電気事業の5分類と規制(許可・登録・届出)を完全マスター
電験三種「法規」科目の電気事業法における『電気事業の5分類』を解説。小売・発電・一般送配電・送電・特定送配電の5事業の定義と、それぞれに適用される規制の違い(許可・登録・届出)を整理。許可が最も厳しい理由も含めて構造で覚えます。
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この記事で身につくこと
「電気事業の分類」と聞いた瞬間に、ページを飛ばしたくなる。その気持ち、とてもよく分かります。小売、発電、一般送配電、送電、特定送配電——似たような漢字が5つも並び、そこに許可だ登録だ届出だという言葉がかぶさってくる。しかも電力システム改革で区分が増えた、なんて話まで聞こえてくると、「これは自分には無理かもしれない」と思ってしまうのも当然です。
でも、安心してください。この単元は、覚えることの量が多いのではなく、並べ方が悪いだけです。バラバラの5つとして暗記しようとするから苦しいのであって、電気が発電所を出て、送電線を通り、みなさんの家のブレーカーに届くまでの「流れ」の上に置き直してあげると、5つの事業は自然な順番でつながります。
そしてもう一つ。規制の重さも、丸暗記する必要はありません。「この事業は、代わりがきかないか?」——この一点だけを考えれば、許可なのか、登録なのか、届出なのかが自分で導けます。理由から入れば、試験本番で記憶があやふやになっても、その場で組み立て直せるのです。
この記事を読み終えると、次のことができるようになります。
- 電気事業法の5つの事業区分を、電気の流れに沿って順番に言える
- 許可・登録・届出という3段階の規制の重さを、理由つきで説明できる
- どの事業がどの規制に対応するかを、5つとも即答できる
- 一般送配電事業と送電事業という、最も紛らわしい2つを役割で区別できる
- 過去問で問われやすい「事業名 × 規制」の組み合わせを取りこぼさない
法規は暗記科目だと言われますが、この単元に関しては違います。理屈が7割、暗記が3割。しかも理屈の部分は、今日この記事だけで終わります。一緒に片づけてしまいましょう。
暗記フレーズ:送配電を握るほど許可は厳しい
この単元は、これ一つで芯が通ります。
送配電を握るほど許可は厳しい
送配電網、つまり日本中に張りめぐらされた電線と変電所のネットワークは、同じものを2つ作るわけにいきません。ある地域に東西から2社が別々の電柱を立てて競争する——そんなことは物理的にも経済的にも不可能です。だから送配電を担う事業は必然的に独占になり、独占になるからこそ国が最も強く関与する。それが最上位の規制である「許可」です。
逆に、発電所は日本中にいくつあっても構いませんし、電気を売る小売の会社もたくさんあったほうが競争が働いて価格が下がります。代わりがきく事業ほど、規制は軽くなる。この一本の軸が、5つの区分すべてを貫いています。
ステップ1:まず「電気の流れ」の上に5つを並べる

電気事業法が定める事業は、次の5つです。
- 発電事業
- 送電事業
- 一般送配電事業
- 特定送配電事業
- 小売電気事業
図を見ていただくと分かるとおり、これらはバラバラに存在しているのではなく、発電所で作られた電気が需要家に届くまでの一本の線の上に、それぞれの役割として並んでいます。大きくつかむなら、発電 → 送電 → 小売の3形態。この3つの箱に、送電の部分を細かく分けた「一般送配電」「送電」「特定送配電」が入っている、という構造です。
まずはこの5つの名前を、電気の流れの順に口に出して言えるようにしてください。それだけで、この単元の半分は終わったようなものです。
ステップ2:試験で最も狙われるのは「規制の重さ」

事業の中身より先に、規制のほうを押さえてしまいましょう。ここが試験で最も狙われるポイントだからです。
| 規制 | 対象となる事業 | 重さ |
|---|---|---|
| 許可(経済産業大臣) | 一般送配電事業/送電事業 | 最も厳しい |
