三相同期発電機の原理を「磁石グルグル・三相ビリビリ」で攻略する
電験三種「機械」科目の三相同期発電機を解説。同期速度 Ns=120f/p と起電力 E=4.44fNΦkw の2つの公式を、「磁石を回して三相交流を起こす」という一枚の絵から導きます。「同期」の意味、突極形と円筒形の違い、極数が増えると速度が下がる理屈まで、苦手意識を持つ方でも計算問題で確実に得点できる形に整理します。
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「三相同期発電機」。名前が長いだけで、もうページを閉じたくなる——そんな気持ち、よく分かります。
でも安心してください。この機械、中身は驚くほどシンプルです。磁石を回す。周りのコイルが反応する。本当にそれだけなんですよ。発電所にある巨大な機械も、原理はまったく同じ。大きさが違うだけです。
この記事では、その「磁石が回るだけ」というイメージを最初に手に入れてから、公式へ進みます。イメージが先、公式は後。この順番を守るだけで、機械科目の同期機はぐっと近づいてきます。
この記事で身につくこと
| つまずきの壁 | この記事を読んだあと |
|---|---|
| 「同期」って結局なに? | 回転磁界と回転子がぴったり一致=すべりゼロ、と説明できる |
| 極数pが増えるとなぜ遅くなる? | 「極が多いほど1回転で多く刻める」から、と図で説明できる |
| E=4.44fNΦkw が呪文にしか見えない | 記号1つずつの意味が分かり、kwの扱いも迷わない |
| 突極形と円筒形の使い分けが覚えられない | 形→速度→原動機の順に、理屈でつながって思い出せる |

多くの受験生がつまずくのは、この3つの壁です。逆にいえば、ここさえ越えてしまえば同期機の入口は突破できます。しかも、越えるための道具はたった2行しかありません。
暗記フレーズ:磁石がグルグル、三相がビリビリ。速さは120f/p、いに零を付けたら速い!

この2行が、今日の記事のすべてです。役割がはっきり分かれているのがポイントです。
| フレーズ | 担当している内容 |
|---|---|
| 磁石がグルグル、三相がビリビリ | 原理(なぜ三相交流ができるのか) |
| 速さは120f/p、いに零を付けたら速い! | 計算(同期速度Nsの公式) |
「いに零」は 1・2・0 で 120。それを付けたら「速い」=Nsが出てくる、という語呂です。数字の並びを言葉にしているだけなので、忘れにくいはずです。
問題を見たときに「これは原理の話か、計算の話か」をまず仕分ける。それだけで、手が止まる時間が激減します。
ステップ①:磁石の回転で三相交流ができる

三相同期発電機で電気が生まれるまでは、たった3ステップです。
- 中心の磁石(回転子)を回す … 水車や蒸気タービンが外から力を加えます
- 周囲の固定子コイルが磁束を切る … 磁束を切れば起電力が生まれる(フレミングの右手の法則)
- 120°(2π/3ラジアン)ずつずれた対称三相交流が発生する
注目してほしいのは、②が完全に既習事項だということです。磁束を切ると電圧が出る——これは電磁誘導そのもので、新しい原理は一切登場していません。
そして③の「三相」の正体も、拍子抜けするほど素直です。コイルが3組、120°ずつ離して置いてあるから、発生する波も120°ずつずれる。場所がずれているから波がずれる。それだけなんですよ。
「磁石がグルグル」=①と②。「三相がビリビリ」=③。フレーズの1行目は、この3ステップを丸ごと持ち歩いているわけです。
ステップ②:「同期」とは、すべりがゼロということ

壁①の答えから行きましょう。同期とは、回転子が回転磁界とピッタリ同じ速さで回ることです。歯車がかみ合っているように、ズレない・すべらない。
誘導機とは性格が正反対
同じ「回る機械」でも、誘導機と同期機は正反対の性格をしています。
| 誘導機 | 同期機 | |
|---|---|---|
| すべり | ある(差がないと動けない) | ない(常に同期速度) |
| 回転子 | 磁界との速度差で電流を誘導 | 回転子自身が磁石 |
| 回転速度 | 負荷で変わる | 負荷が変わっても一定 |
理由はシンプルです。誘導機は磁界との速度差から電流を作るので、差がゼロになると力が出せません。一方の同期機は、回転子自身が磁石なので、回転磁界に引っ張られてぴったり付いていけるのです。磁石同士がくっついたまま一緒に回っている、というイメージがそのまま正解です。
すべりの有無は試験でもよく問われる見分けポイントです。すべりの定義そのものが怪しい人は、先に誘導機のすべりsを「同期にどれだけ遅れているかの割合」で攻略を読んでおくと、この対比が一気にクリアになります。
ステップ③:突極形と円筒形は「形→速度→用途」で並ぶ

