静電力の矢印は「どうはんいいん」で一撃攻略
電験三種・理論の第一歩「静電力(クーロンの力)」の矢印で混乱しないための完全攻略記事。魔法の合言葉『同じは反発、違えば引力』と『2点を結ぶ一直線』のルールを押さえるだけで、9割の初学者がつまずく3つの罠を一発で回避できます。
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この記事で身につくこと
直流回路をひととおり終えて、いよいよ静電気の分野に入る。ここで多くの独学者が「あれ、今までと話が違うぞ」と手を止めます。回路図が消えて、いきなり点と矢印の世界になるからです。
でも、安心してください。この単元でやることは、突き詰めればたった2つだけです。
| 覚えること | 中身 |
|---|---|
| ① 力の向き | 同じ符号なら反発、違う符号なら引力 |
| ② 矢印の位置 | 2つの点電荷を結ぶ一直線上に描く |
この2つを押さえるだけで、静電力の基礎は9割が終わります。公式を丸暗記する前に、まずこの土台を作りましょう。土台さえあれば、あとから出てくるクーロンの法則の計算は「数字を入れるだけ」の作業になります。

暗記フレーズ:同じは反発、違えば引力
この単元の合言葉は、これだけです。
同じは反発、違えば引力
頭文字をとって「どうはんいいん」。4文字なので、試験会場で緊張していても口の中でつぶやけます。
- 同じ符号どうし(+と+、−と−)は仲が悪い → 反発(離れる向き)
- 違う符号どうし(+と−)は惹かれ合う → 引力(近づく向き)
磁石のN極・S極とまったく同じ感覚です。磁石で「N極とN極をくっつけようとすると押し返される」経験は誰でもありますよね。あの感覚をそのまま電気に持ち込んでいい、というだけの話です。新しく覚えることは、実はほとんどありません。
ステップ0:なぜ静電気で9割がつまずくのか
先に「敵の正体」を見ておきましょう。ここで落ちる人は、だいたい次の3つのどれかにハマっています。

| 罠 | 何が起きるか |
|---|---|
| ① 専門用語の壁 | 「帯電体」「点電荷」と漢字が並び、イメージが湧かず手が止まる |
| ② 引力と斥力の混同 | プラスとマイナスがどう動くのか、本番の緊張で分からなくなる |
| ③ 矢印の迷子 | 計算する前に力の向きを適当に描き、ベクトル計算で自爆する |
注目してほしいのは、3つとも「計算力の問題ではない」という点です。数学が苦手だから解けないのではなく、そもそもスタート地点の絵が描けていないから解けない。逆に言えば、ここは計算が苦手な人でも今日中に潰せる、いちばん費用対効果の高い場所です。
ステップ1:静電気・帯電体・点電荷を整理する
まずは用語です。似た漢字が並ぶので、ここで一度きれいに分けておきます。

| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 静電気 | 物質が帯びる電気そのもの。プラスかマイナスのどちらか |
| 帯電体 | 電気を帯びた「物体」 |
| 点電荷 | 大きさを無視して「点」として扱った帯電体 |
なぜわざわざ「点」にするのか
ここが、独学だと飛ばされがちな急所です。
現実の帯電体は、四角かったり丸かったり、形がバラバラです。すると困ることが起きます。2つの物体の距離を、どこからどこまでで測ればいいのか決まらないのです。角から角なのか、中心から中心なのか、「このあたり」では計算になりません。
そこで、大きさをバッサリ無視して点にしてしまう。点と点なら距離はただ1つに決まります。これで距離が確定し、計算ができるようになる——これが点電荷という考え方の正体です。
物理で「力が働く場所を1点に決めて計算する」やり方を習った覚えがある方なら、その電気版だと思ってください。難しい話ではなく、人間が手計算できるようにするための工夫です。
ステップ2:静電力Fの向きを決める
用語が片付いたら、いよいよ力の話です。

