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理論 第24回 ⏱ 約23分で読めます

静電気と電磁力は「鏡うつし」:QとmでわかるEとHの対応表

電験三種「理論」の山場、電磁力を静電気との『鏡うつし』構造で一気に攻略。電荷Qに磁荷m、電界Eに磁界H、誘電率εに透磁率μ——式の形が完全に同じだとわかれば、暗記量は半分。苦手意識をなくし、電気と磁気をまとめて得点源に変える独学者のための決定版です。

🃏 暗記フレーズ:Qとm、EとH、εとμ。静磁は鏡うつし

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この記事で身につくこと

「静電気をやっと覚えたと思ったら、電磁力でまた新しい記号が大量に出てきた」——独学で理論科目を進めている方から、いちばん多く届く声がこれです。E、H、ε、μ。似たような形の文字が次々に現れて、どれがどの公式に入るのか分からなくなる。ノートに公式を10個も20個も書き写して、それでも試験本番で出てこない。

その原因は、あなたの記憶力ではありません。覚える順番が逆になっているだけです。

電磁力の公式は、実は静電気の公式とまったく同じ骨格でできています。文字を3組だけ置き換えれば、磁気の公式は自分の手で書き出せます。つまり、新しく暗記する公式はゼロです。

この記事を読み終えると、次の状態になります。

読む前読んだ後
磁力線の公式が思い出せない電気力線の式から3秒で導ける
ε と μ のどちらがどちらか混乱する「空間の性質を決める定数」のペアとして一組で扱える
磁束と磁力線を同じものだと思っている「束は空間の影響を受けない」と即答できる
公式を10個以上覚えようとしている覚えるのは言葉ひとつだけ

電磁力は静電気のパクリ!?(サムネ・導入)

暗記フレーズ:Qとm、EとH、εとμ。静磁は鏡うつし

今日の武器は、この一文だけです。

Qとm、EとH、εとμ。静磁は鏡うつし

「静磁」は静電気と磁気のこと。この2つは、鏡に映したように左右対称の構造をしています。静電気の式を思い出して、Q を m に、E を H に、ε を μ に書き換える。それだけで磁気側の式が完成します。

🃏 暗記シート
Q. 電磁力の分野で、静電気の公式から磁気の公式を導くための暗記フレーズは?
💡 置き換えるのは3組だけ

ステップ1:丸暗記しようとすること自体が「最大の罠」

新公式の丸暗記はNG(最大の罠)

多くの方がやってしまうのが、静電気の単元と電磁力の単元を、まったく別の引き出しにしまうことです。

これをやると、覚える量が単純に2倍になります。しかも似た文字が並ぶので、試験本番では引き出しを開け間違えます。ε を入れるべき場所に μ を入れてしまう、というミスの正体はこれです。

正しいやり方は逆で、引き出しは1つにまとめる。静電気の引き出しだけを持って試験会場に行き、必要になったら中身を magnetic 側に翻訳する——この方針に切り替えると、記憶の負担が半分以下になります。

そもそも磁石そのものがピンと来ていない、という方は、先に〈電磁力の前に「磁石の正体」:同種は反発・異種は引き合うを一発理解〉に目を通しておくと、この先の対比がぐっと入りやすくなります。

ステップ2:対比① 電荷Qと磁荷m——登場人物を置き換える

電荷Qと磁荷mを変換(対比①)

まずは主役の置き換えです。

静電気電磁力
主役電荷 Q磁荷 m
単位クーロン[C]ウェーバ[Wb]
電束 φ[C]磁束 φ[Wb]

ここで見落としてほしくないのが、単位が同じペアで揃っているという点です。

電荷Qも電束φも[C]。磁荷mも磁束φも[Wb]。つまり という関係が成り立ちます。電荷がそのまま電束の量になり、磁荷がそのまま磁束の量になる、というイメージです。

この「単位が揃っている」感覚が、あとで出てくる引っかけ問題を見抜く土台になります。

🃏 暗記シート
Q. 静電気と電磁力の対比において、電荷Qに対応する磁気側の量とその単位は?

