWRの違いは、覚えることが多いのではなく、覚え方を間違えているだけです。この記事では、たった1つの法則から、圧力も、制御棒の向きも、放射線管理区域も、すべてを芋づる式に引き出す方法をお伝えします。読み終わる頃には、「思い出す」のではなく「その場で導ける」ようになっているはずです。
この記事で身につくこと
| 身につくこと | 具体的に |
|---|---|
| 1つの法則 | 「BWR=直接蒸気/PWR=二次系蒸気」から全部を導く考え方 |
| 圧力の違い | なぜBWRは約7MPaで、PWRは約15MPaなのか |
| 制御棒の向き | BWRが下から、PWRが上からになる理由 |
| 出力調整 | ボイド効果(物理)とホウ酸水(化学)の対比 |
| ループ構造 | BWRの1ループと、PWRの3ループ |
| 安全設備 | 加圧器・蒸気発生器・主蒸気隔離弁の役割 |
| 放射線管理 | タービン建屋が管理区域になるのはどちらか |

暗記フレーズ:BWRは直接蒸気、PWRは二次系蒸気
BWRは直接蒸気、PWRは二次系蒸気
今日、持ち帰っていただきたいのはこの一文だけです。拍子抜けするほど短いですが、これが今回の記事のすべてを支えます。
BWR(沸騰水型)は、炉心の水をそのまま沸騰させて蒸気を作り、その蒸気を直接タービンへ送ります。PWR(加圧水型)は、炉心の水を沸騰させずに高温高圧のまま循環させ、蒸気発生器という熱交換器で、二次系の水に熱だけを渡して蒸気を作ります。
違いはここだけです。そして、この先に出てくる圧力も、制御棒も、放射線管理も、全部この違いの結果にすぎません。
ステップ1:多くの人がハマる「独立暗記」の罠

BWRとPWRで点を落とす人には、はっきりした共通点があります。それは、バラバラの単語として覚えようとしていることです。
「BWRは7MPa」「PWRは加圧器」「制御棒は下から」——こうやって覚えると、項目が6つあれば12個の事実を暗記することになります。しかも互いに関係がないので、1つ忘れると芋づる式に全部が怪しくなる。試験本番で「どっちだったか」と迷うのは、記憶力の問題ではなく、覚え方の構造の問題なのです。
| よくある覚え方 | この記事の覚え方 |
|---|---|
| 12個の事実を独立して暗記 | 1つの法則から12個を導く |
| 1つ忘れると全部が不安になる | 1つ思い出せば全部が戻る |
| 「たしかBWRは……」と探す | 「直接蒸気だから当然こうなる」と組み立てる |
ゴールは、暗記量を減らすことです。「なぜこの構造になるのか」を1つだけ理解すれば、残りは考えれば出てきます。
ステップ2:蒸気の作り方が、すべての出発点

BWR(沸騰水型)=炉心が鍋そのもの
炉心の水を直接沸騰させ、そこで生まれた蒸気をそのままタービンへ送ります。台所の鍋でお湯を沸かし、立ちのぼる湯気で風車を回すイメージです。構造がとにかくシンプルで、余計な機器が要りません。
PWR(加圧水型)=熱だけを渡すリレー
炉心の水は高圧をかけて沸騰させずに加熱します。その熱い水を蒸気発生器へ送り、そこで二次系の水に熱だけを伝える。蒸気が立つのは二次系に入ってからです。一次系の水と二次系の水は、金属の壁ごしに熱を受け渡すだけで、決して混ざりません。
| BWR | PWR | |
|---|---|---|
| 沸騰する場所 | 炉心の中 | 蒸気発生器から先(二次系) |
| タービンへ行く蒸気 | 炉心で作った蒸気そのもの | 二次系で作った別の蒸気 |
| 水の系統 | 1系統で完結 | 一次系と二次系に分離 |
原子炉の中で何が起きているか自体があやふやな方は、先に原子炉の5要素を「4つの動詞」で一発攻略を読んでおくと、この先の理解が一気に軽くなります。
ステップ3:圧力の違いは「沸かしたいか、沸かしたくないか」

