P=VI・P=RI²・P=V²/Rの使い分け|電力の公式
電力の公式は P=VI、P=RI²、P=V²/R の3つ。どれを使うかは「分かっている値」で決まります。オームの法則から導かれる兄弟公式として整理し、電験三種・理論で必ず出る『電力の3大公式(P=VI、P=RI²、P=V²/R)』を、オームの法則から導かれる兄弟公式として整理。9割の受験生が混同する
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この記事で身につくこと
電験三種の理論を勉強していて、こんなふうに手が止まったことはありませんか。
「電力の公式が3つもある。P=VI、P=RI²、P=V²/R……どれを使えばいいのか、毎回迷う」
安心してください。この3つはバラバラの公式ではありません。もとをたどれば、たった1本の式から生まれた「兄弟」です。親は P=VI。ここにオームの法則を代入するだけで、残りの2本が自動的に出てきます。つまり、丸暗記するのは1本だけでいいのです。
さらに、使い分けにも迷う必要はありません。問題文で「何が与えられているか」を見れば、使う公式は一発で決まります。電流が分かっていれば RI²、電圧が分かっていれば V²/R。それだけです。
この記事を読み終えると、次のことができるようになります。
- 電力とは何か(1秒間に電気がする仕事)を、身近な例でイメージできる
- P=VI から、P=RI² と P=V²/R をその場で導ける
- 問題文の条件を見て、使うべき公式を迷わず選べる
- 電力量 [Wh] と送電線の電力損失まで、同じ土俵で計算できる
「公式が多くて苦手」だった単元が、「条件を見るだけで解ける、いちばん確実な得点源」に変わります。

暗記フレーズ:電力イコール 電圧かける電流
この単元で、まず頭に焼き付けてほしいのはこの一言です。
電力イコール 電圧かける電流
短いですが、これが電力計算のすべての親です。この1本さえ体に入っていれば、残りの2本は思い出す必要すらありません。その場で作れるからです。
逆に言えば、ここがあいまいなまま3本を丸暗記しようとすると、必ずどこかで取り違えます。「あれ、Iの2乗だったか、Vの2乗だったか」と迷った経験がある方は、覚え方の順番が逆になっているだけです。親から入り直せば、驚くほど整理されます。
ステップ1:そもそも「電力」とは何か
公式の話に入る前に、言葉の意味をはっきりさせておきましょう。ここが曖昧だと、後で必ず足を取られます。
電力とは、1秒間に電気がする仕事のことです。単位は W(ワット)。
![電力とは|1秒間に電気がする仕事[W]](/slides/13-riron-power-formulas/02.jpg)
大事なのは「1秒間に」という部分です。電力は量ではなく勢い(ペース)を表しています。
イメージしやすいのは電子レンジです。500W と 600W、どちらが早く温まるかと言えば600Wですね。あれは「1秒あたりに投入している仕事量が大きい」という意味なのです。ドライヤーの1200W、電気ストーブの800W——身の回りの家電に書かれているW表示は、すべてこの「1秒間の仕事」を表しています。
試験問題の中の P[W] も、まったく同じものです。難しい記号に見えますが、正体は電子レンジの数字と同じ。ここが腑に落ちると、電力という言葉への苦手意識がずいぶん軽くなります。
ステップ2:電気が熱に変わる、という現象
次に、電力が実際に「何をしているのか」を押さえます。
抵抗に電流が流れると、抵抗は発熱して温度が上がります。これは理論的に言えば、電気エネルギーが熱エネルギーに変換されたということです。

冬場のヒーター、電気ストーブ、電子レンジ。どれも「電気を熱に変えて仕事をさせている」機器です。電気が消えてなくなったのではなく、姿を変えて仕事をした——この見方ができると、次に出てくる「電力損失」の話もすんなり入ってきます。
つまり、電力を計算するというのは「その抵抗が、1秒間にどれだけの熱を生み出しているか」を計算することでもあるわけです。
ステップ3:直流回路で見る、電力消費の本質
ここで回路図に落とし込みます。
電源 V[V] が電気を送り出し、電流 I[A] が回路を流れ、抵抗 R[Ω] のところで熱として放出される。これが電力消費の全体像です。

電源が頑張って供給した電気エネルギーが、抵抗のところで熱に化ける。図で見ると、たったこれだけの話です。
そしてこの回路の中では、V・I・R の3つがオームの法則 V = I × R で結ばれています。この関係があるからこそ、次のステップで公式が「変形」できるのです。
オームの法則のあたりが少し怪しいという方は、先に合成抵抗で電圧・電流は完全に逆転する:直列『電流ひとつ』/並列『電圧ひとつ』に目を通しておくと、この先の代入がぐっと楽になります。回路の中でVとIがどう決まるかが分かっていれば、公式変形はただの計算作業になります。
ステップ4:基本式 P = VI(電力計算の親)
いよいよ本丸です。電力の基本式はこれです。

