電技その1|どんな場所でもOK『オールマイティ工事4種』を一気に攻略
電験三種「法規」の電気設備技術基準・解釈から、配線工事の施工場所を一気に整理。金属管・金属可とう電線管・ケーブル・合成樹脂管の4つは『どんな場所でも施工できるオールマイティ工事』。粉塵・ガスのある危険場所だけがNG、というシンプルな軸で、覚えにくい組み合わせ表をスッキリ攻略できる解説記事です。
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この記事で身につくこと
法規のテキストを開いて、配線工事のページで手が止まった経験はありませんか。工法の名前が10個近く並び、その横に「乾燥した場所」「湿気の多い場所」「水気のある場所」「隠ぺい場所」と欄が並んで、○と×がびっしり。あの表を上から順に丸暗記しようとして、3日後にはきれいさっぱり忘れている——これは、あなたの記憶力の問題ではありません。覚える順番が逆なだけです。
配線工事の場所制限には、はっきりした構造があります。「どこでもOKな万能グループ」がまず存在して、残りの工法はそこからの引き算で決まる、という構造です。だから先に万能グループを固めてしまえば、残りは「なぜこれは使えないのか」という理由付きで頭に入っていきます。ゼロから10個を平等に覚えるのと、4つを軸にして残りを説明するのとでは、負担がまるで違います。
この記事を読み終えると、次の3つができるようになります。
| 身につくこと | 到達イメージ |
|---|---|
| オールマイティ4工法を即答できる | 「金属管・金属可とう電線管・ケーブル・合成樹脂管」がリズムで出てくる |
| 4つが万能である理由を説明できる | 丸暗記ではなく「電線が守られているから」と根拠で語れる |
| 例外の2場所を落とさない | 粉塵爆発・ガス爆発の場所は防爆構造、という引っかけをかわせる |
根拠になる条文は電技解釈第156条、「低圧屋内配線の施設場所による工事の種類」です。条文番号まで一緒に覚えておくと、問題文に「第156条により〜」と出てきたときに、頭が一瞬で今日の内容に切り替わります。

暗記フレーズ:金・かとう・ケーブル・じゅし……ならOK!粉塵・ガスはさすがにNG!
今日はこの一行を持ち帰ってください。
金・かとう・ケーブル・じゅし……ならOK!粉塵・ガスはさすがにNG!
前半が万能4工法、後半が例外。前半だけでも試験では戦えますが、後半をくっつけておくと引っかけ問題を1問拾えます。中身の対応はこうです。
| フレーズ | 正式名称 |
|---|---|
| 金 | 金属管工事 |
| かとう | 金属可とう電線管工事 |
| ケーブル | ケーブル工事 |
| じゅし | 合成樹脂管工事 |
| 粉塵・ガスはNG | 粉塵爆発・ガス爆発のおそれがある場所は防爆構造が必要 |
声に出して2〜3回。通勤の車の中でも、風呂に入りながらでも構いません。手を動かして書くより、リズムで口に馴染ませたほうがこの手のフレーズは定着します。
ステップ1:そもそも「配線工事」とは何をしている工事か
配線工事とは、屋内や屋外で電線を安全に通すための工法のことです。当たり前に聞こえますが、ここを押さえておくと後の理屈が全部つながります。
電線をむき出しのまま壁に貼り付けたり、床に転がしておくわけにはいきません。人が触れば感電しますし、被覆が傷めば漏電から火災につながります。だから電線には「何らかの保護」が必要で、その保護の方法の違いが、そのまま工法の違いになっているわけです。

場所によって使える工法が変わる、という考え方
ここからが本題です。電技解釈第156条は、施設場所ごとに使ってよい工事の種類を定めています。主な場所の区分はこうです。
| 施設場所 | どんな環境か |
|---|---|
| 乾燥した場所 | 一般的な居室・事務所など、水気も湿気もない場所 |
| 湿気の多い場所 | 水蒸気がこもりやすい場所。厨房や浴室まわりなど |
| 水気のある場所 | 水がかかる、または水にさらされるおそれのある場所 |
| 隠ぺい場所 | 壁の中、天井裏など、施工後は目視できなくなる場所 |
