誘導電動機の速度制御5方式を「かご型3つ・巻線型2つ」で一気に整理する
電験三種「機械」科目の誘導電動機の速度制御を解説。回転数の式 N=Ns(1−s) を出発点に、周波数・極数・すべりのどれを変えるかで5方式を分類。かご型で使える3つ(周波数・極数・一次電圧)と、巻線型でしか使えない2つ(二次抵抗・二次励磁=クレーマ/セルビウス)に分けて、混乱しがちな速度制御を構造的に丸暗記から卒業します。
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誘導電動機の速度制御。ここで一度は手が止まった方が多いのではないでしょうか。
一次周波数制御、極数切換制御、一次電圧制御、二次抵抗制御、クレーマ方式、セルビウス方式……。名前が6つも7つも並んだ時点で「これは覚えるしかないのか」とため息が出る。しかも「かご形で使えるのはどれ?」「巻線形専用はどれ?」と聞かれると、頭の中の表がぐしゃっと崩れる。
でも、安心してください。この単元は、丸暗記する場所が1つもありません。 覚えるのは、たった1本の式だけです。あとはその式に出てくる文字を、順番に1つずつ動かしていく。それだけで5つの方式が自然に並びます。
この記事を読み終えるころには、「制御法の名前を思い出す」のではなく「式のどの文字を動かしているか」で答えを出せるようになっています。

この記事で身につくこと
| 身につくこと | 試験での効き方 |
|---|---|
| 回転速度の式 N=(120f/p)(1−s) の使い方 | 計算問題の土台。すべての制御法がここから出る |
| 速度制御5方式を「動かす文字」で整理する視点 | 名前の丸暗記が不要になる |
| 連続制御と段階的制御の区別 | 「連続的に制御できるのはどれか」で確実に得点 |
| かご形と巻線形の使い分け(「二次」の鉄則) | 対応表を覚えなくても判定できる |
| 比例推移という言葉の意味 | 二次抵抗制御の記述問題に対応 |
| クレーマ方式とセルビウス方式の違い | 毎年のように狙われる比較問題を1秒で処理 |
「誘導機そのものの構造があやしい」という方は、先に〈誘導機の回転磁界と同期速度を「120f÷p」で一発計算〉に目を通しておくと、この記事の土台がしっかりします。
暗記フレーズ:かごは4つ(周波数・極数・電圧・抵抗)。巻線はクレーマ・セルビウスで二次励磁
声に出して読んでみてください。
かごは4つ(周波数・極数・電圧・抵抗)。巻線はクレーマ・セルビウスで二次励磁。Nの式は「f・p・(1−s)」。
前半で制御法の全体像が、後半で計算の土台が押さえられます。この記事で扱うことは、突き詰めればこの2行に収まります。
ステップ1:苦手の正体は「まじめに丸暗記しようとしていること」
まず、なぜこの単元でつまずくのかをはっきりさせておきましょう。原因は3つに絞れます。
| つまずきの理由 | 実際に起きていること |
|---|---|
| 名前が多い | 制御法の呼び名だけで6つ以上あり、順番も意味もバラバラに見える |
| 適用機種が混ざる | かご形で使えるもの/巻線形専用のものが頭の中で入れ替わる |
| 似た名前がある | クレーマとセルビウスの違いが説明できず、二択でどちらも選べない |
3つとも、共通の原因があります。制御法を「独立した6個の知識」として覚えようとしていることです。
独立した知識は、独立して忘れます。6個覚えれば6個分忘れる。だから何度やり直しても定着しない。
逆に言えば、6個を1本の式にぶら下げてしまえば、忘れるのは1本だけになります。そして、その1本はすでにご存じの式です。

ステップ2:覚えるのは「速度の基本式」1本だけ
誘導電動機の回転速度Nは、次の式で決まります。
- :同期速度[min⁻¹]
- :一次周波数[Hz]
- :極数
- :すべり
この式を、車のダッシュボードだと思ってください。回転数Nという「メーター」を動かしたければ、触れるツマミは f・p・s の3つしかありません。
3つのツマミが、5つの制御法に枝分かれする
| 動かす文字 | 制御法の名前 | 備考 |
|---|---|---|
| f を変える | 一次周波数制御(VVVF) | 連続制御できる主力 |
| p を変える | 極数切換制御 | 段階的にしか変えられない |
| s を変える① | 一次電圧制御 | 電圧Vを下げてすべりを増やす |
| s を変える② | 二次抵抗制御 | 巻線形専用 |
| s を変える③ | 二次励磁制御 | 巻線形専用(クレーマ・セルビウス) |
sを動かす手段が3つに分かれるので、合計5方式。これが速度制御法の全体像です。名前は結果であって、覚える対象ではありません。

