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機械 第23回 ⏱ 約22分で読めます

誘導機の出力比は「1:s:1-s」で芋づる式に!すべりだけで全部わかる

電験三種「機械」科目の誘導機を解説。二次入力P2・二次銅損Pc2・機械的出力Pmが、すべりsを使って P2:Pc2:Pm=1:s:1-s というシンプルな比で表せることを、エネルギーの流れから直感的に理解。等価回路の負荷抵抗 (1-s)/s・r2 の意味や、すべりと効率の関係まで、計算問題で確実に得点できる形で整理します。

🃏 暗記フレーズ:誘導機の計算は 1:s:1−s / 二次入力1・二次銅損s・機械的出力1−s

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この記事で身につくこと

誘導機の計算が苦手な方の多くは、実は「理解できていない」わけではありません。覚えるべき式が多すぎて、どれを使えばいいのか選べない——ここで止まっているだけなのです。

二次入力、二次銅損、機械的出力、トルク、効率。教科書を開くと、それぞれに式が並んでいます。しかも だの だの、見た目からしてとっつきにくい記号が混ざってきます。ここで「誘導機は捨てよう」と決めてしまう方が、毎年たくさんいらっしゃいます。

でも、安心してください。この単元にはたった一つの比を覚えるだけで、電力の問題が一気に解けてしまうショートカットがあります。それが「1:s:1−s」です。

この記事を読み終えると、次のことができるようになります。

身につくことどう役に立つか
三つの電力の比の関係二次入力・二次銅損・機械的出力のうち1つ分かれば、残り2つが即座に出る
基準の「1」の正体どこを100%と置くかで迷わなくなる
すべりsが損失の割合である理由文章問題(効率が良い・悪いの判断)が読めるようになる
の意味等価回路の記号に怯えなくなる
計算問題の手順掛け算2回で答えが出せるようになる

誘導機の計算は1:s:1−s|瞬殺ショートカット

なお、誘導機そのものの構造や、すべりの定義があやふやな方は、先に誘導機のすべりsを「同期にどれだけ遅れているかの割合」で攻略を読んでおくと、この記事の内容がすっと入ってきます。

暗記フレーズ:誘導機の計算は 1:s:1−s

この記事で覚えていただきたいのは、次の一行だけです。

  • = 二次入力(基準の1)
  • = 二次銅損(sの分だけ失われる)
  • = 機械的出力(残った1−sが使える分)

難しい式を全部覚える必要はありません。この比だけを持って試験会場に行ってください。

なぜこれで足りるのか。理由はシンプルです。二次側に入ってきた電力は、熱になって消えるか、軸を回す力になるか、どちらかしかないからです。行き先が二つしかないのだから、片方の割合が決まれば、もう片方も自動的に決まります。

等価回路の計算地獄|誘導機 最大の罠

ここからは、この比の三つの数字を一つずつバラして見ていきます。「1」「s」「1−s」がそれぞれ何者なのかが分かれば、丸暗記ではなく、納得して使えるようになります。

🃏 暗記シート
Q. 誘導機における、二次入力P2・二次銅損Pc2・機械的出力Pmの比は?

ステップ1:基準の「1」=二次入力 P₂ の正体

二次入力P2の正体|基準の1とは(Step1)

二次入力 とは、固定子(一次側)から、空隙(ギャップ)を越えて回転子(二次側)へ渡された電力のことです。

比の計算では、これを「1」=全体の100%として扱います。ここがスタートラインなので、迷ったらまず を探しに行くのが正解です。

なぜ一次側ではなく二次側を基準にするのか

ここで「なんで一次入力じゃないの?」という疑問が出てきます。理由は、誘導機は電動機(負荷を回す機械)として使われるのが基本だからです。

機器主な用途どちら側を中心に整理するか
変圧器電圧の変換一次側と二次側の両方
誘導機動力を出す(電動機)二次側(回転子側)

変圧器は「入れた電力を、電圧を変えて出す」機械なので、一次と二次を対等に扱います。一方、誘導機で最終的に欲しいのは軸から出るパワーです。そのパワーは二次側で生まれるので、二次側を主役に据えたほうが話が早いのです。

この対比が気持ちよく飲み込めない方は、変圧器と誘導機の違いを「巻線が動くか動かないか」で一発理解に立ち寄ってみてください。「似ているのに、なぜ扱い方が違うのか」がはっきりします。

🃏 暗記シート
Q. 誘導機における二次入力P2とは、何の電力のこと?
💡 一次から二次へ渡る電力

ステップ2:「s」=二次銅損 P_c2 は、すべりの分だけ失われる

二次銅損Pc2の損失|すべりsで失う熱(Step2)

