電技その1|高圧・特高機器の『触れるな3点セット』で危険防止をスッキリ攻略
電験三種「法規」の電技(電気設備技術基準の解釈)から、高圧・特高機器の接触防止ルールを整理。『さく+高さ距離5m+危険表示』の3点セット、高圧の5・4.5・4m、特高の5m一択、そしてD種接地の使い分けまで、バラバラに見える数値を1本の軸でまとめて覚える解説記事です。
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この記事で身につくこと
法規の勉強をしていて、こんな引っかかり方をしていませんか。
- 「5m以上」と書いてあるけれど、これはさくの高さのこと? それとも機器までの距離のこと?
- 5m・4.5m・4m と数値が3つも出てきて、どの場所でどれを使うのか毎回迷う
- 急に「D種接地工事」が出てきて、なぜ特別高圧なのにD種なのか腑に落ちない
安心してください。この3つは、覚えることが多いから難しいのではなく、整理の軸を1本も持たないまま数値だけを見ているから難しく感じているだけです。軸さえ通れば、暗記量はむしろ減ります。
この記事を読み終えると、次のことができるようになります。
| ゴール | 手に入る武器 |
|---|---|
| 5mの正体が分かる | 「高さ+距離の合計」という一つの考え方 |
| 3つの数値を迷わない | 人が近づく機会が減るほど0.5mずつ緩むという階段 |
| 特高で混乱しない | 構内は高圧と同じ5m。覚える数値は増えない |
| D種かA種かを即断できる | 35kVという一本の境界線 |
| 例外を取りこぼさない | 発電所・変電所・開閉所は除外 |

暗記フレーズ:さく+5m+看板と35kV以下のD種
今日の内容は、この一言に全部たたみ込まれています。
さく+5m+看板と35kV以下のD種
前半の「さく+5m+看板」が3点セット。後半の「35kV以下のD種」が特別高圧のときの追加条件です。試験本番で手が止まったら、まずこのフレーズを頭の中で唱えてください。そこから枝を伸ばしていけば、必要な数値は必ず引き出せます。
ステップ1:まず「3点セット」の全体像をつかむ
高圧・特別高圧の機器に人が触れないようにするルールは、電気設備技術基準の解釈(電技解釈)第23条にまとめられています。中身は驚くほどシンプルで、次の3つだけです。

| 番号 | 措置 | 何をする防御か |
|---|---|---|
| ① | さく・へいの設置 | 物理的に人を入れない |
| ② | 高さ+距離が5m以上 | 電気的に安全な間合いをとる |
| ③ | 危険表示 | 情報的に警告する |
ポイントは、この3つが「足し算」であって「選択肢」ではないということ。さくを付けたから看板は省略できる、という理屈は通りません。 3段構えのどれか1つが欠けた瞬間に、そこが事故の抜け道になるからです。
そして特別高圧の場合だけ、ここに「35kV以下ならD種接地工事も追加」という条件が乗ります。まずはこの骨格だけ持って、先へ進みましょう。
ステップ2:なぜ「さく」がいるのか — 触らなくても感電する世界
そもそも、なぜここまで厳重に人を遠ざけるのでしょうか。答えは、高圧・特別高圧では「触らなければ大丈夫」が通用しないからです。

電圧が高くなると、本来は電気を通しにくいはずの空気がその電圧に耐えきれなくなり、電気が空中を飛びます。これが絶縁破壊であり、その結果起こる放電がフラッシュオーバーです。つまり、近づいただけで感電する可能性がある。だからルールの主語が「触れさせない」ではなく「近づけさせない」になっているわけです。
電圧の区分もここで押さえておきましょう。
| 区分 | 交流の電圧範囲 |
|---|---|
| 低圧 | 600V以下 |
| 高圧 | 600Vを超え7,000V以下 |
| 特別高圧 | 7,000Vを超えるもの |
家庭のコンセントが100V・200Vですから、高圧・特別高圧はその数十倍から数百倍。桁が違えば、危険の質そのものが変わります。
さくは金属製でなければダメ?
よくある疑問ですが、電技は素材を限定していません。求めているのは「人が容易に立ち入れない措置であること」。したがって、
- ✅ 金属メッシュフェンス、コンクリート塀 … 強度と構造があれば可
- ❌ 押し倒せる低いロープ、隙間の大きいネット … 要件を満たさないおそれ
という判断になります。形式ではなく機能で見る — この視点は電技全体を貫く考え方なので、ここで覚えてしまってください。
ステップ3:ここが核心 — 「5m」は高さと距離の合計
今日いちばん大事な一枚です。多くの受験生が最初につまずくのが、この「5m」の解釈です。