回転子の形は2種類。違いは極の形だけですが、そこから性質がすべて決まります。
| 突極形 | 円筒形 | |
|---|---|---|
| 見た目 | キノコみたいに飛び出している | ツルッとした円筒 |
| 速度 | 低速(遠心力に弱い) | 高速(遠心力に強い) |
| 原動機 | 水車(水力発電) | 蒸気タービン(火力・原子力) |
出っ張りがあれば、そこに遠心力がかかる。だから高速回転には向かない。丸ければ強い。形から性質が決まる、とても素直な話です。
さらに一段深く見ると、形の違いは回転速度の違いから来ています。水力発電は落差と水量で回すので、どうしても回転はゆっくりになります。ゆっくり回して同じ50Hzを作るには極数を増やすしかなく、その結果として突極形が選ばれる——という流れです。
つまり「水車は遅い → 極数を多くする → 突極形になる」。この因果の向きを押さえておくと、丸暗記が不要になります(この向きを逆にすると失点するので要注意。後述します)。
ステップ④:同期速度の公式 Ns=120f/p

フレーズの2行目、計算の担当です。
- :周波数[Hz]
- :極数
覚えるべきは「いに零=120」だけ。fとpの位置は、意味から考えれば迷いません。
| 記号 | 増えるとどうなるか | だから式のどこ? |
|---|---|---|
| 周波数 f | 速く回る | 分子 |
| 極数 p | 遅くてよい | 分母 |
増えると速くなるものは分子、増えると遅くなるものは分母。この一言で、式の形は自力で組み立てられます。丸暗記より、はるかに崩れにくい覚え方です。
なお、この式は発電機だけでなく同期電動機でもそのまま使えます。電気で回すか力で回すかの違いだけで、速度の決まり方は同じだからです。1つ覚えれば両方に効く、お得な公式です。
ステップ⑤:極数が増えるとなぜ遅くなるのか(最大の罠)

ここが今日いちばん気持ちいいところです。図で一発で分かります。
| 極数 | 1回転あたりのサイクル数 |
|---|---|
| 2極 | 1回転で 1サイクル |
| 4極 | 半回転で1サイクル = 1回転で 2サイクル |
2極はN極とS極が1組しかないので、1周で1往復ぶんの変化です。4極は極が2組あるので、1周する間にN極とS極が2回ずつ通り過ぎる。通り過ぎる回数が増えるから、波も増える。
ここから結論が出ます。
極が多いほど、1回転で多くのサイクルを刻む。 だから、同じ周波数(50Hzなど)を作るなら、極が多いほどゆっくり回せばいい!
作りたい波の数(周波数)は決まっているのです。たくさん刻める機械なら、その分ゆっくりでいい。これが、分母にpがある理由です。
一度この図が腑に落ちれば、 はもう忘れられない式になります。
ステップ⑥:極ピッチτは「距離で見た同じ話」