環境が厳しくなるほど、電線に求められる保護は強くなります。乾燥した部屋なら簡単な保護でも成立しますが、水がかかる場所で同じことをすれば事故になる。だから場所ごとに条件が変わるのです。ここまで理解できていれば、「使える/使えない」の表はただの暗記表ではなく、保護の強さのランキング表に見えてきます。
なお、この単元に入る前に電圧の区分があやふやだと、低圧屋内配線という言葉自体がぼんやりしたままになります。心当たりのある人は、先に電技その1:電圧の種別と最大使用電圧『ナナロク!直流750・交流600』で感電火災を防ぐ第一歩に目を通しておくと、この記事の読み心地がだいぶ変わります。
ステップ2:どこでもOK!オールマイティ4工法
お待たせしました。今日の主役です。次の4つは、乾燥した場所・湿気の多い場所・水気のある場所・隠ぺい場所のすべてで施工できます。

| オールマイティ4工法 | 乾燥 | 湿気 | 水気 | 隠ぺい |
|---|---|---|---|---|
| 金属管工事 | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 金属可とう電線管工事 | ○ | ○ | ○ | ○ |
| ケーブル工事 | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 合成樹脂管工事 | ○ | ○ | ○ | ○ |
見事に○が並びます。問題は「なぜこの4つだけなのか」です。
共通点は「保護の二重性」
答えは一つ。この4つはいずれも、電線が外部の環境から二重・三重に守られているのです。逆に言えば、保護が薄い工法は特定の環境にしか使えません。この対比さえ持っていれば、他の工法の場所制限も理由から説明できるようになります。
| 工法 | 何が電線を守っているか |
|---|---|
| 金属管工事 | 金属の管が湿気・水気・物理的衝撃を遮る |
| 金属可とう電線管工事 | 蛇腹状の金属が管と同じ役割を果たす |
| ケーブル工事 | 電線自体が絶縁体+外装の2層で守られている |
| 合成樹脂管工事 | 樹脂の管が電線を包み、樹脂自体の絶縁性も高い |
ケーブル工事だけ少し性格が違うのが面白いところです。金属管・金属可とう・合成樹脂管は「外から管で包む」タイプ、ケーブルは「電線そのものがすでに守られている」タイプ。守り方は違っても、結論は同じ。電線が過酷な環境に直接さらされないから、場所を選ばないのです。
丸暗記ではなく、この理屈で覚えてください。試験本番で記憶が薄れても、「電線が守られているか?」と自問すれば答えを再構成できます。
ステップ3:4工法それぞれの顔を知る
名前だけでは頭に残りません。それぞれ現物のイメージを持っておきましょう。現場を見たことがない人でも、身近なものに置き換えれば十分です。

金属管工事
建物の壁や天井に配線するときによく使われる、丈夫な管です。主に鋼製で衝撃にも強く、工場や商業施設でよく見かけます。ガッシリした金属パイプの中を電線が通っている姿を思い浮かべてください。
金属可とう電線管工事
現場では「フレキ」の愛称で呼ばれます。蛇腹状になっていて自由に曲げられるのが最大の特徴です。「可とう」は漢字で「可撓」と書き、自由に曲がるという意味。電動工具についている蛇腹のホース、あのイメージがそのまま当てはまります。曲げられるので、動きや振動のある機械の接続部分にも対応できます。
ケーブル工事
電線そのものが絶縁体と外装でしっかり守られているため、管に通さずそのまま敷設できる工法です。住宅で最もよく使われるのがこれ。自宅の分電盤まわりで見かける灰色や白の平たい線、あれがケーブルです。
合成樹脂管工事:PF管とCD管の違いは要チェック
合成樹脂管にはPF管とCD管の2種類があり、ここは試験でも実務でも問われるポイントです。
| 種類 | 施工できる場所 | 覚え方 |
|---|---|---|
| PF管 | 露出・隠ぺいのどちらにも使える | 制限が少ない万能タイプ |
| CD管 | コンクリート埋め込み専用(露出は不可) | Concrete(コンクリート)のC |
「CD管のCはConcreteのC」。これだけで一生忘れません。同じ合成樹脂管でも、CD管は露出施工ができないという制限がある——ここを混同する人が非常に多いので、必ず区別しておいてください。
ステップ4:オールマイティでも使えない、たった2つの場所