電力イコール 電圧かける電流。押す力(電圧)と、流れる量(電流)を掛け合わせたものが、1秒間の仕事量になる——理屈としても素直です。
この式が「親」である理由は単純で、残りの2本はここから作られるからです。逆はできません。P=RI² から P=VI を思い出そうとしても遠回りになります。ですから、覚えるならここ、迷ったら戻るのもここ。この一本を絶対の基準にしてください。
ステップ5:電流Iと抵抗Rで解く P = RI²
では、変形していきましょう。ここは「暗記」ではなく「その場で作る」感覚を身につけてほしいところです。
スタートは、いつも同じ P = VI です。ここに、オームの法則 V = RI を代入します。

出てきました。P = RI² です。
注目すべきは、この式に登場する文字が R と I だけになっていること。V が消えています。ということは、この式は——
条件①:電流 I が分かっているときに使う!
電流と抵抗が与えられている問題では、迷わずこれを選びます。「Vが分からないから解けない」ではなく、「Vが要らない式に持ち込む」わけです。この発想の転換ができると、電力問題は一気に軽くなります。
ステップ6:電圧Vと抵抗Rで解く P = V² / R
もう1本も、まったく同じ手順です。スタートは変わらず P = VI。今度はオームの法則を I = V / R の形で代入します。

P = V² / R の完成です。
こちらは文字が V と R だけ。今度は I が消えました。したがって——
条件②:電圧 V が分かっているときに使う!
3本の式を並べてみると、きれいな兄弟関係が見えてきます。
- 親:P = VI(VとIで解く)
- 弟その1:P = RI²(Vを追い出した式)
- 弟その2:P = V²/R(Iを追い出した式)
3本ともすべてオームの法則から派生している——ここが、この単元の核心です。3つ覚えるのではなく、1つ覚えて2回変形する。それだけの話だったのです。
ステップ7:使い分けマトリクス(これで一発判定)
ここまでの内容を、1枚の表にまとめます。試験本番で思い出すのは、この表だけで十分です。

