静電力の公式は『真空=9×10⁹、真空以外=1/4πε』で一発攻略
電験三種「理論」科目で9割が混同する静電力の2公式(真空・真空以外)を、『真空=9×10⁹、真空以外=1/4πε』の魔法のフレーズで一発攻略。クーロンの法則・誘電率・比誘電率の関係から、比誘電率εrのひっかけ問題まで丁寧に整理する1記事です。
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この記事で身につくこと
電験三種「理論」科目の電磁気で、必ず最初の関門になるのが 静電力(クーロンの法則)の2つの公式 です。
「真空のときの式」と「真空以外(媒質中)のときの式」。この2つが並んでいるのを本番で見た瞬間、多くの受験生が「あれ、どっちだったっけ?」と手が止まります。ギリシャ文字の ε(イプシロン)が、ε₀ だ εr だと増えていくのも、混乱に拍車をかけます。
でも、安心してください。この単元は 覚えることが驚くほど少ない 分野です。実は2つの公式、違うのは頭についている係数だけ。後ろ半分はまったく同じ形をしています。そこに気づいた瞬間、「難しい電磁気」が「ただの穴埋め」に変わります。
本記事を読み終えたら、次の状態になっています。
| 身につくこと | 到達レベル |
|---|---|
| 静電力の2公式の使い分け | 問題文を見て0.5秒で選べる |
| 真空の誘電率 ε₀ と比誘電率 εr の役割 | 「どっちが固定値か」を即答できる |
| 比誘電率が大きいときの力の変化 | 「弱くなる」と理由つきで言える |
| 過去問での問われ方 | 出題パターンを知ったうえで解ける |
暗記量はたった1フレーズ。それだけで、電磁気の入口が得点源に変わります。
暗記フレーズ:真空=9×10⁹、真空以外=1/4πε
真空イコール 9×10⁹、真空以外(媒質)イコール 1/(4πε)
これだけです。声に出して3回読んでみてください。もうこの単元の半分は終わったようなものです。
なぜこの一言で足りるのか
静電力の公式は、前につく『係数』が違うだけで、後ろの骨格はまったく同じ だからです。
「係数」の中身が、真空なら 9.0×10⁹、真空以外なら 1/(4πε) に入れ替わる。ただそれだけの話なのです。
迷う原因は、公式を丸ごと2本、別々のものとして覚えようとするから。共通部分を1本にまとめてしまえば、記憶の負担は半分以下になります。
静電力の2つの公式 ─ 最大の壁
電験の参考書を開くと、いきなり2つの公式が並んで立ちはだかります。
| 条件 | 公式 |
|---|---|
| 真空中 | |
| 真空以外(媒質中) |
パッと見、ほとんど同じです。違うのは 前の係数だけ。
それでも本番で迷子になる人が多いのは、次の3つの罠があるからです。
| つまずきの罠 | 何が起きるか |
|---|---|
| ①「真空」と「真空以外」で式が2本ある | どちらを選ぶかで一瞬固まる |
| ② 記号が ε・ε₀・εr と3つ出てくる | どれが定数でどれが問題文の値か混乱する |
| ③ 本番の緊張で頭が真っ白になる | 覚えていたはずの式が出てこない |
この3つをまとめて潰す装置が、さきほどの暗記フレーズです。「係数だけが違う」と分かっていれば、①は消えます。②と③は、このあとの節で1つずつほどいていきましょう。
なお、そもそも「電荷って何? 電界って何?」というところが少しあやふやな方は、先に〈静電気の公式、丸暗記はもう終わり。「点電荷→電界→力→エネルギー」で9割が救われる〉に目を通しておくと、この先の理解がぐっと速くなります。急がば回れです。
共通の骨格を見抜けば、覚えるのは『係数』だけ
実は2つの公式、後ろの部分は 完全に同じ です。
| 条件 | 「ここだけ変わる」の中身 |
|---|---|
| 真空中 | |
| 真空以外(媒質中) |
つまり覚えるべきは、前につく係数2種類だけ。
後ろの は、どちらの場合でも共通で登場します。ここは「電荷の積を、距離の2乗で割る」と、意味で覚えてしまいましょう。
- 電荷 Q が大きいほど、力は強くなる(かけ算=比例)
- 距離 r が離れるほど、力は急激に弱くなる(2乗で割る=2乗に反比例)
