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機械 第26回 ⏱ 約25分で読めます

単相モーターはなぜ動き出せない?——3大始動法を家電で丸ごと覚える

電験三種「機械」でよく出る単相誘導電動機の始動法。「なぜ始動トルクがゼロになるのか」という原理から、分相始動法・コンデンサ始動法・くま取りコイル法の3種類を図解で徹底解説。コンデンサ=始動トルク最大、くま取り=構造最シンプルの両端を押さえれば、比較問題が一発で解けるようになります。

🃏 暗記フレーズ:単相は始動トルクゼロ。分相・コンデンサ・くま取りで位相差を作って始動!

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「単相誘導電動機の始動法」と聞くと、分相・コンデンサ・くま取り……と、覚えるものが急に3つ増えたように感じて身構えてしまいますよね。名前も聞き慣れないものばかりで、「くま取り」に至っては何のことか見当もつかない、という方も多いと思います。

でも、安心してください。この3つはまったく別々の技術ではありません。目的はぜんぶ同じで、違うのは「やり方」だけ。しかもその目的は、たった一言「位相差を作る」で言い表せます。ここさえ押さえてしまえば、3つを別々に丸暗記する必要はなくなります。

苦手意識が強い単元ほど、実は「共通の1本の軸」で貫かれていることが多いものです。今日はその軸を、原理からじっくり組み立てていきましょう。

この記事で身につくこと

  • 単相誘導電動機が自力では回り出せない理由を、交番磁界という言葉で説明できるようになる
  • 3つの始動法がすべて「位相差づくり」という同じ目的であることが腑に落ちる
  • 分相・コンデンサ・くま取りの位相差の作り方・磁界の形・始動トルク・コストを表で言い分けられる
  • 「コンデンサ=最大」「くま取り=最小」という両端の対比で、選択肢問題を即答できる
  • 洗濯機・換気扇・扇風機という身近な家電で、試験本番に迷ったときの手がかりを持てる

暗記フレーズ:単相は始動トルクゼロ。分相・コンデンサ・くま取りで位相差を作って始動!

このフレーズには、この単元の要素がすべて詰まっています。

フレーズの断片何を意味しているか
単相は始動トルクゼロ交番磁界しかできないので、そのままでは絶対に回り出せない
位相差を作って3方式に共通する唯一の目的。ここが本質
分相・コンデンサ・くま取り位相差の作り方の3パターン(抵抗・静電容量・電磁誘導)

逆に言えば、この3点さえ言えれば、この単元の問題はほぼ答えられるということです。声に出して2〜3回唱えておいてください。

ステップ1:なぜ単相は自分で回り出せないのか

なぜ単相は始動できないか?交番磁界と始動トルクゼロの原理

三相誘導電動機は、3本の電線が120度ずつタイミングをずらして電気を送るため、モーターの中にぐるぐる回る磁界(回転磁界)が自然に生まれます。だからスイッチを入れた瞬間から回り出せるのです。

ところが単相は電線が1本。電流は「プラス方向・マイナス方向」と上下に入れ替わるだけで、磁界も同じ場所で行ったり来たりするだけです。これを交番磁界といいます。

打ち消し合って、力がゼロになる

電源の種類できる磁界始動トルク
三相交流回転磁界(ぐるぐる回る)あり。そのまま始動できる
単相交流交番磁界(上下に振動するだけ)ゼロ。自力では回り出せない

交番磁界は、「正転方向に回そうとする力」と「逆転方向に回そうとする力」が同じ大きさで存在している状態と考えることができます。同じ力で左右から引っ張られているので、合計はゼロ。だから動き出せません。

面白いのは、手で一度ちょっと回してやれば、その後は自力で回り続けるという点です。動き出しさえすれば片方の力が優勢になるからで、「弱いのは始動の瞬間だけ」という性質が、このあとの3方式すべての出発点になります。

回転磁界そのものがまだ曖昧だという方は、先に〈誘導機の回転磁界と同期速度を「120f÷p」で一発計算〉に目を通しておくと、この先の話が一気に軽くなります。

🃏 暗記シート
Q. 単相誘導電動機の始動トルクが、そのままではゼロになる理由は?
💡 行ったり来たりするだけの磁界

ステップ2:解決策はただひとつ「位相差」

解決策は「位相差」!疑似回転磁界を作る仕組み

回転磁界がないなら、作ってしまえばいい。それが解決策の発想です。

いま、モーターの中には上下に振動する磁界がひとつだけあります。そこへタイミングがずれた2つ目の磁界を人工的に足してやると、合成された磁界は「ぐるぐる回る動き」に近づきます。完璧な円ではありませんが、始動トルクを生むには十分な疑似回転磁界が生まれるのです。

