電気設備の各種防止規定を『守る相手が5つあるだけ』で丸ごと整理|電技第15条の2〜第19条
電験三種「法規」で毎年のように顔を出す、電技第15条の2〜第19条の防止規定。似たようなタイトルが5つ並んで混乱しがちですが、『誰・何から守るのか』という1本の軸で並べ直すと、驚くほどきれいに整理できます。サイバー攻撃・電磁的障害・高周波障害・供給支障・公害等の5つを、暗記フレーズと表で一気に攻略する解説記事です。
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この記事で身につくこと
法規のテキストを開いて、こんな見出しが並んでいるのを見たことがありませんか。
- 電気的、磁気的障害の防止
- 高周波利用設備への障害の防止
- 電気設備による供給支障の防止
- 公害等の防止
「防止」「防止」「防止」……。どれも同じような名前で、どれがどれだか分からない。 これが、この単元でつまずく人のほぼ全員が通る道です。安心してください。あなたの記憶力の問題ではありません。似た名前が5つ並んでいれば、誰だって混ざります。
では、どうすれば整理できるのか。答えはシンプルで、「何から、何を守っているのか」という1本の軸で並べ直すだけです。条文の細かい言い回しを覚える前に、この軸を先に通してしまう。すると5つの条文は、バラバラの暗記対象ではなく、役割分担のはっきりした5人組に変わります。
この記事を読み終えると、次のことができるようになります。
| できるようになること | 具体的には |
|---|---|
| 5つの防止規定を条番号順に言える | 第15条の2 → 第16条 → 第17条 → 第18条 → 第19条 |
| 各条文の「守る相手」を即答できる | サイバー攻撃/他の物件/他の高周波利用設備/一般送配電事業者/公害 |
| 紛らわしい第16条と第18条を区別できる | 「広く全般」か「供給支障に限定」か |
| 第19条の第10項と第14項を分けて覚えられる | 「油が漏れる」か「PCBそのものの禁止」か |
条文の暗記量そのものは、実はそれほど多くありません。多く見えているのは、整理されていないからです。

暗記フレーズ:サイバー・電磁・高周波・供給・公害、守る相手が5つあるだけ
このフレーズが、今日の記事の背骨です。
サイバー・電磁・高周波・供給・公害、守る相手が5つあるだけ
条番号の順に、そのまま並んでいます。「サイバー」が第15条の2、「電磁」が第16条、「高周波」が第17条、「供給」が第18条、「公害」が第19条。5つの単語を口に出せれば、条文の並びがそのまま出てくるという仕組みです。
そして後半の「守る相手が5つあるだけ」が効きます。覚えるべきは条文そのものではなく、守る相手のほう。 相手さえ言えれば、条文が何をしようとしているかは自然に思い出せます。

全体像を先に見ておきましょう。この表を頭に入れてから、1つずつ見ていきます。
| 条文 | 名称 | 何から/何を守るか |
|---|---|---|
| 第15条の2 | サイバーセキュリティの確保 | サイバー攻撃から、電気の安定供給を守る |
| 第16条 | 電気的、磁気的障害の防止 | 自分の設備から、他の電気設備その他の物件を守る |
| 第17条 | 高周波利用設備への障害の防止 | 高周波利用設備から、他の高周波利用設備を守る |
| 第18条 | 電気設備による供給支障の防止 | 高圧・特別高圧設備の損壊から、一般送配電事業者の供給を守る |
| 第19条 | 公害等の防止 | 絶縁油・PCBから、環境と人を守る |
ステップ1:第15条の2 — サイバー攻撃から守る
まず先頭の第15条の2です。ここは5つの中でいちばん新しい条文で、電気工作物のうち一定のものについて、サイバーセキュリティを確保することを求めています。

守る相手は「サイバー攻撃」。目的は、電気の安定供給に支障が生じないようにすることです。
ここで押さえておきたいのは、条番号が「第15条の2」という枝番になっている点です。枝番は、あとから条文が追加されたときに付く番号です。つまりこの条文は、もともとの電技には無かった、後付けの新しいルールだということが番号から読み取れます。
条番号に「の2」が付いていたら、後から追加された条文。試験でも「新しい規定」として問われやすい部分です。
ステップ2:第16条 — 他の物件への電気的・磁気的な悪影響を防ぐ
次が第16条。電気設備が、他の電気設備その他の物件の機能に、電気的または磁気的な障害を与えないようにする規定です。