圧力の数値は暗記するものではなく、目的から逆算するものです。
| BWR | PWR | |
|---|---|---|
| 炉内圧力 | 約7MPa(低め) | 約15MPa(超高圧) |
| 炉内で沸騰 | させる | 絶対にさせない |
| 圧力の理由 | 沸騰する圧力でよいため | 沸騰させないために押さえ込む |
| 圧力を保つ設備 | ―(自然に蒸気が発生) | 加圧器 |
BWRは沸騰させたいのですから、ぎゅうぎゅうに押さえつける必要はありません。一方PWRは、炉内で泡が立つと困るので、加圧器でわざわざ高圧を維持して沸騰を封じ込めています。「沸騰させないために押さえつける」——この一言で、約15MPaという数字は自然に出てきます。
数値としては、PWRはBWRの倍以上とだけ押さえておけば、選択肢の判断には十分です。そして沸騰しないおかげで、PWRは高温・高圧での運転が可能になります。
ステップ4:制御棒の向きは「蒸気の居場所」で決まる

ここが最も混同されるポイントですが、蒸気の場所を思い出せば一発です。
| BWR | PWR | |
|---|---|---|
| 挿入方向 | 下から | 上から |
| 理由 | 炉心上部は蒸気の通り道で場所が無い | 炉内で蒸気を作らず上部に余裕がある |
| 副次的な特徴 | 下から押し上げる駆動機構が必要 | 自然落下で素早く挿入できる |
BWRは炉心の上部で直接蒸気が発生します。上は蒸気の通り道として空けておかなければならないので、制御棒を差し込むスペースが取れません。だから下から挿入するのです。
対してPWRは炉内で蒸気を作らないため、上部に余裕があります。上から入れられるということは、いざというとき重力で落とすだけで挿入できるという安全上の利点にもなります。電源が失われても落ちてくれる、というわけです。
「上から落とせる=沸騰させていない=PWR」。この連想が作れれば、もう迷いません。
ステップ5:出力調整は「物理のBWR、化学のPWR」

どちらの方式も制御棒の出し入れで反応度を調整しますが、それに加えて、方式ごとの得意技があります。
| BWR | PWR | |
|---|---|---|
| 手段 | 再循環ポンプによる流量調整 | ホウ酸水の濃度調整 |
| 効かせる仕組み | ボイド効果(泡の量で反応度が変化) | 可溶性ホウ素が中性子を吸収 |
| 性格 | 物理的(流量) | 化学的(濃度) |
BWRは炉内で沸騰が起きているので、そこに「泡」が存在します。この泡をボイドと呼び、再循環ポンプで炉内の水の流量を変えるとボイドの量が変わり、その結果として反応度が動きます。沸騰しているBWRだからこそ使える手です。
PWRは炉内に泡がないので、この手は使えません。代わりに、一次冷却水にホウ酸(可溶性のホウ素)を溶かし、その濃度を調整して反応度を変えます。
覚え方は「BWRは物理的に流量、PWRは化学的に濃度」。この対比の形で入れておくと、片方を思い出せばもう片方も一緒に出てきます。
ステップ6:ループ構造は1ループか、3ループか