静電力 F は、電荷どうしの間に働く「力」です。力なので単位はニュートン[N]。ここで「電圧だからボルト」ではなく力の単位になる点は、意外と引っかかる人がいます。
| 電荷の組み合わせ | 働く力 | 矢印の向き |
|---|---|---|
| +と+(同種) | 反発力(斥力) | 互いに離れる向き(外向き) |
| −と−(同種) | 反発力(斥力) | 互いに離れる向き(外向き) |
| +と−(異種) | 吸引力(引力) | 互いに近づく向き(内向き) |

表を見れば分かるとおり、判断は符号が同じか違うかの一択です。「同じは反発、違えば引力」——これ以上の情報は要りません。
なお、力の大きさを求める段階になると、クーロンの法則
が登場します。距離 r が2乗で効くので、電荷が離れるほど力は急激に弱まります。ただし、大きさを計算する前に向きが決まっていないと、そもそも式に入る前で止まってしまう。だから順番として、向きが先なのです。
ステップ3:矢印は「2点を結ぶ一直線上」に描く
ここが、この記事でいちばん伝えたい鉄則です。

力の向きを示す矢印は、2つの点電荷を結ぶ一直線上に描く。
適当に斜め上へ矢印を引いてしまうと、その時点で図が間違いです。あとの計算をどれだけ丁寧にやっても、答えは合いません。逆に言えば、ここさえ守れば作図でのミスはほぼ消えます。
描き方は2ステップだけ
- まず、2つの点電荷を点線で結ぶ
- その点線から絶対にはみ出さないように、「反発」か「引力」の矢印を引く
順番が大事です。矢印から描くと、どうしても感覚で傾いてしまう。先に線を引いてしまえば、その上に乗せるだけになります。
| 図の状態 | |
|---|---|
| ○ 正解 | 2点を結ぶ点線の上に、矢印がきれいに乗っている |
| × 不正解 | 矢印が斜め上・斜め下にずれ、点線から外れている |
なお、点電荷が3つ以上あって力が複数working する場合、それらを合成した「合力」は斜めを向くことがあります。ただしそれは合成した結果の話で、1対1の力そのものは必ず直線上です。ここを混同しないでください。合成の話は、電界の分野に入ってから改めて扱います。
このあたりの「向きのある量(ベクトル)を足す」感覚が怪しい方は、先に電界計算は「電荷→電束→電気力線→電界」の一直線フローで攻略まで目を通しておくと、静電気の分野全体の地図が見えて理解が早くなります。
ステップ4:ミニクイズで確認する
理屈が入ったところで、手を動かして確かめましょう。