この条文の最大の特徴は、守る相手を限定していないことです。「他の電気設備その他の物件」——つまり、電気設備に限らず、周囲にあるものが広く対象に入ります。
この「広さ」が、後で出てくる第18条との決定的な違いになります。第16条は間口が広い、第18条は的が絞られている。 ここだけ先に頭の隅に置いておいてください。
なお、電気設備が周囲に及ぼす影響という考え方は、地絡や過電流の保護と地続きの話です。このあたりの原則があやふやな人は、先に地絡の保護対策を『つけるのが原則、外せるのは例外だけ』で攻略|電技第15条・解釈第36条を読んでおくと、第15条→第15条の2→第16条という条文の流れがつながって見えてきます。
ステップ3:第17条 — 高周波どうしの干渉を防ぐ
第17条は、高周波利用設備が主役です。高周波利用設備とは、その名のとおり高周波電流を利用する設備のこと。

ここで大事なのは、守る相手も「他の高周波利用設備」であるという点です。第16条が「他の物件全般」だったのに対し、第17条は高周波どうしの干渉に話が絞られます。
3つの条文の「相手」を並べてみると、範囲がだんだん絞られていくのが分かります。
| 条文 | 障害を与える側 | 守られる側 |
|---|---|---|
| 第16条 | 電気設備 | 他の電気設備その他の物件(広い) |
| 第17条 | 高周波利用設備 | 他の高周波利用設備(同じ仲間) |
| 第18条 | 高圧・特別高圧の電気設備 | 一般送配電事業者の電気の供給(限定) |
「広い → 同じ仲間 → 限定」。この並びで覚えてしまうと、3つが混ざりにくくなります。
ステップ4:第18条 — 一般送配電事業者の供給を守る
さて、この単元でいちばん間違えやすい第18条です。電気設備による供給支障の防止。

この条文は、高圧または特別高圧の電気設備の損壊により、一般送配電事業者の電気の供給に著しい支障を及ぼさないようにすることを求めています。押さえるポイントは2つです。
ポイント1:低圧は対象外
対象は高圧・特別高圧だけ。低圧設備は入りません。 低圧の設備が壊れても、送配電網全体の供給に「著しい支障」を及ぼすことは通常ないためです。試験では、この「低圧を含むか含まないか」が正誤の分かれ目になることがあります。
ポイント2:キーワードは「一般送配電事業者」
第16条と第18条を区別する決め手が、この言葉です。問題文に「一般送配電事業者」が出てきたら第18条。逆に、相手が「他の物件」や「他の電気設備」と書かれていたら第16条。これだけで、かなりの確率で見分けられます。

| 見分け方 | 第16条 | 第18条 |
|---|---|---|
| 対象電圧 | 限定なし | 高圧・特別高圧のみ(低圧は対象外) |
| 障害の内容 | 電気的・磁気的な障害 | 設備の損壊による供給支障 |
| 守られる相手 | 他の電気設備その他の物件 | 一般送配電事業者の電気の供給 |
| キーワード | 他の物件 | 一般送配電事業者 |
ステップ5:第19条第10項 — 絶縁油の流出を防ぐ
ここからは第19条「公害等の防止」に入ります。第19条は項が多い長い条文ですが、電験三種で問われるのは主に第10項と第14項の2つです。
まず第10項。中性点直接接地式電路に接続する変圧器について、絶縁油が構外へ流出したり、地下へ浸透したりすることを防止する設備を施すことを求めています。

