電圧変動率は『内部インピーダンスのせい』で9割解決 — ε=%R cosθ+%X sinθ を3ステップで攻略
電験三種「機械」科目の変圧器・電圧変動率を、『電圧変動=内部インピーダンスのせい』という1フレーズで一気に攻略。V2OとV2nの混同、ベクトル図の直角三角形、近似式 ε=%R cosθ+%X sinθ の導出までを3ステップで完全網羅し、丸暗記なしで本番に持ち込めるようにします。
🎥 動画でも解説しています > YouTubeで開く
この記事で身につくこと
「電圧変動率」という言葉を初めて見たとき、多くの方がこう思います。
変動率? 何が、どれくらい変動するんだ……。
そして参考書を開くと、いきなり ε ≒ %R cosθ + %X sinθ という式が出てきて、「%Rって何だ」「なぜ cos と sin が混ざるんだ」と、そこで手が止まってしまう。実はこれ、順番が逆なんです。
電圧変動率という言葉が言っているのは、たったこれだけです。
無負荷のときの電圧と、負荷をつないだときの電圧、どれくらい差があるの?
家庭でも、ドライヤーとレンジを同時に使うと照明が一瞬暗くなることがありますよね。あれと同じで、変圧器も電気を取り出すと出口の電圧が少し下がります。その「下がりっぷり」をパーセントで表したのが電圧変動率です。
この記事では次の順で組み立てます。
| ステップ | 内容 | ゴール |
|---|---|---|
| 1 | 定義式 ε=(V20−V2n)/V2n×100 の意味 | 分母をどちらにするか迷わなくなる |
| 2 | 電圧が下がる犯人=内部の r と x | %Rと%Xの正体がわかる |
| 3 | ベクトル図と近似式のつながり | なぜ cos と sin に分かれるか納得できる |
| 4 | 銅損から%Rを出す実戦テクニック | 過去問がそのまま解ける |
| 5 | 力率・負荷率で変わる電圧変動率 | ひねった問題にも対応できる |
暗記量はほとんどありません。式は2本だけです。
暗記フレーズ:電圧変動率は「無負荷と全負荷の差」÷定格
まず、この記事全体を貫くフレーズを置いておきます。
電圧変動率は「無負荷と全負荷の差」÷定格 / 近似式は %R×cosθ + %X×sinθ
前半が定義式、後半が近似式です。試験で問われるのはこの2つのどちらかだけで、3つ目はありません。ここが分かれば、この単元は「解ける単元」に変わります。

つまずくポイントもすでに分かっています。分母をどちらにするか、%Rと%Xをどちらの三角関数と組ませるか、三相のときに√3で割るかどうか。この3つだけです。逆に言えば、この3つさえ押さえれば失点しません。
ステップ1:定義式は「差が定格の何%か」を言い換えただけ

定義式はこれです。
記号の意味を表にします。
| 記号 | 読み方 | 中身 |
|---|---|---|
| V20 | ブイ・にぃ・ゼロ | 無負荷のときの二次電圧(何も繋いでいない) |
| V2n | ブイ・にぃ・エヌ | 定格負荷をかけたときの二次電圧=定格二次電圧 |
分子の V20 − V2n は「無負荷から定格負荷にしたら、電圧がこれだけ下がった」という下がり幅そのものです。それを V2n で割って、100倍してパーセントにする。それだけです。
分母は「本来こうあってほしい電圧」
迷いやすいのは分母です。分母は必ず定格二次電圧 V2n。
これは「基準はどちらか」という話です。変圧器は「105 V 出します」と名乗って売られているわけではなく、「100 V 出します」と名乗って売られています。その名乗った値=定格が基準になるので、割るのは V2n の側です。無負荷電圧の方はあくまで「負荷をかける前のオマケの高い値」であって、基準ではありません。
ステップ2:電圧が下がる犯人は内部の r と x