すべりsの意味そのものが曖昧なままだと、ここから先がぼやけます。心当たりのある方は〈誘導機のすべりsを「同期にどれだけ遅れているかの割合」で攻略〉を先に押さえておきましょう。
ステップ3:f を動かす — 一次周波数制御(VVVF)
最初のツマミは周波数fです。正式には一次周波数制御、現場ではVVVF制御と呼ばれます。
電車が発車するとき、「ヒュイーン」と音程が上がっていくのを聞いたことがあるはずです。あれはインバータが周波数fを連続的に上げている音です。 のfが増えれば、Nはなめらかに増える。まさに式そのものが走っています。
周波数だけ変えてはいけない — V/f一定というルール
ただし、周波数を単独で変えると磁束が変化してしまい、電動機がうまく回りません。そこで電圧Vと周波数fを同時に調整し、V/fを一定に保つという条件がつきます。VVVFが「可変電圧可変周波数」の略なのは、この事情によるものです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 動かす文字 | f(一次周波数) |
| 制御の性質 | 連続制御が可能 |
| 必須条件 | V/f を一定に保つ |
| 適用機種 | かご形・巻線形どちらも可 |
| 用途例 | 電車、工場の動力設備 |

ステップ4:p を動かす — 極数切換制御
2つ目のツマミは極数pです。固定子巻線の接続の仕方を切り換えることで、極数を変えます。
ここには、試験で必ず狙われる落とし穴があります。
極数pは 2・4・6… と偶数の整数にしかなれない。だから速度は「段階的」にしか変わらない。
2極から4極へ、4極から6極へ。その途中の「3.5極」は存在しません。したがって、極数切換制御では連続的な速度制御ができません。
「誘導電動機の速度を連続的に制御できる方法はどれか」という設問で、極数切換制御を選ぶと不正解になります。ここは反射で切り捨てられるようにしておきましょう。

ステップ5:V を動かして s を変える — 一次電圧制御
3つ目は、電圧Vを操作する一次電圧制御です。
ここで一度立ち止まってください。Nの式に、電圧Vは出てきません。 ではなぜ電圧を変えると速度が変わるのか。この「なぜ」を押さえておくと、記述問題でも迷わなくなります。
電圧 → トルク → すべり → 速度、という連鎖
誘導電動機のトルクTは、一次電圧Vの2乗に比例します。
2乗ですから、電圧が少し下がっただけでトルクは大きく落ちます。そこから次の連鎖が起こります。
- 電圧Vを下げる
- トルクTが に従って大きく下がる
- 負荷トルクに勝てなくなり、回転子が引きずられる
- すべりsが大きくなる
- より、回転速度Nが下がる
つまり一次電圧制御は、Nを直接いじっているのではなく、トルクを経由してsを動かしている方式です。この方式もかご形・巻線形の両方で使えます。

トルクとすべりの関係が頭の中でつながりにくい方は、〈誘導機のT形等価回路を「一次→励磁→二次」で攻略!(1−s)/sが機械出力〉で回路側から眺め直すと腑に落ちます。
ステップ6:二次抵抗を動かす — 比例推移と巻線形の世界
ここから先は、巻線形専用の世界に入ります。そして、その理由は構造そのものにあります。
「一次」「二次」はどこを指すのか
| 呼び方 | 場所 | 外から触れるか |
|---|---|---|
| 一次側 | 固定子(ステータ) | かご形・巻線形とも触れる |
| 二次側 | 回転子(ロータ) | 巻線形のみ。スリップリング経由でアクセスできる |
かご形の回転子は導体が短絡された密閉構造で、外部から回路をつなぐ余地がありません。一方、巻線形はスリップリングを通じて二次側に外部回路を接続できます。
だからこそ、名前に「二次」がついた制御法は巻線形専用になるわけです。丸暗記ではなく、構造から出てくる必然です。
二次抵抗制御と比例推移
スリップリングを介して外部抵抗を接続し、その抵抗値を変える。これが二次抵抗制御です。ここで登場するのが比例推移という重要概念です。
二次抵抗を大きくすると、最大トルクの「大きさ」は変わらないまま、最大トルクを生じるすべりsだけが大きい方へ移動する。
最大トルクの山の高さはそのままで、山の位置だけが横にずれるイメージです。この性質を使い、同じトルクを出しながらすべりを増やして速度を落とします。記述問題では「比例推移」という語そのものが答えになることもあるので、言葉ごと覚えてください。

