電線の抵抗を決める4要素/第4の主役は「温度」
電験三種「理論」で計算問題の差がつく電線の抵抗。長さL・断面積S・抵抗率ρの3要素に加え、見落としがちな『第4の要素=温度』を、温度係数αを用いた公式 R₂ = R₁(1+α(T₂−T₁)) の意味から直感的に理解。原子の振動と電子の通り道のイメージで、温度上昇で抵抗が増える理由まで一気にマスターします。
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この記事で身につくこと
「電線の抵抗? でしょ、覚えてるよ」——そう言える方は、もう半分ゴールしています。
ところが本番の試験では、その公式を知っていても解けない問題が出ます。理由はひとつ。抵抗を決める要素が、実は4つあるからです。長さ・太さ・材質、ここまでは多くの方が押さえています。最後の1つ、温度を落としたまま試験会場に入ってしまう——これが毎年、確実に点を落とすパターンです。
この記事を読み終えると、次の状態になります。
| 読む前 | 読んだ後 |
|---|---|
| 抵抗は3つの要素で決まると思っている | 温度を含めた4要素で説明できる |
| 温度が上がると抵抗が増える理由が言えない | 原子の熱振動と自由電子の衝突で説明できる |
| を丸暗記している | なぜ「1+」が要るのかを理解して使える |
| 温度が絡んだ計算問題で手が止まる | 基準温度を見つけて代入するだけ、と分かる |
難しい話は一切しません。ホースの水と混雑した交差点、この2つのイメージだけで最後まで走り抜けます。
暗記フレーズ:長さ・太さ・材質・温度、この4つで電線の抵抗は決まる
試験直前、頭が真っ白になったときに唱えてほしい一文です。
長さ・太さ・材質・温度、この4つで電線の抵抗は決まる。
順番にも意味があります。前半の3つ(長さ・太さ・材質)は という1本の式にまとまっています。そして最後の「温度」だけが、別の式として上に乗ってくる。この構造さえ頭に入っていれば、問題文に「20℃のとき」「80℃に上昇したとき」といった言葉を見つけた瞬間、「あ、2段構えの問題だな」と反応できるようになります。
ステップ1:まずは前回の復習——「細くて長いホース」

水道のホースを思い浮かべてください。細くて長いホースほど、水は出にくい。電気もまったく同じで、電線が細くなるほど、そして長くなるほど、電気は流れにくくなります。この「流れにくさ」が抵抗です。
ここに材質の違いが加わります。同じ太さ・同じ長さでも、銅と鉄では流れやすさが違う。その材質固有の性質を数値にしたものが抵抗率 ρ(ロー)です。
| 記号 | 意味 | 単位 | 抵抗との関係 |
|---|---|---|---|
| 電気抵抗 | [Ω] | — | |
| 抵抗率(材質で決まる) | [Ω・m] | 比例 | |
| 電線の長さ | [m] | 比例 | |
| (または ) | 断面積(太さ) | [m²] | 反比例 |
反比例するのは断面積だけ、という点だけ強く意識しておいてください。ここを取り違えると、計算の答えがまるごとひっくり返ります。
この基本公式そのものがまだ怪しい、という方は、先に電気抵抗 R=ρL÷S を「ホースの水流」で完全イメージ攻略を読んでおくと、この先が驚くほどスムーズになります。急がば回れです。
ステップ2:抵抗率の逆数「導電率」も押さえておく

抵抗率とセットで覚えておきたいのが導電率です。名前は難しそうですが、中身は拍子抜けするほど単純で、抵抗率の逆数、それだけです。
| 用語 | 記号 | 表すもの | 関係 |
|---|---|---|---|
| 抵抗率 | ρ(ロー) | 電気の流れにくさ | — |
| 導電率 | σ(シグマ) | 電気の流れやすさ |
問題文が「流れにくさ」で話を進めているのか、「流れやすさ」で進めているのか。それだけの違いで、言っていることは表と裏です。試験では「導電率が大きい材料はどれか」という聞き方をされることがありますが、これは要するに「抵抗率が小さい材料はどれか」と同じ質問です。
導電率が大きい = 抵抗率が小さい = よく電気を通す
材質ごとの抵抗率の大小そのものが気になった方は、電気材料と抵抗率:通す・止める・その間が半導体!で、導体・絶縁体・半導体の並びごと整理しておくと視界が開けます。