ステップ3:対比② 力線Nの公式は「まったく同じ形」

力線Nの公式は同じ形(対比②)

次は力線の本数を求める式です。左右を並べてみてください。

静電気側(電気力線):

電磁力側(磁力線):

Q が m に、ε が μ に、E が H に変わっただけ。式の骨格は完全に一致しています。

なぜ分母に ε や μ が入るのか

ここが理解のヤマ場です。力線というのは、周囲の空間の性質に左右される量だからです。

同じ電荷を置いても、真空中と油の中では出てくる力線の本数が変わります。だから空間の性質を表す ε(磁気なら μ)で割る、という形になるわけです。

逆に言えば、分母に ε や μ が付いている量は、空間の影響を受ける仲間だと判定できます。この見分け方は、ステップ6の引っかけ対策でそのまま使います。

🃏 暗記シート
Q. 静電気における電気力線Nの公式と、電磁力における磁力線Nの公式をそれぞれ答えよ。
💡 分母に空間の性質が入る

ステップ4:対比③ 誘電率εと透磁率μ——空間の性質を決める定数

真空の誘電率と透磁率(対比③)

ここは数値が出てくるので、表で一気に押さえます。

静電気電磁力
定数の名前誘電率 ε透磁率 μ
単位[F/m]ファラド毎メートル[H/m]ヘンリー毎メートル
真空中の値ε₀ = 8.85 × 10⁻¹²μ₀ = 4π × 10⁻⁷
一般の式ε = ε₀ ε_rμ = μ₀ μ_r

「8.85 と 4π、どっちがどっちだったか」で迷う方は多いと思います。ただ、混乱するのは値だけを別々に覚えようとしているからです。

見てほしいのは下の2行、式の構造です。

どちらも「真空の値 × 比の値」というまったく同じ形をしています。ε_r が比誘電率、μ_r が比透磁率で、これらは単位を持たない、ただの倍率です。

つまり片方の仕組みを理解していれば、もう片方は同じルールで動きます。値の暗記は2つですが、理屈の暗記は1つで足りるということです。

🃏 暗記シート
Q. 静電気・電磁力において、真空の誘電率ε₀と真空の透磁率μ₀の値をそれぞれ答えよ。
💡 片方は8.85、片方は4π

ステップ5:対比④ 電界Eと磁界H——「界」は力線の密度

電界Eと磁界Hは密度(対比④)

「界」と名の付くものは、すべて力線の密度です。密度なので、力線の本数 N を面積 A で割ります。

電界 E[V/m]:

磁界 H[A/m]:

分子に力線の数、分母に面積。この構え方が左右で完全に共通しています。ここまで来ると、もう「置き換えるだけ」という感覚がつかめてきたのではないでしょうか。

なお、ε を μ に替えるだけで公式が通じるという発想をもう一段深めたい方は、〈静電気と電磁力は「双子の公式」——εをμに替えるだけで全部解ける〉も同じ土台の話をしています。

🃏 暗記シート
Q. 電磁力の分野で、電界Eに対応する磁気側の量は何か。また両者は何の量として定義されるか?

ステップ6:試験の最大の引っかけ——「束(たば)は無敵」

空間の影響トラップ(束は無敵)

ここが本番で点差になるところです。空間の影響を受けるものと、受けないものをはっきり分けておきます。

空間の影響を受けない空間の影響を受ける
電束 φ[C]電荷 Q・磁荷 m
磁束 φ[Wb]電気力線 N・磁力線 N
→ 式に ε・μ が出てこない→ 式に ε・μ が登場する

覚え方は一言、「束(たば)は無敵」です。

「束」という字が付くもの——電束・磁束——は、周りが真空でも鉄でも油でも、値が変わりません。無敵です。一方、力線は式に ε・μ が入っているので、空間の性質にきっちり左右されます。

ここをごちゃまぜにしたまま本番に臨むと、「透磁率が2倍になったとき、磁束はどうなるか」といった一行の設問で確実に落とします。逆に、この切り分けさえできていれば一瞬で判断できる、コスパの良い論点でもあります。

🃏 暗記シート
Q. 電束φ・磁束φは、周囲の空間の誘電率εや透磁率μの影響を受けるか?
💡 束は無敵

ステップ7:実際に解いてみる(確認クイズ2問)

理屈が分かったつもりでも、手を動かすと抜けが見えます。2問だけ、実際に考えてみてください。

問題① 磁束は透磁率の影響を受けるか

磁束と空間影響の問題(Q1)

磁束 φ[Wb]は、周囲の空間の透磁率 μ の影響を受けるでしょうか?

