直流発電機の誘導起電力を「回す・通す・巻き方」で丸暗記から卒業
電験三種「機械」科目の直流発電機の誘導起電力Eaの公式を解説。基礎物理のE=Blvを発電機の「寸法」と「回転」に翻訳しただけと捉え直し、「回す・通す・巻き方」の3ステップで構造的に理解。重ね巻・なみ巻の見分け方や比例関係まで、計算問題で確実に得点できる形で整理します。
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この記事で身につくこと
「機械」のテキストを開いて、最初に出てくるのが直流発電機。そしていきなり、こんな公式が現れます。
アルファベットが5つ。分数。しかも下に 60 という謎の数字。ここで「機械は無理かもしれない」と閉じてしまった方、きっと少なくないはずです。
でも、安心してください。この公式は、暗記するものではなく「組み立てる」ものです。もとをたどれば、理論科目で習った ——たったこれだけの式です。それを「発電機という機械の寸法」に翻訳しただけなんです。
この記事では、次のことができるようになります。
| 身につくこと | 具体的には |
|---|---|
| 公式を自力で組み立てられる | から3ステップで の式を導出できる |
| 記号の意味が言える | ・・・・ が何を表すか説明できる |
| 巻き方を見分けられる | 重ね巻となみ巻で、並列回路数 を正しく選べる |
| 比例関係で解ける | を使って、増減の問題を暗算で処理できる |
丸暗記は、忘れたら終わりです。でも構造で理解していれば、忘れてもその場で作り直せます。試験本番で強いのは、間違いなく後者です。

暗記フレーズ:回す・通す・巻き方で決まる誘導起電力 Ea
まずは、この記事の背骨になるフレーズを頭に入れてしまいましょう。
「回す・通す・巻き方」で決まる誘導起電力
長い公式も、分解すればこの3つの要素でできています。
| フレーズ | 対応する要素 | 公式の中では |
|---|---|---|
| 回す | 回転速度 | |
| 通す | 磁束(どれだけ磁力を通すか) | |
| 巻き方 | 内部の導体構造 |
この3つが掛け算で並んでいるだけ、と思えば急に距離が縮まりませんか。
ここから先は、この3つを1つずつ掘り下げていきます。順番に追っていけば、最後には「なんだ、そういうことか」と腑に落ちるはずです。
ステップ0:出発点はあの

理論科目で、こんな式を習ったのを覚えているでしょうか。
磁界の中を、導体が横切るように動くと電圧が生まれる。 は磁束密度、 は導体の長さ、 は速度です。
直流発電機の公式は、この式の と を、発電機の寸法と回転数の言葉に置き換えただけです。
何を、何に置き換えるのか
| 基本式の記号 | 意味 | 発電機では何に化けるか |
|---|---|---|
| 導体が動く速度[m/s] | 回転速度 から計算する(ステップ1) | |
| 磁束密度[T] | 極数 と磁束 から計算する(ステップ2) | |
| 導体の長さ[m] | そのまま(電機子の軸方向の長さ) |
だけは置き換えなしでそのまま使います。ですから、やることは実質2か所の翻訳作業だけ。そこに「導体が何本あって、何並列でつながっているか」という巻き方の話を足せば完成です。
導出の道すじが見えていれば、公式を忘れても現場で組み直せます。ここが、丸暗記との決定的な差です。
ステップ1:回す ——回転速度 を速度 に翻訳する

回転速度 の単位は 、つまり1分間に何回転するかです。一方 の は 、1秒間に何メートル進むか。単位がまるで違います。
そこで、回転を「距離」に翻訳します。
3行で終わる翻訳作業
| 段階 | 考えること | 式 |
|---|---|---|
| ① 1回転の距離 | 電機子の円周を1周する | [m] |
| ② 1分間の距離 | それを 回まわる | [m/分] |
| ③ 1秒間の距離 | 1分=60秒で割る | [m/s] |
公式の分母にあった 60 の正体は、これです。「分を秒に直しただけ」——それ以上でも以下でもありません。あの謎の数字がただの単位換算だと分かると、公式の見え方が変わってきませんか。
つまずきやすいのは、「回転数」という回る量を「距離」という直線の量に置き換えるところ。ですが、円周 を1周ぶんの距離だと捉えてしまえば、あとは掛けて割るだけの算数です。
ステップ2:通す ——磁束密度 の正体をあばく

