直巻式 直流機を「一直線」で攻略!発電機と電動機の電圧公式の違い
電験三種「機械」科目の直巻式 直流発電機・直流電動機を、『Ia=Ifで一直線』『父と子に税金は Ra+Rf』という2つのキーワードで徹底比較。分巻式との違い、電圧公式の符号、なぜ If=V/Rf が使えないのかまで、計算ミスを根絶する1記事です。
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この記事で身につくこと
直流機の「直巻」と聞くと、それだけで身構えてしまう方が多いところです。分巻でようやく慣れてきたのに、また別の接続が出てきた──そう感じるのは自然なことです。
ただ、直巻には受験生にとって非常にありがたい性質があります。電流が1本道なのです。分かれる場所が無いので、電機子電流も界磁電流も負荷電流も、全部同じ値。分巻のように「この電流はどっちに流れるんだっけ」と悩む場面がほとんどありません。
この記事では、次の3つが自分の言葉で説明できる状態を目指します。
| 身につくこと | 到達イメージ |
|---|---|
| 直巻の回路の読み方 | Ia = If = IL が、なぜ成り立つのかを図で説明できる |
| 発電機と電動機の違い | 同じ回路図から、電流の向きだけで両者を見分けられる |
| それぞれの長所と欠点 | 直巻発電機が使われず、直巻電動機が使われる理由を言える |
分巻式のほうがまだ怪しいという方は、先に分巻式 直流機を「父と子」で攻略!発電機と電動機の電流・電圧の違いを読んでおくと、この記事の理解が一段速くなります。
暗記フレーズ:直巻は電流が一本道
直巻は電流が一本道 Ia=If=IL / 発電機は内から外へ、電動機は外から内へ
前半が「接続」、後半が「向き」です。この2つを押さえるだけで、直巻の問題の骨格はほぼ掴めます。
- 一本道……電機子と界磁が直列なので、電流の分かれ道が存在しない
- 内から外へ……発電機は自分で作った電気を外へ押し出す
- 外から内へ……電動機は外から電気をもらって回る
ステップ1:発電機と電動機は「双子」だと知る

直流発電機と直流電動機は、中身の構造がほとんど同じです。違うのは役割と、その結果としての電流の向きだけ。
| 直流発電機 | 直流電動機 | |
|---|---|---|
| 入れるもの | 回転(機械エネルギー) | 電気エネルギー |
| 出るもの | 電気エネルギー | 回転(機械エネルギー) |
| 電機子電流の向き | 内 → 外(負荷へ) | 外(電源)→ 内 |
| Ea と V の関係 | Ea > V | Ea < V |
同じ回路図を見せられて「これは発電機か、電動機か」と問われたとき、判断材料になるのは矢印の向きだけ、というわけです。ここが曖昧な方は電動機と発電機の違い|他励式は同じ回路図でも電流が逆で一度整理しておくと、以降がぐっと楽になります。
ステップ2:記号の意味を固定する

計算問題でつまずく原因の多くは、公式ではなく記号の意味を取り違えていることです。ここで固定してしまいましょう。
| 記号 | 読み | 意味 |
|---|---|---|
| イーエー | 電機子に生じる起電力。発電機では誘導起電力、電動機では逆起電力 | |
| アールエー | 電機子巻線の抵抗 | |
| アールエフ | 界磁巻線の抵抗 | |
| ブイ | 端子電圧(外側で測れる電圧) | |
| アイエー | 電機子電流 | |
| アイエフ | 界磁電流 | |
| アイエル | 負荷電流 |
直巻では と が直列に並ぶため、電圧降下は必ず という形でセットになって現れます。分巻のときのように片方だけを使う場面はありません。
ステップ3:「直巻」の意味を回路で掴む

直巻とは、その名のとおり直列に巻いてあるという意味です。電機子巻線と界磁巻線が一本の道に並んでいます。
直列回路では電流が分かれません。したがって、
これが直巻のすべての出発点です。この一行から、これから見ていく長所も欠点もすべて派生します。
分巻との対比で覚える
| 直巻 | 分巻 | |
|---|---|---|
| 接続 | 電機子と界磁が直列 | 電機子と界磁が並列 |
| 電流の関係 | (発電機) | |
| 界磁電流を決めるもの | 負荷の大きさ | 端子電圧() |
| 磁束 φ の性質 | 負荷で変わる | ほぼ一定 |
ステップ4:直巻式 直流発電機のしくみ

