避雷器を「過電圧だけ流して遮る門番」で攻略
電験三種「電力」科目で頻出の避雷器を、流体力学的な難しさ抜きで『ふだんは閉じていて、過電圧が来たときだけサージを大地に流し、終わったら続流を遮断する門番』として整理。避雷針との違い・続流・制限電圧・ZnO/SiCの違いまで、苦手な人がつまずくポイントを1つずつ攻略します。
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この記事で身につくこと
「避雷器」と聞いて、こんな状態になっていませんか。
- 避雷器と避雷針、名前は知っているけれど違いを説明できない
- 「続流」という言葉が出てきた瞬間に読み飛ばしてしまう
- 「ギャップレス」「酸化亜鉛(ZnO)」が呪文にしか見えない
- 電圧-電流特性のグラフを見せられても、どこを見ればいいのか分からない
大丈夫です。避雷器は、仕組みさえ腹に落ちてしまえば暗記量そのものは決して多くない単元です。しかも、覚えるべきことがバラバラに散っているわけではなく、「普段は閉じ、異常時だけ開く門番」というたった1つのイメージに、ほとんど全部がぶら下がっています。
この記事を読み終えるころには、次の状態になっています。
| 読む前 | 読んだ後 |
|---|---|
| 避雷器=雷を受け止める棒、というぼんやりした理解 | 通常時は絶縁・過電圧時だけ放電、と動作で説明できる |
| 「続流」で思考停止 | 放電の後始末まで避雷器の仕事だと分かる |
| ZnOは名前だけ丸暗記 | グラフの形と主流化の理由をつなげて説明できる |
| 避雷針とごちゃまぜ | 「針は建物、器は機器」で瞬時に区別できる |

暗記フレーズ:過電圧が来たら流して遮る、それが避雷器。続流は切る、これが制限電圧
少し長いですが、この一文が今日の骨格です。声に出して読んでみてください。リズムで覚えられるはずです。
過電圧が来たら流して遮る、それが避雷器。続流は切る、これが制限電圧
このフレーズには、試験で問われるキーワードが3つ埋め込まれています。
| キーワード | フレーズ中の位置 | 意味(この記事で解説する内容) |
|---|---|---|
| 過電圧 | 「過電圧が来たら」 | 雷や開閉サージによる異常な電圧。避雷器が動く引き金 |
| 続流 | 「続流は切る」 | 放電後も流れ続けようとする電流。遮断が必要 |
| 制限電圧 | 「これが制限電圧」 | 放電中に避雷器の両端に生じる電圧 |
いま3つとも意味が分からなくても、まったく問題ありません。むしろそれが普通です。これから1つずつ、図と一緒にほどいていきます。フレーズだけ先に口に馴染ませておいて、意味は後から埋めていく——この順番が、遠回りに見えていちばん速い覚え方です。
ステップ1:避雷器とは何か——過電圧を大地へ逃がす門番

避雷器の定義は、教科書的に書くと次の一文です。
雷や開閉サージによる異常過電圧から、電力機器を守る保護装置
ポイントは、避雷器が普段は息を潜めているという点です。常に働いているわけではなく、いざという時だけ出動する門番だとイメージしてください。
引き金になる「サージ電圧」は雷だけではない
避雷器を動かす異常過電圧のことを、サージ電圧と呼びます。ここで多くの人が誤解するのが、「雷のときだけの話でしょう?」という思い込みです。
| 種類 | 発生原因 |
|---|---|
| 雷サージ | 落雷。送配電線を伝わって変電所へ侵入する |
| 開閉サージ | 遮断器の開閉操作などにともなって発生する |
雷だけでなく、機器の操作そのものでも異常電圧は生まれます。だからこそ避雷器は、あらゆる変電所・発電所に必ずと言っていいほど設置されているのです。
なお、この「遮断器」や「断路器」といった開閉機器のはたらきがあやふやな人は、先に断路器を「電気を切ってから外す“安全スイッチ”」で攻略を読んでおくと、開閉サージの話がすっと入ってきます。
ステップ2:作動原理——通常時は絶縁、過電圧時だけ大地へ放電