磁束密度とは、磁束を面積で割ったもの。定義そのものはシンプルです。
問題は、直流発電機における「磁束」と「面積」が、それぞれ何を指すのかです。
分子と分母を、それぞれ発電機の言葉に
| 記号 | 発電機では何か | 式 |
|---|---|---|
| 分子(全磁束) | 1極あたりの磁束 が、極の数 だけある | |
| 分母(面積) | 電機子は円柱。その側面積 |
ここでのポイントは、大事なのは磁束の総量ではなく「面積あたりいくつ通っているか」という点です。同じ磁束でも、電機子が大きければ密度は薄まります。 が密度である以上、面積で割る手順は避けて通れません。
なお、この磁束 をつくるのが界磁、起電力が生まれるのが電機子です。この2つの役割がごちゃ混ぜになっていると、この先の単元でずっと苦しみます。自信がない方は、先に〈電動機と発電機の違い|他励式は同じ回路図でも電流が逆〉に目を通しておくと、頭の整理がぐっと早くなります。
ステップ3:巻き方 —— を読み解く

ここまでで と の翻訳が終わりました。最後は、公式の頭にある の部分です。
記号の意味を確認しておく
| 記号 | 読み | 意味 |
|---|---|---|
| 極数 | N極・S極が合わせて何個あるか | |
| 全導体数 | 電機子に巻かれている導体の総本数 | |
| 並列回路数 | 内部で何本の並列経路に分かれているか | |
| 60 | — | 分→秒の単位換算(ステップ1で登場) |
主役は です。 本ある導体を、内部でどうつなぐか——ここで取り出せる電圧が変わります。
直列と並列の話に置き換えると
乾電池を思い出してください。直列に並べれば電圧が上がり、並列に並べれば電流を多く取り出せます。電機子巻線もまったく同じ理屈です。
| つなぎ方 | 起こること | 使いどころ |
|---|---|---|
| 並列回路数 が小さい | 1経路あたりの直列導体が多い → 高電圧・小電流 | 小型の発電機など |
| 並列回路数 が大きい | 経路が分かれる → 低電圧・大電流 | めっき装置、低電圧発電機など |
が公式の分母にいるのは、そのためです。並列を増やせば増やすほど、取り出せる電圧は下がっていきます。
ステップ4:重ね巻となみ巻 ——ここが試験の狙い目

