電気材料と抵抗率:通す・止める・その間が半導体!
電験三種「理論」の基礎『電気材料と抵抗率』を解説。抵抗率 ρ の大きさで物質を導体・半導体・絶縁体に3分類し、銀・銅・シリコン・ゴム・がいしなど試験頻出の材料と特徴を一気に整理。半導体の温度特性や絶縁破壊電圧まで、選択問題で確実に得点するための1記事。
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この記事で身につくこと
「半導体」という言葉、ニュースでは毎日のように耳にしますよね。台湾がどうの、輸出規制がどうの、と。でも「じゃあ半導体って結局なんなの?」と聞かれると、言葉に詰まる——そんな方がほとんどではないでしょうか。
実はこれ、電験三種の勉強をしている皆さんにとっては、すでに半分は答えを知っている話なんです。半導体は、これまで学んできた「導体」と「絶縁体」の、ちょうど仲間。特別な新キャラではありません。
この記事を読み終えると、次のことができるようになります。
| 身につくこと | 試験でどう役立つか |
|---|---|
| 抵抗率ρの大小で3分類できる | 「導体・半導体・絶縁体」の並べ替え問題で迷わない |
| 代表材料を名前で言える | 銀・銅・アルミ、シリコン、ゴム・碍子が即答できる |
| 導電率と抵抗率の関係が言える | 「導電率が最も大きいのは?」に一瞬で答えられる |
| 半導体だけ温度特性が逆だと分かる | 正誤問題の定番ひっかけを回避できる |
暗記量はごくわずかです。理屈が1本通っているので、覚えるというより「納得して終わり」にできる単元。理論科目の中では、間違いなく得点しやすいほうに入ります。肩の力を抜いて読んでいきましょう。
暗記フレーズ:通す、止める、その間が半導体
まずこれだけ、頭に置いてください。
通す、止める、その間が半導体
導体は通す。絶縁体は止める。そして半導体はその間。たったこれだけで、この単元の骨格は完成しています。試験本番で選択肢を前に迷ったら、このフレーズを思い出せば「どっち側の話だったか」がすぐ戻ってきます。
あとは、その3つにどんな材料が入るかと、半導体だけが持つクセを足していくだけ。ここから順に見ていきましょう。
ステップ1:物質は「抵抗率」で仕分けされる

世の中のあらゆる物質は、電気の流しにくさ——つまり 抵抗率 ρ(ロー) の大きさによって仕分けできます。
もともとは、シンプルに2つのグループでした。
| グループ | 抵抗率ρ | 材料としての目的 |
|---|---|---|
| 導体 | 非常に小さい | 電気を流すため |
| 絶縁体 | 非常に大きい | 電気を止めるため |
「流したいなら導体、止めたいなら絶縁体」。これが基本ルールです。電線の中身が銅で、その外側がゴムで包まれているのは、まさにこの2つを組み合わせた形ですね。中は流す、外は止める。身の回りのものが、そのまま教科書になっています。
なお、抵抗率ρは という式で、実際の抵抗値Rに顔を出します。
このρが何者だったか少しあやふやな方は、先に〈電気抵抗 R=ρL÷S を「ホースの水流」で完全イメージ攻略〉を読んでおくと、この先の話が一段とラクになります。
ステップ2:導体──電気を非常によく通す材料

導体は、抵抗率ρが非常に小さいグループ。特徴は一言で言えます。
自由電子が多く、電気抵抗が極めて小さい
自由電子というのは、原子にがっちり縛られず、物質の中を動き回れる電子のこと。これがたくさんいる物質ほど、電気を運ぶ担い手が多いわけですから、当然よく流れます。
