分巻式 直流機を「父と子」で攻略!発電機と電動機の電流・電圧の違い
電験三種「機械」科目で計算ミスが多発する分巻式の直流発電機・直流電動機を、『父と子の比喩』と『向きは逆でも、分流は同じ』というキーワードで徹底比較。電流の向き、起電力Eと端子電圧Vの大小関係、界磁電流If=V/Rfの共通点までを1記事で整理します。
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「分巻の問題になると、なぜか点が取れない」。そんな悩みを持っている方は、実はかなり多いです。
不思議な話ですよね。直流機の計算は、使うのはオームの法則とキルヒホッフの法則だけ。交流のようにベクトルも位相も出てきません。それなのに、本試験では分巻式の計算問題でごっそり失点する人が後を絶ちません。
理由ははっきりしています。間違えるのは「難しいから」ではなく、「符号」と「分流」の2つを取り違えるからです。裏を返せば、この2つさえ潰してしまえば、分巻式は落とすほうが難しい単元に変わります。
今日はその2つだけに集中して、発電機と電動機を並べて整理していきましょう。読み終わるころには、「あ、これ迷いようがないな」と思えるはずです。

この記事で身につくこと
- 分巻式の直流機で、発電機と電動機の何が変わって、何が変わらないのかがはっきり分かる
- と の符号で迷わなくなる(「父と子」の比喩で覚える)
- 発電機の 、電動機の という分流の式を書き分けられる
- 界磁電流 が発電機でも電動機でも共通であることを理解できる
- 本番で迷わないための解法手順が身につく
暗記フレーズ:向きは逆でも、分流は同じ
この記事で覚えていただきたいのは、たったこれだけです。
向きは逆でも、分流は同じ
分巻式の直流機で、発電機と電動機を比べたときに変わるのは、電流の向き(と、それに伴う電圧式の符号)だけ。回路の骨組みも、界磁に電流が分かれていくことも、まったく同じなのです。
しかも「分巻」の「分」は「分流」の「分」。語呂としても覚えやすいので、この対応でセットにしてしまってください。ダジャレのような覚え方でも、本番で思い出せれば立派な武器になります。

ステップ1:まず「分巻」とはどういう配線かを押さえる
分巻式というのは、界磁巻線を電機子と並列につないだ方式のことです。並列につながっているので、界磁巻線には端子電圧 がそのままかかります。
したがって、界磁電流はオームの法則そのままで、
と求まります。ここで大事なのは、この式は発電機でも電動機でも変わらないということ。分巻式である以上、界磁巻線は常に端子電圧と並列だからです。ここは共通項として、先に頭のなかで固定してしまいましょう。
そしてもう一つ。界磁に電流が流れるということは、電機子を流れる電流と、外側の電流は一致しないということです。この「一致しない」がクセモノで、多くの人がここを見落として失点します。
なお、界磁巻線が電機子と直列につながる方式もあり、そちらは直巻式と呼ばれます。直巻は電流が分かれないぶん構造がシンプルで、考え方も変わってきます。並列と直列の違いを整理して押さえたい方は、直巻式 直流機を「一直線」で攻略!発電機と電動機の電圧公式の違いも合わせて読んでおくと、混乱が一気に減ります。
ステップ2:発電機の回路 — 電流は「外向き」に出ていく
まずは発電機から見ていきます。

発電機は自分で電気をつくる側なので、電流は機器から外へ出ていく向きになります。電機子でつくられた電流 が、まず界磁側と負荷側に分かれていく。式にすると次のとおりです。
つまり電機子電流 がいちばん大きいわけです。負荷電流 が与えられていても、それをそのまま として計算に放り込んではいけません。必ず を足してから使う。ここが第一の関門です。
電圧のほうは、電機子抵抗 での電圧降下を差し引いた分が外に出てきます。
これを誘導起電力 について解けば、
となります。
ステップ3:発電機の符号は「父が息子に小遣いを渡す」で覚える
「プラスだったかマイナスだったか」で毎回迷ってしまう。この悩みは、比喩を一つ持っておくだけで消えます。
がお父さん(生み出す側)、 が息子(受け取る側) と考えてください。発電機は が電気を生み出す側ですから、当然お父さんのほうが大きい。つまり、
です。そして、お父さんが息子に小遣いを渡すとき、途中で税金( の電圧降下)が引かれてしまう。だから、
という関係になるわけです。式を暗記するのではなく、この場面を思い出す。それだけで符号の取り違えはほぼなくなります。
ステップ4:電動機の回路 — 電流は「内向き」に入ってくる
次は電動機です。