この2つは、磁石を近づけたときの感覚とまったく同じです。強い磁石ほど強く、離すほど急に弱くなる。日常の感覚がそのまま使えます。
真空時の係数:9.0×10⁹ という具体的な数字
問題文に「真空中に…」と書かれていれば、迷わずこちらを使います。
この式のありがたいところ
ポイントは、係数が「9.0×10⁹」という具体的な数字 になっていることです。
文字が1つも入っていません。ということは、Q₁・Q₂・r の3つを代入すれば、あとは電卓を叩くだけ。判断が入る余地がゼロなのです。電磁気の中では、いちばん機械的に処理できる部類の計算だと言えます。
覚え方のコツ
「9×10⁹」は「キュー・かける・10の9乗」。9が2回出てくる と覚えると、桁数を間違えません。10の8乗や10の10乗と書き間違える人がときどきいますが、「9と9のペア」で結びつけておけば防げます。
なお、この 9.0×10⁹ という数字は、実は次の節で出てくる 1/(4πε₀) を計算した結果そのものです。まったく別の2つの式ではなく、真空という条件で係数を計算し終えた形が上の式 ─ そう捉えておくと、記憶が1本につながります。
真空以外の係数:1/(4πε) と 誘電率の正体
問題文に「比誘電率 εr の媒質中に…」と書かれていれば、こちらの公式の出番です。
誘電率 ε は「2階建て」でできている
ここで重要なのが、誘電率 ε の正体 です。
誘電率 = 真空の誘電率 × 比誘電率
3つの ε を、役割ごとに整理しておきましょう。ここが整理できれば、この単元の山場は越えたも同然です。
| 記号 | 読み方 | 正体 | 試験でどう与えられるか |
|---|---|---|---|
| ε | イプシロン | その媒質の誘電率 | ε₀ × εr で自分で作る |
| ε₀ | イプシロンゼロ | 真空の誘電率(約 8.85×10⁻¹² F/m) | 物理定数。問題文か公式集に載る |
| εr | イプシロンアール | 比誘電率(真空の何倍か) | 問題文に「εr = 2」などと提示される |
「基準 × 倍率」で読む
真空の誘電率 ε₀ を 基準 として、その媒質ならではの 倍率 である εr をかけると、媒質中の誘電率 ε ができ上がる。これが ε = ε₀ × εr の意味するところです。
身長でたとえるなら、ε₀ が「平均身長」、εr が「平均の何倍か」、ε が「実際の身長」。基準と倍率をかけると実物になる、という、ごく素直な関係です。
だから、真空そのもの(εr = 1)なら ε = ε₀ となり、係数は 1/(4πε₀) = 9.0×10⁹ に戻ります。2つの公式は、やはり地続きなのです。
比誘電率 εr のワナ:「大きいほど強い」は不正解
ここが電験三種で 最頻出のひっかけポイント です。
問:比誘電率 εr が大きくなると、静電力 F はどうなるか?
「電気っぽい何かの数値が大きい=力も強そう」と直感で答えると、まんまと不正解になります。
正解は 「力は弱くなる」。
理由は公式を展開すれば一目瞭然
ε を ε₀ × εr に展開して、省略せずに書き下してみます。
εr は 分母 にいます。分母が大きくなれば、答えは小さくなる ─ つまり 反比例 です。
| εr の値 | 静電力 F |
|---|---|
| εr = 1(真空) | 基準(F) |
| εr = 2 | 1/2 倍に弱まる |
| εr = 5 | 1/5 倍に弱まる |
| εr = 10 | 1/10 倍に弱まる |
イメージで押さえる
「媒質という邪魔者が濃いほど、電界が広がりにくく、力が伝わりにくい」と捉えるとしっくり来ます。水の中では声が届きにくいのと同じ感覚です。
そして実務的な対策としては、省略せずに分母まで丁寧に書く。これに尽きます。ε のまま暗算しようとすると εr の居場所を見失いますが、分母に εr を書き出してしまえば、間違えようがありません。
クイズ:εr = 2 のとき、静電力は何倍?
真空中に置かれた2つの電荷の間に働く静電力を F とする。 まったく同じ条件で、比誘電率 εr = 2 の媒質中に電荷を置いた場合、静電力は何倍になるか?