試験に出る導体の材料名
代表的な導体は、次の5つです。
| 材料 | 押さえどころ |
|---|---|
| 銀 | 抵抗率が最も小さい=最もよく通す |
| 銅 | 実際の電線で最も広く使われる |
| 金 | 腐食に強く、接点などに使われる |
| アルミニウム | 軽く、送電線に使われる |
| 鉄 | 導体だが、上の4つよりは流しにくい |
ここで一番よく問われるのが、「最も電気を通しやすいのは銀」という点です。
導電率との関係を混ぜて出される
ここが小さなひっかけポイント。問題文は「抵抗率が最も小さいのは?」と聞くこともあれば、「導電率が最も大きいのは?」と聞くこともあります。
導電率は抵抗率の逆数です。
逆数ですから、抵抗率が最小なら導電率は最大。どちらの聞かれ方でも答えは銀、ということになります。言い回しが変わっただけで別の問題に見えてしまう——これは真面目に勉強している方ほどハマる罠なので、ここで一度整理しておきましょう。
抵抗率が小さい = 導電率が大きい = よく流れる
では、なぜ電線は銀ではないのか
素朴な疑問ですよね。一番よく通すのが銀なら、電線は全部銀にすればいい。でも実際の送電線に使われているのは、主に銅とアルミニウムです。
理由はシンプルで、コスト。銀で日本中に送電線を張り巡らせたら、電気代がとんでもないことになってしまいます。性能だけでなく値段と量で選ぶ、というのが電気の世界の現実的なところです。
(余談ですが、銅ケーブルの盗難がニュースになるのも、銅にそれだけの価値があるから、なんですね。)
この「一番は銀、現場は銅」という現実の使い分けは、それ自体が理解しておくと面白いテーマです。もう少し詳しく知りたい方は〈「一番は銀、現場は銅」── 抵抗率2位の銅が電線の王様になった理由〉をどうぞ。
ステップ3:絶縁体──電気をほとんど通さない材料

導体の反対側にいるのが、絶縁体(不導体)です。押さえるべき特徴は2点だけ。
| # | 特徴 |
|---|---|
| 1 | 自由電子がほとんどなく、電気を遮断する |
| 2 | 絶縁破壊電圧という限界がある |
1つ目は、導体の裏返しです。電気を運ぶ担い手である自由電子がいないので、流れようがない。だから止められる、というだけの話です。
「絶縁体は絶対に電気を通さない」ではない
ここが2つ目のポイントであり、試験でも狙われるところです。
絶縁体には 絶縁破壊電圧 という限界があります。ものすごく大きな電圧をかけられると、止めきれずに電気が流れてしまうのです。
イメージとしては、押さえる力に限界がある、ということ。抑え込める圧力(ここでは電圧)を超えたものが来たら、もう止められない。どんなに丈夫なものにも限界はありますよね。それと同じです。
絶縁体=「絶対に通さない」ではなく「限界までは通さない」
試験に出る絶縁体の材料名
| 材料 | ひとこと |
|---|---|
| ゴム | 電線の被覆でおなじみ |
| ガラス | 身近な絶縁体 |
| プラスチック | 器具のケースなど |
| 陶磁器(碍子) | 電線を支えながら絶縁する部品 |
このうち碍子(がいし)は、電線を鉄塔や電柱に支持しつつ、電気が構造物へ逃げないようにする部品です。詳しくは電力科目の送配電分野で扱いますので、今の段階では「そういうものがある」と知っておけば十分。ここで深追いする必要はありません。
ステップ4:ここで一つ、質問です
さて、ここまでで「流す物質」と「止める物質」を学びました。では考えてみてください。
状況に応じて、流したり止めたりを切り替えたいときは、どうしますか?