| 登録 | 小売電気事業 | 中間 |
| 届出 | 発電事業/特定送配電事業 | 最も軽い |
3つの違いを、言葉のイメージだけでも押さえておくと強いです。
- 許可……国が「よろしい」と判断して初めて事業ができる。最も重い関門。
- 登録……許可よりは緩いものの、要件を満たしているかの審査はある。
- 届出……文字どおり届け出れば足りる。審査という概念がないのが決定的な違いです。
つまり厳しい順に、許可 > 登録 > 届出(通知)。ここで先ほどの暗記フレーズが効いてきます。送配電網を握る一般送配電事業と送電事業だけが「許可」。この2つを先に許可の箱へ入れてしまえば、残りは登録が小売、届出が発電と特定送配電、と自動的に決まります。
なお、法規の条文が「なぜこんなに細かいのか」「そもそも法令はどういう階層になっているのか」がまだ腑に落ちていない方は、先に〈法規攻略の第一歩!『電技 = 解釈 = 細かさ最上級』で法令ピラミッドを丸ごと理解〉に目を通しておくと、この先の理解が一段速くなります。
ステップ3:一般送配電事業——インフラのかなめ

一般送配電事業とは、その区域の需要に応じるために、送配電網を維持し、運用する事業です。
この事業者が背負っている義務は、決して軽くありません。代表的なものが次の4つです。
| 義務 | 中身 |
|---|---|
| 託送供給 | 自社の送配電網を使って、他社の電気を需要場所まで運ぶ |
| 電力量調整供給 | 発電量と需要量のズレを調整して供給する |
| 最終保障供給 | どの小売とも契約できない需要家への、最後の受け皿 |
| 離島供給 | 採算の取りにくい離島にも電気を届ける |
該当するのは、北から北海道電力ネットワーク、東北電力ネットワーク、東京電力パワーグリッド……と、日本におよそ10社。みなさんが「電力会社」と聞いて思い浮かべる、あの会社たちです。
注目していただきたいのは、最終保障供給と離島供給という2つの義務です。契約先が見つからない人にも、採算の合わない離島にも、それでも電気を届ける。これは商売の論理では説明のつかない話で、まさにインフラのかなめだからこそ課される義務です。だからこそ、この事業には最も重い「許可」がかかる。理屈がきれいにつながっているのが分かると思います。
ステップ4:送電事業——「依頼を受けて送るだけ」の専門家
一般送配電事業と最も混同されるのが、この送電事業です。名前が似ているうえに、どちらも「許可」なので、区別の手がかりを見失いやすいところです。
違いは、誰のために動いているかの一点に尽きます。
| 一般送配電事業 | 送電事業 | |
|---|---|---|
| 相手 | その区域の需要(=広く一般) | 一般送配電事業者からの依頼 |
| 役割 | 送配電網の維持・運用 | 送電に特化 |
| 主な設備 | 送配電網全体 | 主に送電線と変電所のみ |
| 供給義務 | 託送・電力量調整・最終保障・離島 | 区域全体に応じる義務は負わない |
| 規制 | 許可 | 許可 |
送電事業は、あくまで一般送配電事業者の依頼を受けて、電気を「送電」することに特化した事業です。設備も、配電網まで持つのではなく、主に送電線と変電所のみ。
該当する会社は、Jパワー(電源開発)の子会社である電源開発送変電ネットワーク、そして北海道北部風力送電、福島送電の3社です。数が少ないので、ここは会社名ごと覚えてしまっても損はありません。
この2つの区別は、「区域全体に責任を負うのが一般送配電、依頼された区間を送るのが送電」と唱えておけば、本番で迷いません。
ステップ5:発電・特定送配電・小売——残りの3つを消費者目線で

残る3つを、電気を使う側の目線で押さえていきます。
発電事業は、自ら発電して、小売電気事業者などに電気を供給する事業です。イメージしやすいぶん、拍子抜けするかもしれません。規制は届出。発電所は各地にいくつあってもよく、独占にならないため、規制は軽くて済むのです。