図を見ると、発電機とほとんど同じ形をしています。実際、回路の構造そのものは同じです。違うのは電流の向き。電動機は電気を受け取って回る側ですから、電流は外から内へ入ってくる向きになります。
電源から入ってきた電流 が、電機子側と界磁側に分かれる。式は次のとおりです。
形は発電機とよく似ていますが、中身は違います。発電機では が分かれる前の電流でしたが、電動機では が分かれる前の電流で、 は分かれた後。つまり、電動機では より のほうが大きいのです。
この入れ替わりが、分巻式でいちばん間違いが起きるポイントです。
電圧のほうは、電源電圧 から電機子抵抗での電圧降下を引いた残りが、回転によって生じる逆起電力 とつり合います。
について解くと、
発電機とは符号が反対になっていますね。
そもそも「同じ回路図なのに電流の向きが逆になる」という感覚そのものが怪しい、という方は、先に電動機と発電機の違い|他励式は同じ回路図でも電流が逆を読んでおくと、ここからの理解が一気に楽になります。
ステップ5:電動機の符号は「父と子」が入れ替わる
ここでも「父と子」の比喩が効きます。ただし、立場が逆転するのがポイントです。
電動機では、 がお父さん(電源・供給する側)、 が息子(受け取る側)。電源のほうが大きいので、
となります。そして、お父さんから息子に渡るときに税金 が引かれる。
お気づきでしょうか。発電機も電動機も、「大きいほうから税金を引くと小さいほうになる」という構造はまったく同じなのです。違うのは、どちらがお父さん役かだけ。
- 発電機 … が父、 が子 →
- 電動機 … が父、 が子 →
こう並べてしまえば、覚えることは「発電機はEが父、電動機はVが父」の一行だけになります。2つの公式を別々に暗記する必要はありません。
ステップ6:発電機と電動機を表で並べて比較する
ここまでを一枚の表にまとめます。
| 項目 | 分巻発電機 | 分巻電動機 |
|---|---|---|
| 電流の向き | 外向き(出ていく) | 内向き(入ってくる) |
| 電流の関係 | ||
| 分かれる前の電流 | (電機子電流) | (電源電流) |
| 電圧の関係 | ||
| 起電力を求める式 | ||
| と の大小 | ||
| 界磁電流 | (共通) | |
| 回路の構造 | 同じ | 同じ |
表の一番下の2行を見てください。界磁電流の式も、回路の構造も、まったく同じです。変わっているのは上半分、つまり「向き」に関わる部分だけ。
これが「向きは逆でも、分流は同じ」という言葉の中身です。
ステップ7:分流だけは、しつこいくらい確認する
少ししつこいと思われるかもしれませんが、もう一度だけ電流の話をさせてください。それだけ、ここが失点の温床だからです。

分巻式では、電流が必ず界磁側へ分かれます。これを忘れると、 と (あるいは )を同じものとして計算してしまい、答えが合いません。しかも困ったことに、 は に比べて小さいことが多いので、無視して計算しても「それらしい値」が出てしまうのです。選択肢にちゃんと引っかけの数字が用意されているので、なんとなく選んで不正解、というパターンになります。
対策はシンプルです。分巻の問題を見たら、計算を始める前に を先に出しておく。この習慣をつけるだけで、分流の見落としはほぼ防げます。
ステップ8:本番で迷わないための解法手順
最後に、実際の試験で使う手順を固定しておきましょう。

