線路定数を「送電線の生まれつきの体質」で攻略
電験三種「電力」科目の線路定数を、抵抗・インダクタンス・静電容量・漏れコンダクタンスの4つに分けて解説。導体としての性質2つ、絶縁体としての性質2つという2対2の分け方で丸暗記から抜け出し、D/rが大きいときLとCが逆に動く理由まで、電圧降下計算や故障計算の土台をまとめて整理します。
🎥 動画でも解説しています > YouTubeで開く
この記事で身につくこと
「線路定数」という言葉を初めて見たとき、多くの方がこう思います。
抵抗、インダクタンス、静電容量、漏れコンダクタンス……4つも覚えるのか。しかも漢字とカタカナが混ざっていて、どれがどれだか分からない。
その感覚は、まったく正常です。テキストではたいてい4つが横並びで淡々と説明されるので、頭の中でも4つが横並びのまま散らかってしまう。ここが線路定数を苦手に感じる最大の原因です。
ですが、線路定数は覚え方さえ変えれば、電力科目の中でもかなりラクな部類に入ります。理由は2つあります。
| ラクな理由 | 中身 |
|---|---|
| ① 4つがきれいに2対2で分かれる | 導体としての性質が2つ、絶縁体としての性質が2つ。バラバラの4つではなく「2つのペア」として覚えられる |
| ② 増える・減るの向きだけ問われる | 数値計算より「Dを広げるとLはどうなる?」という増減の向きを問う出題が中心。理屈が1本通れば全部答えられる |
この記事を読み終えるころには、次の状態になっています。
- 線路定数4つを、2対2の分類で迷わず言える
- 交流の抵抗が直流より大きくなる理由(表皮効果)を自分の言葉で説明できる
- 電線間距離Dを広げたとき、LとCが逆向きに動く理由が分かる
- 漏れコンダクタンスだけが「仲間外れ」である理由が腹落ちしている

暗記フレーズ:線路定数は送電線の「生まれつきの体質」
まず、この一文を頭に置いてください。
線路定数は送電線の「生まれつきの体質」。抵抗・インダクタンス・静電容量・漏れコンダクタンスの4つで決まる
「生まれつきの体質」というのが、この単元のいちばんの急所です。
線路定数は、その送電線をどう作ったか(電線の材質・太さ・本数・電線どうしの間隔・地上高)だけで決まります。あとから流す電圧を上げても、電流を増やしても、線路定数そのものはほとんど変わりません。身長や骨格が、その日の食事量で変わらないのと同じです。
この性質があるからこそ、線路定数は先に決めてしまえる。そして先に決まった値を土台にして、電圧降下の計算も、事故が起きたときの故障計算も組み立てられます。線路定数は、電力科目の計算問題の「土台の数値」なのだと思ってください。
ステップ1:4つを「2対2」に分けて、丸暗記から抜け出す

4つを横並びで覚えようとするから苦しいのです。次のように、性質のちがう2グループに切ってしまいましょう。
| グループ | 線路定数 | どんな顔をしているか |
|---|---|---|
| 導体としての性質 | 抵抗 R / 作用インダクタンス L | 電線が「電気を通す金属」であることから生まれる |
| 絶縁体としての性質 | 作用静電容量 C / 漏れコンダクタンス g | 電線のまわりの「空気やがいし」との関係から生まれる |
送電線は、金属の電線が空中に張られたものです。だから当然、金属としての顔と、まわりの空気・がいしとの関係で生まれる顔の両方を持っています。この2つの顔が、それぞれ2つずつの線路定数を連れてくる。ただそれだけの話です。
さらに、各グループの中も「電流が通る道の話」と「電流が漏れる/たまる話」で対になっています。
- 導体側:R=流れにくさ、L=磁界による流れの妨げ
- 絶縁体側:C=電荷がたまる、g=電流が漏れる
この骨組みさえ立てば、4つを思い出す順番が固定されます。試験本番で「あと1つ何だっけ」と止まることがなくなります。