では、なぜ負荷をつなぐと電圧が下がるのか。犯人は変圧器の内部にいます。
| 犯人 | 正体 | 何が起きるか |
|---|---|---|
| r(巻線抵抗) | 銅線そのものの抵抗 | 電流が流れると rI の電圧を食う |
| x(漏れリアクタンス) | 鉄心の外に漏れる磁束の影響 | 電流が流れると xI の電圧を食う |
どちらも電流が流れて初めて働くのがポイントです。だから無負荷(電流ゼロ)のときは電圧が下がらず、負荷をかけた途端に下がる。ここが電圧変動率の正体です。
そして、この rI と xI が定格電圧の何%を食っているかを表したのが %R と %X です。
「パーセントインピーダンス」という言葉に苦手意識のある方も多いのですが、要は「定格電圧のうち何%を内部で食われるか」という食われ率だと思ってください。それ以上の意味はありません。
なお、この rI・xI という考え方は変圧器全体に共通する土台です。損失の話が怪しい方は、先に変圧器の効率は「鉄損は一定、銅損はI²」だけで全部解けるを読んでおくと、この後の「銅損から%Rを出す」パートがぐっと楽になります。
ステップ3:なぜ cos と sin に分かれるのか

ここが近似式の心臓部です。rI と xI は、単純に足し算できません。向きが90度ずれているからです。
- rI … 電流と同じ向き(同相)
- xI … 電流より90度進んだ向き
方眼紙の上で、rI が横向き、xI が縦向きの矢印だと思ってください。この2本を足すには、直角三角形として合成するしかありません。
力率が「振り分け係数」になる
さらに、負荷の力率によって電流の向き自体が傾きます。その傾き角がθです。結果として、電圧降下のうち電圧の向きに効いてくる成分は、
- rI のうち効く分 → cosθ を掛けた分
- xI のうち効く分 → sinθ を掛けた分
となり、これを足したものが電圧変動率になります。

cos は R とペア、sin は X とペア。この組み合わせだけ間違えなければ大丈夫です。覚え方としては「抵抗は正直者(電流と同じ向き=cos側)」と紐づけておくと混ざりません。
ステップ4:銅損から%Rを出す — ここが実戦の急所
試験でいちばん多いのは、%R が直接与えられず、「定格容量」と「銅損」から自分で作るパターンです。
Pc=定格負荷時の銅損、Sn=定格容量です。
なぜ損失÷容量でパーセント抵抗降下になるのか
%R の定義は rI/V×100 でした。分子・分母の両方に電流 I を掛けても値は変わりませんから、
上が rI² = 銅損、下が VI = 容量。つまり「電圧の比」を「電力の比」に置き換えただけで、まったく同じものを見ています。だから kW と kVA の数字をそのまま割ってよいわけです。
| 与えられ方 | やること |
|---|---|
| %R が数値で与えられる | そのまま代入 |
| 銅損[kW]と定格容量[kVA] | 銅損 ÷ 容量 × 100 で%Rを作る |
| r[Ω]と定格電流・定格電圧 | rI/V×100 で%Rを作る |
ステップ5:力率と負荷率で電圧変動率はどう動くか
近似式ができれば、あとは「何を動かすとεがどうなるか」を押さえるだけです。
| 条件 | εの式 | 結果 |
|---|---|---|
| 力率1(cosθ=1、sinθ=0) | ε ≒ %R | %Xは効かない。εは最小に近い |
| 遅れ力率(cosθ<1) | ε ≒ %Rcosθ+%Xsinθ | sinθ が効いてεは大きくなる |
| 進み力率 | sinθ が負扱い | εが小さくなり、負になることもある |
| 負荷率 α(例:50%) | ε ≒ α(%Rcosθ+%Xsinθ) | 電流に比例して縮む |
進み力率で ε がマイナスになり得るのは驚かれるところですが、これは「負荷をつないだら電圧が上がった」という状態を意味します。実務でも長距離のケーブル線路などで起こる現象です。
なお、この「電圧が下がる/上がる」の感覚は、巻線が動かない変圧器だからこそ素直に効いてきます。変圧器と誘導機の関係があいまいな方は、変圧器と誘導機の違いを「巻線が動くか動かないか」で一発理解を先に押さえておくと、この後の科目全体が整理されます。
まとめ