ここでいったんスクロールを止めて、10秒だけ考えてみてください。

正解は、影響を受けないです。

「束」が付いているので無敵。磁束・電束は空間の性質に関係なく一定です。影響を受けるのは磁力線 N のほうで、こちらは と、式に μ が入っています。

φ(ファイ)という文字を見た瞬間に「束=影響なし」と反応できるようになれば、この論点はもう取りこぼしません。

問題② 磁力線Nを求める式は

磁荷 m[Wb]、透磁率 μ[H/m]のとき、「磁力線 N[本]」を求める公式はどれでしょうか?

ヒントは「電気力線()を鏡うつしにするだけ」。

正解は です。手順にすると3ステップだけです。

手順やること
静電気の式 を思い出す
Q を m へ、ε を μ へチェンジ
答え が出る

「磁力線の公式が出てこない」という悩みは、磁力線を覚えていないからではなく、静電気の式から翻訳する手順を持っていないから起きていたわけです。手順を1つ持てば、この先どの公式でも同じように取り出せます。

🃏 暗記シート
Q. 電磁力において、磁荷m[Wb]と透磁率μ[H/m]から磁力線N[本]を求める式は?

まとめ

今日の内容を、対比表の形で一枚に畳んでおきます。試験直前はここだけ見返せば十分です。

項目静電気電磁力
主役電荷 Q[C]磁荷 m[Wb]
電束 φ[C]磁束 φ[Wb]
力線
界(力線の密度)電界 E[V/m]磁界 H[A/m]
空間の定数誘電率 ε[F/m]透磁率 μ[H/m]
真空中の値ε₀ = 8.85 × 10⁻¹²μ₀ = 4π × 10⁻⁷
一般式ε = ε₀ ε_rμ = μ₀ μ_r
空間の影響束は受けない/力線は受ける束は受けない/力線は受ける

そして、迷ったら唱える言葉。

Qとm、EとH、εとμ。静磁は鏡うつし

新しく暗記した公式は、結局ゼロでした。静電気の引き出しを1つ持っていれば、磁気側は全部そこから取り出せる——これが電磁力を「苦手な単元」から「得点源」に変える一番の近道です。

🃏 暗記シート
Q. 静電気・電磁力において、誘電率εと透磁率μを、真空中の値と比の値で表す式は?

⚠ ここを間違える人が多い

対比の考え方が身についても、応用問題に入るとつまずきやすい箇所が決まっています。よく見かける3つを挙げておきます。

❌ 長方形コイルの左右にかかる力を「足してしまう」

導体のループを磁界の中に置く問題では、ループの左辺と右辺で電流の向きが逆になります。向きが逆なら、そこに働く力の向きも逆です。

  • ❌ 「どちらも同じ向きに引かれる」と考えて、2辺の力を足す
  • ✅ 向きが逆なので差をとる。左辺の距離 d と右辺の距離 d+a で力の大きさが違うから、差が残る

図に電流の矢印を書き込み、辺ごとに力の向きを矢印で描き入れる。この一手間で防げます。

❌ 力が打ち消し合うから「何も起こらない」と結論する

2つの力が大きさ同じ・向き逆なら、合力はゼロです。ここで「だから何も働かない」と選択肢を選んでしまうのが典型的な失点です。

  • ❌ 合力ゼロ → 「何も働かない」を選ぶ
  • ✅ 同一直線上にない逆向きの2力は偶力。合力はゼロでも回転させるモーメントは残る

コイルが回るのはまさにこの偶力のおかげです。回転の話が絡む問題は、〈コイルに働くトルクを「ドアノブ」で攻略する ── 電磁力 T=BIℓDcosθ〉で扱っている考え方とつながります。