ステップ7:励磁を動かす① — クレーマ方式
最後のツマミが二次励磁制御です。名前が急に難しくなりますが、仕組み自体はごく素直です。
誘導電動機が回っているとき、二次側(回転子側)には「すべり電力」という余った電力が生じています。この余り物をどう処理するか。その処理方法の違いが、そのまま方式の違いになります。
クレーマ方式の流れはこうです。
巻線形誘導機 → 二次出力 → 整流器(コンバータ)で直流に変換 → 直流電動機を回す → 動力として機械的に回収
余った電力を、別のモータの回転として使い切る。二次側に外部から電圧を加えることでトルクと速度を制御しつつ、余剰エネルギーも無駄にしない。これが二次励磁制御の第一形態です。

ステップ8:励磁を動かす② — セルビウス方式は電源へ返す
セルビウス方式は、クレーマ方式の進化版です。違いは「直流にしたあと、どうするか」の一点だけ。
| 項目 | クレーマ方式 | セルビウス方式 |
|---|---|---|
| 二次電力を整流 | する | する |
| 直流のあとの処理 | 直流電動機を回す | インバータ等で交流に戻す |
| 最終的な行き先 | 動力として機械的に回収 | 電源へ返送(回生) |
| 効率 | — | 電力として再利用でき効率が高い |
セルビウス方式では、直流に変換したあとインバータ(または誘導発電機)を使って交流へ戻し、電源へ返送します。これを回生といいます。電車の回生ブレーキが、減速時のエネルギーを架線に戻して他の電車に使わせるのと同じ発想です。
覚え方は「クレーマは自分で動力として使う、セルビウスは礼儀正しく電源にお返しする」。少しふざけた覚え方ですが、本番で思い出せれば十分に役目を果たします。
ステップ9:かご形か巻線形かは「二次」の一言で判定する
5方式が出そろいました。最後は、試験本番でとっさに判断するための鉄則です。
対応表を丸暗記する必要はありません。次の一言だけで足ります。
名前に「二次」とついている制御は、巻線形専用。
| 制御法 | かご形 | 巻線形 | 判定の根拠 |
|---|---|---|---|
| 一次周波数制御(VVVF) | ○ | ○ | 「一次」=固定子側なのでどちらも可 |
| 極数切換制御 | ○ | ○ | 固定子巻線の接続変更 |
| 一次電圧制御 | ○ | ○ | 「一次」=固定子側 |
| 二次抵抗制御 | × | ○ | 「二次」=スリップリングが要る |
| 二次励磁制御(クレーマ・セルビウス) | × | ○ | 「二次」=スリップリングが要る |
かご形で使えるのは4つ(周波数・極数・電圧、そして電圧に付随するすべり操作)、巻線形だけが使えるのが「二次」の2つ。暗記フレーズの前半そのものです。
そもそもかご形と巻線形の構造差があやふやな方は、〈三相誘導機の回転速度を「同期速度・すべり・損失配分」で攻略〉で回転子まわりを復習しておくと、この判定がより速くなります。
まとめ
| 動かす文字 | 制御法 | 連続/段階 | 適用機種 | キーワード |
|---|---|---|---|---|
| f | 一次周波数制御(VVVF) | 連続 | かご形・巻線形 | V/f一定 |
| p | 極数切換制御 | 段階のみ | かご形・巻線形 | 偶数の整数 |
| V→s | 一次電圧制御 | 連続 | かご形・巻線形 | T ∝ V² |
| 二次抵抗→s | 二次抵抗制御 | 連続 | 巻線形専用 | 比例推移 |
| 励磁→s | 二次励磁制御 | 連続 | 巻線形専用 | クレーマ=動力回収/セルビウス=電源還流 |
最初に「6つも7つも名前がある」と感じていたものが、式1本と鉄則1つに畳まれました。
かごは4つ(周波数・極数・電圧・抵抗)。巻線はクレーマ・セルビウスで二次励磁。Nの式は「f・p・(1−s)」。
この2行が言えれば、この単元はもう手中にあります。
⚠ ここを間違える人が多い
❌ 回転速度の式で (1−s) を書き落とす
の (1−s) を、うっかり s だけにして としてしまう誤りが非常に多く見られます。すべりsは「同期速度からどれだけ遅れているかの割合」ですから、実際の速度は残りの割合 (1−s) で決まります。