発電機は、外から回してもらって電気を作る側です。動作の流れはこうなります。
- 原動機が電機子を回す
- 残留磁気による弱い磁束を切って、わずかな起電力が発生する
- その電流が界磁巻線を流れ、磁束が強まる
- 磁束が強まるとさらに起電力が増える──と、電圧が立ち上がっていく
端子電圧の式は次のとおりです。
発電した から、電機子と界磁の両方の電圧降下を引いた残りが、外に取り出せる電圧になります。 のほうが より大きい、これが発電機側の特徴です。
ステップ5:電流は「内から外へ」押し出される

発電機では、電機子が電源の役割を担います。したがって電流は機械の内部で生まれ、界磁巻線を通り、端子から外の負荷へと押し出されていきます。
この「押し出す」というイメージが定着すると、後で電動機と比べたときに矢印の違いが一目で分かるようになります。
ステップ6:直巻式 発電機の致命的な欠陥

ここが直巻発電機の最大のポイントです。 ということは、負荷の都合で磁束が決まってしまうということを意味します。
| 負荷の状態 | 界磁電流 | 磁束 φ | 端子電圧 |
|---|---|---|---|
| 無負荷() | ゼロ | 残留磁気のみ | ほぼ出ない |
| 軽負荷 | 小さい | 弱い | 低い |
| 重負荷 | 大きい | 強い | 高くなる |
発電機に求められるのは「負荷が変わっても電圧が一定」という性質です。直巻はその正反対で、負荷が変わるたびに電圧が振り回されます。しかも負荷が増える → 磁束が増える → 電圧が上がる、という自己増幅のループが働くため、安定させるのが非常に難しいのです。
ステップ7:だから直巻発電機は実用されない

実務で直流発電機を使う場面では、直巻はまず選ばれません。電圧が安定しないという欠点が、発電機としては致命的だからです。
| 方式 | 発電機としての実用性 |
|---|---|
| 直巻 | ほぼ使われない(電圧変動が大きすぎる) |
| 分巻 | 広く使われる(電圧が比較的安定) |
| 複巻 | 広く使われる(直巻界磁で電圧降下を補える) |
試験では「直巻発電機は電圧変動率が大きい」「直巻発電機は無負荷では電圧を確立できない」といった形で問われます。欠点そのものが出題ポイントになっている、と考えてください。
ステップ8:直巻式 直流電動機のしくみ