ステップ2:抵抗R ── 交流だと「太さが目減りする」

電線の抵抗は、中学理科でおなじみの式で決まります。
(ρ:抵抗率、ℓ:長さ、A:断面積)長くなれば増え、太くすれば減る。ここは素直です。
交流では抵抗が「増える」
問題はここからです。送電線に流れるのは交流ですが、交流のときの実効抵抗は、同じ電線の直流抵抗より大きくなります。
原因は2つ。
| 現象 | 何が起きているか |
|---|---|
| 表皮効果 | 交流の変化する磁界に押されて、電流が導体の表面付近に集中する |
| 近接効果 | 近くにある他の電線の磁界の影響で、電流の分布がかたよる |
どちらも共通しているのは、電流が導体の断面全体を平等に使わなくなるという点です。太い電線を用意しても、真ん中があまり働かず、外側ばかりに電流が集中する。つまり、電流にとっての実質的な断面積Aが小さくなるわけです。
上の式で分母のAが小さくなれば、Rは大きくなります。「表面に寄る → 通り道が狭くなる → 抵抗は増える」。この3段の流れで覚えておけば、方向を取り違えません。
ステップ3:作用インダクタンスL ── 巨大な1ターンのコイル

インダクタンスと聞くと、細い線がぐるぐる巻かれたコイルを思い浮かべますよね。送電線はまっすぐ張られているのに、なぜインダクタンスがあるのか。ここでつまずく方が多いところです。
行きと帰りで「1周のループ」ができている
送電線は、行きの電線と帰りの電線(あるいは他相の電線)がペアで働いています。上から見れば、行きと帰りで細長い1周のループができている。これが「巻数1のとてつもなく大きいコイル」として働きます。
だからインダクタンスが生まれる。巻き数は1回でも、ループの面積が桁違いに大きいので、無視できない値になるのです。
決めるのは D/r の比
作用インダクタンスの大きさは、電線間の距離Dと、電線の半径rの比 D/r で決まります。三相の3線分をひとまとめにして、1線あたりに換算した値なので「作用」と付きます。
| Dやrをどうすると | D/r | 作用インダクタンスL |
|---|---|---|
| 電線どうしを離す(D↑) | 大きくなる | 大きくなる |
| 電線を太くする(r↑) | 小さくなる | 小さくなる |
イメージで言えば、離れているほどループの面積が広がり、磁束をたくさん抱え込むので、L は大きくなります。
ステップ4:作用静電容量C ── 対地と線間の足し算

電線は、まわりの空気を挟んで大地とも、となりの電線とも向かい合っています。向かい合った導体の間には静電容量ができるので、送電線には2種類の静電容量が同時に存在します。
| 種類 | どこにできるか |
|---|---|
| 対地静電容量 | 電線と大地の間 |
| 線間静電容量 | 電線と電線(他相)の間 |
この2つを合わせて、1線あたりに換算したものが作用静電容量です。三相の実際の回路は複雑ですが、計算では「1線あたりのCがこれだけある」とまとめて扱うわけですね。
この静電容量があるために、送電線は負荷をつないでいなくても電流が流れます。そこが気になる方は、先に充電電流を「無負荷でも生きている送電線」で攻略を読んでおくと、作用静電容量が何のために必要な値なのかがはっきりします。
ステップ5:D/r が大きいと、LとCは逆に動く

ここが線路定数でいちばん出題されやすく、いちばん取り違えやすいところです。
D/rが大きくなると、Lは大きく、Cは小さくなる。 同じD/rなのに、動く向きが逆になります。
なぜ逆になるのか
理屈は、それぞれの「気持ち」を考えると通ります。
| 定数 | 何を嫌がるか | D/r が大きい(遠い・細い)と |
|---|---|---|
| 作用インダクタンス L | ループが広いこと | ループが広く磁束を多く抱える → L は大きい |
| 作用静電容量 C | 相手が遠いこと | 向かい合う相手が遠く、面も狭い → C は小さい |
静電容量は、コンデンサを思い出せば納得できます。コンデンサは極板が近くて広いほど容量が大きい。送電線も同じで、電線どうしが近く(Dが小さい)、太い(rが大きい)ほど、たくさん電荷をためられます。
覚え方はこの一言
太くて近いと、貯めやすい(C↑)・じゃまされにくい(L↓)
「太くて近い」=D/rが小さい状態です。この一言だけ覚えておけば、試験本番で表を思い出せなくても、逆向きの関係を自力で復元できます。