✅ 正しくは:同期速度に掛けるのは s ではなく (1−s)。s=0.05なら、回転子は同期速度の95%で回っているという意味です。選択肢に 型の式が並んでいたら、それは引っかけだと思ってください。
❌ VVVF と CVCF を取り違える
「周波数を変える装置」と聞いて CVCF を選んでしまうケースがあります。名前が似ているうえ、どちらもインバータが絡むため混ざりやすいところです。
✅ 正しくは:頭文字で切り分けます。
| 略称 | 意味 | 速度制御に使うか |
|---|---|---|
| VVVF | 可変電圧・可変周波数 | 使う(一次周波数制御) |
| CVCF | 定電圧・定周波数 | 使わない(電圧・周波数を一定に保つ装置) |
Vが Variable(可変)なのか Constant(一定)なのか。ここだけ見れば間違えません。
❌ 制御している「対象」を取り違える
速度制御法を問う問題では、選択肢に「相数を変える」「巻数を変える」といった、それらしいが誤りの語句が混ぜられます。
✅ 正しくは: に登場するのは f・p・s だけ。式に出てこない量は、原則として制御対象になりません。迷ったら式に立ち返る。これが最も確実な判定法です。
過去問ではこう出た
この単元は、繰り返し出題されている定番テーマです。この記事の動画にひも付けられた過去問だけでも、次の3問があります。
| 年度 | 問番号 |
|---|---|
| 令和1年 | 問4 |
| 令和4年 上期 | 問7 |
| 令和5年 下期 | 問3 |
出題の傾向は、はっきりしています。第一に、回転速度の式そのものを穴埋めさせ、(1−s) を正しく置けるかを見る形。第二に、制御方式の名称と装置名(VVVF など)を組み合わせ、似た略称との識別を求める形。第三に、他の電動機(直流電動機など)の速度制御とまとめて並べ、「どの量を動かすとどちらへ動くか」を問う形です。
いずれも、この記事で扱った「式の文字を動かす」という視点があれば、選択肢を眺めるだけで消去できます。あとは実戦で手を動かすだけです。
よくある質問
Q. かご形の速度制御は「4つ」と数えていますが、二次抵抗制御は使えないのでは?
そのとおりです。暗記フレーズの「かごは4つ(周波数・極数・電圧・抵抗)」の「抵抗」は、5方式を数えるときの並びとして入っています。実際に外部から二次抵抗を入れられるのは巻線形だけです。フレーズは制御法5つの並びを思い出すための呼び水と考え、適用機種の判定は必ず「名前に『二次』がつくか」の鉄則で行ってください。
Q. VVVF で V/f を一定に保たないと、具体的に何が困るのですか?
磁束が一定に保てなくなります。周波数だけを下げると磁束が過大になって鉄心が磁気飽和し、励磁電流が増えて発熱します。逆に周波数だけを上げると磁束が不足してトルクが出せません。V/f一定は、どの速度でも同じトルク能力を保つための条件だと理解しておくと、記述でも書けるようになります。
Q. クレーマとセルビウス、どちらが優れているのですか?
エネルギーの再利用という観点では、セルビウス方式のほうが効率が高いとされています。クレーマ方式は余った二次電力を直流電動機の動力として回収するのに対し、セルビウス方式は電力のまま電源へ返送(回生)できるためです。試験では優劣そのものより、「電源へ返送するのはどちらか」=セルビウスという識別が問われます。まずはそこを確実にしてください。
Q. 変圧器と誘導機は、どうしてこんなに式が似ているのですか?
構造が親戚だからです。どちらも一次巻線と二次巻線が磁気的に結合しており、誘導機は「二次側が回れる変圧器」と見ることができます。二次抵抗や二次電力といった言葉が誘導機で出てくるのも、この対応関係があってこそです。この見方が気になった方は〈変圧器と誘導機の違いを「巻線が動くか動かないか」で一発理解〉と〈誘導機の出力比は「1:s:1-s」で芋づる式に!すべりだけで全部わかる〉を続けて読むと、二次側まわりの理解が一段深まります。
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