静電遮蔽は『導体で囲えば電界は影響しない』で一発攻略
電験三種「理論」科目で9割が混乱する静電遮蔽を、『導体で囲えば電界は影響しない』の魔法のフレーズで一発攻略。空洞内に電荷があるパターン1(接地で外部遮断)と、外部に帯電体があるパターン2(空洞内は電界ゼロ)の2パターンを、誘導電荷の動きから丁寧に整理する1記事です。
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この記事で身につくこと
静電遮蔽の問題は、図がシンプルなわりに正答率が上がりません。理由ははっきりしていて、「どっちの面に、どっちの符号の電荷が出るのか」 と 「接地線をつないだら何が消えるのか」 の2つが、頭の中でごちゃ混ぜになっているからです。
図を見た瞬間に「あ、これは内側がマイナスだな」と手が動く。そこまで持っていくのがこの記事のゴールです。

この記事を読み終わると、次の状態になります。
| 身につくこと | 到達レベル |
|---|---|
| 静電誘導の符号の決まり | 近い側は逆符号、遠い側は同符号を即答できる |
| 空洞内に電荷がある場合 | 内側の面と外側の面に出る電荷を図に書ける |
| 外部に帯電体がある場合 | 空洞内部の電界が 0 だと理由つきで説明できる |
| 接地の役割 | 接地で消えるものと残るものを区別できる |
| 導体内部の電界 | どんな場合でも 0 だと言い切れる |
覚えることは、実はたった2行です。導体で囲めば中は無風、接地すれば外も無風。 これだけで、この単元の問題はほぼ処理できます。
暗記フレーズ:導体で囲めば中は無風、接地すれば外も無風
この単元は、公式で解く分野ではありません。電荷がどこに逃げるかという「行き先」の話です。だから言葉で覚えたほうが速い。
導体で囲めば中は無風、接地すれば外も無風
風のイメージで持っておくと、後で必ず効きます。
- 外でどれだけ嵐が吹いていても、金属の箱の中は無風(=外部の電界は中に入らない)
- 箱の中で嵐を起こすと、そのままでは外に漏れる(=外側の面に電荷が出る)
- そこで接地という「排水口」をつけてやると、外に漏れる分だけが地面に流れ落ちる
「囲む」と「接地する」は別の仕事をしている、というのがこの単元の核心です。ここを分けて覚えるだけで、正答率がまるで変わります。
ステップ1:まず「静電誘導」を思い出す
静電遮蔽の話は、すべて 静電誘導 の上に乗っています。土台がぐらついていると、遮蔽の説明を読んでも「なんとなく」で終わってしまうので、ここだけ先に固めます。
静電誘導とは、帯電していない導体に、帯電体を近づけたときに、導体の表面で電荷が偏る現象のことです。
符号の決まり方は1行
| 位置 | 現れる電荷の符号 |
|---|---|
| 帯電体に 近い側 の面 | 帯電体と 逆 の符号 |
| 帯電体から 遠い側 の面 | 帯電体と 同じ 符号 |
近い側は逆、遠い側は同じ。プラスとマイナスが引き合う、という小学校で習ったことがそのまま効いています。
ここで大事なのは、導体全体の電荷量は変わっていないという点です。もともと 0 なら、偏ったあとも合計は 0。プラスとマイナスが端と端に分かれただけで、増えても減ってもいません。
電荷は「湧いて出る」のではなく「引っ越す」だけ。この感覚があると、後のステップで符号を間違えません。
なぜ電荷が動くのかというと、導体の内部(金属の部分)の電界が 0 になるまで自由電子が移動するからです。電界が残っている限り自由電子は力を受けて動き続け、動きが止まったときには内部の電界がぴったり打ち消されている。これが導体の性質そのものです。
電界そのものが怪しいと感じたら、先に電気力線と電界|「見える化」で9割が一発理解する5大ルールに戻っておくと、この先の理解が一気に速くなります。
ステップ2:出題は2パターンしかない
静電遮蔽の問題は、無限にバリエーションがあるように見えて、電荷がどこにあるかで2つに分かれるだけです。

| パターン | 電荷の位置 | 問われること |
|---|---|---|
| パターンI | 中空導体の 空洞の中 に電荷がある | 内側・外側の面の電荷/接地したら外はどうなるか |
| パターンII | 中空導体の 外 に帯電体がある | 空洞内部の電界はどうなるか |
問題文を読んだら、まず「電荷は中か、外か」だけを確認してください。ここが決まれば、あとは決まった手順をなぞるだけになります。
逆に言うと、この仕分けをせずに図を眺めるから迷うのです。図の中の丸をぼんやり見て「うーん」となる時間が、いちばんもったいない。
ステップ3:パターンI 前半 — 空洞の中に電荷を置く
中空導体(金属の殻)の空洞の中に、正電荷 をポツンと置いた場合を考えます。