ステップ6:漏れコンダクタンスg ── 4つの中の仲間外れ
最後の1つ、漏れコンダクタンスは、他の3つとは立ち位置がまるでちがいます。
どこから生まれるか
電線は、がいしで鉄塔から絶縁されています。ところが絶縁は完璧ではありません。
- がいし表面が汚れたり湿ったりして、わずかに電気が漏れる
- 電線まわりの空気が部分的に絶縁を失い、コロナ放電が起きる
この漏れ電流の流れやすさを表したのが漏れコンダクタンス g です。抵抗の逆数なので、単位はジーメンス [S] です。
がいしがどこにどう付いているのかがピンと来ない方は、送電鉄塔の構成を「守る部品の集合体」で攻略で全体像を先に見ておくと、この話が具体的な絵になります。
なぜ「仲間外れ」なのか
漏れコンダクタンスは、値がきわめて小さいため、通常の計算では無視されます。R・L・Cが計算の主役として堂々と登場するのに対して、gだけは「一応4つ目として名前は挙がるが、実務でも計算でもほぼ出番がない」という扱いです。
| 線路定数 | 計算での扱い |
|---|---|
| R・L・C | 電圧降下計算・故障計算で実際に使う |
| g | 値が小さく、通常は無視される |
試験では、この「4つ目として存在するが、普段は無視してよい」という位置づけそのものが問われます。無視されるからこそ、名前を覚えておく価値があると考えてください。
ステップ7:多導体にすると、なぜLが下がるのか
実際の高電圧の送電線では、1相を1本ではなく、数本の電線を束ねて張る方式がとられます。これが多導体方式です。
多導体にすると、作用インダクタンスは単導体より小さくなります。理由はステップ5の話がそのまま使えます。
数本を束ねると、電気的には「1本の太い電線」とみなせるようになり、見かけの半径=等価半径が大きくなります。rが大きくなればD/rは小さくなる。D/rが小さければ、Lは小さくなる。それだけの筋道です。
この発想は、あとで学ぶコロナ放電の対策にもそのまま使われます。仕組みをもう一段くわしく知りたい方は、多導体方式を「太さを分割でごまかす裏ワザ」で攻略を読んでおくと、線路定数と対策技術が1本の線でつながります。
まとめ
線路定数の全体像を、1つの表に戻しておきます。
| 線路定数 | グループ | 押さえどころ |
|---|---|---|
| 抵抗 R | 導体 | 交流では表皮効果・近接効果で、直流より大きくなる |
| 作用インダクタンス L | 導体 | D/rが大きいほど大きい。多導体で小さくなる |
| 作用静電容量 C | 絶縁体 | 対地+線間。D/rが大きいほど小さい |
| 漏れコンダクタンス g | 絶縁体 | がいし・コロナ由来。通常は無視される |
そして、この単元を貫く一言はこれです。
線路定数は送電線の「生まれつきの体質」。電圧や電流の大きさではなく、電線の種類と配置で決まる
4つを横並びで丸暗記しようとすると苦しいのに、2対2に切って、D/rという1本の軸を通した瞬間、急に見通しがよくなる。線路定数は、そういう単元です。
⚠ ここを間違える人が多い
この単元で失点する形は、だいたい決まっています。「知らなかった」ではなく「向きを逆に覚えていた」で落とすタイプです。
❌ 交流の抵抗は、直流より小さくなると思ってしまう
✅ 正しくは、交流の実効抵抗のほうが大きくなります。
「表皮効果で電流が表面を通るなら、通りやすくなるのでは」と考えてしまうのが落とし穴です。実際は逆で、電流が使える断面積が実質的に減るので、抵抗は増える方向に動きます。太い電線の中心部が働かなくなる絵をひとつ持っておくと、この向きを間違えません。選択肢に「小さくなる」と書かれていたら、その時点で誤りだと判断できます。