- 発電機か電動機かを、まず確認する … 問題文の「発電機」「電動機」の3文字を丸で囲むくらいの意識で
- 界磁電流 を先に計算する … 分流の見落としを構造的に防ぐ
- 分かれる前の電流はどちらかを決める … 発電機なら 、電動機なら
- を確定させる … 発電機は 、電動機は
- 「父と子」で符号を決めて を出す … 発電機は 、電動機は
この5ステップを、そのまま計算用紙の隅に書いてから解き始める。それだけで、分巻式の失点はかなり減ります。
なお、電機子に電流が流れると磁束のほうにも影響が出ます(電機子反作用)。そこまで含めて直流機を仕上げたい方は、直流発電機の電気子反作用は『直列』で全部攻略できるへ進んでください。
まとめ
分巻式の直流機は、「発電機と電動機で2セット覚えなければいけない」と思うから難しく感じます。実際は、覚えるのは1セット+向きの入れ替えだけです。
- 分巻式は界磁巻線が電機子と並列 → (発電機・電動機で共通)
- 発電機は電流が外向き → 、、
- 電動機は電流が内向き → 、、
- 符号は「父と子」で決める … 大きいほうから税金()を引くと小さいほうになる
- 合言葉は「向きは逆でも、分流は同じ」
苦手意識のある単元ほど、覚えることを削れば一気に得点源になります。分巻式はまさにその典型です。
⚠ ここを間違える人が多い
実際に受験生がつまずくポイントを、3つに絞って挙げておきます。
❌ 負荷電流 をそのまま電機子電流 として使ってしまう → ✅ 分巻では必ず界磁へ分流します。発電機なら 、電動機なら と、一手間かけてから の計算に入りましょう。 が小さいと、足し引きを忘れても答えらしい数字が出てしまうのが厄介なところです。
❌ 電動機なのに としてしまう(符号の取り違え) → ✅ 電動機は が供給する側で 。大きいほうから引くという原則に立ち返れば、 しかありえません。手が止まったら公式を思い出すのではなく、「どっちが父親か」を先に決めてください。
❌ 電動機の を「誘導起電力」と呼んで混乱する → ✅ 電動機で回転により生じる起電力は、電源電圧に逆らう向きに現れるため逆起電力と呼ぶのが正確です。用語を選ばせる問題では、この呼び分けがそのまま正誤の分かれ目になります。「発電機は誘導起電力、電動機は逆起電力」とセットで覚えてしまいましょう。
もう一つ添えておくと、問題の途中で発電機から電動機に切り替わる出題があります。このとき電機子電流の向きは反転しますが、界磁側の扱いは変わらないという点を意識して読み進めてください。ここでも「向きは逆でも、分流は同じ」が効いてきます。
過去問ではこう出た
分巻式の直流機は、本試験で繰り返し問われている定番テーマです。実際に、次の回で出題されています。
- 平成27年 問2
- 平成28年 問1
- 平成28年 問6
- 令和3年 問2
- 令和3年 問7
- 令和7年下期 問1
平成28年のように、同じ年度に2問出ている回もあります。それだけ機械科目のなかで比重が大きい単元だということです。しかも令和3年、令和7年と近年も続いていますから、「古い年度のテーマ」と油断はできません。
出題の傾向としては、電流と電圧の関係式を使って や を求めさせる素直な計算問題が中心です。ただし、界磁電流を経由させたり、途中で発電機と電動機を切り替えたり、出力やトルクの計算につなげたりと、一手間加えた形で問われることが多くなっています。逆に言えば、この記事の5ステップの手順どおりに処理できれば、そのまま得点に変わる問題群です。
まずは実際に手を動かして、手順が身体に入っているかを確認してみてください。
よくある質問
Q. 界磁電流 は小さいので、無視して計算してはいけませんか?
いけません。たしかに は に比べて小さいことが多く、無視してもそれらしい数字は出ます。しかし試験問題では、その「無視した場合の値」がちゃんと誤答の選択肢として用意されていることが少なくありません。せっかく解法が合っているのに、そこで1点を落とすのは非常にもったいない話です。 の計算自体は割り算1回。先に済ませてしまうのが結局いちばん速いです。
Q. 発電機の と電動機の は、同じものと考えていいのですか?
物理現象としては同じです。どちらも「コイルが磁束を切って回ることで生じる起電力」で、 という形で決まります。違うのは役割です。発電機ではその起電力が電気を送り出す原動力になり、電動機では電源電圧に逆らう向きに現れて電流を制限します。だから電動機では「逆起電力」と呼び分けます。同じものを、別の立場から見ているだけと理解してください。
Q. 分巻の電動機で、負荷が重くなると回転数はどうなりますか?
負荷が重くなると電機子電流 が増え、 より逆起電力 が下がります。 は回転数に比例しますから、回転数はわずかに下がることになります。ただし分巻では界磁が端子電圧と並列で磁束がほぼ一定に保たれるため、下がり方はごくわずか。負荷が変わっても回転数がほぼ一定という、分巻電動機の代表的な性質はここから来ています。
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