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電力 第39回 ⏱ 約24分で読めます

多導体方式を「太さを分割でごまかす裏ワザ」で攻略

電験三種「電力」科目の架空送電線路で問われる多導体方式を、細い電線を束ねて『太い1本相当』に見せる裏ワザとして整理。コロナ放電の抑制・送電容量の増加・インダクタンス減少と静電容量増加というメリットと、サブスパン振動・建設費増というデメリットまで、混同しやすい所をまとめて攻略します。

🃏 暗記フレーズ:多導体は、電線の“太さ”を分割でごまかす裏ワザ

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この記事で身につくこと

送電線の話になると、急に用語が増えて息が詰まる——そんな感覚、よく分かります。「多導体方式」もその一つで、参考書を開くと「コロナ放電が抑制され、インダクタンスが減少し、静電容量が増加し……」と、いいことも悪いことも一気に並べられて、覚える前に読む気が失せてしまう単元です。

でも安心してください。この単元は、たった一つの理屈さえ押さえれば、あとは全部そこからぶら下がっているだけです。バラバラの暗記事項に見えていたものが、1本の線でつながります。

この記事を読み終えると、次のことができるようになります。

身につくことゴール
単導体と多導体の違い図を見なくても構造の違いを説明できる
「太さをごまかす」という核心なぜ束ねると太い1本と同じになるのかが分かる
メリット3つの理由丸暗記ではなく「だからそうなる」で言える
デメリット2つ良いことずくめではない、と反射的に思い出せる
ひっかけへの耐性「静電容量は増加か減少か」で迷わなくなる

送電線そのものの構造がまだ曖昧な方は、先に架空送電線路を「弱点をぜんぶ裏返した2本の線」で攻略を読んでおくと、この記事の理解がぐっと速くなります。土台があると、上に積む話は驚くほどラクになりますよ。

多導体方式でハマるよくある罠

暗記フレーズ:多導体は、電線の“太さ”を分割でごまかす裏ワザ

この単元の核心は、この一文に全部入っています。

多導体は、電線の“太さ”を分割でごまかす裏ワザ

太い電線が欲しい。でも、太い電線は重いし硬いし扱いにくい。ならば——細い電線を何本も束ねて、「太い1本のフリ」をさせてしまえばいい。これが多導体方式の正体です。

「ごまかす」というと聞こえは悪いですが、電気の世界では実に賢い解決策です。そして試験で問われることのほとんどは、この「フリをさせた結果、何が起きるか」に過ぎません。

太さを分割でごまかす裏ワザ(魔法の言葉)

🃏 暗記シート
Q. 架空送電線路における多導体方式とは、どのような送電方式か?

ステップ1:まずは単導体と多導体、構造の違いから

言葉の意味そのものは、拍子抜けするほど単純です。

方式1相あたりの電線主な使いどころ
単導体方式1本配電線・比較的低い電圧の送電線
多導体方式2本以上(2・4・6導体など)超高圧の基幹送電線

三相交流ですから、電線は3相ぶん必要です。単導体なら合計3本。しかし4導体方式なら、1相あたり4本 × 3相=合計12本もの電線が鉄塔に架かることになります。

高圧送電線を下から見上げたとき、「やけに電線が多いな」と感じたことはありませんか。あれは相の数が増えているのではなく、1相ぶんが何本にも分かれているのです。

単導体方式と多導体方式の基本構造

🃏 暗記シート
Q. 架空送電線路で、1相を1本の電線だけで送る方式を何というか?

ステップ2:裏ワザの正体——「等価半径」で太さを水増しする

ここがこの記事の心臓部です。ここさえ通れば、あとは下り坂だと思ってください。

束ねると、電気的には「太い1本」になる

細い電線を数十センチ間隔で束ねると、電気から見たその集団は、バラバラの細い線ではなく「太い1本の電線」としてふるまいます。このときの見かけ上の太さを等価半径と呼びます。

大事なのは、次の一点です。

実際の電線は細いまま。増えたのは見かけの半径であって、1本1本が太くなったわけではない。

「太くする」との違い

太い電線を1本使う細い電線を束ねる(多導体)
重さ・扱いやすさ重く硬い・施工しにくい1本ずつは軽く扱いやすい
表皮効果内側が使われにくく不利影響が小さく有利
等価半径実物の半径そのもの実物より大きくできる