巻き方には2種類あり、並列回路数 の決まり方がまったく違います。ここは試験で本当によく狙われます。
| 項目 | 重ね巻 | なみ巻 |
|---|---|---|
| 並列回路数 | (極数と同じ) | (常に2) |
| 極数を増やすと | も一緒に増える | は変わらない |
| 電圧・電流の傾向 | 低電圧・大電流 | 高電圧・小電流 |
| 代表的な用途 | めっき装置、低電圧発電機 | 小型発電機 |
なみ巻の は「強制」だと思っておく
覚え方はとても単純です。
問題文に「なみ巻」とあったら、極数がいくつだろうと には迷わず 2 を代入する。
4極でも、6極でも、8極でも、なみ巻なら 。ここを「極数が6だから も6かな」とやってしまうのが、この単元で最も多い失点パターンです。逆に重ね巻は極数に連動するので、 の値をそのまま に写せば済みます。
「なみ巻はどこまでいっても2」——この一言だけ、他の何を忘れても持って帰ってください。
ステップ5:定数 でまとめると、驚くほど単純になる
さて、ここまで見てきた ・・ の3つには、ある共通点があります。
機械が工場で完成した瞬間から、二度と変わらないということです。極の数は後から増やせません。導体の本数も、つなぎ方も、出荷された時点で固定です。
だったら、まとめて1つの定数にしてしまいましょう。
これだけです。あれほど複雑に見えた式が、たった3文字の掛け算になりました。
から読み取れること
| 変えるもの | 起電力 は |
|---|---|
| 磁束 を2倍に | 2倍になる( に比例) |
| 回転速度 を2倍に | 2倍になる( に比例) |
| も も2倍に | 4倍になる |
| ・・ | そもそも運転中は変えられない |
つまり、発電機の電圧をコントロールする手段は、磁束か回転速度の2つだけ。実務でも試験でも、この2つを操作する話しか出てきません。
試験ではまず で比例関係を処理し、 や の具体的な数値を問われたときだけ の中身を展開する——この二段構えが最も効率的です。
なお、こうして発生した起電力が実際に負荷へ届くまでには、電機子巻線の抵抗などで目減りします。その「取りこぼし」の話は〈直流発電機の効率と損失を完全攻略!「銅損=鉄損」で最大効率〉で詳しく扱っているので、この記事のあとに読むと流れがつながります。
まとめ
長い道のりでしたが、やったことを振り返ると驚くほど単純です。
| ステップ | やったこと | 結果 |
|---|---|---|
| 出発点 | 物理の基本式を思い出す | |
| 回す | 回転速度を速度に翻訳 | |
| 通す | 磁束密度を発電機の言葉に | |
| 巻き方 | 導体数と並列回路数を反映 | |
| 完成 | 3つを掛け合わせる | |
| 実戦用 | 定数をまとめる |
という、理論科目でとっくに習った式が出発点でした。機械科目の公式が難しく見えるのは、内容が高度だからではなく、機械の寸法という「別の言葉」で書かれているからにすぎません。翻訳の手順さえ知っていれば、怖がる理由はどこにもないんです。
⚠ ここを間違える人が多い
この単元で点を落とす原因は、だいたい3パターンに集約されます。自分が当てはまっていないか、確認してみてください。
❌ なみ巻でも、極数に合わせて を変えてしまう
問題文に「6極・なみ巻」とあると、つい と書きたくなります。極数が目立つところに書いてあるので、そちらに引っぱられるんですね。
✅ 正しくは、なみ巻の は極数と無関係に 2 で固定。 極数に が連動するのは重ね巻だけです。問題を解くとき、まず巻き方の指定を丸で囲んでから を書き出す——それだけで、この取り違えはほぼ消えます。
❌ 電機子と界磁の役割を、逆に覚えている
「電気を起こす側」と「磁束をつくる側」。名前が似ているうえに、どちらも巻線なので混同が起きやすい箇所です。ここが逆になっていると、公式の が何を指すのかも曖昧になり、選択肢を絞り込めません。
✅ 電機子=電気を起こす側(直流機では回る)、界磁=磁界をつくる側(静止している)。 「電機子の『電』は電気」と字面で結びつけてしまうのが手っ取り早い覚え方です。
❌ 回転速度の単位を確かめずに代入する
は 、つまり毎分の回転数です。公式に 60 が入っているのは、この「毎分」を「毎秒」に直すためでした。ところが問題によっては、毎秒の値や周波数で与えられることがあります。
✅ 数値を代入する前に、必ず単位を確認する。 60 の意味を理解していれば、単位が違うときにどう直せばよいかも自分で判断できます。この「なぜ60なのか」を知っているかどうかが、そのまま得点差になります。
過去問ではこう出た
直流発電機の基本構造と誘導起電力は、機械科目のなかでも出題頻度が高いテーマです。
| 年度 | 問題番号 |
|---|---|
| 平成30年 | 問5 |
出題のされ方には、はっきりした傾向があります。
- 穴埋め形式で、構造の理解を問う——電機子・界磁がそれぞれどちら側かを空欄にして、正しい組み合わせを選ばせる形。計算が要らない代わりに、うろ覚えだと選択肢の間で迷って時間を溶かします。
- 常識と逆に感じる組み合わせを混ぜてくる——たとえば回転速度の高低など、「大きい機械のほうが速く回りそう」といった直感が通用しない箇所が狙われます。感覚ではなく、覚えた事実で判断する必要があります。
- 数値計算では の判定が勝負を分ける——巻き方さえ正しく読み取れれば、あとは公式に代入するだけの素直な問題になります。
つまり、この単元は「知っていれば確実に取れる」問題が多いということ。公式の導出と、電機子・界磁の役割、そして の決まり方。この3点さえ押さえれば、得点源にできます。
手を動かして確かめたい方は、こちらからどうぞ。
よくある質問
Q. 公式の導出まで覚える必要はありますか? 結果の式だけではダメでしょうか
結論から言うと、試験で書くのは結果の式だけで構いません。ただ、導出を一度たどっておくと、記憶の持ちがまるで違ってきます。
丸暗記した式は、 なのか なのか、本番で分からなくなります。一方で「 は並列回路数だから、増えれば電圧は下がる。だから分母だ」と理屈で押さえていれば、迷いようがありません。導出は暗記の代わりではなく、暗記の保険だと考えてください。
Q. 重ね巻となみ巻、どちらを使うかは問題文から判断できますか
必ず問題文に明記されます。 用途から推測させるような出題はまずないので、「重ね巻」「なみ巻」という単語を見つけたら、そこに印をつけて を確定させましょう。
とはいえ、それぞれの向き不向き(重ね巻=低電圧・大電流、なみ巻=高電圧・小電流)を知っておくと、選択肢の妥当性を判断するときに役立ちます。めっき装置のように大電流が要る用途では重ね巻、といった対応づけです。
Q. の は、問題で与えられるのですか
多くの場合、 そのものは与えられません。ですが心配は要らなくて、比例関係を問う問題では の値を知らなくても解けます。
たとえば「回転速度を1.2倍、磁束を0.9倍にしたときの起電力は何倍か」という問いなら、 は分母と分子で消えて 倍と即答できます。 の中身が必要になるのは、・・ の具体的な数値が与えられ、電圧の実数値を求めるときだけです。
なお、実際の発電機では負荷電流が流れると磁束の分布そのものが乱れ、 が理想どおりにならない現象が起きます。それが電機子反作用です。この先の単元になりますが、〈直流発電機の電気子反作用は『直列』で全部攻略できる〉を読んでおくと、 の式が実機でどう崩れるのかが見えてきます。
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