この「タイミングのズレ」が位相差です。そして——ここが今日の最重要ポイントですが——3つの始動法は、位相差の作り方が違うだけで、目的はまったく同じです。

位相差を作る道具対応する始動法
抵抗(R)分相始動法
静電容量(C)コンデンサ始動法
電磁誘導(短絡コイル)くま取りコイル法

抵抗・コンデンサ・コイル。理論科目の交流回路で扱った3つの素子がそのまま並んでいるのが分かるでしょうか。新しい暗記ではなく、既に知っている知識の応用なのです。ここに気づけると、この単元の心理的なハードルはぐっと下がります。

🃏 暗記シート
Q. 単相誘導電動機の3つの始動法に共通する目的は?

ステップ3:方式①分相始動法(抵抗の違いでずらす)

方式①分相始動法:抵抗の違いで位相差を作る

名前の由来は「単相なのに、内部で2つの相に分ける」から。文字どおり相を分けるわけです。

構造は、メインの主巻線に加えて補助巻線をもう1つ入れるだけ。ポイントは、この補助巻線が主巻線より細くて抵抗が大きいことです。

抵抗が大きいと、遅れが小さくなる

コイル(インダクタンス)に流れる電流は、電圧より位相が遅れます。ところが、そこに大きな抵抗が混ざると遅れる量が小さくなります

巻線性質電流の位相
主巻線インダクタンス成分が大きい電圧より大きく遅れる
補助巻線抵抗成分が大きい(細い)遅れが小さい

同じ電圧をかけているのに、2つの電流で遅れ方が違う。この差がそのまま位相差になり、2つの磁界がずれたタイミングで生まれます。

ただしこの位相差は、理想の90度には届きません。抵抗の違いだけで作っているので、どうしても中途半端になり、合成磁界の形は楕円になります。その結果、始動トルクは「最大」ではなく中程度。コストも構造も中程度で、バランス型の方式です。

なお補助巻線は始動専用で、回り出したら遠心力スイッチなどで切り離されます。出番は最初の一瞬だけですが、そのおかげで運転中の無駄な発熱を防げます。

🃏 暗記シート
Q. 単相誘導電動機の分相始動法は、どうやって位相差を作る?
💡 相を分けるから「分相」

ステップ4:方式②コンデンサ始動法(真円の磁界で最強)

方式②コンデンサ始動法:90度の位相差で始動トルク最大!

構造は分相始動法とほぼ同じで、主巻線と補助巻線があります。違いは、補助巻線に始動用コンデンサが直列に入っていること。たったこれだけで、性能が大きく変わります。

「遅れ」と「進み」の差で90度を作る

コンデンサは、電流の位相が電圧より進む素子です。ここが分相始動法との決定的な違いになります。

方式補助巻線側でやっていること得られる位相差
分相始動法遅れを少なくするだけ90度に届かない
コンデンサ始動法電流を進ませるほぼ90度

主巻線の電流は遅れ、補助巻線の電流は進む。両者の差を足し合わせることで、ほぼ90度の位相差が実現します。

そして90度の位相差で2つの磁界を合成すると、その軌跡は楕円ではなく真円になります。これは三相誘導電動機の回転磁界とほぼ同じ状態。だから始動トルクが3方式で最大になるのです。

弱点はコストです。コンデンサという部品が増えるぶん価格が上がり、構造も複雑になります。それでも採用されるのは、始動の瞬間に大きな力が要る用途では他に代えがきかないから。洗濯機やエアコンのように「重いものを動かす」機器の定番です。

回転磁界と回転子の関係が怪しい方は、〈変圧器と誘導機の違いを「巻線が動くか動かないか」で一発理解〉を読むと、「磁界が回る」ことの意味が体に入ってきます。

🃏 暗記シート
Q. 単相誘導電動機の始動法のうち、始動トルクが最大なのはどれ?
💡 洗濯機・エアコン

ステップ5:方式③くま取りコイル法(構造だけでずらす)

方式③くま取りコイル法:誘導起電力で最シンプルに始動

3つ目は、ちょっと毛色が違います。英語では “shading coil”、日本語でくま取りコイル。磁極の端の一部分を、短絡した銅のコイルでぐるっと囲むだけの構造です。囲まれた部分が陰(くま)になっているように見えることから、この名前が付いています。

