架空送電線路を「弱点をぜんぶ裏返した2本の線」で攻略
電験三種「電力」科目の架空送電線路について、送電線路と配電線路の線引き、鉄塔・がいし・架空地線などの構成要素、そして硬銅より線と鋼心アルミより線の正反対な性質を対比表で一気に整理。コロナ放電が起きにくい理由まで、暗記に頼らず理屈でつながる形で解説します。
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架空送電線路と聞くと、「鉄塔だの、がいしだの、より線だの、覚えることが多すぎる」と身構えてしまう方が多い単元です。実際、テキストを開くと専門用語がずらりと並んでいて、どこから手をつけていいのか分からなくなります。
でも、安心してください。この単元でおさえるべき軸は、たった2つしかありません。
ひとつは「送電線路と配電線路をどこで線引きするか」。もうひとつは「2種類の電線が、どこがどう正反対か」。この2つさえ握ってしまえば、あとの用語は全部そこにぶら下がってくれます。
丸暗記の量を増やすのではなく、覚える中身を減らしにいきましょう。

この記事で身につくこと
| 身につくこと | 具体的な中身 |
|---|---|
| 送電と配電の線引き | 「需要家に届くかどうか」の一発判定 |
| 構成要素の役割 | 鉄塔・電線・がいし・架空地線の4つが何をしているか |
| 電圧の流れ | 275kVからどう下げられて需要家へ届くか |
| 2種類の電線の対比 | 硬銅より線と鋼心アルミより線が、どこがどう正反対か |
| コロナ放電の理屈 | なぜ太い電線のほうがコロナに強いのか |
| 試験での狙われ方 | 過去問での出題傾向と、間違えやすいポイント |
暗記フレーズ:鋼心アルミより線は、硬銅より線の弱点をぜんぶ裏返した線
この単元で一番おいしいのが、電線の対比です。硬銅より線と鋼心アルミより線は、性質がきれいに正反対になっています。
つまり、片方を覚えれば、もう片方は「その逆」で済むということ。暗記量が実質半分になります。
硬銅より線=電気はよく通すが、高くて重くて、コロナに弱い。 鋼心アルミより線=その弱点を、ぜんぶ裏返した線。

「電気の通しやすさだけは硬銅が勝つ。それ以外は全部アルミが勝つ」――この一文を、まず頭のてっぺんに置いてください。あとの細かい話は、全部この一文の説明でしかありません。
ステップ1:送電線路と配電線路の違いは「需要家に届くかどうか」

ここでつまずく人が本当に多いのですが、判定基準はたった一つです。
| 線路の種類 | 判定基準 | 具体例 |
|---|---|---|
| 送電線路 | 需要家に届かない | 発電所〜変電所、変電所〜変電所 |
| 配電線路 | 需要家に届く | 変電所〜工場・家庭など |
電気を使うお客さん(需要家)のところまで行き着く線が配電線路。そこに至るまでの、大きな電力を運ぶ区間が送電線路です。
「発電所から出た電気は、まず送電線路で運ばれ、最後の最後で配電線路に姿を変えて家に届く」とイメージしておくと、迷いません。
ステップ2:架空送電線路の4大構成要素

架空送電線路は、「鉄塔に送電線を張って電気を送る設備」です。この設備を組み立てている部品は、大きく4つに分けられます。
| 構成要素 | 役割 |
|---|---|
| 鉄塔 | 電線を空中に支える骨組み |
| 電線(送電線) | 電気そのものを運ぶ本体 |
| がいし | 鉄塔と電線を絶縁し、電気が鉄塔へ流れるのを防ぐ |
| 架空地線 | 送電線より上に張り、雷を先に受け止めて大地へ逃がす |
覚え方のコツは、「支える・運ぶ・絶縁する・守る」の4つの動詞で捉えることです。用語を4つ並べて暗記するより、役割で並べたほうが記憶に残ります。
架空地線が送電線の「上」に張られているのは、雷が高いところに落ちる性質を利用しているからです。身代わりになってくれる、という言い方が一番しっくりきます。
ステップ3:275kVから、どう下げられて届くのか

送電では、大きな電力を効率よく運ぶために非常に高い電圧が使われます。そこから変電所を経るごとに、段階的に電圧が下げられていきます。
この「上流ほど高圧、下流ほど低圧」という流れをつかんでおくと、送電線路と配電線路の区別も自然と腹落ちします。高い電圧のまま家庭に届けるわけにはいかないので、途中で何度も降圧しているわけです。
送電系統の図が苦手だという方は、先に単線図と複線図を「ホンモノ図とマトメ図」で攻略を読んでおくと、この流れが図面上でどう表現されているのかが一気にクリアになります。
ステップ4:硬銅より線のメリットと弱点