左下にプラスの点電荷、右上にマイナスの点電荷があります。正しい静電力の矢印はどれでしょうか。
考える順番は、いつも同じ2手です。
- 符号は? → +と− なので違う → 引力(内向き)
- 位置は? → 2点を結ぶ直線上に乗っているか
この2つを満たしているものが正解。向きだけ合っていても線から外れていればバツ、線上にあっても外向きならバツです。2条件の両方を確認する癖をつけてください。本番では、この確認に5秒もかかりません。
まとめ
今日の内容を、この表1枚に圧縮します。試験直前に見返すのはここだけで十分です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 静電気 | 物質が帯びる電気。プラスかマイナス |
| 帯電体 | 電気を帯びた物体 |
| 点電荷 | 大きさを無視した帯電体。距離計算を簡単にするため |
| 静電力 F | 電荷どうしに働く力。単位はニュートン[N] |
| 力の向き | 2つの電荷を結ぶ一直線上に描く |
| 判断の合言葉 | 同じは反発、違えば引力 |
回路の分野から急に絵が変わって戸惑ったと思いますが、やっていることは「符号を見て、線を引く」だけです。1回で完全に理解しようと気負う必要はありません。動画をもう一度見て、クイズをもう一度解く。それを何度か繰り返せば、必ず手が勝手に動くようになります。
なお、電力の公式まわりを並行して固めたい方はP=VI・P=RI²・P=V²/Rの使い分け|電力の公式も相性がいいので、休憩がてらどうぞ。
⚠ ここを間違える人が多い
この単元は、計算ミスよりも思い込みによる失点が圧倒的に多い場所です。実際に出やすい取り違えを3つ挙げます。
❌ 矢印の向きだけ合わせて安心する
❌ こう思いがち:「引力だから内向き。向きが合っていれば正解だろう」 ✅ 正しくは:向きと位置の2つが揃って初めて正解です。内向きでも線から外れていれば、その図から出す答えは合いません。作図問題では位置のズレが減点対象になりますし、計算問題でも分解する角度が変わって数値が崩れます。
❌ 距離を「見た目の近さ」で判断する
❌ こう思いがち:「図の上でだいたい同じくらい離れているから、力も同じくらいだろう」 ✅ 正しくは:静電力は距離の2乗で効きます。距離が2倍になれば力は4分の1、3倍なら9分の1です。「ちょっと遠い」が「かなり弱い」に化けるので、見た目の感覚ではなく必ず数値で比べてください。同じ理由で、複数の電荷が並ぶ問題では「距離の合計が同じだから条件も同じ」という置き換えも成り立ちません。
❌ 単位の確認を飛ばす
❌ こう思いがち:「式さえ立てれば単位は勝手に合う」 ✅ 正しくは:選択肢式の試験では、単位(次元)が合わない選択肢を先に切るのが最速です。静電力ならニュートン[N]になっていなければおかしい。式を変形していて自信がなくなったとき、最後に単位を見るだけで誤答の候補が半分に減ることがあります。単位の感覚を鍛えたい方は1kWhは何kJ?=3,600kJ|kWhとkJの換算も一度おさらいしておくと効きます。
過去問ではこう出た
静電気・静電力の分野は、理論科目のなかでも出題頻度が安定して高い領域です。この単元にひも付く過去問として、次の4問が挙げられます。
| 年度 | 問番号 |
|---|---|
| 平成27年 | 問12 |
| 平成30年 | 問1 |
| 令和1年 | 問1 |
| 令和1年 | 問16 |
注目してほしいのは問番号です。問1に2回登場している——つまり、理論科目の最初の1問目として出されることが珍しくありません。開始直後の緊張がいちばん強いタイミングで、この分野が待ち構えているわけです。ここで手が止まると、その後の時間配分まで崩れます。
逆に言えば、今日の「同じは反発、違えば引力」と「一直線ルール」が体に入っていれば、1問目を数十秒で片付けて、いい流れで残りに進めるということです。得点源としても、メンタル面でも、押さえる価値の大きい単元です。
よくある質問
Q. 「斥力」と「反発力」は違うものですか?
同じものです。試験問題や参考書では「斥力(せきりょく)」という漢字が使われることが多く、解説では「反発力」と言い換えられることがあります。読み方が難しいので身構えてしまいますが、中身は「同じ符号どうしが押し合う力」で一つです。問題文に「斥力が働く」とあったら、頭の中で「反発だな」と置き換えて読んで構いません。
Q. 点電荷にすると、現実とズレてしまうのでは?
その疑問はまっとうです。実際、大きさを無視するのは近似です。ただし電験三種の問題は、そのズレが問題にならない条件で出題されます。だから安心して点として扱ってください。むしろ、点にせずに現実の形のまま計算しようとすると、手計算では到底解けない難易度になります。「試験で解ける形にするための約束事」だと割り切るのが正解です。
Q. 向きを間違えると、計算の答えも必ず間違いますか?
はい、ほぼ確実に間違います。力の大きさだけを問う問題なら数値が偶然合うこともありますが、電荷が複数あって合力を求める問題では、1本の矢印の向きが逆になった瞬間に足し算が引き算に変わり、答えが別物になります。だからこそ、計算に入る前に図を確定させる手順が大事なのです。焦っているときほど、まず2点を点線で結ぶ。この一手間が最終的にいちばん速い道になります。
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