誘導機の回転磁界と同期速度を「120f÷p」で一発計算
電験三種「機械」科目の三相誘導電動機の回転磁界と同期速度を解説。なぜ三相だと回るのかを交番磁界との対比で理解し、同期速度の公式Ns=120f/pを「回転磁界の速さ」として丸暗記から卒業。極数と回転数が逆向きになる理由、50Hz/60Hzでの違い、すべりとの切り分けまで、計算問題で確実に得点できる形で整理します。
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「モーターの中で、目に見えない磁石がグルグル回っている」——そう言われても、正直ピンとこない。そんな方こそ、この記事の主役です。
三相誘導電動機は、電験三種「機械」でも登場回数が多い超重要テーマ。ですが、その入り口である「回転磁界」でつまずくと、すべりも二次入力もトルクも、ぜんぶ砂の上に建てた家のようにグラグラしてしまいます。逆に言えば、ここさえ腹落ちすれば、誘導機の単元がドミノ倒しのように理解できるということです。
安心してください。回転磁界のしくみと、その速さを出す公式は、たった1つの式と1つのイメージで攻略できます。「苦手」を「一発計算」に変えていきましょう。
この記事で身につくこと
- なぜ三相だと磁界が「回る」のかを、単相との対比でスッキリ説明できるようになる
- 同期速度の公式 Ns = 120f / p を、丸暗記ではなく「回転磁界の速さ」として使いこなせる
- 極数pが増えると回転が遅くなる理由を、イメージで押さえて計算ミスを防ぐ
- 50Hz / 60Hz で回転数が変わる現場の落とし穴を理解する
- 同期速度Nsと実回転数N(=すべり)の切り分けができるようになる
暗記フレーズ:「回転磁界の速さは、いちにいぜろf割るp(120f÷p)」
まずはこの記事の背骨になる合言葉から。
回転磁界の速さは、いちにいぜろf割るp(120f÷p)
計算問題で問われるのは、結局のところ「回転磁界がどれくらいの速さで回っているか」。その答えがこの1本の式です。数字の「120」も、語呂で「いちにいぜろ」と口に出して覚えてしまえば、試験本番で手が勝手に動きます。
ステップ1:なぜ三相じゃないと回らないのか
そもそも「回転磁界」とは何か。ここを言葉で説明できるかどうかが、理解の分かれ道です。
ステータ(固定子)の巻線に交流を流すと、磁界が生まれます。ところが——
| 電源の種類 | 巻線に生まれる磁界 | 結果 |
|---|---|---|
| 単相交流 | 同じ場所で強さと向きが左右に振れるだけ(交番磁界) | 回らない |
| 三相交流 | 3つの磁界が合成され、向きが一周し続ける(回転磁界) | 回る |
ポイントは、三相交流の3つの相が120°ずつ位相がずれていることです。ある瞬間はA相の磁界が最大、少し後にB相が最大、次にC相が最大……と、磁界のピークが順番にバトンタッチしていきます。この「ピークの受け渡し」が、まるで磁石が時計回りに回っているように見える正体です。
単相だと相が1つしかないので、ピークの受け渡し相手がいません。だから磁界はその場で「行って戻って」を繰り返すだけ。これが回らない理由です。
イメージで言えば、単相は「1人がその場でジャンプしているだけ」、三相は「3人が順番に手を挙げるウェーブ」。ウェーブは会場をぐるりと回っていきますよね。あの感覚です。
ステップ2:回転磁界の速さ=同期速度を計算する
回転磁界が「どれくらいの速さで回るか」——これを同期速度 Ns と呼びます。公式は暗記フレーズそのものです。
- :電源の周波数[Hz]
- :極数(ステータがつくる磁極の数)
なぜ「120」なのか、少しだけタネ明かしをしておきます。同期速度は本来「1秒あたり何回転か」ではなく「1分あたり何回転(min⁻¹)」で表します。1秒あたりの回転数は で、これを1分(×60秒)に直すと 。だから120が出てくるだけで、魔法の数字ではありません。理由がわかれば、忘れても自分で復元できます。
例として、60Hz地域の4極モーターを計算してみましょう。
代入して割り算するだけ。難しい変形はいっさい不要です。
ステップ3:極数pが増えると「遅くなる」を腹落ちさせる
ここが多くの受験生の引っかかりポイント。「極数が多い=強そう=速く回りそう」と直感してしまい、公式と逆の答えを書いてしまうのです。
公式をもう一度見てください。
pは分母にいます。つまり極数が増えるほど、同期速度は遅くなる(反比例)。60Hzで比べると次のとおりです。
| 極数 p | 同期速度 Ns(60Hz) |
|---|---|
| 2極 | 3600 min⁻¹ |
| 4極 | 1800 min⁻¹ |
| 6極 | 1200 min⁻¹ |
| 8極 | 900 min⁻¹ |
覚え方のコツは、**「磁石の数が増えると、一巡するのに手間がかかる」**というイメージ。手を挙げる人(磁極)が2人なら会場を一周するのは速いけれど、8人いると全員に順番が回るまで時間がかかる——ウェーブが一周する時間が長くなる、と考えると、遅くなるのが自然に感じられます。
ステップ4:50Hz / 60Hzと、すべりの切り分け
最後に、試験でも現場でも問われる2つの「切り分け」を押さえます。
周波数fで同期速度が変わる(東日本 vs 西日本)
同じ4極モーターでも、地域で回転数が変わります。
| 周波数 | 4極モーターの同期速度 |
|---|---|
| 50Hz(東日本) | 1500 min⁻¹ |
| 60Hz(西日本) | 1800 min⁻¹ |
工場の設備を東日本↔西日本で転用すると、モーターの回転数が変わり、ベルト速度やポンプの流量にまで影響が出ます。「シンクロ(同期)」の英語 Synchronous は「ぴったり合わせる」の意味。試験で Sync を見たら「同期」と結びつけましょう。
同期速度Nsと実回転数Nは別物(=すべり)
一番混同しやすいのがここ。回転磁界の速さがNs、それを追いかける回転子(ロータ)の実回転数がNです。回転子は磁界にわずかに遅れて回るため、必ず になります。
この「遅れの割合」がすべり s。誘導機は、この遅れ(すべり)があるからこそトルクを生み出せます。「同期速度=磁界の速さ」「実回転数=ロータの速さ」と札を貼って切り分ければ、次の単元でも迷いません。
まとめ
- 三相だと磁界が回るのは、120°ずつずれた3つの相がピークを順番に受け渡す(ウェーブ)から。単相は交番磁界で回らない。
- 回転磁界の速さ=同期速度は Ns = 120f / p。「いちにいぜろf割るp」で暗記し、代入して割るだけ。
- 極数pは分母。増えるほど遅くなる(反比例)。「磁極が増えると一巡に手間がかかる」で腹落ち。
- 周波数fでも変わる(4極なら50Hz=1500、60Hz=1800)。地域転用は要注意。
- 同期速度Ns ≠ 実回転数N。その差の割合がすべり。ここを切り分ければ誘導機の単元が一気に見通せます。
回転磁界は、誘導機というお城の「土台」です。土台さえしっかりすれば、この先のすべり・トルク・等価回路も、驚くほどスムーズに積み上がっていきます。今日のNs = 120f / pを、まずは声に出して自分のものにしてください。あなたのペースで、一段ずつ確実に進んでいきましょう。
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