同期発電機のベクトル図と三相短絡曲線を「引き算の電圧・ほぼ比例の直線」で攻略
電験三種「機械」科目の三相同期発電機のベクトル図と三相短絡曲線を解説。無負荷誘導起電力Eから電圧降下を引くと端子電圧Vになるという「引き算」の関係をキルヒホッフの電圧則として捉え直し、電機子反作用リアクタンスxaと漏れリアクタンスxl、同期リアクタンスxsの違いを整理。短絡曲線が直線になる理由まで、計算問題で得点できる形でまとめます。
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この記事で身につくこと
同期発電機の単元に入ると、突然こんな記号が並び始めます。E、V、ra、xa、xl、xs、Zs、If、Is……。しかもそれがベクトル図という斜めの矢印だらけの図に落とし込まれる。ここで「もう無理だ」とページを閉じてしまう方が本当に多いところです。
でも、安心してください。この単元でやっていることは、実はたった2つだけです。
ひとつめは、発電機の中で作られた電圧から、じゃまモノによる電圧降下を引き算すると、外に出てくる電圧になる、というだけの話。ふたつめは、端子をショートさせて界磁電流を増やしていくと、短絡電流がほぼ比例して増える、というだけの話です。

記号が多く見えるのは、じゃまモノの正体を細かく分けて名前を付けているからにすぎません。そこさえ整理できれば、ベクトル図は中学校で習った三角形の話に戻りますし、短絡曲線は「ほぼ直線」というだけのグラフに戻ります。
この記事を読み終える頃には、次の3つができるようになっています。
- E・V・電圧降下の関係を、キルヒホッフの電圧則として説明できる
- xa と xl の違いを言葉で説明でき、xs としてまとめられる
- 「短絡曲線」なのに直線になる理由を、根拠つきで答えられる
暗記フレーズ:同期発電機は引き算の電圧、短絡曲線はほぼ比例の直線
このフレーズだけは、声に出して覚えてしまってください。
同期発電機は引き算の電圧、短絡曲線はほぼ比例の直線
前半の「引き算の電圧」は、内部で作った E から電圧降下を引いたものが端子電圧 V になる、というベクトル図の本質。後半の「ほぼ比例の直線」は、三相短絡曲線がなぜか直線になる、というグラフの本質です。この2つが、この単元の全部です。
ステップ1:発電のスタート地点は「無負荷誘導起電力E」
まず、話の出発点をはっきりさせます。

同期発電機は、磁極が回ることで電機子巻線に電圧を発生させます。このとき、まだ負荷を何もつないでいない状態で発生している電圧が、無負荷誘導起電力 E です。内部誘導起電力と呼ばれることもあります。
ここが大事なところで、E は「発電機の内部で作られている、まだ手つかずの電圧」です。私たちが端子で測れる電圧 V ではありません。E から何かが引かれて、残ったものが V になります。
なぜ引かれるのか。負荷をつなぐと電機子巻線に電流 I が流れるからです。電流が流れると、巻線の抵抗やリアクタンスによって、内部で電圧が食われてしまう。この「食われるぶん」が電圧降下です。
回転する磁極が電機子に電圧を起こす、という土台のところが怪しいなと感じたら、先に三相同期発電機の原理を「磁石グルグル・三相ビリビリ」で攻略するを読んでおくと、ここからの話が一気に軽くなります。
ステップ2:じゃまモノ①「電機子反作用リアクタンスxa」
さて、電圧を食うじゃまモノを分解していきます。1つめは電機子反作用によるものです。

電機子巻線に電流が流れると、その電流自身が磁束を作ります。この磁束が、磁極が作っている主磁束に横やりを入れる。これが電機子反作用です。
遅れ力率のときは主磁束を弱める方向(減磁作用)に、進み力率のときは強める方向(増磁作用)に働きます。つまり電機子反作用は、主磁束そのものに影響を与えるのが特徴です。
この「主磁束を増減させて、結果として電圧が変わる」という現象を、いちいち磁束の話として扱うのは面倒です。そこで、電流に比例して電圧が変わるのだからリアクタンスとみなしてしまおうという発想で置き換えたものが、電機子反作用リアクタンス xa です。
この増磁・減磁の向きの話は、そのまま等価回路の理解につながります。ここが不安なら三相同期発電機の等価回路を「抵抗はナナメ・遅れは弱める・進みは強める」で攻略で先に固めておくと、このあとのベクトル図がぐっと描きやすくなります。
ステップ3:じゃまモノ②「漏れリアクタンスxl」
2つめのじゃまモノは、もっと素朴なものです。