❌ D/rが大きいと、Cも大きくなると思ってしまう
✅ 正しくは、D/rが大きいとCは小さくなります。
Lと同じ向きに動くと思い込むのが、この単元で最も多い取り違えです。Lは「ループが広いほど大きい」、Cは「相手が近くて広いほど大きい」。着目している相手がちがうから、向きが逆になるわけです。穴埋め問題で「(ウ)は大きくなる」と埋めてしまい、正解の1つ手前の選択肢を選ぶ──という失点がよく起こります。「太くて近いと貯めやすい」の一言に立ち返ってください。
❌ 漏れコンダクタンスの名前を、似た用語と混同してしまう
✅ 正しい名称は「漏れコンダクタンス」です。
コンダクタンスという言葉自体が耳慣れないため、別の「〜コンダクタンス」と取り違える方がいます。がいし表面やコロナ放電から電気が「漏れる」流れやすさ、という中身とセットで覚えておけば、名前だけを暗記するより確実です。
過去問ではこう出た
線路定数は、電力科目でくり返し問われている定番テーマです。近年では次のような出題があります。
| 年度 | 問番号 |
|---|---|
| 令和5年 上期 | 問10 |
| 令和2年 | 問10 |
出題の形は、計算よりも知識の正誤判定・穴埋めが中心です。「交流の実効抵抗は直流より大きいか小さいか」「D/rが大きくなるとLとCはどちらに動くか」「漏れコンダクタンスは何に由来するか」といった、この記事で扱った向き・由来がそのまま問われます。
問番号が同じ「問10」で並んでいることからも分かるとおり、電力科目の前半で確実に得点しておきたい位置にある単元です。逆に言えば、2対2の分類とD/rの向きさえ固めておけば、その場の思いつきに頼らず確実に1問取れるところでもあります。
よくある質問
Q. 線路定数は、電圧が高くなれば変わるのではないですか?
ほとんど変わりません。線路定数は、電線の材質・太さ・本数・電線どうしの間隔・地上高といった設備の作りだけで決まる値だからです。
だからこそ、線路定数を先に決めてしまって、そのあとに「この電圧・この電流を流したらどれだけ電圧が下がるか」「事故時にどれだけの電流が流れるか」を計算できます。順番が逆にならない点が、この単元の便利なところです。
Q. 「作用」インダクタンス・「作用」静電容量の「作用」とは何ですか?
三相の3本の電線が互いに影響し合った結果を、1線あたりの値としてまとめ直したもの、という意味だと捉えてください。
実際の送電線では、3本の電線が同時に磁界をつくり、同時に静電容量をつくっています。それを1本ずつバラバラに扱うと計算が煩雑になるので、「1線あたりに換算すればこの値」とまとめる。この換算後の値が作用インダクタンス・作用静電容量です。作用静電容量が対地静電容量と線間静電容量の合成になっているのも、同じ理由です。
Q. 漏れコンダクタンスは無視してよいなら、覚えなくてもいいのでは?
計算では出番がありませんが、試験では名前と由来が問われます。
線路定数を問う設問は、多くが「4つのうちどれかについて説明した文が正しいか」を判定させる形です。漏れコンダクタンスを知らないと、その文が正しいのか誤りなのか判断できません。「4つ目として存在する」「がいし表面の絶縁低下やコロナ放電による漏れ電流に由来する」「値が小さいので普段は無視する」──この3点だけ押さえておけば十分です。無視される定数だからこそ、覚えるコストも小さくて済みます。
Webの何倍も覚えやすい
紙のフルラミネート加工の
暗記シートがあります
実績2,000部突破。
お風呂や電車のスキマ時間でサクッと勉強できます。
付属の練習用紙で無限に練習できます♪

🛒関連教材ショーケース
学習の効率を上げる、紙の本格教材ラインナップ。


この記事を読み終えたら、進捗を記録しましょう