| 項目 | 結論 |
|---|---|
| 定義式 | ε=(V20−V2n)/V2n×100(分母は定格) |
| 近似式 | ε≒%Rcosθ+%Xsinθ |
| %Rの作り方 | 銅損÷定格容量×100 |
| 良い変圧器 | εが小さい方が良い(電圧が安定している) |
| 力率が悪いと | εは大きくなる |
最後の「εが小さい方が良い」は、言葉の印象で逆に覚えてしまう人がいます。変動率が大きい=電圧がふらつく、ということですから、小さい方が優秀です。ここは理屈で押さえておけば間違えません。
似た構造の単元として、単巻変圧器は「差分だけ」で攻略 — 自己容量と負荷容量の罠を一発回避も「差だけを見る」という点で発想が共通しています。あわせて読むと変圧器分野の見通しが一気に良くなります。
⚠ ここを間違える人が多い
この単元の失点は、計算力ではなく思い込みで起きます。実際に多いのは次の3つです。
❌ 三相だから√3で割らないと…… → ✅ そのまま割る
いちばん多いのがこれです。定格容量が kVA、銅損が kW で与えられているとき、%R は「銅損 ÷ 定格容量 × 100」でおしまいです。ところが「三相変圧器」と書いてあるだけで反射的に √3 で割ってしまい、答えが約 0.58 倍にずれる。
理由はシンプルで、銅損も定格容量も、どちらも三相ぶんを合計した値だからです。同じ土俵の値どうしの比なので、√3 の出番はありません。√3 が必要になるのは「相の値と線間の値を行き来するとき」だけです。
❌ 分母は無負荷電圧 → ✅ 分母は定格二次電圧
定義式の分母を V20 にしてしまうミスです。値は近いので答えも近くなり、選択肢によっては引っかかります。「基準は名乗っている値=定格」と決め打ちしてください。
❌ %R に sin、%X に cos → ✅ %R に cos、%X に sin
組み合わせを逆にすると、力率が悪い問題で大きくずれます。抵抗は電流と同じ向きだから cos と、理屈で結び付けておくのが最も確実です。丸暗記だと本番の緊張で入れ替わります。
過去問ではこう出た
この単元は、令和3年 問9で出題されています。
出題のされ方には傾向があります。%R がそのまま与えられることは少なく、定格容量と銅損を与えて「%Rを自分で作らせる」構成が定番です。つまり、この記事のステップ4が解けるかどうかが得点の分かれ目になります。
また、問題文に「三相変圧器」と書かれていても、計算そのものは単相と変わりません。ここで手が止まらないよう、「同じ土俵の値どうしの比に√3は不要」という一点だけを本番に持ち込んでください。力率が与えられていれば近似式、力率1なら ε ≒ %R と、条件を見て式を選ぶ判断も一緒に練習しておくと安定します。
よくある質問
Q. 定義式と近似式、どちらを使えばいいのですか?
問題文で与えられているもので決まります。無負荷電圧と定格電圧という「電圧そのもの」が与えられていれば定義式、%Rや%X、あるいは銅損と容量が与えられていれば近似式です。両方の道を試す必要はなく、材料を見れば一本に決まります。迷ったら「何が与えられているか」を先に書き出してください。
Q. 近似式の「近似」とは、どこを省略しているのですか?
厳密な計算では、電圧のベクトルを合成したあとに大きさを取り直す必要があり、そこに二乗の項が残ります。ただし %R や %X は数%程度と小さいため、その二乗はさらに小さくなり、実用上は無視できます。その省略が「近似」の中身です。電験三種のレベルでは、近似式で答えが合うように問題が作られていますので、安心して使って構いません。
Q. 電圧変動率と、変圧器の効率は関係がありますか?
直接の公式では結び付いていませんが、共通の登場人物として銅損がいます。銅損は効率計算の主役であり、同時に %R の材料でもあります。つまり「巻線抵抗が大きい変圧器」は、効率も落ちるし電圧変動率も大きくなる。別々に暗記するより、「銅損という同じ犯人を、効率の目線と電圧の目線から見ている」と捉えると、両方まとめて理解できます。
Webの何倍も覚えやすい
紙のフルラミネート加工の
暗記シートがあります
実績2,000部突破。
お風呂や電車のスキマ時間でサクッと勉強できます。
付属の練習用紙で無限に練習できます♪

🛒関連教材ショーケース
学習の効率を上げる、紙の本格教材ラインナップ。


この記事を読み終えたら、進捗を記録しましょう




