誘導機の出力比は「1:s:1-s」で芋づる式に!すべりだけで全部わかる
電験三種「機械」科目の誘導機を解説。二次入力P2・二次銅損Pc2・機械的出力Pmが、すべりsを使って P2:Pc2:Pm=1:s:1-s というシンプルな比で表せることを、エネルギーの流れから直感的に理解。等価回路の負荷抵抗 (1-s)/s・r2 の意味や、すべりと効率の関係まで、計算問題で確実に得点できる形で整理します。
🎥 動画でも解説しています > YouTubeで開く
この記事で身につくこと
誘導機の計算が苦手な方の多くは、実は「理解できていない」わけではありません。覚えるべき式が多すぎて、どれを使えばいいのか選べない——ここで止まっているだけなのです。
二次入力、二次銅損、機械的出力、トルク、効率。教科書を開くと、それぞれに式が並んでいます。しかも だの だの、見た目からしてとっつきにくい記号が混ざってきます。ここで「誘導機は捨てよう」と決めてしまう方が、毎年たくさんいらっしゃいます。
でも、安心してください。この単元にはたった一つの比を覚えるだけで、電力の問題が一気に解けてしまうショートカットがあります。それが「1:s:1−s」です。
この記事を読み終えると、次のことができるようになります。
| 身につくこと | どう役に立つか |
|---|---|
| 三つの電力の比の関係 | 二次入力・二次銅損・機械的出力のうち1つ分かれば、残り2つが即座に出る |
| 基準の「1」の正体 | どこを100%と置くかで迷わなくなる |
| すべりsが損失の割合である理由 | 文章問題(効率が良い・悪いの判断)が読めるようになる |
| の意味 | 等価回路の記号に怯えなくなる |
| 計算問題の手順 | 掛け算2回で答えが出せるようになる |

なお、誘導機そのものの構造や、すべりの定義があやふやな方は、先に誘導機のすべりsを「同期にどれだけ遅れているかの割合」で攻略を読んでおくと、この記事の内容がすっと入ってきます。
暗記フレーズ:誘導機の計算は 1:s:1−s
この記事で覚えていただきたいのは、次の一行だけです。
- = 二次入力(基準の1)
- = 二次銅損(sの分だけ失われる)
- = 機械的出力(残った1−sが使える分)
難しい式を全部覚える必要はありません。この比だけを持って試験会場に行ってください。
なぜこれで足りるのか。理由はシンプルです。二次側に入ってきた電力は、熱になって消えるか、軸を回す力になるか、どちらかしかないからです。行き先が二つしかないのだから、片方の割合が決まれば、もう片方も自動的に決まります。

ここからは、この比の三つの数字を一つずつバラして見ていきます。「1」「s」「1−s」がそれぞれ何者なのかが分かれば、丸暗記ではなく、納得して使えるようになります。
ステップ1:基準の「1」=二次入力 P₂ の正体

二次入力 とは、固定子(一次側)から、空隙(ギャップ)を越えて回転子(二次側)へ渡された電力のことです。
比の計算では、これを「1」=全体の100%として扱います。ここがスタートラインなので、迷ったらまず を探しに行くのが正解です。
なぜ一次側ではなく二次側を基準にするのか
ここで「なんで一次入力じゃないの?」という疑問が出てきます。理由は、誘導機は電動機(負荷を回す機械)として使われるのが基本だからです。
| 機器 | 主な用途 | どちら側を中心に整理するか |
|---|---|---|
| 変圧器 | 電圧の変換 | 一次側と二次側の両方 |
| 誘導機 | 動力を出す(電動機) | 二次側(回転子側) |
変圧器は「入れた電力を、電圧を変えて出す」機械なので、一次と二次を対等に扱います。一方、誘導機で最終的に欲しいのは軸から出るパワーです。そのパワーは二次側で生まれるので、二次側を主役に据えたほうが話が早いのです。
この対比が気持ちよく飲み込めない方は、変圧器と誘導機の違いを「巻線が動くか動かないか」で一発理解に立ち寄ってみてください。「似ているのに、なぜ扱い方が違うのか」がはっきりします。
ステップ2:「s」=二次銅損 P_c2 は、すべりの分だけ失われる

