静電気と電磁力は「双子の公式」——εをμに替えるだけで全部解ける
電験三種「理論」で多くの人が別物として丸暗記してしまう静電気と電磁力。実はこの2つ、公式までそっくりな『双子』です。E=Q/4πεr² と H=m/4πμr²、クーロン力、蓄えるエネルギー、電束密度Dと磁束密度B——左右で見事に対応する対応表を一度作れば、覚える量は半分になります。εをμに替えるだけ、というたった一つのコツで、苦手だった電磁力がスッキリ攻略できます。
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この記事で身につくこと
電磁力の勉強を始めて、テキストを開いた瞬間に画面が式で埋まっていて、そっと閉じた経験はありませんか。
、、、……。似たような分数がずらりと並び、しかも静電気の公式ともよく似ているせいで、覚えたはずのものまで混ざってくる。「公式が多すぎて覚えきれない」「静電気と混ざってパニックになる」というのは、独学で電験三種に挑む人がほぼ全員通る道です。
でも、大丈夫です。この単元は、新しく覚える公式が実質ゼロでも戦えます。
なぜなら、電磁力の公式は静電気の公式の「コピペ」だからです。すでに覚えた静電気の式のうち、たった3文字を置き換えるだけで、磁界側の式がそのまま出てきます。
| つまずきやすいところ | この記事を読んだあと |
|---|---|
| 電磁力の公式を1本ずつ丸暗記していた | 静電気の式から3文字の置き換えで作れる |
| 静電気と磁界の式がごちゃ混ぜになる | 左右の対比表として一組で頭に入る |
| が1乗か2乗かで毎回悩む | 「力と界は2乗・電位だけ1乗」で即断できる |
| と を取り違える | どちらがどちらか、ペアで思い出せる |
| と が混ざる | 片方から片方を作れるので混ざりようがない |

暗記フレーズ:εをμに替えるだけ。静電気の式が磁界の式に化ける
この一言だけ、まず持ち帰ってください。
εをμに替えるだけ。静電気の式が磁界の式に化ける。
試験本番、電磁力の問題を前にして頭が真っ白になったら、電磁力の公式を思い出そうとしないこと。代わりに、静電気の公式を思い出す。そこから機械的に置き換える。この順番が、この単元の攻略法そのものです。
ステップ1:まず「悩みの正体」をはっきりさせる

電磁力でつまずく人の多くは、実は理解力の問題ではありません。覚え方の作戦が間違っているだけです。
公式を1本ずつバラバラの暗記項目として扱うと、この単元だけで10本近くを丸暗記することになります。しかも静電気側にもよく似た式が10本ほどある。合わせて20本を、似たもの同士で混同せずに保持する——これは記憶力の勝負であって、電気の勉強ではありません。
そこで発想を変えます。20本を覚えるのではなく、10本+変換ルール3つにする。覚える量が半分以下になるうえ、混同の余地もなくなります。
ステップ2:魔法の「3文字置き換え」を頭に入れる

置き換えるのは、次の3つだけです。
| 静電気(すでに知っている側) | → | 電磁力(これから作る側) | 意味 |
|---|---|---|---|
| (電荷) | → | (磁荷) | 力の源になる量 |
| (電界) | → | (磁界) | 離れた点での場の強さ |
| (誘電率) | → | (透磁率) | 空間・物質の性質を表す定数 |
覚え方はシンプルで、「源」「場」「媒質」の3階層がそっくり入れ替わると捉えるとブレません。電荷という源が電界という場を作り、その作りやすさを誘電率が決める。磁荷という源が磁界という場を作り、その作りやすさを透磁率が決める。構造が同じだから、式も同じ形になるわけです。
なお、この記事は静電気の公式を土台にします。静電気側があやふやだと置き換えようがないので、心当たりのある人は先に〈静電気と電磁力は「鏡うつし」:QとmでわかるEとHの対応表〉に目を通しておくと、この先が一気にラクになります。
ステップ3:クーロンの法則を置き換えてみる(対比①)

まずは一番の基本、クーロンの法則です。静電気側は次の形でした。
ここで 、 を実行します。すると、
これが2つの点磁荷の間に働く力、いわゆる磁気に関するクーロンの法則です。分数の形も、 も、 も、まったく手を加えていません。触ったのは2文字だけ。
つまり、この式は「新しく覚えた公式」ではなく、すでに覚えている式の別バージョンにすぎません。
ステップ4:電界 E と磁界 H を並べる(対比②)