補助巻線もコンデンサも使いません。囲むという構造そのもので位相差を作ってしまうのが、この方式の面白いところです。

電磁誘導が磁束を遅らせる

くま取りコイルは短絡されているので、磁束が変化すると内部に誘導電流がどんどん流れます。そしてその電流が作る磁束は、レンツの法則どおり変化を妨げる向き。つまり、くま取り側の磁束は外側より遅れて変化することになります。

磁極のエリア磁束の変化
くま取りコイルがない側電源の変化にそのまま追従する
くま取りコイルがある側誘導電流に妨げられて遅れる

同じ磁極の中に、タイミングの違う2つの磁束が並ぶ。これが位相差となり、小さいながらも回転磁界が生まれて始動できるわけです。理論科目で学ぶファラデー・レンツの法則が、そのまま機械科目で働いているのが分かります。

トレードオフははっきりしています。磁界の形は不完全で、始動トルクは3方式で最小。その代わり追加部品がほとんど不要なので、コストは最も安く、構造は最もシンプル、しかも壊れにくい。扇風機やドライヤーのように軽い負荷を回すなら、これで十分なのです。

🃏 暗記シート
Q. 単相誘導電動機のくま取りコイルが位相差を生むのは、どの法則によるもの?
💡 妨げる向き=遅れる

ステップ6:3大始動法の比較表(試験に出るのはここ)

3大始動法の比較表:試験に出るキモはここ!

3方式が出そろいました。試験で問われるのは、ほぼこの表の中身です。

項目分相始動法コンデンサ始動法くま取りコイル法
位相差の作り方主巻線と補助巻線の抵抗の違いコンデンサによる位相の進み短絡コイルの誘導起電力による磁束の遅れ
位相差の大きさ90度に届かないほぼ90度小さい
磁界の形楕円真円不完全
始動トルク中程度最大最小
コスト・構造中程度高い・複雑最安・最シンプル
補助巻線あり(始動後に切り離す)あり(コンデンサ直列)なし

覚えるのは「両端」だけでいい

この表を丸ごと暗記する必要はありません。押さえるのは両端の2つだけです。

  • コンデンサ始動法 = 始動トルク最大・真円・高コスト
  • くま取りコイル法 = 始動トルク最小・最シンプル・最安

この2つを固定してしまえば、残る分相始動法は自動的に「全部が中間」と決まります。3つを別々に覚えるより、はるかに負担が軽く、しかも忘れません。

🃏 暗記シート
Q. 単相誘導電動機の始動法のうち、構造が最も簡単でコストが最も安いのはどれ?
💡 扇風機・ドライヤー

ステップ7:身近な家電で最終確認

理屈で理解したあとは、身の回りの家電と結び付けておきましょう。試験本番で記憶が飛んだとき、これが最後の命綱になります。

始動法必要な始動トルク代表的な家電
コンデンサ始動法大きい(重いものを動かす)洗濯機・エアコン
分相始動法中程度換気扇
くま取りコイル法小さくてよい(軽い負荷)扇風機・ドライヤー

洗濯機は濡れて重くなった洗濯物を動かし始めなければならないので、大きな始動トルクが要る。扇風機は羽根を回すだけなので、最初の力は小さくて構わない——こう考えれば、対応関係は自然に納得できるはずです。

「重い家電=コンデンサ、軽い家電=くま取り」。この一言だけでも、本番で選択肢を2つに絞れます。

まとめ

苦手に見えた単元も、整理してしまえばこれだけです。

押さえる点内容
出発点単相は交番磁界しか作れず、始動トルクゼロ
共通の解決策位相差を作って疑似回転磁界を生む(3方式の目的は同じ)
分相抵抗の違い → 楕円 → トルク中・コスト中
コンデンサ位相の進み → ほぼ90度 → 真円・トルク最大・高コスト
くま取り誘導起電力による磁束の遅れ → トルク最小・最安最シンプル
覚え方両端(コンデンサとくま取り)だけ覚えれば、分相は中間と決まる

最初に「始動トルクがゼロ」と聞いたときは驚いたかもしれません。でも、その弱点を理解したからこそ、なぜ3つもの始動法が生まれたのかが腑に落ちたはずです。原理から理解した知識は、選択問題でも文章問題でも崩れません。

⚠ ここを間違える人が多い

同じところでつまずく人が本当に多いポイントを、3つだけ挙げておきます。

❌「単相誘導電動機は絶対に回らない」と覚えてしまう

✅ 正しくは「自力では始動できない」だけです。外から少し回してやれば、そのあとは自力で回り続けます。回らないのは始動の瞬間だけ、という限定条件を落とすと、問題文の「始動トルク」という語を読み飛ばして誤答につながります。