回転子に入ってきた電力のうち、回転子の巻線抵抗 で熱になって消えてしまう分が二次銅損 です。

驚くのはここです。失われる割合が、すべり s そのものになるのです。すべりが5%なら、二次入力の5%がそのまま熱に消えます。

すべりが「損失の割合」になるという読み替え

すべり s は本来、回転速度のずれを表す数値でした。

同期速度からどれだけ遅れているかの割合。それが、電力の世界では損失の割合として顔を出す。この「速度のずれ=電力のロス」という読み替えが、誘導機のいちばんおいしいポイントです。

すべり s の値速度の意味電力の意味
s が小さい(例:0.02)同期速度に近い速さで回っている二次入力の2%しか熱にならない
s が大きい(例:0.20)同期速度から大きく遅れている二次入力の20%が熱に消える
s = 1止まっている(起動の瞬間)入ってきた電力が全部熱になる

一番下の行が実感しやすいはずです。起動の瞬間、モーターは回っていないので軸から力は出ていません。にもかかわらず電流はどっと流れる。その電力はどこへ行くのか——全部、熱です。だから起動時のモーターは熱くなります。

すべりの定義そのものをもう一段深く確認したい方は、三相誘導機の回転速度を「同期速度・すべり・損失配分」で攻略が回転速度側からの整理になっています。

🃏 暗記シート
Q. 誘導機における二次銅損Pc2は、すべりsを使うとどう表せる?

ステップ3:「1−s」=機械的出力 P_m が、実際に取り出せるパワー

機械出力Pmの計算|1−sと負荷抵抗(Step3)

残ったものが、軸から動力として取り出せる電力=機械的出力 です。

引き算をしているだけです。入ってきた1から、無駄になったsを引く。残りが1−s。 これが機械的出力です。

という記号の正体

等価回路を開くと、二次側の抵抗が という奇妙な形で描かれています。これを分解すると、こうなります。

分けた項何を表しているか実体があるか
二次銅損(熱になる分)ある(巻線の抵抗)
機械的出力(軸から出る分)ない(仮想の負荷抵抗)

つまり は、「軸から出ていく出力」を電気回路の言葉で書くために置かれた、架空の抵抗なのです。実物としてそんな抵抗器は入っていません。ここに を掛ければ、そのまま機械的出力が出てきます。

見た目は複雑ですが、 を代入すれば、結局 に戻ります。呪文のような式も、割り戻せばただの1−sに化けるわけです。

等価回路そのものの読み方を固めたい方は、誘導機のT形等価回路を「一次→励磁→二次」で攻略!(1−s)/sが機械出力で、回路図の側からの解説をしています。

🃏 暗記シート
Q. 誘導機の等価回路に出てくる (1−s)/s × r2 は、何を表している?
💡 実体のない、出力を表すための抵抗

ステップ4:すべりと効率は「シーソー」の関係

すべりsと高効率化|損失と出力のシーソー

s と 1−s は、足すと必ず1になります。つまり、片方が増えれば、もう片方は必ず減る。シーソーそのものです。

すべり s損失の割合出力の割合効率
小さい減る増える良い(高効率)
大きい増える減る悪い

この一行を頭に入れておくと、計算せずに答えが選べる文章問題がかなりあります。「すべりが増えると効率はどうなるか」——迷わず「下がる」と答えられます。

s は損失の割合。だから s は小さいほど優秀。

実際の三相誘導電動機の全負荷時のすべりは数%程度に収まるよう設計されています。これは、上の表の「効率が良い」欄に居続けるための設計だと理解しておけば十分です。

🃏 暗記シート
Q. 誘導機で、すべりsが小さいほど効率がよくなるのはなぜ?

ステップ5:例題で確かめる

誘導機の計算問題|魔法の公式に挑戦(Q1)

問題:ある誘導電動機において、二次入力 kW、すべり である。このとき、二次銅損 と機械的出力 を求めなさい。

ここで一度、手を止めてご自身で計算してみてください。使うのは比だけです。

解答

銅損5kW・出力95kW|計算問題の解答解説(A1)

比に数値を当てはめます。

なので、あとは基準の100kWに掛けるだけです。

答え:二次銅損 5 kW、機械的出力 95 kW。

等価回路の式は一つも使っていません。掛け算を2回しただけです。検算も簡単で、5 + 95 = 100。合計が二次入力に戻れば、それで合っています。

🃏 暗記シート
Q. 誘導機で二次入力100kW・すべり0.05のとき、二次銅損と機械的出力はいくら?

まとめ

項目記号比の値中身
二次入力1一次側から回転子へ渡る電力。基準の100%
二次銅損s二次抵抗で熱に消える分
機械的出力1−s軸から取り出せる有効なパワー

覚える言葉は、これだけです。

誘導機の計算は 1:s:1−s。

使い方の順番も決めておきましょう。

  1. 問題文から のどれか1つと、すべり を拾う
  2. 比のどこに当たる数値かを確認する
  3. 掛け算か割り算で残りを出す
  4. 三つを足して に戻るか検算する

この4ステップで、電力に関する誘導機の問題はかなりの範囲が片付きます。

🃏 暗記シート
Q. 誘導機の電力計算を覚える暗記フレーズは?