電機子巻線に電流が流れると、その周りには磁束ができます。そのうち、きちんと鉄心を通って主磁束と関わるものもあれば、巻線のはしっこや空気中をショートカットして漏れていくものもあります。この後者が漏れ磁束です。
漏れ磁束は主磁束と関わらないので、増磁も減磁もしません。ただ、電流が変化すれば漏れ磁束も変化し、その変化がまた電圧を生む。だからリアクタンスとしての性質は持ちます。これが漏れリアクタンス xl です。
ここが多くの方の混乱ポイントなので、対比で覚えてください。
| 記号 | 名前 | 主磁束への影響 | イメージ |
|---|---|---|---|
| xa | 電機子反作用リアクタンス | あり(増磁・減磁) | 主磁束に横やりを入れる |
| xl | 漏れリアクタンス | なし | はしっこから漏れるだけ |
「xa は主磁束に手を出す、xl は主磁束に手を出さない」。この一行だけ覚えておけば、試験で問われても迷いません。
ステップ4:2つを足して「同期リアクタンスxs」と「同期インピーダンスZs」
ここまで来れば、あとはまとめるだけです。

xa と xl は、原因は違いますが、どちらも「電流に比例して電圧を食う」という点では同じ働きをします。だったら分けておく必要はありません。足して1つにしてしまいます。
これが同期リアクタンス xs です。さらに、電機子巻線には抵抗 ra もありますから、これも合わせて1つのインピーダンスにまとめます。
これが同期インピーダンス Zs です。試験問題では、この Zs(あるいは xs だけ)が最初から与えられていることがほとんどです。つまり実際の計算では xa と xl を分けて使う場面はほぼない。分けて説明されるのは、あくまで「中身はこうなっている」という理屈の話だからです。
ここに気づくと、記号の多さに対する恐怖感がかなり減ります。計算で使うのは ra と xs の2つだけ。xa と xl は、言葉で説明できれば十分なのです。
ステップ5:ベクトル図は「キルヒホッフの電圧則」そのもの
いよいよベクトル図です。ここが一番こわがられる場所ですが、正体を知れば拍子抜けします。

発電機の中で作られた E から、抵抗による電圧降下と、同期リアクタンスによる電圧降下を引いたものが、端子に出てくる V です。式にすると、
これ、よく見てください。キルヒホッフの電圧則そのままです。「一周すると電圧の合計は等しい」という、理論科目でさんざんやったあの法則。目新しいことは何ひとつありません。
違うのは、交流なのでそれぞれの電圧の向きがバラバラだ、という点だけです。だから普通の足し算ではなく、矢印をつないでいく足し算=ベクトル図になります。
矢印のつなぎ方には決まりがあります。
| 項 | 電流 İ に対する向き |
|---|---|
| (抵抗ぶん) | İ と同じ向き |
| (リアクタンスぶん) | İ より90°進んだ向き |
この2つのルールだけで図は描けます。V の矢印を描き、その先端から İ と同じ向きに raI を継ぎ足し、さらにその先端から90°回して jxsI を継ぎ足す。最後にスタート地点から終点まで一本引けば、それが E です。
つまりベクトル図とは、引き算の関係を、矢印の足し算として絵にしただけのもの。E がゴールで、V がスタート。そう思って描けば、もう迷いません。
ステップ6:三相短絡曲線とは何か
後半戦です。今度はグラフの話に移ります。

三相短絡曲線とは、発電機の端子を三相とも短絡(ショート)させた状態で、界磁電流 If を増やしていったとき、短絡電流 Is がどう変わるかを描いたグラフです。
端子を短絡しているので、端子電圧 V はゼロです。すると先ほどの式は、
というシンプルな形になります。内部で作った電圧が、まるごと内部インピーダンスにかかっている状態ですね。
界磁電流 If を増やせば磁束が増え、E が増えます。E が増えれば Is も増えます。だから右上がりのグラフになる——ここまでは自然に納得できるはずです。
問題は、そのグラフの形です。
ステップ7:「曲線」なのに直線になる理由
ここが、この単元で一番よく聞かれる質問です。「短絡曲線という名前なのに、教科書の図は直線じゃないか」と。

