その他の発電は『バイオはニュートラル、廃棄は不安定』で攻略
電験三種「電力」科目で出題される『その他の発電』のうち、バイオマス発電と廃棄物発電を整理。バイオマスはCO2の排出量と吸収量が等しい『カーボンニュートラル』、廃棄物発電は『発電効率が低く出力が不安定』という2大特徴をフレーズで暗記し、文章問題のひっかけを見抜くための1記事です。
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この記事で身につくこと
電力科目の勉強を進めていくと、水力・火力・原子力の3つはどうしても分厚くなります。過去問でもほぼ毎年顔を出しますから、そこに時間を注ぐのは当然のことです。
ところが、そのすぐ隣に「その他の発電」という一群があります。バイオマス発電、廃棄物発電。毎年は出ません。でも、忘れたころにポロッと出ます。そして、たいていの受験生はここを素通りしているので、出たときに素直に落とします。
裏を返せば、ここはやった人だけが確実に拾える1点です。しかも、覚えることは驚くほど少ない。この記事を読み終えるころには、次のことができるようになっています。
- バイオマス発電の燃料が何なのかを、具体例つきで言える
- カーボンニュートラルという言葉を、自分の口で説明できる
- 廃棄物発電の弱点を「なぜそうなるのか」の流れごと説明できる
- 2つの発電方式を、燃料・環境特性・出力特性の3項目で比較できる

「その他の発電」と聞くと、なんだか雑多で覚えにくそうに感じますよね。でも今回扱うのは2つだけ。しかも、その2つは性格が真逆なので、対比で押さえればまず混ざりません。
暗記フレーズ:バイオはニュートラル、廃棄は不安定
この単元は、極端な話、この1文で終わります。
バイオはニュートラル、廃棄は不安定
バイオマス発電は「カーボンニュートラル」が売り。廃棄物発電は「出力が安定しない」が弱点。試験で問われるのは、ほぼこの2点です。
色でも紐づけておきましょう。バイオマスは緑(エコのイメージ)、廃棄物は赤(危なっかしいイメージ)。この記事のあとに出てくる比較表も、この色分けと同じ並びになっています。
| 発電方式 | 合言葉の担当部分 | 覚える中身 |
|---|---|---|
| バイオマス発電 | バイオはニュートラル | CO2の吸収量と排出量が釣り合う |
| 廃棄物発電 | 廃棄は不安定 | 発電効率が低く、出力が安定しない |
迷ったら、この一文に戻ってください。本当に、これだけで解ける問題がほとんどです。
ステップ1:なぜ「その他の発電」で落とすのか

この単元でつまずいている方の悩みは、だいたい次の3つに集約されます。
モヤモヤ1:カーボンニュートラルって何だっけ
ニュースでも見聞きする言葉なので、なんとなく「エコな感じ」で流してしまう。だから、いざ「なぜニュートラルなのか」と聞かれると答えられません。
モヤモヤ2:廃棄物発電とバイオマス発電の違いが曖昧
どちらも「燃やして発電する、環境にやさしそうな方式」に見えるため、頭の中で混ざります。選択肢を見て「どっちだったかな」と手が止まる典型です。
モヤモヤ3:覚えることが多すぎる
これは誤解です。この単元に限っては、覚える量は水力や火力の10分の1もありません。多く見えるのは、整理されていないだけ。
なお、太陽光・地熱・燃料電池といった他の「その他の発電」も、同じように1つずつ潰していけば確実に得点源になります。地熱の分け方が怪しい方は、先に地熱発電は『高温ならフラッシュ、低温ならバイナリー』で攻略を読んでおくと、この記事の内容も並べて整理しやすくなります。
ステップ2:バイオマス発電の燃料は「有機物」

バイオマス発電の燃料は有機物。ざっくり言えば「生き物に由来する燃料」です。代表的なものを表にまとめます。
| 燃料 | 具体例 | どこから来るか |
|---|---|---|
| 木くず | 木材の端材、間伐材 | 林業・製材の現場 |
| エタノール | サトウキビ・トウモロコシ由来のアルコール | 農業・作物 |
| メタンガス | 家畜のし尿を発酵させて得られるガス | 畜産の現場 |
木くず、アルコール、そして家畜のし尿。見た目はまったくバラバラですが、共通点は「もとをたどれば生き物」ということ。だから、ひとまとめに有機物と呼びます。
家畜のし尿から燃料が取れる、というのは初めて聞くと驚く話です。しかし日本は資源に乏しい国ですから、こうしたものまで無駄なくエネルギーに変えていこう、という発想は理にかなっています。
ステップ3:カーボンニュートラルの正体は「行って来いでゼロ」