硬銅より線は、銅の素線をより合わせた電線です。銅なので、当然ながら電気をよく通します。
| 項目 | 硬銅より線の評価 |
|---|---|
| 導電率 | ◎ 高い(唯一の強み) |
| 価格 | △ 高い |
| 強さ | △ 鋼心アルミに劣る |
| 重さ | △ 重い |
| コロナ放電 | △ 外径が小さく起きやすい |
表を見て「ほとんど△じゃないか」と思われたはずです。そのとおりで、硬銅より線の強みは導電率だけ。ここが試験でも狙われるポイントになります。
「銅のほうが立派そうだから全部優秀なはず」という思い込みが、そのまま失点につながります。優秀なのは電気の通しやすさ、その一点だけです。
ステップ5:鋼心アルミより線は「鋼の芯+アルミの外側」

鋼心アルミより線は、名前がそのまま構造を説明してくれています。「鋼の心(芯)+アルミ」です。
中心に鋼(はがね)の線を通し、その周りをアルミの線で覆っています。この分担がよくできていて、
- 中心の鋼 … 引っ張りの強さを担当(電線が切れないように)
- 外側のアルミ … 電気を運ぶ役と、軽さを担当
という、それぞれの得意分野を組み合わせた構造になっています。
ここで、ステップ4の表をまるごと裏返してみましょう。
| 項目 | 硬銅より線 | 鋼心アルミより線 |
|---|---|---|
| 導電率 | 高い | 低い |
| 価格 | 高い | 安い |
| 強さ | 弱い | 強い |
| 重さ | 重い | 軽い |
| 外径 | 小さい | 大きい |
| コロナ放電 | 起きやすい | 起きにくい |
見事に、全項目が正反対になっています。これが暗記フレーズ「弱点をぜんぶ裏返した線」の中身です。この表は、丸ごと1枚の絵として覚えてしまうのが一番早いです。
ステップ6:外径が大きいと、コロナ放電が起きにくい