ステップ3:ここからが本題——第4の要素「温度」

さて、いよいよ本題です。
長さ・太さ・材質。この3つで抵抗は決まる——と思っていたら、まだもう1つありました。それが温度です。
一般に、金属などの導体は温度が上がると抵抗が増加します。「熱くなると電気が通りにくくなる」。まずはこの結論を、丸ごと飲み込んでください。
なぜ温度が上がると抵抗が増えるのか
理由を、4段階の流れで追いかけます。
- 温度が上がる
- 金属中の原子やイオンの熱振動が激しくなる
- その振動が自由電子の通り道を塞ぐ(衝突が増える)
- 結果として、抵抗値が上昇する
言葉にすると硬いのですが、イメージはとても身近です。渋谷のスクランブル交差点を思い出してください。人がまばらなら、すいすい歩けます。ところが人が増えて、しかもみんなが動き回っていると、まっすぐ進めずぶつかってばかりになる。
この「動き回る人」が熱振動する原子、「進みたい自分」が自由電子です。温度が上がるというのは、交差点の人混みが激しくなるのと同じこと。だから電子は進みにくくなり、抵抗が増えるわけです。
そもそも「電子が流れる」という感覚がぼんやりしている方は、電流と電子は「逆向き」が正解:1840倍の重さで覚える理論の入口を先に押さえておくと、この話が一気に立体的になります。
ステップ4:温度変化の公式を、意味から組み立てる
温度で抵抗が変わることが分かったら、次はどれだけ変わるかを数字にします。ここで登場するのが抵抗温度係数 α(アルファ)です。
| 記号 | 意味 |
|---|---|
| 温度 のときの抵抗(基準となる抵抗) | |
| 温度 に変化した後の抵抗(求めたい値) | |
| 変化前の温度[℃] | |
| 変化後の温度[℃] | |
| 抵抗温度係数(1℃あたり何倍増えるか) |
「1+」は何のために付いているのか
この公式でいちばん質問が多いのが、カッコの中の「1+」です。ここを丸暗記のまま通り過ぎると、本番で必ず落とします。
答えはシンプルで、元の抵抗そのもの(100%分)を残すためです。
| カッコの中身 | 意味すること |
|---|---|
| 元の抵抗 の 100%分(そのまま残る土台) | |
| 温度が上がった分の増加割合 | |
| 土台+増加分=変化後の倍率 |
つまりこの式は「元の抵抗に、温度差の分の増加を上乗せする」と言っているだけなのです。もし「1」を書き忘れると、答えは増えた分だけの値になり、元の抵抗がまるごと消えてしまいます。
1 を落とす = 家の土台を抜いて2階だけ建てるようなもの。
手順は3ステップだけ
温度が絡んだ問題が出たら、やることは毎回同じです。
- 基準の抵抗 とその温度 を問題文から拾う
- 変化後の温度 を拾い、 を計算する
- 公式に代入して を出す
「温度が絡むと難しそう」と感じるかもしれませんが、やっていることは引き算と掛け算です。 より、むしろ易しいくらいだと思ってください。
ステップ5:4要素を1枚の地図にまとめる
ここまでの内容を、1枚の表に畳んでおきます。試験前日はここだけ見返せば十分です。
| 要素 | 記号 | 大きくすると抵抗は | 関わる式 |
|---|---|---|---|
| 長さ | 増える(比例) | ||
| 断面積(太さ) | 減る(反比例) | ||
| 材質 | 増える(比例) | ||
| 温度 | 増える |
見ていただきたいのは、式が2本しかないということです。
- 上の3つは、 という1本の式の中にすべて入っている
- 温度だけが、その結果に後から掛かる別の式
問題文に温度の記述がなければ1本目だけ。温度が出てきたら2本目も使う。判断はこれだけです。
まとめ
長い記事にお付き合いいただき、ありがとうございました。持ち帰っていただきたいのは、次の4点です。
| # | 押さえること |
|---|---|
| 1 | 抵抗は 。長さと抵抗率に比例、断面積に反比例 |
| 2 | 導電率は抵抗率の逆数。「流れやすさ」を言いたいときに使う |
| 3 | 温度が上がると原子の熱振動が激しくなり、自由電子が邪魔されて抵抗は増える |
| 4 | 温度計算は 。「1+」を落とさない |