なぜ中性点直接接地式なのか。この方式が使われるのは主に大規模な系統で、そこに置かれる変圧器は大型で、内部に大量の絶縁油を抱えているからです。万一これが漏れれば、環境への影響は小さくありません。だからこそ、油だめや防油堤といった流出防止の設備が求められます。
守る相手は「環境」。ここまでの4つが「設備」や「供給」を守っていたのに対し、第19条だけは守る相手が人と自然に切り替わります。この切り替わりを意識しておくと、第19条だけ性格が違うことが腑に落ちます。
ステップ6:第19条第14項 — PCBの使用禁止
同じ第19条の中でも、第14項はまったく別の話をしています。ポリ塩化ビフェニル(PCB)を含有する絶縁油を使用する電気機械器具および電線は、施設してはならない。
第10項と第14項の違いを、はっきり分けておきましょう。
| 第10項 | 第14項 | |
|---|---|---|
| 対象 | 中性点直接接地式電路に接続する変圧器 | PCB含有絶縁油を使う電気機械器具・電線 |
| 内容 | 絶縁油の構外流出・地下浸透の防止設備を施す | 施設そのものを禁止 |
| 一言で | 油を漏らすな | その物を使うな |
「漏らすな」か「使うな」か。 同じ第19条でも、片方は設備を付けろという話、もう片方は禁止という話です。ここを分けて覚えておけば、選択肢が入れ替えられても迷いません。
ステップ7:実務ではこう扱われている
試験には直接出ませんが、知っておくと条文が急に立体的に見えてくる話を2つ。
第15条の2が生まれた理由
サイバーセキュリティの条文が新設されたのは平成28年(2016年)。その背景にあるのが、2015年にウクライナで発生した、サイバー攻撃による大規模停電です。電気設備が外部からの攻撃で止められ、広い範囲が停電する。それが現実に起きたことを受けて、日本の技術基準にも規定が置かれました。
条文は、事故のあとに生まれます。 「なぜこんなルールがあるのか」が分かると、暗記が記憶に変わります。
PCBは「流用・転用」も禁止
第14項の禁止は、新しく設置する場合だけの話ではありません。すでにある機器を別の場所へ流用したり転用したりすることも禁止されています。
さらに設置者には、産業保安監督部長への5種類の届出(新規判明・内容変更・廃止・漏洩・管理状況)が義務付けられています。PCBは「使わない」で終わりではなく、持っている間ずっと管理し、報告し続ける対象なのです。
まとめ
5つの防止規定を、もう一度「守る相手」で並べて終わりにしましょう。
| 条文 | 守る相手(何から) | 守るもの(何を) |
|---|---|---|
| 第15条の2 | サイバー攻撃 | 電気の安定供給 |
| 第16条 | 自分の設備が出す電気的・磁気的障害 | 他の電気設備その他の物件 |
| 第17条 | 高周波利用設備の干渉 | 他の高周波利用設備 |
| 第18条 | 高圧・特別高圧設備の損壊 | 一般送配電事業者の電気の供給 |
| 第19条 | 絶縁油の流出・PCB | 環境と人 |
サイバー・電磁・高周波・供給・公害、守る相手が5つあるだけ
この5語が口をついて出るようになれば、この単元は終わりです。条文を丸暗記していないことに、少し不安を覚えるかもしれません。でも大丈夫です。 試験で問われているのは条文の暗唱ではなく、「この規定は何を守るためのものか」を理解しているかどうか。軸さえ通っていれば、初見の言い回しでも判断できます。
保護装置まわりを続けて固めたい人は、過電流遮断器を『高圧ヒューズは1.3倍で120分、省略は中性・接地・二次側』で丸ごと攻略へ進むと、電技第14条〜第19条のブロックがひとまとまりで見えてきます。
⚠ ここを間違える人が多い
この単元は、条文の名前が似ているぶん、選択肢の入れ替えで失点するタイプの問題が多くなります。実際につまずきやすい3か所を挙げます。
❌「第16条も第18条も、要は他への悪影響でしょ」→ ✅ 範囲がまったく違う
いちばん多い取り違えがこれです。第16条は相手を限定しない広い規定、第18条は一般送配電事業者の電気の供給という一点に絞った規定。文章だけ眺めていると似て見えますが、守る相手を見れば別物です。問題文に「一般送配電事業者」があれば第18条、と決め打ちできるようにしておきましょう。