ここが避雷器の心臓部です。動作を「通常時」「過電圧時」の2つに分けて比べると、驚くほどシンプルになります。
| 通常時 | 過電圧時 | |
|---|---|---|
| 避雷器の状態 | 絶縁状態 | 導通状態 |
| 流れる電流 | ほとんど流れない | 大地へ一気に流れる |
| 役割 | 待機(何もしない) | 電圧の上昇を抑え、機器を保護 |
この「普段は通さない、でも異常時だけ一瞬で通す」という変わり身の早さこそが、避雷器のすべてです。
もし避雷器が無かったら
サージ電圧がそのまま変圧器などの機器に届き、絶縁が破壊されて機器そのものが壊れます。避雷器は文字どおり、機器を守る最後の砦です。
そしてこの切り替えには、モーターのような可動部品も、人の操作も一切必要ありません。素子そのものが持つ非直線抵抗特性という性質だけで、自動的に切り替わります。この性質については、ステップ5でグラフとともにじっくり見ていきます。
ステップ3:続流と制限電圧——「流す」だけでは仕事は終わらない

避雷器が過電圧を大地へ流した——めでたし、とはいきません。ここからが「続流」の話です。
続流とは
続流とは、過電圧がおさまった後も、交流電源から引き続き流れ続けようとする電流のこと。避雷器がいったん「開いて」大地への通り道を作ると、その道を伝って通常の交流電流まで流れ込もうとしてしまうのです。
雷は去ったのに、電気だけが居座り続ける——そんなイメージです。放置すればどうなるか。
続流が流れ続けると、系統に余計な負荷がかかり続け、大きな支障につながるおそれがあります。だからこそ「素早い遮断」が避雷器の重要な使命です。
制限電圧とは
そしてこの放電中に、避雷器の両端に発生する電圧が制限電圧です。
| 用語 | 何のこと | 避雷器がすべきこと |
|---|---|---|
| 続流 | 放電後も流れ続けようとする電流 | 素早く遮断する |
| 制限電圧 | 放電中に避雷器の両端に生じる電圧 | 低く抑えて機器を守る |
暗記フレーズの後半「続流は切る、これが制限電圧」は、まさにこの後始末を指しています。「流す」も「止める」も、どちらか一方だけでは避雷器として成立しません。両方をセットでこなして、初めて機器を守れるのです。
ステップ4:進化の歴史——ギャップ付きからギャップレスへ

避雷器には、旧型と最新型の2世代があります。試験ではこの2つの組み合わせが混同を狙って出題されるので、セットで覚えてしまいましょう。
| 旧型 | 最新型(主流) | |
|---|---|---|
| 呼び名 | ギャップ付き避雷器 | ギャップレス避雷器 |
| 素子材料 | 炭化けい素(SiC) | 酸化亜鉛(ZnO) |
| 直列ギャップ | 必要 | 不要 |
「すきま(ギャップ)を使っていた設備が、すきまをなくす方向に進化した」——この発想の転換が、避雷器の歴史の本筋です。
なお、現在の新設ではほとんどがギャップレス型ですが、古い設備では今もギャップ付きが現役の場合があります。歴史の流れとして両方を押さえておくと安心です。
ステップ5:SiCの弱点——素材の不足をギャップで補っていた

では、なぜ旧型にはわざわざ物理的なすきまが必要だったのでしょうか。答えは、素材そのものの弱点にあります。
炭化けい素(SiC)は、通常の電圧でもわずかに電流が漏れ出てしまうという性質を持っていました。門番にたとえるなら、閉じているつもりでも扉がうっすら開いている状態です。
そこで登場するのが直列ギャップ、つまり物理的なすきまです。
| ギャップが担っていた仕事 | 内容 |
|---|---|
| 通常時の電流を止める | SiCだけでは漏れてしまう電流を、すきまで物理的に遮断 |
| 続流を遮断する | 放電後に残る続流を切るのにも、ギャップの力が必要だった |
つまりSiC式は、通すのも止めるのも、すきまという物理構造に頼らざるを得なかったわけです。
物理構造に頼ることの副作用
ここが試験でも実務でも重要なポイントです。可動部分やすきまがあるということは、そこが汚れや摩耗の影響を受けるということ。経年劣化やメンテナンスの手間からは逃れられません。
この「素材の弱点を構造で補う」という発想が、次に登場する酸化亜鉛によって根本からひっくり返されます。
ステップ6:非直線抵抗特性——グラフが直角に近いほど優秀