ここが今日いちばんの落とし穴です。「どこでもOK」と言っておいて申し訳ないのですが、この4工法でも使えない場所があります。試験の引っかけポイントはほぼここに集中します。

NGとなるのは次の2種類の場所です。
| NGとなる場所 | どんな環境か | 具体例 |
|---|---|---|
| 粉塵爆発のおそれがある場所 | 細かい粒子が空気中に大量に浮遊している | 工場の粉砕設備の周辺など |
| ガス爆発のおそれがある場所 | ガスや蒸気が充満している | 塗料工場、ガソリンスタンドの地下など |
「粉が爆発する」は本当の話
粉塵爆発を初めて聞いた人は驚くかもしれません。小麦粉や金属粉のような微細な粒子が空気中に大量に浮いていると、火花ひとつで一気に燃え広がり爆発することがあるのです。粉の状態では表面積が桁違いに大きくなるため、一瞬で全体に火が回ります。実際に工場での重大事故として何度も起きています。
ガス爆発のほうはイメージしやすいでしょう。ガスや蒸気が充満した空間では、電気設備の接点から出るごくわずかな火花でも大爆発の引き金になります。
必要なのは「防爆構造」の工事
こうした爆発危険エリアでは、防爆構造の工事が必要になります。防爆構造とは、火花や熱が外部に漏れないよう特別な設計がされた電気設備や配線工法のこと。電技解釈でも、これらの場所には特別な工事方法を用いることが定められています。
つまり、今日のオールマイティ4工法は「普通の場所ならどこでもOK」であって、「無条件でOK」ではないということ。オールマイティ=無条件、ではない。ここを一言で言い切れるようにしておいてください。
この「原則があって、危険な条件がついたら別扱いになる」という発想は、法規のあちこちに顔を出します。たとえば電技その1|高圧・特高機器の『触れるな3点セット』で危険防止をスッキリ攻略で扱う危険防止のルールも、まったく同じ思考回路で読めます。
ステップ5:なぜ「万能グループから」覚えるのが最短なのか
最後に、勉強の戦略の話を少しだけさせてください。ここを理解しているかどうかで、この先の配線工事の学習効率が変わります。
配線工事の工法は全部で10種類近くあり、施設場所も4区分あります。単純に掛け算すれば40通りの○×を覚えることになる——そう思った瞬間に、多くの人が心が折れます。実際、法規で配線工事を後回しにする受験者は珍しくありません。
しかし実態はこうです。
| 覚え方 | 負担 |
|---|---|
| 40通りの○×を平等に暗記する | 大きい。しかも忘れやすく、再現性がない |
| 万能4工法を軸に、残りを例外として覚える | 小さい。理由付きなので忘れても再構成できる |
基準を1本立てて、そこからの差分で覚える。この方法は法規全体に効きます。実際、電技の他の単元でも同じことが起きています。数値の基準を先に固めてから例外を足していく電技その1|接触防護措置と簡易接触防護措置を『2.3/2.5・1.8/2.0』で一発整理や、原則と例外を2分類のツリーで捌く電技その1|電路の絶縁は「構造上不可」か「技術上困難」か!2分類ツリーで例外を丸ごと整理も、構造としてはまったく同じです。
次に学ぶことになるのは、乾燥した場所にしか使えない工法——がいし引き工事やライティングダクト工事といった顔ぶれです。今日の4工法と比べながら見ると、「保護が薄いから場所が限られる」という理由がはっきり見えてきます。今日の4つは、そのための物差しなのです。
まとめ
今日の内容を1枚に圧縮します。
| 項目 | 覚えること |
|---|---|
| 根拠条文 | 電技解釈第156条(低圧屋内配線の施設場所による工事の種類) |
| オールマイティ4工法 | 金属管・金属可とう電線管・ケーブル・合成樹脂管 |
| 対応できる場所 | 乾燥・湿気・水気・隠ぺいのすべて |
| 万能である理由 | 電線が管や外装で二重・三重に保護されているから |
| 例外のNG場所 | 粉塵爆発のおそれがある場所/ガス爆発のおそれがある場所 |
| 例外での対応 | 防爆構造の特別な工事方法が必要 |
| 合成樹脂管の内訳 | PF管=露出・隠ぺい両用/CD管=コンクリート埋め込み専用 |
そして、最後にもう一度だけ。
金・かとう・ケーブル・じゅし……ならOK!粉塵・ガスはさすがにNG!
