合格後の進み方(全3回・第2回)
その仕事、実務経験になりますか ── 認められない10種
「もう3年やったから、あと2年」。その3年、本当に数えられていますか。先に確かめてください。
2026年8月24日 公開 / 2026年8月28日 更新
「もう3年やったから、あと2年で独立できる」
そう思って数えている方に、先に確認してほしいことがあります。その3年、本当に数えられていますか。
電気管理技術者として独立するには、決められた年数の実務経験が要ります。ただ、何を実務経験と数えるかは、制度で細かく決まっています。
対象外の業務は、何年やっても1日も数えられません。そして、対象内であっても、立場によって「1年の重み」が3通りに変わります。
ここを確かめないまま年数を数えていると、いちばん最後で足りないことが分かります。先に確かめてください。この記事は、そのための記事です。
対象は「事業用電気工作物の工事・維持・運用」
制度が見ているのは、事業用電気工作物についての次の3つです。
① 工事
| 認められるもの | 除かれるもの |
|---|---|
| 新設・増設・改造・取り換え工事における電気設備・電気機械器具・付帯設備の設計 | 基礎工事、制御盤等の機器製造のみ |
| 機器・材料の据え付け、組立工事 | 土木工事、製造工場での材料加工・組立・調整 |
| 配線工事 | — |
| 機器調整および性能検査 | — |
② 維持
巡視点検・定期点検・修理・試験・測定など、設備の機能を維持するための保守管理業務。
多くの方の日常業務は、ここに入ります。月次点検で絶縁抵抗を測る。受電電力を記録する。年次点検の停電作業に立ち会う。これらはすべて「維持」です。
③ 運用
運転状態の監視、周波数・電圧・電流の調整、電力需給の調整、系統の変更、事故の復旧における運転・切り換え操作・給電指令、事故の原因究明と報告。
これらに直接関係する業務
上の3つに直接関係し、現場に常駐または定期的に出向く必要がある業務も含まれます。
- 工事計画の認可申請書等の作成
- 電気事故防止対策の業務
- 保安の指導監督の業務
- 検査に関する業務
出典:実務経歴証明書 記載要領(経済産業省)
認められない業務(10種)
この記事の主役です。
| # | 認められない業務 |
|---|---|
| 1 | 低圧のみの電気工作物(一般用・事業用とも)の工事・維持・運用 |
| 2 | 電気の知識・技能を必要としない単なる設置・組立作業(土木工・組立工・溶接工など) |
| 3 | 警備のための監視・記録で、電気工作物の知識を必要としないもの |
| 4 | 受電設備を含まない需要設備・負荷設備のみの維持・運用 |
| 5 | 学校・研究所の実験設備・試験設備に係る業務 |
| 6 | エックス線発生装置・ネオン変圧器・テレビ受像器など、二次側にだけ高電圧を発生させる機器の業務 |
| 7 | 電気機械器具・計器類の製造に係る業務 |
| 8 | 電気鉄道用電気設備のうち電車線・トロリー線に係る業務 |
| 9 | 船舶(非自航船を除く)・車両・航空機内の電気設備に係る業務 |
| 10 | 電気事業法が適用されない海外における業務 |
出典:実務経歴証明書 記載要領(経済産業省)
この10種は、複数の公式ページで同じ内容が確認できました。思い込みで判断せず、ここに当たっていないかを見てください。
とくに引っかかりやすい3つ
①「低圧のみ」
工場や店舗の電気設備を長年見ていても、高圧の受電設備が絡んでいなければ数えられません。
②「受電設備を含まない」
これは見落とされがちです。同じ建物の中でも、受電設備を含まない負荷設備だけを見ていた場合は対象外になります。
「うちには高圧があるから大丈夫」と思っていた方は、自分が受電設備そのものに関わっていたかどうかを確認してください。
③「海外」
海外プラントの経験は、電気事業法の適用外なので数えられません。経験としては貴重でも、この制度では0です。
小さい太陽光(10〜50kW未満)は認められません
誤解が非常に多いところです。
| 設備 | 実務経験になるか |
|---|---|
| 事業用電気工作物(高圧受電・太陽光50kW以上など) | なる |
| 小規模事業用電気工作物(10kW以上50kW未満の太陽光、20kW未満の風力など) | ならない |
国のQ&Aで、明確に否定されています。さらに、次の2つも国が明確に否定しています。
| できないこと | 出典 |
|---|---|
| 自分を自分で選任する | 主任技術者制度に関するQ&A(令和8年1月)3.6 |
| 自分に外部委託する | 同上 |
つまり「小さい太陽光を自分で買って、自分で管理して経験にする」という方法は取れません。
学校・研究所でも「電源設備」なら認められます
先ほどの10種の5番に「学校・研究所の実験設備・試験設備」がありました。これを「学校や研究所の経験はすべてだめ」と読んでしまうと、損をします。
除外されているのは、実験設備・試験設備です。学校や研究所の受電設備・電源設備を維持・運用していたなら、それは対象になります。
そして、ここは書き方が効きます。