……人が張り付いて、その都度、導体と絶縁体を交換する? さすがにそんなわけにはいきませんよね。家電のスイッチを押すたびに誰かが部品を差し替えていたら、大変なことになります。
ここで登場するのが、3つ目のグループです。
ステップ5:半導体──導体と絶縁体の「中間」

答えは、半導体を使う、でした。
半導体は、導体と絶縁体の中間の性質を持つ材料です。特徴は次の3点。
| # | 特徴 |
|---|---|
| 1 | 抵抗率が導体と絶縁体の中間 |
| 2 | 温度が上がると抵抗が減少する |
| 3 | 不純物を加えると電気的性質が大きく変化する |
主な材料は シリコン(ケイ素) と ゲルマニウム。試験ではこの2つの名前が出てきます。
3つの特徴を、もう少しだけ
①中間である——これが名前の由来そのものですね。「半分だけ導体」。導体でも絶縁体でもない、その真ん中に位置づけられます。
②温度が上がると抵抗が減る——ここが最大の注目点です。金属(導体)は、温度が上がると抵抗が増える性質を持っています。半導体はその逆。この「逆」が試験で執拗に狙われます(詳しくは後の節で)。
③不純物で性質が変わる——純粋なシリコンにごく微量の別の元素を混ぜることで、電気的な性質を思いどおりに変えられます。この性質があるからこそ、半導体は「設計できる材料」になりました。現代の電子機器に欠かせないと言われる理由が、まさにここにあります。
半導体の中身の仕組みは、理論科目の後半にある電子理論の分野で改めて学びます。今の段階では、「導体と絶縁体の中間の性質を持つ」——これだけ握っておけば十分です。深追いしようと思えばいくらでもできてしまう分野なので、初級のうちは範囲を切ることも立派な戦略です。
ステップ6:3分類を1枚の表で

ここまでの内容を、横に並べて比べてみましょう。バラバラに読むと分かりにくいものも、並べると一目瞭然です。
| 項目 | 導体 | 半導体 | 絶縁体 |
|---|---|---|---|
| 抵抗率ρ | 非常に小さい | 中間 | 非常に大きい |
| 自由電子 | 多い | 中間 | ほとんど無い |
| 電気を | よく通す | 条件で変わる | ほとんど通さない |
| 温度が上がると抵抗は | 増加 | 減少 | — |
| 代表材料 | 銀・銅・金・アルミ・鉄 | シリコン・ゲルマニウム | ゴム・ガラス・プラスチック・碍子 |
| 目的 | 流す | 切り替える | 止める |
こうして並べると、半導体がまさに導体と絶縁体の性質を半分ずつ持っていることが見えてきますね。スクリーンショットを撮って、いつでも見返せるようにしておくのがおすすめです。
なお表の「温度が上がると抵抗は」の行、導体が増加で半導体が減少——ここが本記事で一番重要な1行です。導体側の温度の話をもう少し掘りたい方は、〈電線の抵抗を決める4要素/第4の主役は「温度」〉が対になる内容になっています。
ステップ7:半導体は現場で何をしているのか
最後に、半導体が実際にどこで働いているかを軽く見ておきましょう。イメージがあると、記憶の定着がまるで違います。
スイッチとしての半導体
半導体の制御とは、要するに ON/OFF の切り替え です。
| STEP | 状態 |
|---|---|
| STEP 1 | そのままでは電気を通しにくい |
| STEP 2 | 温度・電圧など外部条件を変化させる |
| STEP 3 | 電気が流れるようになる |
同じ1つの部品が、条件次第で「絶縁体のようにも、導体のようにも」ふるまう。だから、人が部品を差し替えなくても、流す/止めるを自在に切り替えられるわけです。ステップ4の質問への答えが、ここでつながりました。
2つの活躍分野
| 分野 | 何をしているか |
|---|---|
| 制御素子 | 電気の ON/OFF を切り替える |
| パワーエレクトロニクス | モータ制御、各種電子機器の制御装置 |
パワーエレクトロニクスという言葉は、これから機械科目などで何度も出会うことになります。「半導体で電力を思いどおりに操る技術」くらいの理解で、今は十分です。
まとめ
今回の内容を、もう一度ぎゅっとまとめます。
| 押さえること | 中身 |
|---|---|
| 分類の基準 | 抵抗率ρの大きさ |
| 導体 | ρ小・自由電子多・銀銅金アルミ鉄/最小は銀 |
| 絶縁体 | ρ大・自由電子ほぼ無・ゴムガラスプラ碍子/絶縁破壊電圧という限界あり |
| 半導体 | 中間・温度上昇で抵抗減少・不純物で性質変化・シリコン/ゲルマニウム |