配線工事は、苦手科目の代表格から「得点源」に変わります。変わり目は、覚える順番を変えた瞬間です。今日の4つが、その入口になります。
⚠ ここを間違える人が多い
この単元でつまずきやすいのは、次の2点です。どちらも試験で狙われます。
❌「オールマイティなのだから、どんな場所でも無条件に使える」
✅ 正しくは:普通の場所ならどこでもOK、というだけです。
「オールマイティ」という言葉のインパクトが強いため、例外の存在ごと忘れてしまう人がいます。しかし粉塵爆発・ガス爆発のおそれがある場所は別枠で、防爆構造の工事が必要です。問題文に「粉じん」「可燃性ガス」「爆発」といった語が混ざっていたら、それは通常の場所制限の話ではないという合図。反射的に「4工法ならOK」と答えてはいけません。フレーズの後半「粉塵・ガスはさすがにNG!」を必ずセットで覚えておく理由がここにあります。
❌「合成樹脂管工事なら、PF管でもCD管でも同じように使える」
✅ 正しくは:CD管はコンクリート埋め込み専用で、露出施工はできません。
「合成樹脂管工事はオールマイティ」という大枠だけを覚えていると、管の種類による違いが抜け落ちます。PF管は露出・隠ぺいのどちらにも使えますが、CD管には露出施工という選択肢がありません。同じ合成樹脂管でもここは明確に違う——「CDのCはConcreteのC」を思い出せば、迷わず切り分けられます。大きな分類を覚えたら、その中の枝分かれも一緒に確認する。この癖をつけておくと、法規全体で取りこぼしが減ります。
よくある質問
Q. なぜ電技解釈第156条という条文番号まで覚える必要があるのですか?
必須ではありません。ただ、覚えておくと得をします。問題文に「電気設備技術基準の解釈第156条に基づき〜」と書かれていたとき、条文番号が頭に入っていれば、読み始めた瞬間に「配線工事と施工場所の話だ」と分かり、思考が正しい引き出しに向かいます。逆に番号を知らないと、問題文を最後まで読んで初めてテーマが判明し、その分だけ時間と落ち着きを失います。法規は条文の海なので、よく出る条文の番号だけは看板として覚えておくのが効率的です。
Q. 4つ以外の工法は覚えなくてよいのですか?
もちろん最終的には必要です。ただし、順番として後回しでよいという話です。がいし引き工事やライティングダクト工事などは、保護が薄いぶん使える場所が限られます。これらは「乾燥した場所限定」といった制限とセットで覚えることになりますが、その制限が理解できるのは、比較対象である万能4工法を知っているからこそ。土台のない状態で全工法を並べて暗記しようとするから挫折するのであって、順序さえ守れば残りは驚くほど素直に入ってきます。
Q. 現場を見たことがなく、工法のイメージが全く湧きません。不利ですか?
不利にはなりません。試験で問われるのは、実際に施工できるかどうかではなく、その工法で電線がどう守られているかという原理だからです。金属管なら金属のパイプの中を電線が通っている、ケーブルなら電線自体が外装で包まれている——この程度の理解で十分に得点できます。イメージが湧きにくければ、自宅の分電盤まわりや、駐車場・工場の外壁に走っている配管を眺めてみてください。教科書の図が急に現実味を帯びてきます。実務経験がないことを不安に思う必要は、まったくありません。
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