つまり多導体は、「太い電線の利点だけを取り、太い電線の欠点を避ける」ための工夫なのです。分割することで得をする——だから「裏ワザ」なのですね。

電線の太さを仮想的に拡大(裏ワザの正体)

🃏 暗記シート
Q. 多導体方式で、束ねた複数の電線がまとめて1本の太い電線のようにふるまうとき、その仮想的な太さのことを何と呼ぶか?
💡 半径が大きくなったのと同じ効果

ステップ3:メリット①——コロナ放電が起こりにくい

多くの受験生が「なぜ束ねるとコロナが減るのか分からない」とつまずく所です。ここは理屈でつなぎましょう。

電界が集中するから、コロナは起きる

コロナ放電は、電線の表面付近で電界(電位の傾き)が強くなりすぎ、周りの空気の絶縁が部分的に破れて起こります。細い針の先に電気が集中しやすいのと同じで、細い(=曲率が大きい)ほど表面の電界は強くなります

そして先ほど手に入れた武器が効きます。等価半径が大きくなる=太い電線と同じ状態になるのですから、表面の電界はゆるみます。電界がゆるめば、空気は破れにくい。だからコロナ放電が起こりにくくなる、という流れです。

コロナが減ると何が嬉しいか

減るもの内容
コロナ損放電で失われる電力のロスが減る
コロナ雑音ラジオ・テレビへの電波障害が減る
騒音「ジー」という可聴音が抑えられる

送電効率だけでなく、沿線の環境への配慮という意味でも大きな効果があるわけです。

コロナ放電が発生しにくい(メリット①)

🃏 暗記シート
Q. 多導体方式にすると、なぜコロナ放電が起こりにくくなるのか?
💡 表面の電界がゆるむ

ステップ4:メリット②——送電容量が増える(表皮効果にも強い)

こちらは素直な理屈です。1相あたりの電線が2本、4本と増えれば、導体の総断面積がそのぶん増えます。断面積が増えれば、流せる電流が増える。だから送電容量が大きくなります。

ここにもう一つ効いてくるのが表皮効果です。交流電流は導体の表面付近に偏って流れる性質があり、太い電線ほど中心部が使われにくくなります。せっかく太くしても、内側が遊んでしまうのですね。

その点、多導体は細い電線の集まりです。1本1本が細いので中心部までしっかり使われ、「太い1本」よりも導体を無駄なく活用できます。太さを分割してごまかす裏ワザは、ここでも効いています。

送電容量が増加する・表皮効果(メリット②)

🃏 暗記シート
Q. 電線に交流を流したとき、電流が導体の表面付近に偏って流れる現象を何というか?
💡 太い1本より細い複数本が有利

ステップ5:メリット③——インダクタンスは減り、静電容量は増える

この単元で最も取りこぼしが多いのが、ここです。LとCが逆向きに動くという一点を、腹に落としておきましょう。

逆向きに動く、が結論

項目多導体にすると覚え方の軸
インダクタンス L減少する等価半径が大きい=太い電線と同じ
静電容量 C増加する等価半径が大きい=太い電線と同じ

同じ「等価半径が大きくなる」という原因から出発しているのに、結果は片方が減り、片方が増える。だからこそ混乱するのですが、逆に言えば原因が1つなので、片方さえ覚えていればもう片方は「反対」で引き出せます

インダクタンスが減ると何が起きるか

送電線のリアクタンスは、次の形で効いてきます。

Lが小さくなれば、当然Xも小さくなります。線路のリアクタンスが小さくなるということは、

  • 電圧降下が小さくなる
  • 送れる電力(送電容量)が増える
  • 安定度の面でも有利になる

という良い連鎖が起きるわけです。「インダクタンス減少 → 送電容量の増加」という矢印は、そのまま試験で問われますから、この向きで頭に入れておいてください。

インダクタンス減少と静電容量増加(メリット③)