極ピッチ τ(タウ) とは、回転磁極のN極の中心からS極の中心までの距離[m]のことです。
| 磁極の移動距離 | 波形の変化 |
|---|---|
| τ[m] | 半サイクル |
| 2τ[m] | 1サイクル |
N極からS極まで動けば波は半分進み、その倍動けば1サイクルぶん。——お気づきでしょうか。これ、ステップ⑤とまったく同じ理屈です。回転数で見るか、距離で見るかの違いしかありません。
試験では、この極ピッチを使って周波数を求める問題も出ます。そのときも「2τで1サイクル」の一点だけ思い出せば対応できます。1つの理屈が、いろいろな聞かれ方に化けているだけなのです。
ステップ⑦:呪文 E=4.44fNΦkw の正体
壁③の公式です。1相ぶんの誘導起電力を表します。
呪文に見えるのは、記号の意味を知らないからです。1つずつ見れば、全部「そりゃそうだ」という内容しかありません。
| 記号 | 意味 | 直感 |
|---|---|---|
| 4.44 | 定数 | 実効値に直すときの係数から出る数字。導出は問われないので気にしなくてOK |
| f | 周波数 | 速く変化するほど電圧が高い |
| N | 1相あたりの巻数 | たくさん巻けば電圧が上がる |
| Φ | 1極あたりの磁束 | 強い磁石ほど大きな電圧 |
| kw | 巻線係数 | 実装上のロスによる補正(次の節) |
f・N・Φは、どれも感覚と一致していますよね。電圧を上げたければ「速く回す」「たくさん巻く」「強い磁石にする」。ただそれだけの式なのです。
なお、この式に出てくる「1相あたりの巻数N」や「1極あたりの磁束Φ」がどこの部品を指しているのかピンと来ない場合は、同期発電機の構造を「固定が電機子・回転が磁極」で直流機との違いごと攻略で部品の配置を確認しておくと、式の見え方が変わります。
ステップ⑧:巻線係数kwは「1より小さい」だけでいい
巻線係数kwは、コイルを実際に巻くときの実装上のロス(補正係数) です。中身は「短節巻係数 × 分布巻係数」ですが、電験三種では名前だけで構いません。
ロスが出る理由も一言で済みます。コイルは1か所にまとめず、少しずつ位置をずらして巻きます。位置がずれると発生する電圧のタイミングもわずかにずれるので、合計すると理想よりわずかに小さくなる——それだけです。
| 電験三種での鉄則 |
|---|
| kw ≦ 1(1より大きくならない)とだけ覚える |
| 計算問題では無視され、kw=1(理想状態)とされることも多い |
要は効率だと思えばOKです。効率が100%を超えないのと同じで、kwが1を超えることはありません。
試験で問われないところに時間をかけるのは、もったいない話です。kwは「1以下の補正」とだけ押さえて、公式全体の意味に力を注ぎましょう。割り切りも立派な戦略です。
ステップ⑨:実戦クイズで公式を使ってみる
問題:ある三相同期発電機がある。発生する交流の周波数が50Hz、同期速度が1500 min⁻¹のとき、この発電機の極数pはいくつか。
ヒントは、もちろん「いに零を付けたら速い」。公式さえ出てくれば、あとは式変形だけです。
解答:4極
| 手順 | 式 |
|---|---|
| ① 式を変形する | |
| ② 数値を代入する | |
| ③ 計算する |
きれいに割り切れました。電験の問題は、こうした整った数字になるように作られていることが多いです。割り切れないときは計算ミスを疑う——これは実戦で効く検算のきっかけになります。
現場の豆知識:その1500 min⁻¹は実在の数字
いま計算した「50Hz・4極・1500 min⁻¹」というスペック、実は東日本の火力発電タービンの標準的な回転数です。練習用の数字ではなく、本物なんですよ。60Hz地域なら1800 min⁻¹になります。周波数が上がれば回転数も上がる。公式のとおりです。
そして、毎分1500回転もの猛スピードで回るのですから、当然その回転子は円筒形。ステップ③の表がそのまま現場に出てきます。一方の水力発電は極数が多いぶん回転数がずっと低く、毎分100回転台のものもあります。同じ発電機でも、原動機によってこれだけ姿が変わる。ここが機械科目の面白いところです。
まとめ
| 覚えること | 内容 |
|---|---|
| 同期速度 | (pが分母なのは「極が多いと1回転で多く刻める」から) |
| 誘導起電力 | (記号は全部、意味のある量) |
| 回転子の形 | 突極形=水力・低速/円筒形=火力・高速 |
| 巻線係数 | kw ≦ 1。計算では1とされることも多い |
そして迷ったら、この2行に戻ってください。