蒸気の作り方が違えば、配管の組み方も当然変わります。
BWR=シンプルな1ループ
炉心 → タービン → 復水器 → ポンプ → また炉心、という1つの輪で完結します。冷却材は減速材も兼ねており、すべて同じ水です。図で見ると輪が1本しかないので、見分けもつきやすいはずです。
PWR=分離された3ループ
| ループ | 役割 | 放射性 |
|---|---|---|
| 一次系 | 炉心と蒸気発生器を結ぶ高圧水 | 放射性 |
| 二次系 | 蒸気発生器で熱を受けて蒸気を作りタービンへ | 非放射性 |
| 三次系 | 復水器を冷やす海水 | 非放射性 |
放射性の一次系が、二次系にも海水にも直接触れない構造になっています。この「分離」が、次のステップで出てくる放射線管理区域の話に、そのままつながっていきます。
ステップ7:方式ごとの特有設備を押さえる
設備名は、試験で「どちらの方式か」を問う形で狙われます。ここも蒸気の作り方から理由づけできます。
| BWR | PWR | |
|---|---|---|
| 特有の設備① | 主蒸気隔離弁(MSIV) | 加圧器 |
| 特有の設備② | 非常用炉心冷却装置(ECCS) | 蒸気発生器 |
| 格納容器 | マーク1・2型。圧力抑制プールを備え比較的コンパクト | 大型の円筒形。高い保持耐圧が必要で複雑・大きい |
主蒸気隔離弁(MSIV)は、タービンへ向かう蒸気を遮断する弁です。BWRはタービンへ放射性の蒸気が直接行くのですから、いざというときに切り離す仕組みが要る——そう考えれば、なぜBWR側の設備なのかが腑に落ちます。
加圧器は一次系の超高圧を維持するPWRの心臓部、蒸気発生器は一次系と二次系を分離するキモの設備です。この2つはPWR専用なので、セットで覚えてしまいましょう。「加圧器と書いてあればPWR」と即断できるだけで、正答率は確実に上がります。
ステップ8:タービン建屋は放射線管理区域か