次は「離れた点での強さ」を表す量です。点電荷 から距離 離れた点の電界は、
同じ置き換えをかけると、点磁荷 から距離 離れた点の磁界が出ます。
が になった、というより「 の式に 、 を通しただけ」です。ここまでで、クーロンの法則と場の強さという二大公式が、置き換え1回ずつで片付きました。
ステップ5:唯一の注意点、 の1乗と2乗(対比③)

ここが、この単元で唯一と言っていい注意ポイントです。 が1乗なのか2乗なのかで、毎回悩む人が本当に多い。
整理すると、こうなります。
| 量 | 式 | の次数 |
|---|---|---|
| 力 (静電力・磁力) | 2乗 | |
| 電界 | 2乗 | |
| 磁界 | 2乗 | |
| 電位 | 1乗 |
力と界(・)は の2乗。電位 だけが の1乗。
そしてもう1つ、地味に効く事実があります。磁界側に、電位 に相当する項目はありません。「じゃあ磁位はどう書くんだっけ」と探しに行く必要がないということです。 は静電気の専売特許、と先に線を引いておけば、対比表を眺めるときの迷いが1つ減ります。
ステップ6:コンデンサとコイルのエネルギー(対比④)

エネルギーの公式は、置き換えというより形が同じという覚え方が効きます。
| 蓄える素子 | 係数 | 2乗される量 | |
|---|---|---|---|
| 静電エネルギー | コンデンサ | ||
| 磁気エネルギー | コイル |
どちらも「 × 係数 × 2乗」という骨組みで、中に入る文字が違うだけ。コンデンサなら と 、コイルなら と 。この骨組みごと覚えてしまえば、片方を思い出せればもう片方も自動的に出てきます。
ステップ7:電束密度 D と磁束密度 B(対比⑤)