ここがバイオマス発電の最重要ポイントです。
「燃やせばCO2が出るのに、なぜゼロなのか」という疑問が最初に来るはずです。答えは、その燃やしたCO2は、もともとその植物が空気中から吸い込んだものだから。
植物は成長するときに大気中のCO2を吸収します。その植物を燃料として燃やすと、吸い込んだ分のCO2が大気に戻る。つまり行って来いで、大気中のCO2は差し引きゼロ。新しく増やしているわけではありません。
これが実質ゼロ = カーボンニュートラル、すなわち「中立」と呼ばれる理由です。石炭や石油のように、地中に長年閉じ込められていた炭素を新たに大気へ持ち出す発電とは、この点が決定的に違います。
ステップ4:廃棄物発電の燃料は「ゴミ」

続いて廃棄物発電です。こちらの燃料は、そのままゴミ。
バイオマス燃料は、木くずを粒のそろったペレットに加工して燃やすなど、形と質をそろえられるのが強みでした。一方、ゴミ袋の中身を思い浮かべてください。生ゴミもあれば紙もプラスチックもある。しかも水分を含んでいます。
| 比較点 | バイオマス燃料 | ゴミ(廃棄物) |
|---|---|---|
| 形状 | ペレット等にそろえられる | バラバラ |
| 材質 | ほぼ均一 | 紙・プラ・生ゴミなど混在 |
| 水分 | 管理できる | 含んでいることが多い |
| 燃え方 | 均一に燃える | 均一に燃えない |
この「そろっているか、そろっていないか」という一点の差が、次のステップで出力特性の差になって表れます。
ステップ5:だから発電効率が低く、出力が安定しない

廃棄物発電の弱点は、丸暗記ではなく一本道の流れで覚えるのが確実です。
- ゴミは燃え方がバラバラ
- だから、得られる熱エネルギーが安定しない
- 結果、発電効率が低く、出力が安定しない
原因(燃料がそろわない)から結果(出力が安定しない)まで、途中に「熱が安定しない」を1つ挟むだけ。この3段さえ言えれば、試験で問われる形はすべてカバーできます。
ここで一つ、誤解しないでいただきたいことがあります。廃棄物発電は「劣った発電方式」ではありません。どのみち処理しなければならないゴミを、熱と電気として回収できるという点で、資源の有効活用としては非常に優秀です。試験では弱点が問われるので弱点を覚えますが、実務的な価値とは別の話だと押さえておいてください。
ステップ6:Q1で確認しよう

ここまでの内容を、本番の問われ方に近い形で確認します。
【問題】植物の燃焼により発生するCO2が、植物の成長過程での吸収量と等しくなる性質(カーボンニュートラル)を持つ発電方式は何発電か。
答えを思い浮かべてから、次に進んでください。
正解はバイオマス発電です。「カーボンニュートラル」という語を見た瞬間に、反射で「バイオマス」と手が動く状態を作っておきましょう。合言葉の前半、「バイオはニュートラル」がそのまま答えになっています。
ステップ7:Q2で確認しよう

