低圧配電方式を「地域→市街地→大都市」の3段階で攻略
電験三種「電力」科目で混乱しやすい低圧配電方式(樹枝状・バンキング・低圧ネットワーク)を、『負荷密度と信頼性で選ぶ』という一本の軸で整理。地域は樹枝状、市街地のフリッカ対策はバンキング、大都市の大口は低圧ネットワークと、使う場面から逆引きで覚える解説記事です。プロテクタ3点セットも図解で攻略します。
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この記事で身につくこと
配電方式は、名前が5つも出てくる単元です。樹枝状、ループ状、低圧バンキング、スポットネットワーク、レギュラーネットワーク。テキストを開くたびに「またこれか」とページを飛ばしてしまった方も多いはずです。
でも、苦手の正体はハッキリしています。5つを別々のものとして覚えようとしている、ただそれだけです。
| 苦手になる理由 | この記事での解決方法 |
|---|---|
| 名前が似ていて区別がつかない | 5つを「1本の階段」の各段として並べて覚える |
| どれが信頼度が高いのか分からない | 階段を上がるほど信頼度もコストも上がる、と決めてしまう |
| ネットワークプロテクタの3要素が覚えられない | 「地絡・過電流・逆電力」の役割分担で3点セット化する |
この記事を読み終える頃には、試験用紙の端に階段を1つ書くだけで、配電方式の問題がほぼ解けるようになります。難しい計算は一切出てきません。覚え方を変えるだけで、丸暗記が要らなくなる単元です。
暗記フレーズ:地域は樹枝状、市街地のフリッカ対策はバンキング、大都市の大口はネットワーク
まず結論から覚えてしまいましょう。
地域は樹枝状、市街地のフリッカ対策はバンキング、大都市の大口はネットワーク(最高信頼性)
このフレーズは「どこで使うか」から方式を引き当てる形になっています。試験問題は「大都市の大口需要家で用いられる方式は」というように、場所を示してから方式を聞いてくることがほとんどです。だから場所から逆引きできる形で覚えておくのが一番効率的なのです。
ステップ1:5方式を「信頼度の階段」に並べる

この記事で一番大事なのが、この階段です。下から順に、こう並びます。
| 段 | 方式 | 信頼度 | コスト |
|---|---|---|---|
| Step 1 | 樹枝状 | 低い | 安い |
| Step 2 | ループ状 | ↑ | ↑ |
| Step 3 | 低圧バンキング | ↑ | ↑ |
| Step 4 | スポットネットワーク | ↑ | ↑ |
| Step 5 | レギュラーネットワーク | 最も高い | 最も高い |
階段が成り立つ理由
信頼度を上げる方法は、突き詰めると1つしかありません。電気の通り道を増やすことです。通り道が1本しかなければ、そこが切れた時点でおしまい。2本あれば片方が生きています。ネットワークのように何本も絡み合っていれば、まず止まりません。
そして通り道を増やせば、その分だけ電線も変圧器も保護装置も増えます。だから信頼度とコストは必ず一緒に上がるのです。この理屈さえ分かっていれば、階段の順番を忘れても、その場で組み立て直せます。
ステップ2:樹枝状方式 ― 日本の標準形

階段の1段目です。変電所から、木の枝のように電線を張り出していく形です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 日本で最も多い方式。負荷密度が低い住宅地・農村部 |
| 長所 | 構成が単純で建設費が安い/需要が増えたら線を追加するだけで対応できる |
| 短所 | 故障するとその先が全部停電する(停電範囲が広い)/電気が一方通行なので電力損失が大きい |
枝が1本折れたら、その先の葉っぱは全部落ちる。この絵をそのまま持っていれば、短所を思い出せます。
試験で狙われるのは「日本で最も多い=負荷密度が低い地域」という組み合わせです。「日本で一番多い方式なら都会でも使われているはず」と考えてしまうと引っかかります。数が多いのは、そもそも負荷密度の低い地域が国土の大半だからです。
なお、この樹枝状の電線が実際に柱の上でどう張られているかは〈架空配電を「電線3種+柱上機器の役割分担」で攻略〉で扱っています。柱上変圧器や区分開閉器のイメージが薄い方は、先にそちらを眺めておくと、この先の話が一気に立体的になります。
ステップ3:ループ状方式 ― 両側給電で停電区間を狭める