高さだけで5mでも、距離だけで5mでも構いません。合計が5m以上であればよいのです。
| 例 | さくの高さ | 水平距離 | 合計 | 判定 |
|---|---|---|---|---|
| A | 3m | 2m | 5m | ✅ ぎりぎりOK |
| B | 4m | 0.5m | 4.5m | ❌ 0.5m不足 |
| C | 5m | 0m | 5m | ✅ 理論上OK |
Bのケースは、さくをかさ上げするか、機器をさくから遠ざけるかで合計5m以上を確保します。都市部の狭い敷地では距離が取れないので、高いフェンスで「高さ」に寄せて補う、という実務上の対応もあります。
もう2つ、試験で狙われる注意点を挙げておきます。
- この「高さ」はさく自体の地面からの高さ。人の身長やよじ登った場合の到達距離ではありません。
- 単位のひっかけに注意。4.5m=450cm、4m=400cm。普段からm表記に統一して考える癖をつけると、本番で焦りません。
なお、接触防護措置と簡易接触防護措置そのものの区別があやふやな方は、先に〈電技その1|接触防護措置と簡易接触防護措置を『2.3/2.5・1.8/2.0』で一発整理〉を通しておくと、この先の話がぐっと速く入ります。
ステップ4:危険表示の看板は「省略できない」
3点セットの3つ目、危険表示です。あの黄色い「高電圧危険・立入禁止」の看板は、装飾ではなく電技上の義務です。

なぜ、さくがあるのに看板まで必要なのか。片方だけだと何が起きるかを並べると、はっきりします。
| 状態 | 何が起きるか |
|---|---|
| 看板だけ(さく無し) | 見落とした人・無視した人がそのまま機器に近づけてしまう |
| さくだけ(看板無し) | なぜ立入禁止なのか理由が伝わらず、業者が誤ってさくを外すおそれ |
| さく+看板 | 「近づけない」+「なぜ近づけないか分かる」で防護が完成 |
表示の中身についても、文言が一言一句決められているわけではありません。求められるのは「危険であること」「高電圧であること」「立入禁止であること」の3点が、誰が見てもすぐ伝わる形で示されていること。専門用語だらけの小さな文字では、義務を満たしていないと判断されるおそれがあります。ここでもやはり、形式より機能です。
また、義務は設置して終わりではありません。看板が汚れて読めない、さくが壊れたまま放置されている——こうした状態も指摘の対象になり得ます。維持管理まで含めて義務、と押さえておきましょう。
ステップ5:場所ごとの距離は「0.5mずつの階段」で覚える
数値が3つ出てきて混乱する、と言われるところですが、実はきれいな規則性があります。

| 設置場所 | 必要な合計距離 | 人との関わり方 |
|---|---|---|
| 構内 | 5m | 専門家が日常的に近くで作業する=接触の機会が最も多い |
| 構外・地表上 | 4.5m | 一般の人が通りかかる程度 |
| 構外・市街地外 | 4m | 人がほとんど通らない |
意外に感じるかもしれませんが、人が少ない構内がいちばん厳しい5mです。理由は「人数」ではなく「接触する機会の多さ」で決まっているから。専門家が毎日そばで作業する場所は、それだけ事故の入口が多いのです。
覚え方はこれ一本で足ります。
構内5mを基準に、人が近づく機会が減るごとに0.5mずつ引く。
5 → 4.5 → 4 の階段です。3つをバラバラに丸暗記すると本番で「地表上は4mだったか4.5mだったか」と迷いますが、引き算で出せるようにしておけば揺れません。
ちなみに用語の階層はこうなっています。
- まず 構内(管理された敷地の内側)と 構外(敷地の外・公道など)で大きく2分
- 構外をさらに 地表上(人家や道路が近い)と 市街地外(山間部・田畑など)で2分
「管理区分」×「人の往来の多さ」の掛け合わせで距離が決まる、と見れば表がバラバラに見えなくなります。
ステップ6:特別高圧も「構内は5m」— 覚える数値は増えない
「特別高圧は電圧が高いのだから、もっと厳しい数値があるはずだ」。そう身構える方が多いのですが、ここは朗報です。

| 設置場所 | 高圧 | 特別高圧 |
|---|---|---|
| 構内 | 5m | 5m(共通) |
| 構外・地表上 | 4.5m | — |
| 構外・市街地外 | 4m | — |
構内は高圧も特別高圧も同じ5m。新しく覚える数値はありません。
では構外の「—(ダッシュ)」は何を意味するのか。これは「数値を忘れてよい」ではなく、簡易接触防護措置(さく+5mルール)そのものが使えないという意味です。特別高圧を構外に設置するような設備は、発電所・変電所に準じる特別な規制の対象になります。
なぜ構内だけ共通にできるのかというと、構内は「専門家が常駐し、設備の状態を把握して管理している空間」という前提があるからです。管理者が明確なら、電圧の大小によらず同じ枠組みで対応できる。一方、不特定多数が近づき得る構外では、特別高圧を簡易な措置で守り切ることはできない——そういう整理になっています。
試験では「高圧と特高、どちらが厳しいか」と単純に問われることがあります。構内だけを見れば同じ5m、構外まで含めれば特高が圧倒的に厳しい(そもそも簡易な方法が使えない)。条件をそろえて比べる癖が、法規の応用問題では効いてきます。
ステップ7:D種かA種かは「35kV」で決まる
特別高圧で簡易接触防護措置を使うときの追加条件が、ここです。