最後の対比です。どちらも「単位面積あたりに、束が何本通っているか」を表す量です。
ここでも置き換えが素直に効きます。 に対して、、 を実行すれば、そのまま が完成します。
は、この先の磁気回路やヒステリシス曲線でも主役として何度も出てくる式です。ここを「暗記した1本」ではなく「 から作れる式」として持っておくと、忘れても現場で復元できます。
ステップ8:対比表で全体を1枚にする
ここまでを1つの表にまとめます。試験直前に見返すなら、この表だけで十分です。
場と力の対比
| 項目 | 静電気 | 電磁力 |
|---|---|---|
| 場の強さ | ||
| 電位 | 同等の項目なし | |
| 力(クーロンの法則) | ||
| 比例定数(真空中) | 約 | 約 |
比例定数の2つは、置き換えでは出てきません。ここだけは数値の暗記が必要ですが、必ずペアで覚えるのがコツです。「静電気が 、磁力が 」と口に出して、セットで刷り込んでください。片方だけ覚えると、本番で必ず逆に入れます。
エネルギーと密度の対比
| 項目 | 静電気 | 電磁力 |
|---|---|---|
| エネルギー | ||
| 密度 |
なお、静電エネルギーは を代入することで にも にも変形できます。ただし、これは「代入しただけ」の別表現です。式変形が負担なら、 の1本だけ覚えておけば構いません。必要になった場面で を放り込めば済む話です。
ステップ9:手を動かして確かめる(クイズ2問)
読んで納得しただけでは、本番では出てきません。2問だけ、自力で書いてみてください。
クイズ①:コイルの磁気エネルギー
コイル に電流 が流れているとき、コイルが蓄える磁気エネルギーの公式は?
答えは 。コンデンサの と同じ「 × 係数 × 2乗」の形です。形のパターンで拾いにいけたなら、この単元の考え方が入っています。
クイズ②:磁束密度 B
透磁率 、磁界の強さ のとき、磁束密度 を求める式は?
思い出す手順は3ステップです。
- 静電気を思い出す →
- 魔法の変換を発動 → 、
- よって
答えを暗記から引き出すのではなく、この3ステップで毎回作れる状態がゴールです。作れるなら、忘れても困りません。
まとめ
電磁力の公式群は、独立した暗記項目の山ではありませんでした。静電気という土台の上に、3文字の変換ルールを1枚かぶせただけの世界です。
| 覚えること | 内容 |
|---|---|
| 変換ルール | 、、 |
| の次数 | 力と界は2乗、電位 だけ1乗 |
| エネルギーの形 | × 係数 × 2乗( と ) |
| 密度の形 | ↔ |
| 数値で覚えるもの | 静電気 /磁力 |
εをμに替えるだけ。静電気の式が磁界の式に化ける。
この単元は、電磁力の入口にすぎません。ここから先、電流が作る磁界の向き(右ねじ)、導体に働く力の向き(フレミング)、平行導体間の力、コイルのトルクへと話が広がっていきます。方向の話が苦手な人は〈電磁力は「右ねじ1本」で攻略できる——電流と磁界の方向〉と〈フレミングの法則を「左手は動かす・右手は生む」で一発整理する〉を続けて読むと、頭の中の地図がつながります。
⚠ ここを間違える人が多い
公式そのものより、当てはめ方で落とす人が多い単元です。実際に失点につながりやすい3点を挙げます。
❌ 距離が離れれば、力はいつも2乗で弱くなると思っている
点磁荷どうしの力は距離の2乗に反比例しますが、平行に置いた2本の導体の間に働く力は、距離に反比例(1乗)です。クーロンの法則の印象が強いせいで、選択肢に「2乗に反比例」と書かれているとつい選んでしまう。点と点なのか、線と線なのかで次数が変わる、と押さえてください。
✅ 点磁荷どうし=2乗に反比例/平行導体間=1乗に反比例。詳しくは〈平行導体間に働く電磁力は「ℓを掛けない」が9割〉で場合分けを確認できます。
❌ 2か所から来る磁界を、そのまま足し算している
磁界はベクトル量です。N極とS極が離れた位置にあって、ある点で両方の磁界が重なる問題では、大きさを単純に足すと必ず間違えます。図が正三角形に見えても、その点における2つの磁界ベクトルのなす角は、三角形の内角そのままとは限りません。
✅ まず各磁界の向きを矢印で描き込み、なす角を確認してから合成する。この一手間を省いた答えは、たいてい選択肢の中に「間違えた人用」として用意されています。
❌ 透磁率の最大値を、グラフの傾きから読もうとしている
– 曲線から最大透磁率を求める問題では、 という定義に立ち返ることが必要です。曲線の傾き()ではなく、原点から見た の比が最大になる点を読みます。
✅ 読み取った と を素直に割り算する。定義どおりに処理すれば迷いません。
過去問ではこう出た
電磁力は、理論科目で毎年のように顔を出す定番テーマです。実際に、次の回で出題されています。
| 出題回 | 問番号 |
|---|---|
| 平成27年 | 問3 |
| 平成30年 | 問3 |
| 令和5年 上期 | 問4 |
| 令和6年 上期 | 問3 |
並べてみると、問3〜問4という前半の位置に集中しているのが分かります。つまり、試験開始直後の落ち着かない時間帯に解くことになる問題です。ここで公式を思い出すのに手間取ると、その後の時間配分まで崩れます。だからこそ「静電気から作る」という復元ルートを持っておく価値があります。
出題の中身は、点磁荷が作る磁界の大きさ、磁界のベクトル合成、– 曲線の読み取り、導体に働く力の関係など、この記事で扱った土台がそのまま問われる形です。公式を選ぶ段階で間違えると全滅する一方、選べれば計算自体は素直な問題が多いのも特徴です。
読んで分かった気になっているかどうかは、解いてみればすぐ分かります。
よくある質問
Q. 磁荷 M って、実際に存在するものなんですか?
正直に言うと、電荷のように単独で取り出せるものではありません。磁石を半分に割っても、N極だけの破片は手に入らず、必ずN極とS極を持った小さな磁石が2つできます。
それでも磁荷という考え方を使うのは、静電気と同じ枠組みで計算できて便利だからです。試験対策としては「電荷と同じように扱ってよい量」と割り切って構いません。この割り切りに抵抗があるなら、〈電磁力の前に「磁石の正体」:同種は反発・異種は引き合うを一発理解〉でN極・S極のふるまいを押さえておくと、気持ちが落ち着きます。
Q. 磁界 H と磁束密度 B は、結局どう違うんですか?
という関係が、そのまま答えになっています。
| 意味するもの | 物質の影響 | |
|---|---|---|
| 磁界 | 磁界を作ろうとする働きの強さ | 受けない |
| 磁束密度 | その結果、実際に通った磁束の密度 | 透磁率 を通して受ける |
同じ をかけても、空気中と鉄心の中では出てくる がまるで違います。 が桁違いに大きいからです。「 は原因、 は結果、 が変換レート」と捉えると、この先の磁気回路でも迷いません。
Q. 3文字を置き換えるだけなら、静電気と電磁力は全部同じと考えていいですか?
ほぼ同じですが、2つだけ例外があります。
1つは電位 です。静電気側にはありますが、磁界側に相当する項目は出てきません。もう1つは比例定数で、 と という数値そのものは置き換えでは導けず、覚えるしかありません。
逆に言えば、この2点だけ別枠で管理しておけば、残りは置き換えで全部通ります。「原則コピペ、例外は2つ」——この構えで臨めば、電磁力の公式アレルギーは克服できます。
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