「電線の抵抗」は、理論科目の中でも努力がそのまま点になる、数少ない安全地帯です。難解な過渡現象や複雑な回路網と違って、覚えることは式2本だけ。ここを固めておくと、他の単元を勉強する体力にも余裕が生まれます。
そして繰り返しになりますが、長さ・太さ・材質・温度。この4語だけは、寝る前に唱えられるくらいにしておいてください。
⚠ ここを間違える人が多い
この単元は「分かったつもり」がいちばん危ない場所です。実際に失点につながりやすいポイントを3つ挙げます。
❌ 抵抗率だけを見て「この材料がいちばん抵抗が大きい」と判断してしまう
複数の電線を並べて「どれの抵抗がいちばん大きいか」を問う形式は、定番の出題です。ここで抵抗率の数値だけを見比べて即答すると、まず外します。
✅ 正しくは、 の全部を見ること。抵抗率が大きくても、断面積が大きければ抵抗は下がります。逆に抵抗率が小さい材料でも、極端に細ければ抵抗は跳ね上がる。問題が用意しているのは、まさにその「ねじれ」です。抵抗率だけで判断せず、必ず まで計算してから比べてください。
❌ 温度公式の「1+」を書き忘れる
✅ 何度でも言います。 の1 は、元の抵抗を残しておくための土台です。ここを落とすと、答えは「増えた分だけ」というごく小さな値になり、選択肢のどれにも当てはまらなくなります。逆に言えば、答えが選択肢に無いときは真っ先にここを疑うと、リカバリーが利きます。
❌ 温度差の引き算を逆にしてしまう
✅ カッコの中は 、つまり「後 - 前」です。順番を逆にすると符号が反転し、温度が上がったのに抵抗が減るという、あり得ない答えが出てきます。値を代入する前に「これは変化後、これは変化前」と口に出して確認する。この一手間だけで、防げる失点です。
過去問ではこう出た
「電線の抵抗」は、理論科目で繰り返し問われ続けている定番テーマです。テーマで照合した範囲でも、電験ジムの収録分だけで 103問が該当します。
| 年度・期 | 問番号 |
|---|---|
| 令和2年 | 問5 |
| 令和7年 上期 | 問5/問6/問7/問9 |
| 令和7年 下期 | 問5/問6/問8 |
表を見て、気づかれたでしょうか。令和7年は上期・下期あわせて7問。1回の試験の中で、この周辺の知識が複数回問われている計算になります。
出題の傾向は、おおむね次の3つに分かれます。
- に素直に代入させる基本問題
- 複数の電線を比較させ、抵抗率と断面積の両方を見ないと解けない問題
- 温度変化を与えて を求めさせる、温度係数の問題
裏を返せば、この記事の式2本を確実に使えれば、その多くに手が届くということです。あとは手を動かして慣れるだけ。
よくある質問
Q. 温度が上がると抵抗が増えるのは、どんな材料でも同じですか?
いいえ、金属などの導体についての話です。この記事で扱っているのは銅やアルミといった導体で、温度上昇に伴って原子の熱振動が激しくなり、抵抗が増加します。電験三種の計算問題で「電線」「導体」と書かれていれば、まずこの性質だと考えて構いません。逆に言えば、問題文が導体の話をしているのかどうかを最初に確認する癖をつけておくと安心です。
Q. 抵抗温度係数 α は、暗記しておく必要がありますか?
具体的な数値は、基本的に問題文で与えられます。覚えるべきは数値そのものではなく、αが何を意味するか——「温度が1℃上がったときに、元の抵抗の何倍分が増えるかを表す係数」という中身のほうです。意味さえ分かっていれば、与えられた数値を公式に入れるだけで答えが出ます。数値の丸暗記に労力を使うより、公式の形を手で書けるようにしておくほうが、はるかに得点につながります。
Q. 断面積が「直径」で与えられたときは、どうすればいいですか?
そのまま代入してはいけません。公式の は面積なので、直径 が与えられたら で面積に直してから使います。ここで大事なのは、直径が2倍になると断面積は4倍になるという点です。断面積が4倍ということは、抵抗は になる。「太さを2倍にしたら抵抗は半分」と早合点する方が非常に多いのですが、正解は です。直径の話なのか面積の話なのか、問題文の言葉を必ず確認してください。
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