特定送配電事業は、特定の地点の需要に応じて電気を供給する、限定的な事業です。「限定的」というのが分かりにくいところですが、具体的には工場の構内や特定の建物など、供給する相手が非常に狭い範囲に限られているケースを指します。関東一円を担う東京電力、関西一円を担う関西電力とくらべれば、その差は歴然です。影響の及ぶ範囲が狭いからこそ、届出で足りる——これも、暗記ではなく理由で押さえられる部分です。
小売電気事業は、一般の需要に応じて電気を供給する事業。みなさんがご家庭で契約している、あの会社です。昔ながらの大手電力会社に加えて、近年は新電力と呼ばれる会社が次々に参入しています。規制は登録。競争を促すために許可までは求めないけれど、家庭の電気を預かる以上、審査は必要——その中間の位置づけです。
消費者の目線に立てば、電気は一社が全部やっているように見えます。しかし実際は、発電する会社、送る会社、届ける会社、売る会社が集まって、はじめて一つのコンセントにたどり着いている。大きくは発電・送電・小売の3形態、その内訳が5区分。この二段構えで頭に入れておくと、条文を読んだときの座標が失われません。
なお、その届いた電気が「何ボルトで来ていなければいけないか」までを定めているのも同じ電気事業法の世界です。気になった方は〈200V・100Vの電圧許容範囲とは?101±6V/202±20V〉もあわせてどうぞ。
ステップ6:完全マスターマトリックスで総復習
最後に、5つをすべて一枚に並べます。試験直前に、この表を頭の中に思い浮かべられる状態がゴールです。
| 事業名 | 内容 | 規制 |
|---|---|---|
| 発電事業 | 自ら発電し、小売電気事業者などに供給する | 届出 |
| 送電事業 | 一般送配電事業者の依頼を受け、送電に特化する | 許可 |
| 一般送配電事業 | 区域の需要に応じて送配電網を維持・運用する | 許可 |
| 特定送配電事業 | 特定の地点の需要に応じて供給する(限定的) | 届出 |
| 小売電気事業 | 一般の需要に応じて電気を供給する | 登録 |
覚え方は簡単です。まず許可の2つ(一般送配電・送電)を先に埋める。次に登録は小売の1つだけ。残った2つ(発電・特定送配電)が自動的に届出になります。5つを別々に覚えるより、はるかに速く、はるかに崩れにくい入れ方です。
ちなみに、規制の重さを数で確認しておくと、
という 2:1:2 の配分になります。数え上げて「あれ、許可が3つになった」と気づけば、その場で自分の記憶ミスに気づけます。こういう小さな検算を持っておくと、本番の安心感がまるで違います。
まとめ
長く感じたかもしれませんが、この記事でやったことは、たった3つです。
- 5つの事業を、電気の流れの上に並べ直した(発電 → 送電 → 小売の3形態、その内訳が5区分)
- 規制の重さを、許可 > 登録 > 届出の一本の軸にした
- 「送配電を握るほど許可は厳しい」という理由で、両者を結びつけた
丸暗記なら5つ×3種類で15通りを覚える話になりますが、理由から入れば、覚えるのは「許可は一般送配電と送電の2つだけ」という一点だけ。あとはその場で導けます。苦手だと思っていた単元が、実は最も少ない暗記量で満点が取れる単元だった——この単元は、まさにそういう場所です。
そして、電気事業法という法律がそもそも何のためにあるのかまで押さえておくと、この5区分の意味がさらに立体的になります。まだの方は〈電気事業法 第1条を「2つの手段 × 4本の柱」で穴埋め完全攻略〉を続けて読んでみてください。第1条の目的と、今日の5区分は、きれいに一本の線でつながります。
⚠ ここを間違える人が多い
この単元で失点する人には、はっきりした共通点があります。3つ挙げますので、自分に当てはまらないか確かめてみてください。
❌「一般送配電事業と送電事業、どっちが厳しいんだっけ?」と迷う → ✅ どちらも同じ「許可」です。 片方だけが許可だと思い込んで、もう一方を登録や届出に当ててしまう誤りが目立ちます。この2つは規制の重さでは区別できません。区別すべきは役割——区域全体に責任を負うのが一般送配電、依頼された送電に特化するのが送電事業です。設問が「規制の違い」を聞いているのか「役割の違い」を聞いているのかを、必ず読み分けてください。