❌ コンデンサ始動法を「効率が一番いい方式」と思い込む

✅ コンデンサ始動法が最大なのは始動トルクであって、運転効率や経済性が最優先という話ではありません。むしろコストと構造の複雑さは3方式で最も不利です。「最強=あらゆる面で有利」と広げて覚えると、コストを問う設問で足をすくわれます。何が最大なのかを、必ず項目名まで含めて覚えるのが安全です。

❌ くま取りコイルを「補助巻線の一種」と混同する

✅ くま取りコイルは磁極を囲む短絡された銅のコイルであって、電源につながる補助巻線ではありません。したがって遠心力スイッチで切り離すこともなく、運転中もずっと入ったままです。「始動後に切り離すのは補助巻線を持つ方式(分相・コンデンサ)だけ」と区別しておきましょう。

過去問ではこう出た

単相誘導電動機を含む誘導機は、機械科目でほぼ毎回顔を出す最重要分野です。テーマで照合したところ、電験ジムの収録範囲だけで37問が該当しました。

出題年度問番号
令和7年上期問4/問3
令和6年上期問7/問3
令和5年下期問3
令和1年問4
平成29年問3
平成27年問3

傾向としては、問3〜問7という前半に集中しているのが目を引きます。機械科目は前半で誘導機を落とすと立て直しが効きにくいので、ここは確実に取りたいところです。出題形式は、始動法の名称と特徴(磁界の形・始動トルクの大小)を対応させる正誤・空欄補充が中心で、本記事の比較表を頭に入れておけば十分対応できます。

電験ジムで実際に解いてみる

よくある質問

Q. なぜ位相差は「90度」が理想なのですか?

2つの磁界の合成が真円の回転磁界になる条件が、位相差90度(かつ大きさが等しい)だからです。90度からずれるほど軌跡は楕円につぶれ、回転の「勢い」にムラが出て始動トルクが下がります。分相始動法が中程度どまりなのも、コンデンサ始動法が最大になるのも、突き詰めればこの90度にどれだけ近づけたかの差です。

Q. コンデンサは始動後どうなるのですか?

始動用コンデンサは補助巻線と一緒に、回り出したあと切り離すのが基本です。始動時に必要な大きな位相差は、運転中には不要だからです。なお、この記事で扱っている始動トルクの大小は、あくまで始動の瞬間の話であり、運転中の特性とは分けて考えてください。運転に入ってからのトルクやすべりの話は、〈誘導機の出力比は「1:s:1-s」で芋づる式に!すべりだけで全部わかる〉で整理しています。

Q. 単相誘導電動機の回転方向はどうやって決まりますか?

疑似回転磁界がどちら向きに回るかで決まります。分相始動法やコンデンサ始動法なら、補助巻線への接続を入れ替えて位相差の向きを逆にすれば、回転方向を変えられます。一方くま取りコイル法は、くま取りコイルを付けた位置が固定されているため、磁束が遅れる向き=回転方向も構造的に固定されます。逆転させにくいことが、この方式のもう1つの弱点です。

Q. 三相誘導電動機の等価回路や計算は、単相にもそのまま使えますか?

考え方の土台は共通ですが、単相では正転・逆転の2つの磁界を分けて扱う必要があるため、計算そのものは複雑になります。電験三種で問われるのは主に始動法の名称と特徴なので、まずは本記事の比較表を優先してください。そのうえで誘導機全体の計算力を上げたい方は、〈誘導機のT形等価回路を「一次→励磁→二次」で攻略!(1−s)/sが機械出力〉や〈三相誘導機の回転速度を「同期速度・すべり・損失配分」で攻略〉が土台になります。すべりの感覚があやしい方は〈誘導機のすべりsを「同期にどれだけ遅れているかの割合」で攻略〉から戻るのが近道です。

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この記事を書いた人

資格LABO

電験三種を含め、さまざまな資格を一発合格した経験をもとに、 忙しい社会人が最短距離で受かるための教材とYouTube解説を作っています。 暗記シート・講義ノートは累計2,000部を突破し、 多くの合格報告をいただいています。

保有資格

電気主任技術者電気工事士公害防止管理者放射線取扱主任者中学校・高等学校 教員免許
  • ⚡ 電験三種・電験二種の解説動画をYouTubeで公開中
  • 📚「勉強の過程」より「結果を重視」した教材の制作・販売
  • 🏋️ 過去問対策Webサービス「電験ジム」を開発・運営

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