ここが「1つの法則」の総仕上げです。
| BWR | PWR | |
|---|---|---|
| タービン系 | 放射線管理区域(遮蔽が必要) | 非放射性(遮蔽不要) |
| 理由 | 炉心を通った水が直接タービンへ行く | 蒸気発生器で完全に分離されている |
| 保守 | 管理が必要で手間がかかる | 管理が容易 |
炉心を通った水がそのままタービンへ行くBWRでは、タービンや復水器も放射性を帯びる可能性があります。だから遮蔽が必要で、タービン建屋も管理区域になる。一方PWRは、蒸気発生器で一次系と二次系が切り離されているので、タービン側に放射性物質は来ません。
「直接蒸気だから、タービンまで放射性」——最初に覚えた一文が、最後の論点まできれいにつながりました。これが1つの法則で全部が解ける、ということです。
同じ原子力分野でも、燃料の流れを扱う核燃料サイクルを「掘る→作る→使う→再処理→もう一度使う」5語で完全攻略とあわせて読むと、原子力発電の全体像がひとつながりになります。
ステップ9:クイズで定着を確認する
Q1
「加圧器」や「蒸気発生器」を備え、制御棒を「上から」挿入する方式は?
答え:PWR(加圧水型)
炉内で蒸気を作らないため上部にスペースがあり、上から挿入できます。加圧器・蒸気発生器はPWR専用設備でした。
Q2
出力調整に「ボイド量」(泡の量)を利用し、タービン建屋も放射線管理区域となる方式は?
答え:BWR(沸騰水型)
炉内で直接蒸気を作るため泡(ボイド)が存在し、その水がタービンまで到達します。
まとめ
最後に、比較表で全体を確認しましょう。
| 項目 | BWR(沸騰水型) | PWR(加圧水型) |
|---|---|---|
| 蒸気の作り方 | 炉内で直接蒸気 → タービンへ | 蒸気発生器経由で二次系蒸気 |
| 圧力・温度 | 約7MPa(低め) | 約15MPa(加圧器で高圧維持) |
| 制御棒の挿入 | 下から | 上から |
| 出力調整 | 再循環ポンプ・ボイド効果 | ホウ酸水(濃度調整) |
| 放射線管理 | タービン系も管理区域 | 非放射性・遮蔽不要 |
| ループ構造 | 1ループ | 分離された3ループ |
| 特有設備 | 圧力抑制プール、MSIV | 加圧器、蒸気発生器 |
そして、本番で迷ったら戻る場所はここです。
BWR=直接蒸気、PWR=二次系蒸気。すべてはここから繋がる。
この一文さえ握っていれば、表の中身は思い出すのではなく、その場で作り直せます。
⚠ ここを間違える人が多い
❌ 制御棒は「重力で落ちるBWRが上から」と思いがち
✅ 正しくは、上から挿入するのはPWRです。「安全のために重力で落とすなら上からのはず」という発想自体は正しいのですが、それができるのはPWRの側です。BWRは炉心の上部が蒸気の通り道で埋まっているため、物理的に上から差し込めません。迷ったら「上に蒸気があるのはどちらか」から考えれば、自動的にBWRが下からだと出てきます。
❌ 圧力は「沸騰させるBWRのほうが高いはず」と思いがち
✅ 正しくは、高圧なのはPWRの約15MPa、BWRは約7MPaです。「沸かすのだからエネルギーが要る=高圧」とイメージすると逆になります。圧力の目的は沸かすことではなく、沸騰を止めること。沸かしたくないPWRだからこそ加圧器で押さえ込む、と押さえ直してください。
❌ タービン側の放射線管理を、方式と無関係に考えがち
✅ タービン建屋が管理区域になるかどうかは、炉心の水がタービンまで届くかどうかだけで決まります。届くBWRは管理区域、蒸気発生器で切れているPWRは不要。ここも「直接蒸気か、二次系蒸気か」の一言から導けるので、単独の知識として覚え込む必要はありません。
よくある質問
Q. BWRとPWR、どちらが「優れている」と覚えればよいですか?
優劣を問う出題ではなく、特徴の対比が問われます。BWRは1ループで構造がシンプルという長所がある一方、タービン系まで放射線管理が必要になるという短所を持ちます。PWRは二次系が非放射性で管理が容易ですが、加圧器・蒸気発生器が必要で系統が複雑になり、格納容器も大型化します。「シンプルだが管理範囲が広いBWR」「複雑だが管理が容易なPWR」という長短のセットで押さえるのが、試験では実戦的です。
Q. ボイド効果は、なぜ反応度を変えられるのですか?
BWRでは、炉内の水が中性子を減速させる減速材の役割も兼ねています。沸騰して泡(ボイド)が増えると、その部分の水の密度が下がって減速の効きが変わり、結果として反応度が動きます。だから再循環ポンプで流量を変えてボイドの量を操作すれば、出力を調整できるわけです。炉内に泡が存在しないPWRでは、この手が使えないためホウ酸水に頼ります。
Q. PWRの「三次系」まで覚える必要はありますか?
一次系・二次系の区別が最優先ですが、三次系(復水器を冷やす海水のループ)も、放射性物質が海水側に来ない構造を説明する上で意味を持ちます。「一次系=放射性/二次系=非放射性/三次系=海水」の3段だけ頭に入れておけば十分です。逆にBWRは1ループで完結する、という対比まで含めて覚えておくと、系統図を見た瞬間にどちらの方式か判断できます。
Q. 同じ電力科目の他の発電方式と、どう並べて勉強すべきですか?
原子力は「原子炉の構造」「核燃料サイクル」「BWR・PWRの対比」の3本柱で、それぞれ問われ方が違います。まず構造、次にサイクル、最後にこの記事の対比、という順に固めるのが遠回りに見えて最短です。原子力が一段落したら、太陽光発電は『セルで発電、パワコンで整える』で一撃攻略のような再生可能エネルギー分野へ進むと、発電方式全体の地図が完成します。
焦らなくて大丈夫です。今日、頭の中に「BWRは直接蒸気、PWRは二次系蒸気」という一本の芯が通れば、それで十分な前進です。何度でも戻ってきてください。
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