❌ 電子の進む向きをそのまま電流の向きにしてしまう

フレミングの法則は「電流の向き」に対して使う法則です。ところが電子は負の電荷を持つので、電子が進む向きと電流の向きはになります。

  • ❌ 電子の進行方向を電流の向きとして左手を当てる
  • ✅ 向きを反転させてから当てる。さらに、力を求めるのは左手、起電力を求めるのは右手

左右の手の使い分けが曖昧な方は、〈フレミングの法則を「左手は動かす・右手は生む」で一発整理する〉で先に整理しておくと安全です。

過去問ではこう出た

電磁力は、理論科目のなかでも出題が安定している単元です。テーマで照合できる過去問は、電験ジムの収録範囲だけで 34問あります。

年度・回問番号
令和7年 上期問3/問4
令和7年 下期問3/問4
令和6年 上期問3
令和5年 下期問4
令和2年問3
平成28年問12

傾向として、問3〜問4という前半の位置に置かれることが多いのが特徴です。前半は基礎の確認から入る配置なので、対比の骨格ができていれば取りやすい問題が並びます。逆に、ここで詰まると後半の計算問題に使える時間が削られます。

年度をまたいで同じ論点が繰り返し問われるのも、この単元の性格です。力の向き・力線と束の区別・公式の形——問われ方は変わっても、土台は今日の対比表で足ります。

電験ジムで実際に解いてみる

よくある質問

Q. 磁荷 m というのは、実際に取り出せるものなのですか?

実物として単独で取り出せるものではありません。N極だけの磁石、S極だけの磁石は存在しないからです。

ただ、試験の計算では「電荷Qと同じように振る舞う量」として扱うと式がきれいに揃います。だから磁荷という考え方を使うわけです。実在するかどうかより、電荷Qの位置に座る文字として受け取ってください。それだけで公式は正しく導けます。

Q. 磁束と磁力線は、結局どこが違うのですか?

出発点は同じで、空間の性質で割るかどうかが違います。

磁束 φ は、周りが真空でも鉄でも変わらない量です。それを透磁率 μ で割ったものが磁力線 N()で、こちらは空間によって本数が変わります。

同じ磁石を真空中に置いたときと鉄の中に置いたときで、磁束は同じ、磁力線は違う——この一文で区別してください。「束は無敵」という言葉も、ここを指しています。

Q. 比誘電率 ε_r や比透磁率 μ_r に単位が付かないのはなぜですか?

「真空の何倍か」を表す倍率だからです。

という式で、左辺の μ と右辺の μ₀ はどちらも[H/m]です。単位が両側で釣り合うためには、μ_r は単位を持たない数でなければなりません。式の形からそうなる、と押さえておけば忘れません。

計算問題では、この μ_r が「比透磁率1000の鉄心」といった形で条件に出てきます。μ₀ に掛けるだけなので、構造が分かっていれば処理は一瞬です。

Q. 磁界Hの単位が[A/m]なのは、電流と関係があるからですか?

はい、関係があります。磁界は電流によって作られるため、単位に電流のアンペアが入ってきます。

導線に電流を流すと周りに磁界ができる、という関係の向きの話は〈電磁力は「右ねじ1本」で攻略できる——電流と磁界の方向〉で整理しています。また、導体が2本並んだときに互いへ働く力については〈平行導体間に働く電磁力は「ℓを掛けない」が9割〉が扱っていますので、あわせて読むと単位の意味まで腑に落ちます。

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この記事を書いた人

資格LABO

電験三種を含め、さまざまな資格を一発合格した経験をもとに、 忙しい社会人が最短距離で受かるための教材とYouTube解説を作っています。 暗記シート・講義ノートは累計2,000部を突破し、 多くの合格報告をいただいています。

保有資格

電気主任技術者電気工事士公害防止管理者放射線取扱主任者中学校・高等学校 教員免許
  • ⚡ 電験三種・電験二種の解説動画をYouTubeで公開中
  • 📚「勉強の過程」より「結果を重視」した教材の制作・販売
  • 🏋️ 過去問対策Webサービス「電験ジム」を開発・運営

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