❌「登録」と「届出」を、なんとなく同じようなものだと思っている → ✅ 審査があるかないかで決定的に違います。 登録には要件を満たすかどうかの審査があり、届出にはその概念がありません。選択肢に両方が並んだとき、「どちらも軽いほうだから、たぶんこっち」という当て方をすると必ず外れます。小売だけが登録、と一点で覚えるのが最短です。
❌「大きい会社だから厳しい規制」と規模で判断してしまう → ✅ 判断軸は規模ではなく、代わりがきくかどうか(独占性・公共性)です。 発電事業は大規模な発電所を持つ会社でも規制は届出。逆に特定送配電事業は工場構内という小さな範囲でも、同じく届出。規模ではなく「その設備が独占的なインフラかどうか」で分かれている、という原則に立ち返れば、迷いは消えます。
過去問ではこう出た
この単元は、電験三種の法規で繰り返し出題されている定番テーマです。実際に出題された年度・問番号は次のとおりです。
| 年度 | 問番号 |
|---|---|
| 平成29年 | 問10 |
| 令和1年 | 問10 |
| 令和3年 | 問1 |
| 令和4年 上期 | 問9 |
| 令和4年 下期 | 問10 |
| 令和6年 上期 | 問1 |
| 令和7年 上期 | 問1 |
| 令和7年 下期 | 問1 |
並べてみると、傾向がはっきり見えてきます。まず、令和3年以降は「問1」での出題が定番化しています。法規の一番はじめに置かれるということは、試験センターがこの単元を基礎中の基礎と位置づけている証拠であり、裏を返せばここを落とすと出だしでリズムを崩すということです。
出題形式としては、事業の定義文を示して事業名を答えさせる形か、事業名と規制(許可・登録・届出)の組み合わせの正誤を問う形が中心です。つまり、この記事のステップ6にある一枚の表さえ頭に入っていれば対応できる範囲です。年に1問、ほぼ確実に出る——これほど費用対効果の高い単元は、法規の中でもそう多くありません。
覚えたつもりが本当に解けるかどうかは、実際に問題を解いてみるのが一番確実です。
よくある質問
Q. 5つの事業名を、いつも1つか2つ思い出せません。順番よく出す方法はありますか?
無理に5つを暗唱しようとせず、先に3つの箱を作ってください。発電・送電・小売、この3形態です。そのうえで「送電の箱には3種類ある」と展開すれば、一般送配電・送電・特定送配電が出てきます。3+展開で5、という二段構えのほうが、5個をフラットに覚えるより圧倒的に落ちにくいです。試験会場で手が震えていても、3つなら思い出せます。
Q. 「登録」と「届出」の違いを、もう少しはっきり区別する言い方はありませんか?
「審査があるか、ないか」の一点で切ってください。 登録には審査がありますが、届出には審査という概念そのものがありません。届け出た時点で手続きが完了する、というのが届出です。イメージとしては、許可が「国に判断してもらう」、登録が「要件を満たしているか確かめてもらう」、届出が「知らせておく」。この3段階の温度差で頭に入れておくと、選択肢の中で迷ったときの拠りどころになります。
Q. 一般送配電事業者の義務が4つもあって覚えきれません。優先順位はありますか?
4つとも押さえるのが理想ですが、あえて順位をつけるなら最終保障供給と離島供給を先に覚えてください。この2つは「採算が合わなくても電気を届ける」という、一般送配電事業の性格が最も強く出ている義務だからです。ここを軸に、「他社の電気を運ぶのが託送供給」「発電と需要のズレを埋めるのが電力量調整供給」と足していけば、4つがバラバラの単語ではなく、一つの役割から派生した義務として頭に残ります。丸暗記でこぼれ落ちるのは、いつも「理由のない単語」のほうです。
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