| 電圧 | 使える措置 | 必要な接地工事 | 接地抵抗 |
|---|---|---|---|
| 35kV以下 | 簡易接触防護措置(さく+5m) | D種接地工事 | 100Ω以下 |
| 35kVを超える | 簡易接触防護措置は使えない | A種接地工事 | 10Ω以下 |
「特別高圧なのにD種?」と引っかかるところですが、D種を施すのは機器の外箱(筐体)です。そして、接地抵抗は小さいほど電流が大地に逃げやすく、より厳格な基準になります。つまりA種のほうが厳しい。35kVを超えると事故電流も大きくなるためA種が要求され、35kV以下であれば「さく+5m」と組み合わせることでD種の基準でも安全性を確保できる、という考え方です。単独ではなくセットで安全を担保しているのがポイントです。
そして法規らしい落とし穴が、言葉の使い分け。
- 「35kV以下」には35kVちょうども含まれる → 35kVならD種でOK
- 35.1kVのようにわずかでも超えれば、その瞬間にA種
「以下・未満・超える・以上」の一語で正誤がひっくり返るのが法規です。数値だけでなく、その直後の言葉まで読む習慣をつけてください。
なお接地工事にはA・B・C・Dの4種類がありますが、今日の単元で必要なのはA種とD種の境界=35kVの1点だけ。ここに絞って完璧にしておきましょう。
ステップ8:発電所・変電所・開閉所は「除外」
最後に例外ルールです。簡易接触防護措置が適用除外となる施設が3つあります。
「除外」と聞くと「ルールが緩くなる」と読みたくなりますが、逆です。簡易な措置では不十分だから、もっと厳格な対策が別途義務づけられているという意味の除外です。
| 施設 | 役割 | 扱い |
|---|---|---|
| 発電所 | 電気をつくる | 除外(より厳格な防護) |
| 変電所 | 電圧を変える | 除外(より厳格な防護) |
| 開閉所 | 送電線をつなぎ変える | 除外(より厳格な防護) |
| 一般の高圧受電設備・キュービクル等 | 需要設備側 | 3点セットの対象 |
発電所・変電所・開閉所では、高い塀、侵入検知、施錠された門扉、有資格者以外は入れない管理体制、機器ごとの区画分けといった多重の防護層が組まれます。3点セットは、あくまで比較的リスクの低い環境向けの「最低限の標準装備」だと捉えてください。
判断は名称で切れます。発電所・変電所・開閉所という言葉が出たら除外、それ以外の一般的な受電設備は3点セットの対象。 工場やビルのキュービクル式高圧受電設備は後者の代表例です。
ステップ9:計算で確かめる(クイズ2問)
理屈が入ったところで、手を動かして確認しましょう。
第1問
構内に高圧機器を設置する。高さ2mのさくを設けたとき、さくと機器の間に最低限確保すべき水平距離は何mか。
答えは3m。「高さ+距離=5m」を変形して「距離=5m−高さ」にするだけです。この式変形さえできれば、どんな数値が来ても対応できます。構外の地表上なら基準が4.5mになるので、高さ2.5mのさくなら 。基準値さえ間違えなければ、あとは同じ引き算です。
第2問
電圧22kVの特別高圧機器を構内に設置し、高さ+距離=5mの接触防止措置をとった。この機器に施さなければならない接地工事の種類は?
答えはD種接地工事。ただし、大事なのは答えより手順です。
- 電圧が35kV以下かどうかを確認する → 22kV ≦ 35kV なのでOK
- 条件を満たすので、簡易接触防護措置+D種接地工事
いきなり「特高だからA種」と決め打ちしないこと。もし問題文が38kVなら35kVを超えるのでA種、と切り替わります。電圧の確認を必ず1ステップ目に置くのが、この手の問題を落とさないコツです。
似た形で「電圧の種別そのもの」を問われることもあります。区分に不安が残る方は、〈電技その1:電圧の種別と最大使用電圧『ナナロク!直流750・交流600』で感電火災を防ぐ第一歩〉で土台を固めてから戻ってくると、判断が一段速くなります。
ステップ10:おまけ — あの黄色い看板は国際規格
変電所の外壁でよく見かける、あの黄色い「高電圧危険」の看板。実はJIS Z 9103などの安全標識規格で、図記号の形・色の使い方・文字の大きさまで標準化されています。稲妻の三角マークはIEC(国際電気標準会議)の国際規格とも対応しており、日本語が読めない外国人作業員にも「危険・高電圧」が直感で伝わるよう設計されているのです。