起きることは、ステップ1の静電誘導そのものです。
- 空洞内の に引き寄せられて、導体の 内側の面 に が集まる
- その分、押し出された同符号の電荷が 外側の面 に として現れる
- 導体の金属部分そのものの電界は、当然
内側の面に現れる電荷は、必ず空洞内の電荷と 同じ大きさで逆符号 になります。これは「ちょうど打ち消すところまで電子が動く」からで、中途半端な量で止まることはありません。
そして重要なのが、外側の面に が出ているということは、この状態では外部に電界が漏れているということです。囲んだだけでは、中の電荷は外から隠せていません。
ステップ4:パターンI 後半 — 接地線をつなぐと外が消える
では、さきほどの中空導体に接地線をつないだらどうなるか。ここがこの単元の山場です。

外側の面にいた は、大地という「いくらでも電荷を受け入れてくれる巨大な貯水池」とつながった瞬間、そこへ逃げていきます。結果として 外側の面の電荷はなくなり、導体の外部の電界は 0 になります。
接地で消えるもの・残るもの
| 項目 | 接地前 | 接地後 |
|---|---|---|
| 空洞内の電荷 | (そのまま) | |
| 内側の面の電荷 | (そのまま) | |
| 外側の面の電荷 | 0(大地へ逃げる) | |
| 導体の外部の電界 | あり | 0 |
| 空洞内部の電界 | あり | あり(変わらない) |
ここを取り違える人が本当に多いので、はっきり書きます。接地しても、空洞の中の電界は消えません。 消えるのは外側だけです。
理由は単純で、空洞内の はそのまま居座っており、内側の面の もその相手として必要だからです。大地へ逃げられるのは、外側にはみ出していた分だけ。
内側の は とペアで動けない。外側の だけが行き場を失って地面に落ちる。
これで「接地すれば外も無風」という後半のフレーズが完成します。
ステップ5:パターンII 前半 — 外に帯電体を近づける
今度は逆です。中空導体の 外側 に、正の帯電体を近づけます。

ここでも起きるのは静電誘導だけです。導体の外側の面のうち、
- 帯電体に 近い側 … 負電荷が集まる
- 帯電体から 遠い側 … 正電荷が残る
という偏りが生じます。パターンIと違って、電荷が現れるのは 外側の面だけ です。空洞に面した内側の面には、何も現れません。
なぜかというと、外の帯電体が作る電界は、外側の面に集まった誘導電荷によって導体の金属部分の中でぴったり打ち消され、そこから内側へは一歩も進めないからです。金属の壁のところで、電界は完全に止まります。
この「打ち消し合って合成電界が 0 になる」感覚は、静電力の公式は『真空=9×10⁹、真空以外=1/4πε』で一発攻略で扱った力の重ね合わせと同じ考え方です。向きが逆で大きさが同じなら、足して 0。
ステップ6:パターンII 後半 — 空洞の中は完全な無風

結論から書きます。
外にどれだけ強い帯電体を持ってきても、空洞の内部の電界は 0 です。しかもこれは、接地していてもいなくても同じです。ここがパターンIとの決定的な違いになります。
2パターンで接地の効き方が違う
| 接地なし | 接地あり | |
|---|---|---|
| パターンI(電荷が中) | 外に電界が漏れる | 外の電界が 0 になる |
| パターンII(帯電体が外) | 中の電界は 0 | 中の電界は 0(変化なし) |
つまり、接地が効くのはパターンIだけ。パターンIIでは接地は結果を変えません。問題文に「接地した」と書いてあると、つい何かが変わる気がしてしまいますが、外からの影響を防ぐだけなら囲うだけで足りているのです。
これが、精密機器やケーブルを金属で覆う「シールド」の原理そのものです。外部からのノイズ(電界)を中に入れないために、導体で囲む。教室の話ではなく、実務でそのまま使われている考え方です。
ステップ7:理解度チェック — 球形導体の内部の電界

ここまでの考え方が入っているか、ひとつ確認します。
問:電荷 を与えた、中身の詰まった球形の導体がある。この球の 内部 の電界の大きさはいくらか。
答えは 0 です。
導体に与えた電荷は、互いに反発し合って すべて表面に分布 します。内部に電荷は残りません。そして、表面に一様に分布した電荷が球の内部に作る電界は、あらゆる向きから打ち消し合って完全に 0 になります。
| 位置 | 電界 |
|---|---|
| 球の内部 | |
| 球の表面より外 | 中心に全電荷 が集まっているとみなして計算 |
中実(中身が詰まっている)でも中空(空洞がある)でも、導体の金属部分の内部の電界は常に 0。この1点だけ覚えておけば、球でも箱でも同じように扱えます。
なお、球の外側については「中心に が集まっているとみなす」という扱いになり、ここから先はコンデンサの静電容量の話につながっていきます。次の一手としては、コンデンサは「絶縁体を導体でサンドイッチ」、9割が公式で混乱する理論をスッキリ攻略へ進むのが自然な流れです。
ステップ8:保存版・誘導電荷と接地の早見表
最後に、ここまでの内容を1枚に畳みます。試験直前はこの表だけ眺めれば十分です。