理由は2段構えです。
1つめ。短絡時は同期リアクタンスが支配的になる。 端子を短絡すると、電流を制限するものは内部の Zs しかありません。しかも Zs の中身はほとんどが xs です(ra は非常に小さい)。純リアクタンスに近い回路になるので、電流はほぼ90°遅れになります。
2つめ。遅れ電流は減磁作用を持つ。 ステップ2で見たとおり、遅れ力率の電機子電流は主磁束を弱める向きに働きます。短絡時はほぼ完全な遅れ電流なので、減磁作用がめいっぱい効く。
その結果どうなるか。界磁電流を増やして磁束を増やそうとしても、電機子反作用がそれを打ち消してしまうので、鉄心の中の磁束はなかなか増えません。つまり、鉄心が磁気飽和する領域まで到達しない。
無負荷飽和曲線が途中から寝てくるのは、鉄心が飽和して磁束が増えにくくなるからでした。短絡曲線ではその飽和が起きないので、最後まで比例関係が保たれ、まっすぐな直線になるわけです。
「曲線」という名前は、グラフの一般名としてそう呼んでいるだけ。実体は直線です。試験でこの理由を問われたら、「減磁作用が強く働き、鉄心が飽和しないため」と答えれば正解です。
同期発電機の構造そのもの、特に界磁と電機子のどちらが回るのかがあやふやだと、この減磁作用の説明が頭に入りにくくなります。その場合は同期発電機の構造を「固定が電機子・回転が磁極」で直流機との違いごと攻略を先に確認してみてください。
ステップ8:実務ではこう使われている
試験には直接出ませんが、知っておくとこの単元がぐっと身近になる話です。