磁石がグルグル、三相がビリビリ。 速さは120f/p、いに零を付けたら速い!
最初は名前だけで難しそうに見えた三相同期発電機も、「磁石が回るだけ」というイメージを先に持てば、公式は後から意味を持って付いてきます。イメージが先、公式は後。この順番こそ、今日いちばん持って帰ってほしいものです。
⚠ ここを間違える人が多い
同期機は、理屈が分かっていても設問の条件を取り違えて落とすタイプの失点が多い単元です。特に多い3つを挙げます。
❌ 因果を逆に覚える → ✅「原動機の速度が先、極数は結果」
❌「水車発電機は極数が多いから、回転が遅い」 ✅「水車は落差と水量で回すのでもともと遅い。その遅い速度で50Hzを作るために極数を多くする」
原因は原動機の側にあります。この向きを逆にすると、突極形・円筒形と回転速度を組み合わせた正誤問題で、まとめて外します。ついでに、タービン発電機は高速回転の遠心力に耐えるため直径を小さく(細長く)するという点もセットで押さえておくと、選択肢の切り分けが速くなります。
❌ 三相なのに√3を忘れる → ✅ 定格電流は必ず
三相機の定格容量S[V·A]と線間電圧V[V]から定格電流を出すとき、うっかり で計算してしまう人が本当に多いです。√3を忘れると、答えは約1.7倍にふくらみます。しかもその誤答がきちんと選択肢に用意されているので、計算した本人は間違いに気づけません。三相と書いてあったら、反射的に√3を書く癖をつけてください。線間電圧を相電圧に直す場面でも同じです。
❌ 問題文の条件と与えられた条件を混同 → ✅ 何の値のときの話かを毎回確認
短絡試験のデータが「界磁電流100 Aのときの短絡電流」で与えられているのに、問われているのは「界磁電流500 Aのとき」——といった具合に、条件がずらしてある出題は定番です。与えられた数値をそのまま答えにすると誤答の選択肢に一直線。数値を書き写す前に「これは何の条件のときの値か」を確認するだけで防げます。
過去問ではこう出た
三相同期発電機の原理は、ほぼ毎年どこかで顔を出す最重要テーマです。テーマで照合したところ、以下の年度で出題実績があります(電験ジムの収録範囲で該当37問)。
| 年度 | 問番号 |
|---|---|
| 令和7年下期 | 問6 |
| 令和7年上期 | 問6 |
| 令和6年下期 | 問5・問6・問15 |
| 令和5年上期 | 問5・問6 |
| 令和4年下期 | 問5 |
問5・問6という同期機の定位置に加え、令和6年下期は問15(B問題)にも登場しています。傾向としては、① を使った回転速度・極数・周波数の相互変換、②突極形/円筒形と原動機・回転速度の組み合わせを問う正誤問題、③起電力や定格電流の計算、の3系統に整理できます。どれも本記事で扱った内容そのままなので、あとは手を動かして反応速度を上げるだけです。
よくある質問
Q. 同期発電機は、なぜ回転子側を磁石にして、コイルを外側(固定子)に置くのですか?
大電流が流れる電機子巻線を動かさずに済ませるためです。回転する部分から大電流を取り出すには、大がかりなブラシや整流子が必要になり、損耗も発熱も増えます。一方、磁界を作る界磁側は比較的小さな電流で足りるので、回転側に回してしまったほうが構造が楽なのです。この「固定が電機子・回転が磁極」という配置は直流機とちょうど逆で、混同しやすいポイントでもあります。
Q. 三相にする意味は何ですか? 単相ではダメなのでしょうか?
原理だけなら単相でも発電はできます。ただ、コイルを3組120°ずつ配置すると、送電効率や回転磁界の作りやすさの面で有利になるため、実用機はほぼ三相です。学習上大事なのは、三相という言葉に身構えないこと。やっていることは「同じ発電を3組ぶん、位置をずらして並べただけ」であり、1組ぶん(1相)の理屈が分かれば残りは同じです。E=4.44fNΦkw が1相あたりの式になっているのも、そのためです。
Q. 誘導電動機と同期機、どちらから勉強するのが得ですか?
学習順としては誘導機を先に触れておくと、「すべりがある機械」との対比で同期機の特徴が立体的に見えてきます。逆に、誘導機の始動特性などで詰まっている場合は、そちらを片付けてから戻ってくるほうが結果的に速いです。回転子の構造で工夫する話に苦手意識があるなら、特殊かご形誘導電動機を「始動は外・運転は内」で攻略するを挟んでおくと、「回転子の形が性能を決める」という同じ発想が二度出てくるので、両方まとめて腹落ちします。
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