もう1問。
【問題】燃料の性質上、発電効率が低く、出力が安定しないという特徴を持つ発電方式は何発電か。
正解は廃棄物発電です。「発電効率が低い」「出力が安定しない」というキーワードが出てきたら、迷わずこちらを選んでください。合言葉の後半、「廃棄は不安定」がそのまま答えです。
2問とも、たった1文の暗記フレーズだけで解けました。この単元が「実はこれだけ」と言われる理由が、実感できたのではないでしょうか。
なお、こうした発電方式ごとの特徴は、単体で覚えるより「他の方式と並べたときにどの位置にいるか」で捉えるほうが記憶に残ります。効率の順位まで含めて横断的に整理したい方は、その他の発電は『水コン燃、火風原ガス、太バイ地』で効率の順位を丸暗記も併せて読んでみてください。
まとめ
最後に、完全保存版の比較表です。この表がそのまま試験対策の全体像になります。
| 項目 | バイオマス発電 | 廃棄物発電 |
|---|---|---|
| 燃料 | 有機物(木くず・エタノール・メタンガス等) | ゴミ(水分・材質がバラバラ) |
| 環境特性 | カーボンニュートラル(CO2吸収量=排出量) | 特記なし。ゴミという資源を有効活用できる |
| 出力特性 | 安定。特段の弱点なし | 発電効率が低く、出力が安定しない |
| 設備の形態 | 小規模分散型が一般的 | 都市部のごみ処理施設に併設される |
| イメージ色 | 緑(エコ) | 赤(暴れん坊) |
縦に3つの項目、横に2つの発電方式。この6マスを埋められれば、試験対策としては十分です。
そして、迷ったときに戻る場所はいつも同じ。
バイオはニュートラル、廃棄は不安定
一度で覚えようとしなくて構いません。忘れたらまたこのページに戻ってきてください。何度でも、同じ表がここで待っています。
⚠ ここを間違える人が多い
この単元は内容が易しいぶん、正誤問題では細かいところで足をすくわれます。実際に取り違えが起きやすい点を3つ挙げます。
❌ バイオマスの燃料は「無機物」だと思っている
✅ 正しくは有機物です。「バイオ(bio)=生き物」と結びつけて覚えてしまえば迷いません。空欄補充問題では、この一語が有機か無機かで選択肢が真っ二つに分かれるように作られていることがあります。ここを落とすと、他が全部合っていても不正解になります。
❌ バイオマス発電は大規模集中型だと思っている
✅ 実際には小規模分散型が一般的です。理由を考えれば納得できます。木くずや家畜のし尿は、各地の山や畜産農家に薄く広く散らばっていますよね。それを一か所の巨大な発電所まで運ぼうとすると、集める手間と輸送費が発電で得られる価値を上回ってしまいます。だから、燃料が出る場所の近くに小さな設備を置くほうが理にかなうのです。「燃料を運ぶコストが効く発電は、小さく分散する」と理屈で覚えておきましょう。
❌ 廃棄物発電の弱点を「効率が低い」だけで覚えている
✅ 効率の低さと出力の不安定さは、セットで問われます。片方だけしか思い出せないと、「発電効率は低いが出力は安定している」といった、もっともらしい誤りの選択肢を見抜けません。原因はどちらも「ゴミが均一に燃えないこと」です。原因が一つなら、結果も一組で覚えるのが自然ですね。
過去問ではこう出た
この単元からの出題として、直近では令和7年度上期の問5でバイオマス発電が問われています。
出題の形は、文章中の空欄を埋めさせるタイプが中心です。燃料が有機物であること、カーボンニュートラルが成り立つ仕組み、そして設備が小規模分散型であること——問われるのは、この記事で扱ってきた内容とほぼ重なります。計算はありません。知っているか、知らないか、それだけで決まる問題です。
だからこそ、対策の費用対効果が非常に高い分野だと言えます。水力の計算問題を1問取れるようにするより、はるかに短い時間でこの1点は取れます。毎年出るわけではありませんが、出たときに確実に拾えるようにしておけば、合格ラインの前後で効いてきます。
実際の問題文で手を動かしてみたい方は、こちらからどうぞ。
よくある質問
Q. 廃棄物発電もゴミの中の生ゴミや紙を燃やしています。これもバイオマス発電と呼べるのでは?
もっともな疑問です。実際、ゴミの中には木や紙、生ゴミといった有機物が相当量含まれています。ただし電験の試験対策としては、燃料として何を集めてきたかで線を引いてください。木くずやし尿由来のガスを「燃料として集めた」ならバイオマス発電、家庭や事業所から出たゴミをまとめて燃やすなら廃棄物発電です。試験問題も、この区別が崩れるような聞き方はしてきません。迷ったら「有機物を選んで集めたか、ゴミをまとめて燃やしたか」で判断すれば大丈夫です。
Q. カーボンニュートラルなら、バイオマス発電は完全にCO2ゼロなのですか?
試験で問われる範囲では「吸収量=排出量で実質ゼロ」と答えて正解です。ただ、現実にはもう少し議論があります。燃料を輸入する場合の輸送、チップに加工する工程など、発電以外の場面でエネルギーを使うためです。また、燃料となる木材チップの価格高騰や、海外から運んでくるものを再生可能エネルギーと呼べるのかという論点もあります。こうした話は電験三種の出題範囲ではありませんので、試験対策としては割り切って「カーボンニュートラル=吸収量と排出量が釣り合う」で押さえておいてください。
Q. 「その他の発電」は出題が少ないのに、勉強する価値はありますか?
あります。むしろ費用対効果で言えば上位です。理由は2つ。1つは、覚える量が圧倒的に少ないこと。この記事の比較表6マスと合言葉1文で、出題される内容のほとんどをカバーできます。もう1つは、多くの受験生がここを捨てていること。みんなが取る問題を取っても差はつきませんが、みんなが落とす問題を取れば、その1点がそのまま合否の差になります。同じ「その他の発電」でも、燃料電池の4種類は『コ・リン・ヨウ・コで温度UP』で攻略のように押さえどころのある単元が並んでいますから、まとめて片付けてしまいましょう。
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