❌「第18条は電気設備全部が対象」→ ✅ 低圧は対象外
第18条の対象は高圧・特別高圧だけです。ここに「低圧を含む」という選択肢を混ぜてくるのが定番の引っかけ。低圧は入らない、と声に出して覚えてしまうのが早道です。
❌「第19条は要するに油の話」→ ✅ 第10項と第14項は別々の話
第19条をひとまとめに「公害の条文」と覚えていると、第10項と第14項が混ざります。第10項は流出防止設備を施せという要求、第14項はPCB使用そのものの禁止。 さらに第10項の対象は「中性点直接接地式電路に接続する変圧器」と限定されています。この限定語ごと覚えておくと、対象を広げた誤りの選択肢に引っかかりません。
そして地味に効くのが、数値と用語の思い込みです。この分野では、直感で「こちらだろう」と思った語(たとえば「短絡」や「保護」)が、実際の条文では別の語(「地絡」「連絡」など)になっていることがあります。自分の連想ではなく、条文でどう書かれているかを優先する。 これが法規全体を通じた鉄則です。
過去問ではこう出た
この単元は、条文の穴埋めや正誤判定として、近年も繰り返し出題されています。試験センターが公開している出題実績を見ると、次のとおりです。
| 年度 | 問番号 |
|---|---|
| 令和7年 上期 | 問3 / 問7 |
| 令和7年 下期 | 問3 / 問4 / 問5 / 問6 / 問7 / 問9 |
同じ年度の上期・下期で合わせて8問。しかも問3〜問9という、法規の前半(条文問題が集中する位置)にきれいに並んでいます。この単元は「出るかもしれない」ではなく「出る前提」で仕上げる価値があるということです。
出題の形はおおむね2通り。1つは条文の空欄補充で、「一般送配電事業者」「高周波利用設備」「中性点直接接地式電路」といったキーワードが抜かれます。もう1つは、似た条文の内容を入れ替えた正誤判定。どちらも、この記事で作った「守る相手」の表が頭に入っていれば対応できます。
なお、テーマで照合した収録範囲では、関連する過去問は131問にのぼります。手を動かして確かめたい人はこちらへどうぞ。
よくある質問
Q. 条文の番号まで覚える必要がありますか?
「第何条か」を丸暗記する必要はありません。 試験で問われるのは中身であって、番号そのものが答えになる問題は多くありません。ただし、5つが第15条の2から第19条まで連番で並んでいるという事実は知っておいて損はありません。順番を知っていると、「サイバーの次は電磁、その次は高周波」と芋づる式に思い出せるからです。番号は覚えるものではなく、順序を確認するための手すりだと考えてください。
Q. 高周波利用設備というものを見たことがありません。イメージが湧かないのですが……
問題ありません。この条文で問われるのは設備の中身ではなく、守る相手の関係だからです。第17条で押さえるべきは、たった1つ。高周波利用設備が、他の高周波利用設備に障害を与えないようにする——つまり同じ仲間どうしの干渉を防ぐ規定だ、ということです。具体的な機器を知らなくても、この関係さえ言えれば得点できます。
Q. PCBはもう使われていないのに、なぜ試験に出るのですか?
新しく使えないことと、現場から無くなったことは別だからです。 過去に設置された機器が今も残っている可能性があり、電気主任技術者にはそれを見つけて適切に届け出る責任があります。だから電技第19条第14項は禁止を定め、実務では産業保安監督部長への5種類の届出(新規判明・内容変更・廃止・漏洩・管理状況)が義務付けられています。禁止されているからこそ、見つけたときの手続きが問われる——そう考えると、出題される理由が納得できるはずです。
Q. 変圧器まわりの条文が多くて混乱します。
第19条第10項の「変圧器」でつまずいている人は、変圧器を保護する側の規定と混ざっている可能性があります。その場合は変圧器・過電流対策を『ヒューズは1.6と2・配線用遮断器は1.25と2』で丸暗記で保護のルールを先に切り分けておくと、「変圧器を守る話」と「変圧器から環境を守る話」がきれいに分かれて見えるようになります。
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