2段目は、配電線をぐるっと輪にした形です。輪になっているということは、どちら側からでも電気を送れるということ。これが「両側給電」です。
何が良くなるのか
- 故障が起きても、その箇所だけを切り離して反対側から電気を回せる。だから停電区間が樹枝状より格段に狭い
- 両側から供給されるので電圧が安定し、フリッカ(電圧変動による照明のちらつき)が少ない
- 対象は負荷が密集した地域
短所は素直に1つ、建設費が増えることです。輪を作る分だけ電線が余計に要りますから、階段の法則どおりです。
「フリッカが少ない」は試験で問われるポイントなので、ループ状とセットで押さえておいてください。
ステップ4:低圧バンキング方式 ― 変圧器を母線で並列にする

3段目。ここが5つの中で一番とっつきにくいところですが、言葉の意味さえ分かれば簡単です。
バンキングとは「並列につなぐ」という意味。低圧バンキング方式は、複数の変圧器の二次側を、共通の低圧母線でつないだ方式です。何台もの変圧器が、1本の母線に並んでぶら下がっているイメージを持ってください。
長所と短所は必ずセットで
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 長所 | 電力損失が小さい/フリッカが少ない/1台が壊れても他の変圧器が補うので停電影響が小さい |
| 短所 | カスケーディングの恐れがある |
カスケーディングとは、1台の変圧器が故障したとき、保護装置が動作するより先に隣の変圧器へ過負荷がかかり、故障が次々と連鎖していく現象です。ドミノ倒しをイメージすると分かりやすいでしょう。
母線でつながっているからこそお互いを助け合えるのですが、同じ理由で、トラブルもつながって伝わってしまう。「助け合える=巻き込まれる」という表と裏の関係です。
「バンキング=カスケーディングの恐れ」。これは試験で繰り返し問われるセットなので、長所を答えられる人ほど、短所も必ず口に出して覚えてください。
ステップ5:スポットネットワーク方式 ― 大都市の「大口」向け

4段目からがネットワーク方式です。まずはスポットネットワーク(スポットNW)から。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 大都市の大口需要家・重要部(大きなビル、工場など絶対に止められない場所) |
| 仕組み | 複数回線で給電し、ネットワークプロテクタを使う |
| 長所 | 電圧変動が少なく、信頼度が極めて高い |
| 短所 | 回路が複雑になり、建設費が高い |
複数回線というのは、2回線以上から電気を送るということです。1回線が止まっても、残りの回線がそのまま供給を続けます。停電した瞬間に切り替えるのではなく、最初から並行して送っている点がポイントです。
そしてここで押さえるべきは、次の1行です。
スポットNWは「大都市の大口」、レギュラーNWは「大都市の低圧全般」。
このペアは試験頻出です。「大都市」という言葉だけで選ぶと必ず取り違えます。
ステップ6:レギュラーネットワーク方式 ― 階段の最上段

いよいよ5段目、最高峰です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 大都市の低圧需要家全般(低圧エリア全体をカバー) |
| 仕組み | 複数回線から複数の変圧器を経由し、低圧の幹線ネットワークに接続する。二次ヒューズは省略できる場合がある |
| 特徴 | 信頼度が最も高い/建設費も最も高い |
スポットNWが「1つの大きな建物を守る」のに対し、レギュラーNWは「街の低圧エリアを面で守る」形です。ネットワークが二重三重に絡み合っているため、どこかが切れても電気の通り道が残る。だから信頼度が最高になります。
なお、ここで出てくる「低圧」の中身、つまり単相2線式・単相3線式・三相3線式・三相4線式の違いが曖昧な方は、〈配電4方式は「単2を100の基準」にすれば数値が丸ごと覚わる〉を先に押さえておくと、この単元の「低圧全般」という言葉が具体的に見えてきます。
ステップ7:ネットワークプロテクタの3要素