| 分かっている条件 | 使うべき公式 |
|---|---|
| 電圧 V と 電流 I | |
| 電流 I と 抵抗 R | |
| 電圧 V と 抵抗 R |
見ていただくと分かるとおり、与えられた条件で、使う公式が一発で決まります。考える余地がありません。
だからこそ、問題を解くときの最初の動作はいつも同じにしてください。
- 問題文から、分かっている量に印をつける
- この表と照らし合わせて、公式を選ぶ
- 代入する
「どの公式だったかな」と悩む時間がゼロになります。電験三種の理論は時間との勝負でもありますから、この一手間の省略は効いてきます。
ステップ8:電力量[Wh]と電力損失への応用
電力の3大公式が「超重要」と言われるのは、ここから先に直結しているからです。電力単体で終わる話ではありません。
上へ伸ばすと、電力量です。
電力 P に時間 t を掛けたものが電力量 W[Wh]。
電力が「1秒間の仕事のペース」でしたから、それを時間で積み上げれば総量になる、という当たり前の話です。時間に比例して蓄積されていきます。電気料金の請求書に kWh と書かれているのは、まさにこれを積算した値ですね。
なお、この電力量については単位の換算(kWhとkJ)がよく問われます。あわせて1kWhは何kJ?=3,600kJ|kWhとkJの換算も読んでおくと、電力→電力量の流れが1本につながります。
下へ伸ばすと、電力損失です。
送電線には抵抗があるので、電気を送る途中で熱になって逃げていく分があります。これが電力損失で、式はこうです。
見覚えがありますね。ステップ5で導いた P = RI² と、まったく同じ形です。送電線という抵抗に電流が流れて発熱する——現象が同じなのですから、式が同じなのは当然のことです。
「電力」で覚えた1本が、そのまま「損失」でも使える。覚える量が増えないどころか、むしろ減っていく。これが、公式を丸暗記ではなく仕組みで理解する強みです。
ステップ9:練習問題で仕上げる
では、実際に手を動かしてみましょう。
【問題】 ある抵抗器の抵抗値が 20[Ω]、流れている電流が 3[A] でした。この抵抗器で消費される電力 P[W] はいくらでしょうか。
ここで大切なのは、いきなり計算を始めないことです。まず「何が分かっているか」を確認してください。……分かっているのは、抵抗と電流ですね。
答えが出せたら、下へ進んでください。
解答:180 W
Step1/条件の整理
- 抵抗 R = 20[Ω]
- 電流 I = 3[A]
Step2/公式の選択
分かっているのは I と R。使い分けマトリクスの中段どおり、選ぶ式は P = RI² です。
Step3/代入と計算
正解は 180[W] でした。
もし間違えていても、まったく気にしないでください。大事なのは、Step2の「条件を見て公式を選ぶ」という手順が身についているかどうかです。そこさえ習慣になれば、数字が変わっても、抵抗が並列になっても、やることは同じです。何度も繰り返して、確実な得点源に仕上げていきましょう。
まとめ
電力の3大公式を、もう一度整理します。
1. 覚えるのは1本だけ
暗記フレーズは「電力イコール 電圧かける電流」。これが親です。
2. 残り2本は、オームの法則を代入して作る
V=RI を入れれば RI²、I=V/R を入れれば V²/R。3本ともオームの法則から生まれた兄弟です。
3. 使い分けは条件で一発判定
VとI なら P=VI/IとR なら P=RI²/VとR なら P=V²/R。問題文を読んだら、まず「何が与えられているか」に印をつける。それだけで式が決まります。
4. 電力量と損失まで一気通貫
W = Pt で電力量[Wh]、PL = RI² で送電線の損失。土台はすべて同じ式です。
公式が3つあると聞くと身構えてしまいますが、正体は「1本+変形2回」。覚える負担がいちばん軽く、それでいて出題頻度が高い——電験三種の理論の中でも、これほど費用対効果の良い単元はそう多くありません。ぜひ確実に取りきってください。
⚠ ここを間違える人が多い
計算そのものより、手前の「選び方」で失点するのがこの単元の特徴です。よくある取り違えを2つ挙げておきます。
❌ 2乗をつける文字を取り違える
「Vの2乗だったか、Iの2乗だったか」で迷い、 や のような存在しない式を書いてしまうパターンです。
✅ 迷ったら、その場で作り直してください。P=VI に V=RI を入れれば、掛けられた I がもともとの I と並んで 。V を入れる側なら 。自分で1行変形すれば、2乗の位置は絶対に間違えません。丸暗記に頼るから迷うのであって、導出できる人は迷いようがないのです。
❌ 電力[W]と電力量[Wh]を混同する
「1時間使ったときの電力は?」といった問われ方で、P と W を取り違えるパターンです。
✅ 電力は1秒間の仕事のペース、電力量はそれを時間で積み上げた総量です。単位を見れば区別できます。W なら瞬間のペース、Wh なら時間ぶんの総量。問題文に「〜時間」という言葉が出てきたら、聞かれているのは電力量ではないか、と一度立ち止まる癖をつけると安全です。
この2つは、慣れれば必ず防げるミスです。裏を返せば、ここさえ潰しておけば、この単元での取りこぼしはほぼ無くなります。
よくある質問
Q. 3つの公式は、全部暗記しないとダメですか?
いいえ、P = VI の1本だけで十分です。残りの2本は、オームの法則(V=RI、I=V/R)を代入すれば、その場で10秒もかからず作れます。
もちろん、繰り返し使っているうちに も も自然と口をついて出るようになります。それはそれで結構なことですが、「忘れても作れる」という安心感を先に手に入れてください。試験本番で記憶が飛んだときに、自力で復旧できる人は強いです。
Q. P=RI² と P=V²/R は、どちらを使っても同じ答えになりますか?
同じ回路について正しい値を代入していれば、当然どちらでも同じ答えになります。3本とも同じ式を変形しただけですから、矛盾するはずがありません。
ただし実際の問題では、片方は「与えられていない量」を含んでいて使えないことがほとんどです。だから使い分けが必要になる、というだけの話です。「どちらが正しいか」ではなく「どちらが今すぐ使えるか」で選んでください。
なお、抵抗が直列や並列で組み合わさっている問題では、まず合成抵抗を出してから公式に入る流れになります。回路が複雑に見えるときはブリッジ平衡回路を瞬殺!「積のクロス」で複雑回路を一発解決のような「回路を整理する技」が効いてきますので、あわせて押さえておくと安心です。
Q. 送電線の電力損失の式が P=RI² と同じなのは、なぜですか?
起きている現象がまったく同じだからです。
送電線も、電気的に見れば1つの抵抗です。そこに電流が流れれば発熱します。抵抗に電流が流れて熱になる——これは、ステップ2で見た「電気エネルギーが熱エネルギーに変わる」現象そのものですね。
現象が同じなら、それを表す式も同じになります。名前が「消費電力」から「電力損失」に変わっているのは、その熱が目的の仕事なのか、途中で漏れた無駄なのかという立場の違いにすぎません。電気ストーブの熱は目的、送電線の熱は損失。式は同じでも、扱いが違うわけです。
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