対比表のなかで、多くの方が引っかかるのが「外径」の行です。太いのは得なのか損なのか、判断がつきにくいからです。
答えは、「コロナには有利、風には不利」です。
| 外径が大きいことの影響 | 評価 |
|---|---|
| 電線表面の電界が弱まる → コロナ放電が起きにくい | 有利 |
| 風を受ける面積が増える → 風圧荷重が大きくなる | 不利 |
同じ電圧がかかっていても、電線が太いほど表面の電界はゆるやかになります。電界が強くなりすぎたときに空気が絶縁を保てなくなるのがコロナ放電ですから、太い=コロナに強い、という関係になるわけです。
一方で、太いということは風を受ける面が広いということでもあります。鉄塔にかかる風圧荷重の面では不利になります。この表と裏の関係が、そのまま試験問題の作りどころになっています。
ステップ7:コロナ放電が招く、3つの困りごと
コロナ放電は、単に「放電が起きて終わり」ではありません。実害が3つあります。
| 弊害 | 中身 |
|---|---|
| コロナ損 | 放電にエネルギーを取られ、電力が失われる |
| 無線受信障害 | 放電が電波ノイズとなり、無線の受信をじゃまする |
| 騒音 | 放電に伴う音が周囲の騒音源になる |
「電気が減る」だけでなく「周りに迷惑をかける」という点まで含めて押さえておくと、選択肢問題で迷いません。
だからこそ、実際の送電設計では電線の太さ選定が重要な検討項目になります。細い電線は安く済みそうに見えて、コロナの実害を抱え込むことになるからです。
現場の豆知識:主流は鋼心アルミより線
現在の送電線の主流は、鋼心アルミより線です。理由は「安い・軽い・コロナ放電に強い」の三拍子。
なかでも効いているのが「軽い」ことです。電線が軽ければ、それを支える鉄塔にかかる負担が減ります。鉄塔を細く安く作れるということは、送電線路全体の建設コストが下がるということです。
導電率という一点で硬銅に負けていても、トータルで見れば鋼心アルミが選ばれる――このバランス感覚が、そのまま「なぜ主流なのか」の答えになっています。
まとめ
| 論点 | 結論 |
|---|---|
| 送電と配電の区別 | 需要家に届けば配電、届かなければ送電 |
| 構成要素 | 鉄塔(支える)・電線(運ぶ)・がいし(絶縁)・架空地線(雷から守る) |
| 硬銅より線 | 強みは導電率だけ。高い・重い・コロナに弱い |
| 鋼心アルミより線 | 中心が鋼、外側がアルミ。安い・軽い・強い・コロナに強い |
| 外径が大きい | コロナには有利、風圧荷重には不利 |
| コロナ放電の実害 | コロナ損・無線受信障害・騒音の3つ |
| 現在の主流 | 鋼心アルミより線(安い・軽い・コロナに強い) |
覚えることが多そうに見えた単元ですが、こうして並べ直すと軸は2本しかありません。「需要家に届くか」と「2本の線が正反対」。この2本さえ握っていれば、あとは枝葉です。
⚠ ここを間違える人が多い
❌ 「銅のほうが高級だから、性能も全部上だろう」と思い込む
→ ✅ 硬銅より線が勝っているのは導電率という一点だけです。価格・強さ・軽さ・コロナ耐性は、すべて鋼心アルミより線に軍配が上がります。選択肢に「硬銅より線は〜に優れる」と書かれていたら、その〜が導電率以外なら誤りだと疑ってください。「どちらが総合的に優秀か」ではなく「項目ごとにどちらが勝つか」で覚えるのが正解です。
❌ 「外径が大きいのは、単に不利なことだ」と決めつける
→ ✅ 外径には表と裏があります。風圧荷重の面では確かに不利ですが、コロナ放電の面ではむしろ有利です。片方だけを覚えていると、「外径が大きいほどコロナ放電が起こりにくい」という正しい記述を誤りだと判断してしまいます。太さの話が出てきたら、必ず「風の話か、コロナの話か」を確認するクセをつけましょう。
❌ 「変電所につながっていれば配電線路だ」と考える
→ ✅ 基準はつなぎ先の設備名ではなく、需要家に届くかどうかです。変電所と変電所を結ぶ線は、変電所につながっていても送電線路です。設備の名前で判定しようとすると必ず混乱します。判定は「お客さんに届くか」の一本で行ってください。
このあたりの設備の役割分担があやふやな方は、ガス絶縁開閉装置(GIS)を「機器を金属の箱に丸ごと収めた省スペース設備」で攻略も合わせて読んでおくと、変電所の中身と送電線路の境目がはっきりします。
過去問ではこう出た
架空送電線路は、電力科目のなかでも出題頻度が非常に高い定番テーマです。テーマで照合すると、電験ジムの収録範囲だけで 65問 が該当します。
| 年度・期 | 該当する問番号 |
|---|---|
| 令和7年 上期 | 問8・問9 |
| 令和7年 下期 | 問8・問9 |
| 令和5年 下期 | 問8 |
| 令和4年 下期 | 問8 |
| 令和2年 | 問6・問10 |
表を見て気づかれたと思いますが、問8・問9という近い位置に、繰り返し出ています。しかも令和7年は上期・下期のどちらでも2問ずつ。ここを落とすと、それだけで合格ラインに直結します。
出題形式としては、電線や構成要素の性質を並べた文章のなかから、誤っているものを選ばせる形が中心です。だからこそ、この記事で作った対比表を「丸ごと1枚の絵」として持っておくことが、そのまま得点力になります。あいまいな記憶では、正誤の判定ができません。
よくある質問
Q. どうして送電では、あんなに高い電圧を使うのですか?
同じ電力を送るなら、電圧を高くするほど流れる電流を小さくできるからです。送電線で失われる電力は電流の2乗に比例するため、
電流が小さいほど損失は大幅に減ります。だから遠くへ大きな電力を運ぶ送電線路では高い電圧を使い、需要家の近くまで来たところで段階的に下げていくわけです。「高い電圧=危ないから避ける」ではなく「高い電圧=損失を減らすための手段」と捉えると、系統図の見え方が変わります。
Q. アルミは銅より電気を通しにくいのに、なぜ主流になれたのですか?
導電率で負けている分は、電線を太くすることで補えるからです。太くすれば断面積が増え、抵抗を下げられます。そのうえ太いことはコロナ放電の面でも有利に働くので、弱点を補う工夫がそのまま別の長所を生んでいます。一方、軽さ・価格・強さといった利点はアルミ側にしかありません。トータルで比べたときに鋼心アルミが選ばれるのは、こうした差し引きの結果です。
Q. 架空地線と、がいしを混同してしまいます。区別のコツはありますか?
守る相手が違う、と考えてください。架空地線は「雷」から送電線を守る部品で、送電線より上に張られています。一方、がいしは「鉄塔へ電気が流れること」を防ぐ部品で、電線と鉄塔のあいだに挟まっています。位置で覚えるなら「架空地線=いちばん上」「がいし=電線と鉄塔のつなぎ目」。役割で覚えるなら「雷よけ」と「絶縁」です。
なお、送電線路の電圧や無効電力の話とセットで問われることもあります。そのあたりに不安がある方は、調相設備を「無効電力の調整役4兄弟」で攻略を先に押さえておくと、系統全体の話がつながって見えてきます。
架空送電線路は、用語の数だけを見れば確かに多い単元です。けれど、軸は「需要家に届くか」と「2本の線が正反対」の2本だけ。ここを握ってしまえば、残りは自然とついてきます。焦らず、対比表を1枚の絵として持ち帰ってください。
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