ネットワーク方式で必ず問われるのが、この3点セットです。3つ揃って初めて「プロテクタ」であり、1つでも抜けたら不正解になります。
| # | 機器 | 守る対象 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| ① | プロテクタヒューズ | 地絡(電線が地面に漏電) | 溶けて回路を切る。切れたら交換が必要 |
| ② | プロテクタ遮断器 | 過電流(流れすぎた電流) | 何度でも使える。復帰できる |
| ③ | 電力方向継電器 | 逆電力 | 逆向きの電流を検知して回路を切り離す |
③が一番大事な理由
ネットワーク方式は複数回線を並行して使っています。ということは、どこかで故障が起きたとき、健全な回線から故障した回線へ、普段とは逆向きに電流が流れ込むことがあります。
これを放置すると、故障の影響がネットワーク全体に広がってしまう。そこで電力方向継電器が「今、電気が逆に流れている」と判断し、その回線を切り離すのです。ネットワーク方式の高い信頼度は、この機器が支えていると言っても大げさではありません。
覚え方は「地絡はヒューズ、過電流は遮断器、逆電力は継電器」。3つの守る対象がバラバラなので、対象で紐づけると混ざりません。順番は問われませんが、3つ全部を答えられる必要があります。
ステップ8:5方式の比較表(保存版)