🃏 暗記シート
Q. 多導体方式にすると、送電線のインダクタンスと静電容量はそれぞれどうなるか?
💡 L は減り、C は増える

ステップ6:デメリット①——サブスパン振動

ここまで良い話が続きました。しかし試験は意地悪です。「多導体の欠点はどれか」という聞き方をしてきます。メリットしか覚えていないと、ここで一気に失点します。

多導体では、束ねた電線の間隔を保つためにスペーサという部品を一定間隔で取り付けます。このスペーサとスペーサの間の区間をサブスパンと呼び、ここで電線が風の影響を受けて振動する現象がサブスパン振動です。

単導体では起こりようのない、多導体だからこそ生まれた固有の問題——そう理解しておけば、選択肢の中から見つけやすくなります。

サブスパン振動が発生する(デメリット①)

🃏 暗記シート
Q. 多導体方式で、束ねた電線同士の間隔を保つために取り付けられる部品を何というか?

ステップ7:デメリット②——建設費が増える

もう一つは、きわめて現実的な話です。1相を4本にすれば、電線そのものが4倍必要になります。加えて、

増えるもの理由
電線の量1相あたりの本数がそのまま増える
スペーサ束ねた電線の間隔保持に必要
支持物(鉄塔)の強度重量・風圧が増すため頑丈にする必要がある

こうして建設費が増加します。技術的に優れていても、コストという壁は常について回るのですね。

だからこそ多導体は、コストをかけてでも大電力を送る価値がある超高圧の基幹送電線に採用され、配電レベルでは単導体のままなのです。この「使い分け」の感覚を持っておくと、丸暗記が生きた知識に変わります。

🃏 暗記シート
Q. 多導体方式の代表的なデメリットを2つ挙げよ。
💡 良いことずくめではない

ステップ8:現場ではこうなっている(おまけ)

試験には直接出ませんが、知っておくとイメージが定着します。

実際の超高圧送電線では、4導体・6導体まで採用されています。鉄塔を見上げたときに電線が何本も並んでいるあの独特の光景は、まさにこの多導体化の結果です。次に高圧送電線の下を通ることがあったら、ぜひ数えてみてください。「あ、これ4導体だ」と分かった瞬間、教科書の図が現実とつながります。

そして電線同士がスペーサで間隔を保たれているのは、風で電線同士がぶつかって傷つくのを防ぐためです。ただ束ねているのではなく、接触させないように束ねている——この一手間に、送電技術の細やかさが表れています。

🃏 暗記シート
Q. 超高圧の架空送電線で、鉄塔に電線が何本も並んで見えるのはなぜか?

まとめ

この単元は、覚える項目が多いように見えて、実は「等価半径が大きくなる」という原因から全部が枝分かれしているだけでした。

区分内容理由(すべて等価半径から)
構造1相を2本以上束ねる太い1本のフリをさせる
メリット①コロナ放電が起こりにくい表面の電界がゆるむ
メリット②送電容量が増える総断面積の増加+表皮効果に強い
メリット③L減少・C増加太い電線と同じ状態になる
デメリット①サブスパン振動スペーサ間で風により振動
デメリット②建設費の増加電線・スペーサ・鉄塔強度が増える

最後にもう一度だけ、この一文を。

多導体は、電線の“太さ”を分割でごまかす裏ワザ

この一文から表の6行が引き出せるようになれば、この単元はもう卒業です。図面の読み方が不安な方は単線図と複線図を「ホンモノ図とマトメ図」で攻略も合わせて確認しておくと、送電系統の問題全体に強くなれますよ。

⚠ ここを間違える人が多い

多導体は理屈が素直なぶん、逆向きの選択肢を混ぜられると途端に迷います。実際に失点しやすいポイントを3つだけ挙げます。

❌ 静電容量も減ると思ってしまう

❌ こう思いがち: インダクタンスが減るのだから、静電容量も一緒に減るだろう。

✅ 正しくは: Lは減り、Cは増えます。 動く向きが逆です。「等価半径が大きくなる」という同じ原因から出ているのに結果が反対なので、まとめて「減る」と覚えてしまうと、この一点だけで1問落とします。L減・C増とセットで唱えて、口に馴染ませてしまいましょう。