| 導電率 | 抵抗率の逆数。大きいほどよく流す |
覚えることは、材料名と、半導体の3特徴くらい。理論科目の中では、労力あたりの得点効率がかなり高い単元です。
そして迷ったときは、あのフレーズに戻ってください。
通す、止める、その間が半導体
⚠ ここを間違える人が多い
この単元は素直に見えて、正誤問題では意外と足をすくわれます。実際に取り違えが起きやすい3か所を挙げておきます。
❌ 温度が上がれば、どんな物質も抵抗が増える
✅ 増えるのは導体(金属)だけ。半導体は逆に減ります。
金属の温度上昇=抵抗増加、というのは電線の勉強で先に身につくため、その感覚のまま半導体の選択肢を読んでしまう——これが一番多いパターンです。「半導体は温度が上がると抵抗が減少する」という記述を見て、なんとなく違和感を覚え、正しいのに誤りだと判断してしまう。逆に言えば、ここさえ意識しておけば1問拾えます。
半導体では、熱によって電気を運ぶ担い手そのものが増えるので、流れやすくなる。理屈で押さえておくと、本番で迷いません。
❌ 絶縁体なら、どんな電圧でも安全に止められる
✅ 絶縁破壊電圧という限界があります。
「絶縁体=電気を通さないもの」と丸暗記していると、限界の存在を問う選択肢に対応できません。止めているのはあくまで「ある電圧まで」。この一言を添えて覚え直しておきましょう。
❌ 導電率と抵抗率をなんとなく同じ向きで覚えている
✅ 逆数です。向きは真逆になります。
「銀は導電率が最も小さい」といった選択肢は、ぱっと見では違和感が薄く、読み飛ばしがちです。抵抗率と導電率のどちらで聞かれているかを、必ず一度確認する癖をつけてください。
過去問ではこう出た
この単元は、電気材料・電子理論の分野として 問11 を中心に、ほぼ毎年のように顔を出す定番テーマです。
| 年度 | 問番号 |
|---|---|
| 平成27年 | 問11 |
| 平成28年 | 問11 |
| 平成29年 | 問11 |
| 平成30年 | 問11 |
| 令和1年 | 問11 |
| 令和2年 | 問11/問5 |
| 令和3年 | 問11 |
出題の形は、計算よりも正誤判定(5つの記述から正しいもの・誤っているものを選ぶ)が中心です。だからこそ、材料名と性質を「なんとなく」ではなく言い切れる状態にしておくことが、そのまま得点に直結します。
特に狙われるのが、前の節で挙げた温度特性の向きと用語の言い換え(抵抗率/導電率)。ここを固めるだけで、正解率がはっきり変わってきます。
この動画に紐づく過去問は、電験ジムに 12問 収録されています。読んで分かった気になっているかどうかは、実際に解いてみるのが一番早い確認方法です。
よくある質問
Q. 抵抗率と抵抗は、何が違うのですか?
抵抗率ρは「材料そのものの性質」、抵抗Rは「その形にしたときの実際の値」です。
同じ銅でも、細く長い線にすれば抵抗Rは大きくなりますし、太く短くすれば小さくなります。でも「銅という材料の流しにくさ」=ρは、形をどう変えても同じ。 という式は、まさに「材料の性質ρ」に「形(長さLと断面積S)」を掛け合わせて、実際の抵抗Rを出している式なんですね。
分類の話でρが使われるのは、形に左右されない、材料そのものの物差しだからです。
Q. 半導体は、結局どのくらい電気を通すのですか?
「条件次第」というのが正直な答えです。そして、それこそが半導体の価値でもあります。
温度・電圧といった外部条件や、加える不純物の種類・量によって、通しやすさが大きく変わります。導体のように「常に通す」でも、絶縁体のように「常に止める」でもなく、通し具合を設計できる材料。だから制御に使えるわけです。
試験対策としては、数値そのものより「導体と絶縁体の中間」「条件で変わる」という位置づけを押さえておけば十分です。
Q. 半導体は電子理論で学ぶそうですが、今どこまでやるべきですか?
今回の記事の範囲で、いったん止めて大丈夫です。
pn接合、ダイオード、トランジスタ……と、半導体は掘り始めると際限がありません。しかしこの段階で求められているのは、「導体と絶縁体の中間の性質を持つ材料であり、シリコンやゲルマニウムがその代表」という位置づけの理解です。
先へ進みたい気持ちは大事にしつつ、今は先に進んで、電子理論の単元に来たときに改めてじっくり取り組む。そのほうが、結果的に理解が早く深くなります。範囲を切る勇気も、独学では立派な武器ですよ。
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