回転子に入ってきた電力のうち、回転子の巻線抵抗 で熱になって消えてしまう分が二次銅損 です。
驚くのはここです。失われる割合が、すべり s そのものになるのです。すべりが5%なら、二次入力の5%がそのまま熱に消えます。
すべりが「損失の割合」になるという読み替え
すべり s は本来、回転速度のずれを表す数値でした。
同期速度からどれだけ遅れているかの割合。それが、電力の世界では損失の割合として顔を出す。この「速度のずれ=電力のロス」という読み替えが、誘導機のいちばんおいしいポイントです。
| すべり s の値 | 速度の意味 | 電力の意味 |
|---|---|---|
| s が小さい(例:0.02) | 同期速度に近い速さで回っている | 二次入力の2%しか熱にならない |
| s が大きい(例:0.20) | 同期速度から大きく遅れている | 二次入力の20%が熱に消える |
| s = 1 | 止まっている(起動の瞬間) | 入ってきた電力が全部熱になる |
一番下の行が実感しやすいはずです。起動の瞬間、モーターは回っていないので軸から力は出ていません。にもかかわらず電流はどっと流れる。その電力はどこへ行くのか——全部、熱です。だから起動時のモーターは熱くなります。
すべりの定義そのものをもう一段深く確認したい方は、三相誘導機の回転速度を「同期速度・すべり・損失配分」で攻略が回転速度側からの整理になっています。
ステップ3:「1−s」=機械的出力 P_m が、実際に取り出せるパワー

残ったものが、軸から動力として取り出せる電力=機械的出力 です。
引き算をしているだけです。入ってきた1から、無駄になったsを引く。残りが1−s。 これが機械的出力です。
という記号の正体
等価回路を開くと、二次側の抵抗が という奇妙な形で描かれています。これを分解すると、こうなります。
| 分けた項 | 何を表しているか | 実体があるか |
|---|---|---|
| 二次銅損(熱になる分) | ある(巻線の抵抗) | |
| 機械的出力(軸から出る分) | ない(仮想の負荷抵抗) |
つまり は、「軸から出ていく出力」を電気回路の言葉で書くために置かれた、架空の抵抗なのです。実物としてそんな抵抗器は入っていません。ここに を掛ければ、そのまま機械的出力が出てきます。
見た目は複雑ですが、 を代入すれば、結局 に戻ります。呪文のような式も、割り戻せばただの1−sに化けるわけです。
等価回路そのものの読み方を固めたい方は、誘導機のT形等価回路を「一次→励磁→二次」で攻略!(1−s)/sが機械出力で、回路図の側からの解説をしています。
ステップ4:すべりと効率は「シーソー」の関係

s と 1−s は、足すと必ず1になります。つまり、片方が増えれば、もう片方は必ず減る。シーソーそのものです。
| すべり s | 損失の割合 | 出力の割合 | 効率 |
|---|---|---|---|
| 小さい | 減る | 増える | 良い(高効率) |
| 大きい | 増える | 減る | 悪い |
この一行を頭に入れておくと、計算せずに答えが選べる文章問題がかなりあります。「すべりが増えると効率はどうなるか」——迷わず「下がる」と答えられます。
s は損失の割合。だから s は小さいほど優秀。
実際の三相誘導電動機の全負荷時のすべりは数%程度に収まるよう設計されています。これは、上の表の「効率が良い」欄に居続けるための設計だと理解しておけば十分です。
ステップ5:例題で確かめる

問題:ある誘導電動機において、二次入力 kW、すべり である。このとき、二次銅損 と機械的出力 を求めなさい。
ここで一度、手を止めてご自身で計算してみてください。使うのは比だけです。
解答