少し考えてみてください。ここまで読んできたなら、もう手が動くはずです。
…
正解は 1/2倍。
展開した式
より、F は εr に反比例します。εr が 1 から 2 になれば分母も2倍。よって F は 1/2倍 に弱くなる、というわけです。
この「何倍になるか」を問う形は、電験でとても好まれる出題です。値をすべて代入して計算する必要はありません。変わった文字だけを見て、比例か反比例かを判断する ─ これができれば、10秒で答えが出ます。
まとめ
| 押さえるポイント | 内容 |
|---|---|
| 公式の本数 | 2種類だけ。後ろは共通の |
| 真空中の係数 | 9.0×10⁹ |
| 真空以外の係数 | 1/(4πε) |
| 誘電率の中身 | ε = ε₀ × εr |
| εr の位置 | 分母。大きいほど力は弱くなる |
暗記フレーズ:真空=9×10⁹、真空以外=1/(4πε)
このフレーズと「分母の εr」さえ押さえれば、静電力は確実な得点源になります。
⚠ ここを間違える人が多い
この単元で失点する人は、決まって同じ3か所で足をすくわれます。逆に言えば、この3つを避けるだけで正答率は跳ね上がります。
❌「誘電率が高い=電気をよく通す=力も強い」と考えてしまう
✅ 正しくは 逆 です。誘電率の「誘電」は、電気を通す性質ではありません。公式の分母に居座っている以上、値が大きくなれば力は弱まる ─ 感覚ではなく、式の形で判断してください。「分母にいる文字は、大きくなると結果を小さくする」。これは電験全体で使える鉄則です。
❌ εr が距離 r のように2乗で効くと思い込む
✅ 2乗になっているのは 距離 r だけ です。εr は1乗のまま。名前に r が入っているせいで距離と混同する人がいますが、εr の r は relative(比)の r であって、距離とは何の関係もありません。εr が2倍なら力は 1/2 倍、1/4 倍ではありません。
❌ 媒質を変えたとき「関係する量が全部そろって変わる」と考える
✅ 変わるものと変わらないものが混在します。静電力・電界・電位は εr が大きいほど弱くなりますが、電束密度は媒質を変えても変わりません。「まとめて εr 倍」「まとめて 1/εr 倍」と一括処理せず、量ごとに分けて考える癖をつけましょう。このあたりが不安なら、〈電気力線と電界|「見える化」で9割が一発理解する5大ルール〉で電界と電気力線の関係を先に固めておくと、混乱がほどけます。
過去問ではこう出た
この単元は、電験三種の理論で 定期的に顔を出す常連 です。動画にひも付けられた過去問・電験ジムの収録範囲では、次の3問が該当します。
| 出題年度 | 問番号 |
|---|---|
| 令和3年 | 問2 |
| 令和6年 上期 | 問1 |
| 令和7年 上期 | 問2 |
いずれも理論科目の 序盤(問1〜問2) に配置されているのが特徴です。つまり、試験開始直後に出会う問題ということ。ここでスムーズに処理できるかどうかが、その後の時間配分と気持ちの余裕を大きく左右します。
問われ方も、本記事で扱った内容とほぼ重なります。「真空か媒質か」を読み取って公式を選び、比誘電率が力にどう効くかを判断する ─ この2ステップです。数値をすべて代入させる計算問題より、「何倍になるか」「強くなるか弱くなるか」を問う形が目立ちます。
3年に1度は出ると考えて、確実に取りにいきましょう。
よくある質問
Q. 9.0×10⁹ という数字は、暗記するしかないのでしょうか?
覚えてしまうのがいちばん速いです。ただし丸暗記が苦手な方は、「1/(4πε₀) を計算した結果」と理解しておくと安心できます。ε₀ ≒ 8.85×10⁻¹² を代入して計算すれば、確かに約 9×10⁹ になります。試験本番では公式集に載っていることもありますが、その場で計算する時間はもったいないので、やはり「キュー・かける・10の9乗」と口に出して覚えてしまうのが得策です。
Q. 真空と空気は、区別しなくてよいのですか?
実用上はほぼ同じものとして扱います。空気の比誘電率はほぼ 1 に近い値なので、εr = 1、つまり真空とみなして 9.0×10⁹ の式を使って構いません。問題文に「空気中」とあれば、真空の公式でよい ─ そう覚えておいてください。逆に「比誘電率 εr の媒質中」「油中」「ガラス中」のように、明確に別の材料が指定されたときだけ 1/(4πε) の式に切り替えます。
Q. 電荷の符号が違う場合、公式に変化はありますか?
公式の形は変わりません。Q₁Q₂ の部分に符号をそのまま入れると、答えの符号で向きが分かります ─ 同符号なら反発、異符号なら引き合う、という結果になります。ただし電験の計算問題では、力の 大きさ を求めさせるケースがほとんどです。まずは絶対値で大きさを出し、向きは「同じ符号は反発、違う符号は引き合う」という原則で別途判断する。この手順のほうが、符号ミスを減らせます。
なお、この「電荷どうしが力を及ぼし合う」という考え方を押さえておくと、次の単元である〈静電遮蔽は『導体で囲えば電界は影響しない』で一発攻略〉が驚くほどスムーズに理解できます。静電力 → 電界 → 遮蔽、と話がきれいにつながっていますので、勢いのあるうちに続けて読んでみてください。
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