| 状況 | 内側の面 | 外側の面 | 空洞内の電界 | 外部の電界 |
|---|---|---|---|---|
| 空洞内に /接地なし | あり | あり | ||
| 空洞内に /接地あり | 0 | あり | 0 | |
| 外に正の帯電体/接地なし | 0 | 近い側 ・遠い側 | 0 | あり |
| 外に正の帯電体/接地あり | 0 | 近い側 のみ | 0 | あり |
表の縦を見ると、空洞内の電界の列は接地でびくともせず、外部の電界の列だけが接地で変わることが一目で分かります。この「列で覚える」やり方が、いちばん事故が少ないです。
まとめ
静電遮蔽は、覚える公式がほとんどない代わりに、状況の仕分けがすべての単元です。
| 覚えること | 内容 |
|---|---|
| 合言葉 | 導体で囲めば中は無風、接地すれば外も無風 |
| 静電誘導の符号 | 近い側は逆、遠い側は同じ |
| 空洞内に電荷(パターンI) | 内側 ・外側 。接地すると外側が消える |
| 外に帯電体(パターンII) | 空洞内の電界は 0。接地しても変わらない |
| 導体内部の電界 | 中実でも中空でも、常に 0 |
図を見て手が止まったら、まず 「電荷は中か、外か」 だけを声に出して確認してください。それだけで半分は片づきます。
公式を何本も暗記しないと戦えない分野が多いなかで、この単元は言葉と図だけで押し切れる、数少ない「取りやすい」ところです。苦手意識が先に立ちがちですが、仕組みが分かれば、ここは確実に得点源に変えられます。
⚠ ここを間違える人が多い
同じところで、多くの人が同じように転びます。先に知っておけば避けられるので、2つだけ挙げます。
❌「接地すれば、中の電界も消える」と思い込む
✅ 正しくは、接地で消えるのは外部の電界だけです。
空洞の中に電荷が居座っている以上、内側の面にはその相手役の誘導電荷が必要で、両者の間には必ず電界が存在します。大地へ逃げられるのは、外側の面にはみ出していた分だけ。
「接地=すべてリセット」というイメージを持っていると、ここで必ず失点します。接地線は外側の面にしかつながっていない、と絵で持っておくのが安全です。
❌「外に帯電体があるとき、内側の面にも電荷が出る」と考える
✅ 正しくは、外に帯電体があるときは、電荷が現れるのは外側の面だけです。内側の面には何も出ません。
外部の電界は導体の金属部分で完全に打ち消されて止まるため、内側の面まで届かないからです。パターンIの図(内側にも外側にも電荷が出る)を、そのままパターンIIに当てはめてしまうのが典型的な間違いです。
見分け方:内側の面に電荷が出るのは、空洞の中に電荷があるときだけ。
よくある質問
Q. 金属の網(メッシュ)でも静電遮蔽はできますか?
できます。すきまがあっても、電界を遮る効果は十分に働きます。実際、電子レンジの扉には細かい金属の網が入っていて、中の電磁波が外に漏れないようになっています。
試験では「中空の導体球」といったきれいな形で出題されますが、囲むものが導体でつながっていることが本質であって、すきまのない板であることは必須ではありません。
Q. 接地するとなぜ電荷が逃げるのですか?
大地は、電荷をいくら受け取っても電位がほとんど変わらないほど巨大な導体として扱われるからです。
接地線でつなぐと、導体と大地は電気的にひとつながりになります。外側の面に集まっていた電荷は、互いに反発し合っているので、広い場所(大地)へ出ていったほうが安定する。結果として外側の電荷は散り、導体の電位は大地と同じ 0 になります。
「地面が電荷を吸い取る」というより、「窮屈だった電荷が広い所へ逃げていく」と考えるとしっくりきます。
Q. 導体の内部の電界が 0 になるのは、いつでも成り立ちますか?
静電的につり合っている(電荷の移動が止まっている)状態であれば、常に成り立ちます。電験三種で扱う静電気の問題は、すべてこのつり合った状態を前提にしています。
もし内部に電界が残っていれば、自由電子がその力を受けて動き続けてしまい、「止まっている」という前提と矛盾します。電荷の移動が止まった=内部の電界が 0 になった、という言い換えだと思って構いません。
だからこそ、中実の球でも中空の箱でも、金属の部分の中は必ず 0 と言い切れるわけです。
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