比に数値を当てはめます。
なので、あとは基準の100kWに掛けるだけです。
答え:二次銅損 5 kW、機械的出力 95 kW。
等価回路の式は一つも使っていません。掛け算を2回しただけです。検算も簡単で、5 + 95 = 100。合計が二次入力に戻れば、それで合っています。
まとめ
| 項目 | 記号 | 比の値 | 中身 |
|---|---|---|---|
| 二次入力 | 1 | 一次側から回転子へ渡る電力。基準の100% | |
| 二次銅損 | s | 二次抵抗で熱に消える分 | |
| 機械的出力 | 1−s | 軸から取り出せる有効なパワー |
覚える言葉は、これだけです。
誘導機の計算は 1:s:1−s。
使い方の順番も決めておきましょう。
- 問題文から か か のどれか1つと、すべり を拾う
- 比のどこに当たる数値かを確認する
- 掛け算か割り算で残りを出す
- 三つを足して に戻るか検算する
この4ステップで、電力に関する誘導機の問題はかなりの範囲が片付きます。
⚠ ここを間違える人が多い
比そのものはシンプルですが、どこを基準に置いたかを見失うと一気に崩れます。実際の失点はほぼこの3パターンです。
❌ 機械的出力を、そのまま二次入力として使ってしまう
問題文に「出力20kW」とあると、つい20kWを比の「1」に置いてしまいます。しかし出力は の側です。
- ❌ 20kWを として計算 → 銅損も出力も過小になる
- ✅ で基準に戻してから比を使う
は損失を含んでいるので、必ず より大きい。出てきた が出力より小さかったら、その時点で計算が破綻していると気づけます。
❌ 抵抗の比を、すべりの比と逆に取ってしまう
二次抵抗を変えたときのすべりを問う問題では、すべりは二次回路の抵抗に比例します。分母と分子をひっくり返すと、用意された誤答の選択肢にきれいに吸い込まれます。
- ❌ 抵抗が増えたのにすべりが減る答えになっている
- ✅ 抵抗が増えれば、同じトルクならすべりも増える
方向だけでも押さえておけば、逆比を取った瞬間に違和感で気づけます。
❌ 回転速度の比を、そのまま抵抗の比にしてしまう
「回転速度が○○から□□に変わった」という設定で、速度そのものの比を持ち出してしまう誤りです。比べるべきは速度ではなく、そこから求めたすべりの比です。
- ❌ を抵抗の比とみなす
- ✅ それぞれの を出してから で比べる
すべりの計算に自信がない方は、誘導機の回転磁界と同期速度を「120f÷p」で一発計算で同期速度の出し方を先に固めておくと、この種の取り違えが起こりにくくなります。
過去問ではこう出た
この単元は、電験三種「機械」で繰り返し問われている定番です。実際に出題された年度と問番号を挙げます。
| 年度 | 問番号 |
|---|---|
| 平成27年 | 問15 |
| 平成28年 | 問4 |
| 平成29年 | 問15、問3 |
| 平成30年 | 問3 |
| 令和2年 | 問15 |
| 令和4年 下期 | 問2 |
| 令和5年 下期 | 問15 |
問番号を見ると傾向がはっきりします。問3・問4といった前半に出れば、比を当てはめるだけの短問。一方で問15はB問題で、(a)(b)の二段構えになり、先に電流や二次銅損を求めさせてから、この比を使わせる形が多く見られます。
つまりこの比は、単独で1問取れることもあり、大きな問題を解くための最後の一手にもなります。どちらの形でも使えるように、手を動かして慣らしておく価値があります。
よくある質問
Q. この比は、どんな誘導機の問題でも使えるのですか?
電力の三つ(二次入力・二次銅損・機械的出力)の関係を問うている限り、いつでも使えます。ただし、近年は「まず二次銅損を求めてから比を使う」という二段構えの出題が増えています。比だけで終わる問題はボーナス、そう考えておくのが安全です。比の使い方を体に入れておけば、二段構えでも後半は一瞬で片付きます。
Q. 機械的出力と、軸から実際に取り出せる出力は同じものですか?
厳密には違います。機械的出力 からさらに機械損(軸受の摩擦や風損)を引いたものが、最終的な定格出力です。ただし試験問題では「機械損は無視する」と書かれていることが多く、その場合は をそのまま出力として扱ってかまいません。問題文に機械損の記載があるかどうかを必ず確認する、これが実務的な対応です。
Q. すべりを小さくすれば、いくらでも効率を上げられるのですか?
比の上ではそう見えますが、現実にはそうなりません。すべりが小さいということは、回転子に生じる誘導起電力も小さいということで、同じ電力を送ろうとすれば別の無理が出ます。試験対策としては「s が小さいほど二次側の効率は良い」という方向の関係だけ押さえれば十分です。「ではゼロにできるか」は、すべりゼロ=同期速度で回る=そもそも誘導が起きない、という矛盾になるので不可能、と理解しておいてください。
Webの何倍も覚えやすい
紙のフルラミネート加工の
暗記シートがあります
実績2,000部突破。
お風呂や電車のスキマ時間でサクッと勉強できます。
付属の練習用紙で無限に練習できます♪

🛒関連教材ショーケース
学習の効率を上げる、紙の本格教材ラインナップ。


この記事を読み終えたら、進捗を記録しましょう