❌ 電線表面の電界が「強くなる」と考えてしまう

❌ こう思いがち: 電線を何本も束ねたのだから、電気が集まって表面の電界は強くなりそうだ。

✅ 正しくは: 等価半径が大きくなるので、電線表面の電位の傾きは小さく(ゆるく)なります。ここを逆に読むと、「コロナ放電が起こりにくい」という結論そのものが成り立たなくなってしまいます。太い電線ほど表面の電界はゆるい——この感覚を先に持っておくと、迷いません。

❌ 「電線が太くなる方式」と説明してしまう

❌ こう思いがち: 多導体=太い電線を使う方式。

✅ 正しくは: 使う電線は細いままです。太くなるのは実物ではなく見かけの半径だけ。ここを取り違えると、「表皮効果に強い」という利点の説明がつかなくなります(本当に太い1本なら、むしろ表皮効果には不利です)。細い電線を束ねて太いフリをさせる、が正確な言い方です。

過去問ではこう出た

多導体方式は、架空送電線路の分野で単独のテーマとして正面から問われるタイプの論説問題です。

年度問番号
平成30年問9

出題のされ方には、はっきりした型があります。5つの選択肢に多導体の特徴を並べ、そのうち1つだけを逆向きにして誤りを作る、という形式です。したがって対策は「特徴を知っている」だけでは足りず、一つひとつの向き(増えるのか減るのか、起こりやすいのか起こりにくいのか)まで即答できる状態を作ることに尽きます。

特に狙われやすいのは、この記事のステップ5で扱ったインダクタンスと静電容量の増減、そしてステップ3の電線表面の電界の向きです。逆にデメリット側(サブスパン振動・建設費増)は、知っていればすぐ判断がつくサービス問題になりやすい所ですから、確実に取りましょう。

論説問題は、読んで理解した気になっても、実際に選択肢を前にすると手が止まるものです。一度は本番と同じ形式で解いておくことをおすすめします。

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よくある質問

Q. 2導体・4導体・6導体は、どう使い分けているのですか?

おおまかには、送電電圧が高く、送る電力が大きいほど本数が増えるとお考えください。電圧が高くなるほど電線表面の電界が強くなり、コロナ放電の抑制がより厳しく求められるためです。試験では「4導体・6導体まで使われている」という事実を知っていれば十分で、電圧ごとの細かい本数の対応まで問われることはまずありません。まずは「超高圧では本数が多い」という感覚だけ持っておきましょう。

Q. スペーサはなぜ必要なのですか。ただ束ねておけばよいのでは?

束ねた電線は、風を受けると互いに近づいたり離れたりします。何もしなければ電線同士がぶつかり合い、表面に傷がついてしまいます。傷ついた箇所は電界が集中しやすくなり、せっかくコロナ対策として多導体にしたのに逆効果になりかねません。そこで一定間隔でスペーサを入れ、電線同士が接触しないように間隔を保持しているわけです。ただし、そのスペーサ間の区間で起きるのがサブスパン振動ですから、対策が新たな課題を生んでいるとも言えますね。

Q. メリットとデメリットが多すぎて覚えきれません。優先順位はありますか?

あります。まず「コロナ放電が起こりにくい」を最優先で押さえてください。これが多導体を採用する一番の動機であり、出題頻度も最も高い項目です。次に「Lが減ってCが増える」。ここは前述のとおり、逆向きの選択肢で狙われる定番です。デメリット2つは、名前さえ知っていれば選択肢を見た瞬間に判断できますから、暗記の負荷はそれほど高くありません。全部を平らに覚えようとせず、山を作って覚えるのがコツです。

送電の分野をひととおり固めたい方は、調相設備を「無効電力の調整役4兄弟」で攻略も同じ流れで読んでおくと、系統全体の話がつながって見えてきますよ。

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この記事を書いた人

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電験三種を含め、さまざまな資格を一発合格した経験をもとに、 忙しい社会人が最短距離で受かるための教材とYouTube解説を作っています。 暗記シート・講義ノートは累計2,000部を突破し、 多くの合格報告をいただいています。

保有資格

電気主任技術者電気工事士公害防止管理者放射線取扱主任者中学校・高等学校 教員免許
  • ⚡ 電験三種・電験二種の解説動画をYouTubeで公開中
  • 📚「勉強の過程」より「結果を重視」した教材の制作・販売
  • 🏋️ 過去問対策Webサービス「電験ジム」を開発・運営

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