色にも役割分担があります。JISの安全色では黄色が「警告」、赤が「防火・禁止」、緑が「安全・避難」。黄色と黒の組み合わせは人の目を最も引きやすい配色といわれ、工事現場のトラ柄バリケードも同じ理屈です。
試験に直接は出ませんが、「なぜ危険表示が義務なのか」の腹落ち度が変わります。通勤途中に黄色い看板を見かけたら、今日の3点セットを思い出してください。日常が、そのまま復習の時間に変わります。
まとめ
一枚に畳んでおきます。
| 論点 | 結論 |
|---|---|
| 3点セット | さく・へい + 高さ+距離5m以上 + 危険表示(1つでも欠けたら違反) |
| 5mの意味 | さくの高さと水平距離の合計。距離=5m−高さ |
| 高圧の距離 | 構内5m/構外地表上4.5m/構外市街地外4m(0.5mずつの階段) |
| 特別高圧 | 構内は高圧と同じ5m。構外は簡易措置の対象外(—) |
| 接地工事 | 35kV以下=D種(100Ω以下)/35kV超=A種(10Ω以下) |
| 除外施設 | 発電所・変電所・開閉所 |
迷ったらこの言葉:さく+5m+看板と35kV以下のD種
今日学んだ内容は、すべて「高圧・特別高圧への感電事故を防ぐ」というたった一つの目的から枝分かれしています。目的から見れば、数値はバラバラの暗記項目ではなく、必然のある設計値に見えてきます。そこまで来れば、法規は得点源です。
⚠ ここを間違える人が多い
この単元で実際に取りこぼしが出るのは、次の2か所です。
❌「さくの高さが5m以上必要」と読んでしまう
いちばん多い誤読です。条文が求めているのはさくの高さと水平距離の合計が5m以上であること。
- ❌ 高さ5mのさくを立てなければならない
- ✅ 高さ2m+距離3mでも成立する。合計が5m以上ならよい
この誤読をしたまま計算問題に入ると、「高さ2mのさくで距離3m」という正解を「高さが足りない」と切り捨ててしまいます。式は 、変形して 。ここを口で言えるようにしておきましょう。
❌「特別高圧だからA種接地」と決め打ちする
「電圧が高い=厳しいA種」という直感は自然ですが、判断基準は電圧の高さではなく35kVという境界です。
- ❌ 特別高圧なのだからA種接地
- ✅ まず35kV以下かを確認。22kVならD種、38kVならA種
同じ理由で、「特高は構外でも4.5mだろう」という思い込みも危険です。比較表の「—」は数値の省略ではなく、簡易接触防護措置そのものが使えないというサイン。数値を答える問題ではなく「なぜ数値がないのか」を問う出題もあり得ます。
よくある質問
Q. さくの高さも水平距離も足りず、合計5mに届かない場合はどうするのですか?
さくをかさ上げするか、機器をさくから遠ざけて水平距離を広げるか、その両方を組み合わせて合計5m以上を確保します。敷地の制約でどうしても届かない場合は、簡易接触防護措置を使うこと自体をあきらめ、より厳格な防護方式に切り替える必要があります。5mは「守れなければ別の手段に移る」という、いわば合格ラインです。
Q. 危険表示の看板は、誰が設置・維持する責任を負うのですか?
その電気設備を所有・管理する設置者です。電気主任技術者が選任されている現場であれば、その管理下にある設備として維持管理まで含めて責任が及びます。看板が汚れて読めなくなっていたり、さくが破損したまま放置されている状態も、電技違反として指摘の対象になり得ます。日常点検でさくの破損や看板の劣化を確認するのも、保安管理の重要な業務の一つです。
Q. 接地工事はA・B・C・Dと4種類あるようですが、全部覚える必要がありますか?
この単元に限れば不要です。今日必要なのはA種とD種の使い分け、その境界が35kVという1点だけ。参考までに、A種は高圧・特別高圧機器の外箱などで10Ω以下、B種は変圧器の高圧側と低圧側の混触を防ぐための接地、C種は300Vを超える低圧機器向けで10Ω以下、D種は300V以下の低圧機器向けで100Ω以下です。まずは35kVの線引きを完璧にして、他の接地工事は別テーマで積み上げていきましょう。絶縁に関する例外規定が気になり始めた方は、〈電技その1|電路の絶縁は「構造上不可」か「技術上困難」か!2分類ツリーで例外を丸ごと整理〉が次の一歩になります。
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