実務経歴証明書の「職務の内容」に「実験設備の保守」と書けば、まず引っかかります。「高圧受電設備(キュービクル)の月次点検・年次点検」と書けば、話が変わります。
嘘を書くという意味ではありません。実際にやっていたことを、制度の言葉で正確に書く、という意味です。
同じ1年でも、重みが3通り違います
ここを知らないまま数えていると、最後で足りません。
| あなたの立場 | 数え方 |
|---|---|
| 選任された電気主任技術者として従事した/選任者の下で、その事業場に常駐して従事した | 期間をそのまま数えます(1年働けば1年) |
| 電気管理技術者・保安業務従事者・その補助者として従事した | 21件の点検等で「1か月」 |
| 電気工事業者・その従業者として従事した | 21日の従事で「1か月」 |
出典:経済産業省「実務経験期間の確認に係る運用について」(令和6年11月改正時点)
21件・21日ルールの落とし穴
| ルール | 内容 |
|---|---|
| 超えた分は繰り越せません | 「21件を超える点検等を実施した場合に、同月以降の件数に充当することは認められない」= 1か月に40件やっても1か月分です |
| 足りない月どうしは合算できます | 「1月間の従事実績が21件又は21日に満たない場合には、他の同様に満たない月に充当することができる」= 10件の月と11件の月で1か月分 |
補助者や工事業者の立場で積む方は、今日から月ごとの件数を記録してください。その記録が、そのまま提出書類(点検等実施事業場一覧・工事工程一覧)になります。後から思い出して書ける書類ではありません。
判断に迷いやすい5つのケース
実際に多い、線引きが微妙なケースを挙げます。
| ケース | 考え方 |
|---|---|
| 高圧受電の工場にいるが、自分が見ているのは生産設備だけ | 受電設備を含まない負荷設備のみの業務は対象外です。受電設備そのものに関わっていたかで判断が変わります |
| ビル管理会社にいて、複数の建物を巡回している | 監督部への照会では、実際の勤務実態・業務内容などを総合的に勘案して判断する、との回答でした(下記) |
| 委託先の建物で点検しているが、その建物に選任者がいない | 同じ照会で、業務内容や従事状況を踏まえて個別に判断する、との回答でした(下記)。一律にだめ、ではありません |
| 太陽光発電所を見ているが、50kW未満 | 小規模事業用電気工作物にあたり、対象外です |
| 学校の受電設備を見ている | 対象になります。除外されているのは実験設備・試験設備です |
監督部に聞いてみました(2026年8月)
判断が分かれる点は、資料を読んでも決まりません。そこで、産業保安監督部(近畿支部)に照会しました。送った当日のうちに回答をいただけました。
| 聞いたこと | 回答の要旨 |
|---|---|
| 「常駐」の目安はあるか | 主任技術者制度Q&Aの「常時勤務」の目安である週40時間(週5日・1日8時間勤務)と同様に考えてよい |
| 複数の事業場を巡回する働き方は | 実際の勤務実態・業務内容などを総合的に勘案して判断する |
| 外部委託されていて選任者がいない建物での勤務は | 実際の業務内容や従事状況を踏まえて個別に判断する。証明を設置者ではなく所属会社から受ける場合は、設置者と所属会社の間の委託契約書の写しなどで業務の実態を確認することがある |
4つのチェック
ここまでを、自分で確かめられる形にしました。
| # | 確認すること |
|---|---|
| 1 | 自分が関わっていたのは高圧(事業用電気工作物)か。低圧だけではないか |
| 2 | 受電設備に関わっていたか。負荷設備だけではないか |
| 3 | 「認められない10種」に入っていないか |
| 4 | 自分の立場は3つのどれか(数え方が変わります) |
4つとも確認できた方は、次に必要年数を計算してください。1〜3のどこかが×だった方は、残念ですが、その職場では積めません。動き方を考えることになります。
よくある質問
Q. 低圧の設備しか触っていない場合、実務経験になりますか。
なりません。対象は事業用電気工作物(高圧以上)の工事・維持・運用です。低圧のみの業務は、何年続けても1日も数えられません。
Q. 高圧受電の工場にいますが、見ているのは生産設備だけです。
受電設備を含まない負荷設備のみの業務は対象外です。受電設備そのものに関わっていたかどうかで判断が変わります。
Q. 太陽光発電所の点検は実務経験になりますか。
50kW未満のものは小規模事業用電気工作物にあたり、対象外です。
Q. 複数の建物を巡回する働き方でも認められますか。
産業保安監督部(近畿支部)へ照会したところ、実際の勤務実態・業務内容などを総合的に勘案して判断する、との回答でした。巡回だからという理由だけで自動的に対象外になるわけではありません。
Q. 同じ1年でも、数え方が変わることがありますか。
変わります。選任またはその下での常駐なら期間をそのまま数えますが、電気管理技術者の補助者は21件の点検等で1か月、電気工事業者は21日の従事で1か月です。
この記事の内容は2026年8月時点で確認したものです。制度は改正されます。 最終的な判断は産業保安監督部が行います。手続きの前に必ずご確認ください。