⚠ ここを間違える人が多い

比そのものはシンプルですが、どこを基準に置いたかを見失うと一気に崩れます。実際の失点はほぼこの3パターンです。

❌ 機械的出力を、そのまま二次入力として使ってしまう

問題文に「出力20kW」とあると、つい20kWを比の「1」に置いてしまいます。しかし出力は の側です。

  • ❌ 20kWを として計算 → 銅損も出力も過小になる
  • で基準に戻してから比を使う

は損失を含んでいるので、必ず より大きい。出てきた が出力より小さかったら、その時点で計算が破綻していると気づけます。

❌ 抵抗の比を、すべりの比と逆に取ってしまう

二次抵抗を変えたときのすべりを問う問題では、すべりは二次回路の抵抗に比例します。分母と分子をひっくり返すと、用意された誤答の選択肢にきれいに吸い込まれます。

  • ❌ 抵抗が増えたのにすべりが減る答えになっている
  • ✅ 抵抗が増えれば、同じトルクならすべりも増える

方向だけでも押さえておけば、逆比を取った瞬間に違和感で気づけます。

❌ 回転速度の比を、そのまま抵抗の比にしてしまう

「回転速度が○○から□□に変わった」という設定で、速度そのものの比を持ち出してしまう誤りです。比べるべきは速度ではなく、そこから求めたすべりの比です。

  • を抵抗の比とみなす
  • ✅ それぞれの を出してから で比べる

すべりの計算に自信がない方は、誘導機の回転磁界と同期速度を「120f÷p」で一発計算で同期速度の出し方を先に固めておくと、この種の取り違えが起こりにくくなります。

過去問ではこう出た

この単元は、電験三種「機械」で繰り返し問われている定番です。実際に出題された年度と問番号を挙げます。

年度問番号
平成27年問15
平成28年問4
平成29年問15、問3
平成30年問3
令和2年問15
令和4年 下期問2
令和5年 下期問15

問番号を見ると傾向がはっきりします。問3・問4といった前半に出れば、比を当てはめるだけの短問。一方で問15はB問題で、(a)(b)の二段構えになり、先に電流や二次銅損を求めさせてから、この比を使わせる形が多く見られます。

つまりこの比は、単独で1問取れることもあり、大きな問題を解くための最後の一手にもなります。どちらの形でも使えるように、手を動かして慣らしておく価値があります。

電験ジムで実際に解いてみる

よくある質問

Q. この比は、どんな誘導機の問題でも使えるのですか?

電力の三つ(二次入力・二次銅損・機械的出力)の関係を問うている限り、いつでも使えます。ただし、近年は「まず二次銅損を求めてから比を使う」という二段構えの出題が増えています。比だけで終わる問題はボーナス、そう考えておくのが安全です。比の使い方を体に入れておけば、二段構えでも後半は一瞬で片付きます。

Q. 機械的出力と、軸から実際に取り出せる出力は同じものですか?

厳密には違います。機械的出力 からさらに機械損(軸受の摩擦や風損)を引いたものが、最終的な定格出力です。ただし試験問題では「機械損は無視する」と書かれていることが多く、その場合は をそのまま出力として扱ってかまいません。問題文に機械損の記載があるかどうかを必ず確認する、これが実務的な対応です。

Q. すべりを小さくすれば、いくらでも効率を上げられるのですか?

比の上ではそう見えますが、現実にはそうなりません。すべりが小さいということは、回転子に生じる誘導起電力も小さいということで、同じ電力を送ろうとすれば別の無理が出ます。試験対策としては「s が小さいほど二次側の効率は良い」という方向の関係だけ押さえれば十分です。「ではゼロにできるか」は、すべりゼロ=同期速度で回る=そもそも誘導が起きない、という矛盾になるので不可能、と理解しておいてください。

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この記事を書いた人

資格LABO

電験三種を含め、さまざまな資格を一発合格した経験をもとに、 忙しい社会人が最短距離で受かるための教材とYouTube解説を作っています。 暗記シート・講義ノートは累計2,000部を突破し、 多くの合格報告をいただいています。

保有資格

電気主任技術者電気工事士公害防止管理者放射線取扱主任者中学校・高等学校 教員免許
  • ⚡ 電験三種・電験二種の解説動画をYouTubeで公開中
  • 📚「勉強の過程」より「結果を重視」した教材の制作・販売
  • 🏋️ 過去問対策Webサービス「電験ジム」を開発・運営

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