最後に、5方式を横一列に並べた表です。試験直前はここだけ見返せば十分です。
| 方式 | 対象 | 主な長所 | 主な短所 |
|---|---|---|---|
| 樹枝状 | 日本で最も多い・負荷密度が低い地域 | 単純・安価・需要増に対応しやすい | 停電範囲が広い・電力損失が大きい |
| ループ状 | 負荷が密集した地域 | 両側給電・停電区間が狭い・フリッカが少ない | 建設費が増加する |
| 低圧バンキング | 使用場所は少ない | 電力損失小・フリッカ少・停電影響小 | カスケーディングの恐れ |
| スポットNW | 大都市の大口需要家・重要部 | 複数回線・電圧変動が少ない・信頼度が極めて高い | 回路が複雑・建設費が高い |
| レギュラーNW | 大都市の低圧需要家全般 | 信頼度が最も高い | 建設費が最も高い |
左から右へ進むほど、長所の欄は「信頼度」の話になり、短所の欄は「お金」の話になっていきます。これが階段そのものです。
まとめ
配電方式でやるべきことは、たった1つです。
樹枝状 → ループ状 → 低圧バンキング → スポットNW → レギュラーNW の順に、信頼度とコストが上がる。
この1本道さえ書ければ、「どちらが信頼度が高いか」を問う問題は全部処理できます。その上に、方式ごとの固有キーワードを載せていきます。
| 方式 | 一言キーワード |
|---|---|
| 樹枝状 | 日本で最も多い/停電範囲が広い |
| ループ状 | 両側給電/フリッカが少ない |
| 低圧バンキング | 共通の低圧母線/カスケーディング |
| スポットNW | 大都市の大口/複数回線 |
| レギュラーNW | 大都市の低圧全般/信頼度最高 |
試験が始まったら、まず問題用紙の端にこの階段を書いてしまいましょう。頭の中だけで整理しようとすると、緊張で順番が飛びます。紙に書いた階段は飛びません。 これだけで、この単元は得点源に変わります。
⚠ ここを間違える人が多い
配電方式は暗記の単元ですが、間違え方には決まった型があります。多いのは次の3つです。
❌「ネットワーク方式なら、どんな故障でも停電しない」
→ ✅ 変圧器二次側の共通母線そのものが故障した場合は、受電を続けられません。
複数回線があるのは母線に届くまでの話で、どの回線から来た電気も最後は同じ母線を通ります。合流地点が壊れれば、その先へは行けません。「回線が複数ある=あらゆる故障に強い」と拡大解釈すると、選択肢の正誤を取り違えます。どこが故障した場合の話なのかを、必ず読み取ってください。
❌「カスケーディングとは大規模停電のこと」
→ ✅ カスケーディングはバンキング方式の変圧器どうしで連鎖する故障のことで、系統全体の大停電(ブラックアウト)とは別物です。
言葉の響きが似ているため混ざりやすいのですが、規模がまったく違います。カスケーディングは低圧母線につながった変圧器の話。ブラックアウトは電力系統全体の話です。登場する舞台が違うと覚えておけば取り違えません。
❌ プロテクタヒューズと遮断器の並び順をあいまいにする
→ ✅ 電源側から見て、変圧器 → プロテクタヒューズ → プロテクタ遮断器 → 母線の順です。
保護機器の並び順を問う問題では、順序を入れ替えた選択肢が必ず用意されます。大きい機器(変圧器)が先に来て、そのあとに保護機器が続く、という流れで押さえておくと迷いません。3要素を「暗記」しただけで満足せず、どこに置かれているのかまで見ておきましょう。
過去問ではこう出た
配電方式は、計算を伴わない知識問題として安定して出題されています。動画に紐づく範囲だけでも、次の4問が該当します。
| 年度 | 問番号 |
|---|---|
| 平成27年 | 問12 |
| 平成28年 | 問12 |
| 令和2年 | 問13 |
| 令和4年下期 | 問13 |
出題傾向はハッキリしています。問12〜問13付近の定位置で、5つの方式の説明文を並べて「誤っているものはどれか」と聞く形式が中心です。誤りの作り方も限られていて、対象地域の入れ替え(大口と低圧全般など)、長所と短所の入れ替え、そして保護機器の順序や名称のすり替え、この3パターンでほぼ説明がつきます。
裏を返せば、この記事の比較表とプロテクタの3要素を正確に覚えていれば、その場で誤りを見つけられるということです。計算力ではなく、キーワードの結びつきの精度だけが問われます。
実際の問題文の言い回しに慣れておきたい方は、こちらでどうぞ。
よくある質問
Q. 低圧バンキング方式は、日本ではあまり見かけないのですか?
使用される場所は少ない方式です。電力損失やフリッカの面では優れているのですが、カスケーディングという固有のリスクを抱えているため、採用が限られます。ただし試験での出題頻度は使用実績とは関係ありません。 むしろ「長所と短所がきれいに対になっている」という理由で、問題を作りやすい方式です。実務で見かけないからと軽視せず、比較表の1行としてしっかり覚えてください。
Q. スポットネットワークとレギュラーネットワークは、どちらが上位なのですか?
信頼度の階段では、レギュラーネットワークが最上段です。ただし「スポットが劣る」という意味ではありません。守る対象が違うだけです。スポットは1つの大きな需要家をピンポイント(=スポット)で守り、レギュラーは大都市の低圧エリアを面で守ります。試験では上下関係よりも、大口か低圧全般かという対象の違いで問われることの方が圧倒的に多いので、そちらを優先して覚えましょう。
Q. ループ状方式は、常に輪の両側から電気を流しているのですか?
方式の要点は「両側から給電できる構成になっている」という点にあります。実際の運用では、平常時は輪のどこかを開いておき、故障時にそこを閉じて反対側から送る、という使い方もされます。試験対策としては、運用の細部よりも「両側給電できる構成だから、故障区間を切り離しても停電範囲が狭く済む/電圧が安定してフリッカが少ない」という長所の理由づけを押さえておけば十分です。
Q. 5つの方式名が、どうしても頭に残りません。
順番に意味を持たせるのが近道です。①1本の枝(樹枝状)→ ②枝の先をつないで輪にする(ループ状)→ ③変圧器の足元を母線でつなぐ(低圧バンキング)→ ④建物1つに複数回線を引き込む(スポットNW)→ ⑤街全体を網で覆う(レギュラーNW)。つなぐ範囲がだんだん広がっていくという流れです。名前を5つ並べて覚えるのではなく、この「広がっていく絵」を思い浮かべてから名前を当てはめると、抜けにくくなります。
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