合格後の進み方(全3回・第3回)
電験三種の実務経験は5年ではありません ── 最短1年になる仕組み
「三種は5年」と書いてある情報は、更新されていない可能性があります。制度は令和6年に2回変わりました。
2026年8月24日 公開 / 2026年8月26日 更新
「電験三種で独立するには、実務経験が5年」
そう書いてある記事を読んで、そこで計画を止めていませんか。その情報は、更新されていない可能性があります。
制度は令和6年に2回変わりました。6月1日に1回、11月15日にもう1回です。それ以前に書かれた記事は、今の制度を反映していません。
いまの制度では、条件がそろえば1年です。5年ではありません。この記事では、どうすれば縮むのかを順番に見ていきます。
まず、早見表を見てください
| あなたの状態 | 通常の設備 | 小規模設備※に限って業務を行う場合 |
|---|---|---|
| 第三種・何もしていない | 5年 | 4年 |
| 第三種・保安管理業務講習を修了 | 3年 | 2年 |
| 第三種・講習+保安管理業務訓練を修了 | 2年 | 1年 |
| 第二種・何もしていない | 4年 | 3年 |
| 第二種・講習を修了 | 3年 | 2年 |
| 第二種・講習+訓練を修了 | 2年 | 1年 |
| 第一種・何もしていない | 3年 | 2年 |
| 第一種・訓練を修了 | 2年 | 1年 |
※ 小規模設備=次のすべてに当てはまる需要設備。① 設備容量が300kVA以下 ② 受電設備がキュービクル式 ③ 主遮断装置が高圧限流ヒューズ(PF)+高圧交流負荷開閉器(S)の組み合わせ
根拠:平成15年経済産業省告示第249号 第1条(2026年8月時点)
この一律3年化は令和6年6月1日から、講習+訓練で2年になるのは令和6年11月15日からです。古い情報には載っていません。
三種でも「1年」になり得ます
早見表をもう一度見てください。第三種で、講習と訓練を受けて、小規模設備に絞れば1年です。
5年(何もしない)
↓ 保安管理業務講習を修了 −2年
3年
↓ 保安管理業務訓練も修了 −1年
2年
↓ 300kVA以下・キュービクル式・PF・S形に絞る −1年
1年
5年と1年では、人生の予定がまるごと変わります。
ただし、条件が3つあります
① 三種の方は「講習 → 訓練」の両方が必要です
訓練だけでは2年になりません。
| 免状 | 2年にする条件 |
|---|---|
| 第三種・第二種 | 講習と訓練の両方 |
| 第一種 | 訓練のみ |
ここを取り違えて、訓練だけ受けても2年にはなりません。順番があります。
② −1年は、自分から申し出ないと適用されません
これは、知らないと確実に損をします。
なお、告示第一条第二項の規定の適用を受けようとするときは、併せてその旨を当該産業保安監督部長に申し出なければならない。
── 経済産業省「実務経験期間の確認に係る運用について」
告示第1条第2項というのが、300kVA以下・キュービクル式・PF・S形の設備での −1年のことです。
③ 小規模設備に絞ると、扱える設備が限られます
−1年には対価があります。独立後に扱える設備が、その範囲に限られます。収入にも関わります。
それでも、まず1年で開業してから広げる、という道があります。次で書きます。
免状をもらう「前」の経験も、半分は数えられます
年数は原則として、免状の交付を受けてからの年数です。ただし、交付前の期間は、その2分の1を計上できます。
公式サイトに、こういう計算例が載っています。
第三種の免状を5年の実務経歴により取得した場合、免状交付前に積んだ実務経験5年のうち、半分の2.5年を充当することができ、免状交付後に必要な実務経験は残りの2.5年となる(本来は5年必要)。さらに保安管理業務講習を修了した場合は、必要年数が3年なので、免状交付後に必要な実務経験は0.5年(6か月)となる。
── 中部近畿産業保安監督部近畿支部(2026年1月時点)
5年が6か月になっています。これは実務経歴で免状を取った人の例ですが、試験で取った人にも、交付前の経験の1/2計上は使えます。
ただし、交付前の経験も、実務経験として認められる業務でなければ数えられません。低圧だけの仕事は、半分にもなりません(第2回)。
「5年待ってから独立」だけが道ではありません
この記事でいちばんお伝えしたいところです。
認められます。…設備21件の点検等を1月分として期間を算定します。また、この場合には、補助者として実務に従事する方法と…併用して実務経験を積むことが可能です
── 主任技術者制度に関するQ&A(令和8年1月)3.1
つまり、小規模設備で受託して働いている期間も、実務経験として算定されます。こういう進み方ができます。
【1年目】講習+訓練を受ける → 小規模設備の要件で 1年で承認を受ける
↓
【2年目〜】小規模設備を受託して働く ← この期間も実務経験として算定される
↓
【数年後】通常の設備も扱えるところまで対象を広げる
「5年待ってから、いきなり独立」ではなく、「先に小さく始めて、働きながら広げる」。制度上、認められている道です。
講習と訓練の、費用と日数
短縮できると分かっても、タダではありません。ここは正直に書きます。
| 保安管理業務講習 | 保安管理業務訓練 | |
|---|---|---|
| 縮む年数 | 5年 → 3年(2年ぶん) | 3年 → 2年(1年ぶん) |
| 受講料 | 約 121,000円(税込) | 約 463,100円(税込) |
| 時間 | 座学23時間+実習6時間 | 75時間(うち座学5時間) |