三相短絡曲線は、単独で使うものではありません。無負荷飽和曲線とセットで使うことで、同期インピーダンスを実測できるのです。だから発電機メーカーが出す試験成績書には、この2本のグラフが必ずと言っていいほど載っています。
ただし、実機で端子を本当に短絡すると、とんでもない大電流が流れます。そのため、この試験は工場出荷前の限定的な条件下でしか行われない特殊な測定です。現場で気軽にやる試験ではありません。
「教科書の中だけの話」に見えていたグラフが、実は出荷検査の成績書に載っている実用的なデータだった、と知ると、覚える気持ちも少し変わってくるのではないでしょうか。
まとめ
長い記号の列に見えたこの単元も、整理してしまえば次の一枚に収まります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| スタート地点 | 無負荷誘導起電力 E(内部で作られた、まだ手つかずの電圧) |
| じゃまモノ① | xa:電機子反作用リアクタンス。主磁束に影響する(増磁・減磁) |
| じゃまモノ② | xl:漏れリアクタンス。主磁束に影響しない(はしっこの漏れ) |
| まとめると | 、 |
| ベクトル図 | =キルヒホッフの電圧則 |
| 三相短絡曲線 | 界磁電流 If と短絡電流 Is の関係。ほぼ直線 |
| 直線になる理由 | 減磁作用が強く働き、鉄心が磁気飽和しないから |
そして、覚えるフレーズはこれだけです。
同期発電機は引き算の電圧、短絡曲線はほぼ比例の直線
記号の数に圧倒されていた方も、「引き算」と「直線」の2語に還元できると分かれば、もう手が止まらないはずです。
⚠ ここを間違える人が多い
この単元は、覚え方をひとつ間違えると本番でごっそり失点します。特に多い3つを挙げます。
❌ 発電機の式のまま電動機のベクトル図を描いてしまう
同期機はベクトル図が発電機と電動機で符号が逆になります。発電機は 、つまり E のほうが大きくなる向き。ところが電動機は で、V のほうが大きくなる向きです。
✅ 「発電機は E が親分、電動機は V が親分」と覚えてください。発電機は自分で電圧を作って外へ出すので E が上位。電動機は外から電圧をもらって回るので V が上位。問題文が電動機なのに発電機の式で描くと、jxsI の向きが逆になり、遅れ力率なのに E が V より大きい図を選んでしまいます。選択肢に「それっぽい図」が必ず混ざっているので要注意です。
❌ 力率角φを、そのまま負荷角δだと思い込む
「力率角が30°だから、負荷角も30°」——これが最も多い取り違えです。
✅ この2つはまったく別の角です。力率角 φ は V と I のなす角。負荷角 δ は V と E のなす角です。E は V に電圧降下ベクトルを継ぎ足した先にありますから、δ は φ とは一致しません。ベクトル図を実際に描いて、 の水平成分と垂直成分を分けて合成しないと出てこない角です。問題文に φ が与えられていても、δ はそこから計算するもの、と切り分けておきましょう。
❌ 三相なのに を忘れて定格電流を出す
短絡比や同期インピーダンスの計算では、まず定格電流を出す場面がよくあります。ここで容量 S を電圧 V で割っただけの値を使ってしまうミスが定番です。
✅ 三相の定格電流は必ず です。 を忘れると値が約1.7倍になり、そのあと界磁電流の比を掛けても当然合いません。しかもその誤答がちゃんと選択肢に用意されているのがこの試験の怖いところです。三相と見たら 、を反射で出せるようにしておいてください。
過去問ではこう出た
この単元は、電験三種「機械」で非常に安定して出題されています。テーマで照合すると、電験ジムの収録範囲だけでも次のとおりです。
- 令和7年上期 問6
- 令和6年下期 問6/問15
- 令和6年上期 問7
- 令和5年下期 問5
- 令和4年上期 問5
- 平成30年 問6
- 平成29年 問5
問番号を見ていただくと分かるとおり、問5〜問7あたりに集中しています。同期機は機械科目の主要4機種(直流機・変圧器・誘導機・同期機)の一角ですから、毎年この位置に居座っていると考えて差し支えありません。
出題の形は大きく2つに分かれます。ひとつはベクトル図そのものを選ばせる問題。発電機か電動機か、遅れか進みか、で図の形が変わるので、上の「間違える人が多い」の3点がそのまま合否を分けます。もうひとつは同期インピーダンスや短絡比を計算させる問題。こちらは と、無負荷飽和曲線・短絡曲線の読み取りが勝負どころです。
なお令和6年下期は問6と問15の両方で顔を出しています。問15はB問題ですから、同期機は小問形式でもまとめて狙われる単元だということです。1問取れれば大きいので、ここは捨てずに仕上げておきたいところ。
よくある質問
Q. ベクトル図は、自分で描けないとダメですか?
結論から言うと、簡単なものは描けたほうが圧倒的に有利です。ただし、美しく正確に描く必要はまったくありません。
試験で問われるのは「向きが合っているか」だけです。V の矢印を横に引いて、İ を力率角ぶん傾けて、そこから raİ を İ と同じ向きに、jxsİ を90°回して継ぎ足す。この手順さえフリーハンドでできれば、選択肢の図と見比べて答えを選べます。定規もいりません。
逆に、図を丸暗記しようとすると必ず破綻します。遅れ・進み・発電機・電動機で4パターンありますから、暗記だと組み合わせが増えすぎるのです。手順で描くほうが、結局は近道になります。
Q. xa と xl は、結局分けて覚える必要があるんでしょうか?
計算では不要、言葉の説明では必要、と割り切ってください。
計算問題では、ほぼ100%が xs または Zs という形で与えられます。xa と xl を別々に与えられて「足しなさい」という問題は、まず出ません。
一方で、文章問題では「電機子反作用によるリアクタンスは主磁束に影響するが、漏れリアクタンスは影響しない」といった正誤判定が出ます。ここで区別がついていないと落とします。
ですから、覚える労力は「xa は主磁束に手を出す/xl は手を出さない」の一行に集約してしまってよいのです。それ以上は深追いしなくて構いません。
Q. 短絡試験は、実際の現場でも見られるものですか?
残念ながら、めったにお目にかかれません。
端子を三相とも短絡した状態で電圧を上げていくわけですから、扱う電流は非常に大きくなります。安全に実施するには設備も条件も整っている必要があり、基本的にはメーカーの工場で、出荷前の試験として行われるものです。現場に据え付けた発電機で気軽にやる類の試験ではありません。
ただ、その結果は試験成績書という形で必ず残ります。無負荷飽和曲線と三相短絡曲線の2本が並んで載っていて、そこから同期インピーダンスが読み取れる。現場の技術者がその成績書を見る機会は十分にありますから、「グラフの読み方を知っている」ことには、試験を超えた価値があります。
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