同じ直巻でも、電動機になると評価がひっくり返ります。ここが面白いところです。
電動機側の式は次のようになります。
外から与えた から電圧降下を引いた残りが、回転によって生じる逆起電力 です。発電機と符号の並びが逆になっているだけで、登場人物は同じですね。
そしてトルクは、
直巻では が に比例するので(磁気飽和前)、
トルクが電流の2乗で効いてくる。これが直巻電動機の強みです。始動時のように大電流が流れる場面で、桁違いに大きなトルクを出せます。電車やクレーンといった「重いものを動かし始める」用途に直巻が選ばれてきたのは、この性質があるからです。
ただし弱点もある
負荷が軽いと が小さくなり、 も小さくなります。すると回転速度が跳ね上がる──いわゆる無負荷暴走です。直巻電動機を無負荷で運転してはいけない、というのはこのためです。速度の考え方をもう少し深めたい方は、直流電動機の速度制御は「どこを変えるか」だけ─抵抗・界磁・電圧の3方式を数式で攻略へ進むと自然につながります。
ステップ9:電流は「外から内へ」流れ込む
電動機では電源が外にあります。電流は端子から入り、界磁巻線と電機子巻線を通って、また外へ戻っていきます。発電機のときと矢印が完全に逆向きです。
回路図が同じでも、矢印の向きが逆なら別の機械──この一点さえ押さえておけば、図を見て迷うことはなくなります。
ステップ10:総括比較で頭を整理する
ここまでを一枚にまとめます。
| 比較項目 | 直巻式 直流発電機 | 直巻式 直流電動機 |
|---|---|---|
| 役割 | 回転 → 電気 | 電気 → 回転 |
| 電流の向き | 内から外へ | 外から内へ |
| 基本式 | ||
| と | ||
| 電流の関係 | ||
| 直巻であることの評価 | 欠点になる(電圧不安定) | 長所になる(大トルク) |
| 実用性 | ほぼ使われない | 電車・クレーン・工具などで活躍 |
同じ「直巻」という構造が、発電機では欠点になり、電動機では長所になる。この対比を持っておくと、記憶が定着しやすくなります。
まとめ
直巻式の直流機は、覚えることが多いように見えて、実は出発点がたった1つしかありません。
| 押さえる順番 | 内容 |
|---|---|
| ① 接続 | 電機子と界磁が直列 → |
| ② 向き | 発電機は内から外へ、電動機は外から内へ |
| ③ 評価 | 発電機では欠点、電動機では長所 |
この3段だけで、直巻の問題はほとんど処理できます。分巻で苦労した「電流の分岐」がそもそも存在しないぶん、慣れてしまえば直巻のほうが扱いやすいくらいです。
⚠ ここを間違える人が多い
❌ 電源の+−を逆にすれば、直巻電動機も逆回転すると思ってしまう
✅ 回転方向は変わりません。 極性を反転すると電機子電流も界磁電流も同時に向きが変わります。トルクは磁束と電機子電流の掛け算で決まるので、両方がマイナスになれば掛け算の結果は元のまま。方向は反転しないのです。逆転させたいなら、電機子か界磁のどちらか一方だけを反対につなぎ替える必要があります。
❌ 直巻電動機は直流専用だと思ってしまう
✅ 上の性質があるため、直巻形は交流を加えても同じ向きに回り続けます。電圧が1秒間に何十回も向きを変えても、磁束と電機子電流が同時に反転するのでトルクの向きは一定。この性質を利用したものがユニバーサルモータ(交直両用電動機)で、掃除機や電動工具など身近な機器に使われています。名称を知らないと、選択肢の中から選び出せません。
❌ 直巻は発電機でも電動機でもダメな方式だと思ってしまう
✅ 評価は用途で逆転します。同じ「負荷で磁束が変わる」という性質が、発電機では電圧が安定しない欠点になり、電動機では始動時に大トルクを生む長所になります。方式そのものに良し悪しがあるのではなく、求められる特性との相性の問題だと捉えてください。
過去問ではこう出た
この単元は、実際に本試験で出題された実績があります。
| 年度 | 問番号 |
|---|---|
| 令和2年 | 問6 |
出題の傾向として、次の点が押さえどころです。
- 計算そのものより、性質を言葉で問う空欄補充の形が中心になりやすい
- 極性を反転させたときにトルクの向きがどうなるか、という理屈を問う問い方がされる
- ユニバーサルモータのような名称そのものを知っているかどうかで正誤が分かれる
つまり、公式を暗記するだけでは足りず、「なぜそうなるのか」を一段掘り下げておく必要がある単元です。逆に言えば、この記事で扱った と極性反転の理屈を押さえておけば、初見の設問でも自力で組み立てられます。
よくある質問
Q. 直巻発電機が使われないなら、覚えなくてもいいのでは?
実務で使われないことと、試験に出ないことは別です。むしろ「使われない理由」を説明させる形で出題されます。無負荷では電圧が立ち上がらない、負荷変動で電圧が大きく振れる──この2つが答えられれば十分です。実用されない方式こそ、その欠点が問題文の題材になりやすい、と考えておいてください。
Q. トルクが の2乗に比例するのは、いつでも成り立ちますか?
いいえ、磁気飽和が起きるまでの話です。 という関係自体は常に成り立ちますが、 が言えるのは鉄心がまだ飽和していない領域に限られます。電流を増やしても磁束がそれ以上増えなくなると、 はほぼ一定になり、トルクは の1乗に比例する形へ移っていきます。試験では飽和前を前提に「2乗に比例」と答えて問題ありませんが、条件付きだという意識は持っておきましょう。
Q. 直巻と分巻、どちらから覚えるのが効率的ですか?
分巻を先、直巻を後がおすすめです。分巻には電流の分岐があるので、 という関係を先に身につけておくと、直巻の「分岐が無い」という特徴が対比で際立ちます。逆の順で覚えると、直巻のシンプルさに慣れた頭で分岐を扱うことになり、混乱しやすくなります。
Q. 複巻というのも出てきますが、直巻とどう関係しますか?
複巻は、直巻の界磁と分巻の界磁を両方持たせた方式です。分巻だけでは負荷が増えたときに電圧が下がってしまうため、そこへ直巻界磁を足して「負荷が増えると磁束も増える」性質で補います。直巻単独では欠点だった性質を、補助役として使うと長所になる──という考え方です。直巻の性質を理解しておくと、複巻の理屈もそのまま読み解けます。
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