| 日数 | 4〜5日 | 11日間 |
| 定員 | 24名 | 20名 |
出典:いずれも2026年8月に確認した一例(講習=ある協会および日本エネルギー管理センター、訓練=関西電気保安協会・東北電気保安協会)
| こういう方は訓練を受ける価値があります | こういう方は講習だけで十分かもしれません |
|---|---|
| 年数があと1年で、その1年が待てない | あと2年以上あり、働きながら積める |
| 先に1年で開業して広げることを狙う | 勤務先で実務経験を積み続けられる |
| 実務の型を体系的に習いたい | 現場経験が十分にある |
費用も日程も、実施機関ごとに違います。講習でも、テキスト代が受講料に含まれる機関と、別に約12,000円かかる機関がありました。申し込む前に「テキスト代は込みですか」と必ず確認してください。
実施機関の一覧と最新の費用は、経済産業省の「保安管理業務講習について」「保安管理業務訓練について」のページから探せます。
よくある質問
Q. 講習を受ければ、実務経験がなくても独立できますか。
いいえ。講習は必要な年数を短くするものです。年数そのものが0になるわけではありません。三種で講習と訓練を受け、扱う設備を絞っても、1年の実務経験は必要です。
Q. 訓練だけ受けるのでは、だめですか。
第三種・第二種の方は、講習を受けたうえで訓練を受ける必要があります。訓練だけでは2年になりません。第一種の方は訓練のみで2年です。
Q. 免状を取る前の経験は、まったく無駄ですか。
いいえ。その2分の1を通算できます。ただし、実務経験として認められる業務であることが前提です。
Q. 300kVA以下の設備に絞ると、何が変わりますか。
必要な年数が1年短くなります。その代わり、独立後に扱える設備がその範囲に限られます。なお、この短縮は自分から申し出ないと適用されません。
Q. 会社に勤めながら、副業として受託できますか。
できません。個人で外部委託を受託するには「他に職業を有していないことの説明書」が必要で、専業が前提です。
Q. 自分で小さい太陽光発電所を持って、自分で管理すれば経験になりますか。
なりません。10kW以上50kW未満の太陽光は小規模事業用電気工作物にあたり対象外です。また、自らを選任すること、自らに外部委託することも、国が明確に否定しています。
Q. 講習と訓練は、いくらかかりますか。
実施機関によって違います。2026年8月に確認した一例では、講習が税込121,000円、訓練が税込463,100円でした。三種の方が2年にするには両方必要なので、合計で約58万円になります。最新の費用は、経済産業省のページから実施機関を探してご確認ください。
Q. 実務経歴証明書は、押印してもらう前に見てもらえますか。
はい。2026年8月に産業保安監督部(近畿支部)へ照会したところ、外部委託承認に係る実務経歴証明書についても、押印前または署名前の段階で内容確認の相談ができる、との回答でした。ただし、事前確認をしても正式申請時の審査結果を保証するものではない、とのことです。会社に何度も押印を頼み直さずに済むので、使わない手はありません。
Q. 押印ではなく電子署名でもよいですか。
同じ照会で、電子署名でも受理可能、との回答でした。なお、方法が変わるだけで、証明する人の同意そのものは必要です。
Q. 独立したら、どこの仕事でも受けられますか。
いいえ。電気事業法施行規則に、委託契約の相手方の主たる連絡場所が、その事業場に「遅滞なく到達し得る場所」にあること、という要件があります(第53条第2項第6号)。そして国の内規に、この「遅滞なく到達」とは2時間以内に到達することを要する、と定められています。
つまり、受けられるのは自分の連絡場所から2時間以内に行ける設備だけです。年数を数える前に、一度地図を見てください。
なお同じ内規には、離島や過疎地域などに設置される設備については、審査にあたって保安管理業務の円滑かつ適切な実施に支障が生じないよう配慮する、という規定もあります。免除するとは書かれていませんので、該当しそうな方は監督部にご相談ください。
Q. 電気管理技術者の協会には、誰でも入れますか。
協会によって条件が違います。会員を増やしたい側として入会案内を出している協会もあれば、正会員の紹介が必要と明記している協会もあります。会費についても、確認した4協会はいずれも公表していませんでした。お住まいの地域の協会に直接お問い合わせください。
で、あなたは何年でしょうか
ここまで読んで、こう思われたはずです。
「仕組みは分かった。で、自分は結局あと何年なんだ」
そして、たぶん、すぐには計算できません。理由があります。
| 絡んでいるもの | 内容 |
|---|---|
| 免状の種類 | 三種・二種・一種で出発点が違う |
| 講習・訓練 | 受けた/これから/三種は順番の条件つき |
| 設備の条件 | 3つすべてに当てはまるか。しかも申し出が要る |
| 免状交付前の経験 | その半分を通算できる |
| 立場 | 選任か、補助者(21件=1月)か、工事業者(21日=1月)か |
これらが掛け合わさるので、素人には計算できないようになっています。
そして、年数が確定したあとに、本当の壁が来ます。会社に、どう切り出して証明をもらうのか。実務経歴証明書に、何をどう書けば通るのか。会社が渋ったとき、どうするのか。
そこは、別の記事であらためて書きます。
この記事の内容は2026年8月時点で確認したものです。制度は改正されます。 最終的な判断は産業保安監督部が行います。手続きの前に必ずご確認ください。