ここが今日いちばんの山場です。縦軸が電圧、横軸が電流のグラフに、2本の線が描かれています。
| 線 | 材料 | 形 | 意味 |
|---|---|---|---|
| 青 | SiC | なだらかなカーブ | 電圧が低いうちから少しずつ電流を通してしまう |
| 赤 | ZnO | ある電圧から直角に切り立つ | 低電圧では通さず、超えた瞬間に一気に流す |
青い線のなだらかさが、そのまま「漏れる」という弱点の正体です。電圧が上がるほどこの現象は顕著になり、雷のような大電圧では不利にはたらきます。だから、すきまで止める必要があったのです。
一方の赤い線。電圧が低いうちはほぼ真横、つまり電流をほとんど通しません。ところがある電圧を超えた瞬間、線はほぼ真上に切り立ちます。まるでスイッチをオンにした瞬間のようです。
これが優れた非直線抵抗特性です。
グラフが直角に近いほど、門番として優秀
なぜこれが「圧倒的な強さ」なのか
思い出してください。ステップ2で見た「通常時は絶縁、過電圧時だけ導通」という切り替えは、この赤い線の形そのものです。
つまり、ギャップという物理構造に頼らなくても、酸化亜鉛という素材の性質だけで、自動的に切り替えが実現できる。これがZnOの正体です。
試験ではこう答える
グラフを選ばせる問題も出題されています。ここで丸暗記に走ると、図の向きを変えられただけで崩れます。次の一文を、文章として言えるようにしておいてください。
ZnOは非直線抵抗特性に優れ、電圧-電流特性のグラフが直角に近い
理屈が分かっていれば、グラフが逆向きに描かれた引っかけにも動じません。
ステップ7:ギャップレスが主流になった理由

ZnOの主流化は、ピラミッドのように3段で積み上がっています。
| 段 | 内容 |
|---|---|
| 土台 | ZnOの驚異的な非直線抵抗特性 |
| 中段 | 漏れ電流がないため、ギャップが不要に |
| 頂点 | 超高速動作・劣化なしの実現 |
メリットを言葉にすると次の2点です。
| メリット | 理由 |
|---|---|
| 動作が超高速 | ギャップという物理的な間を経由しないため |
| 劣化がなく安定 | すきまが無く、汚れや摩耗の影響を受けないため |
すきまという機械的な要素がなくなっただけで、速さと寿命の両方が手に入った——だからこそ、発電所・変電所という絶対に止められない重要インフラで、絶対的エースとして使われているのです。
試験対策としては、「主流=ギャップレス=ZnO」の3点セットを必ず結びつけて覚えてください。
ステップ8:避雷器と避雷針の違い——「針は建物、器は機器」
漢字が1文字違うだけの2語ですが、役割はまったくの別物です。試験でも引っかけとして頻出します。
| 避雷針 | 避雷器 | |
|---|---|---|
| 何を守る | 建物 | 電力系統の機器(変圧器など) |
| 雷との関係 | 雷を直接受けて大地へ逃がす | 送配電線を伝わってきた過電圧を制限する |
| 対象の雷害 | 直撃雷 | 侵入してきたサージ電圧 |
| イメージ | 雷を受け止めるキャッチャー | 過電圧を通さない門番 |
覚え方はシンプルに、「針は建物、器は機器」。守る対象で区別すれば、本番で迷いません。
ちなみに、ここで避雷器が守る相手として登場する変圧器のまわりには、電圧や電流を測るための機器も並んでいます。そのあたりを整理したい人は計器用変成器(CT・VT)を「大きい電気を測れる大きさに変換する橋渡し役」で攻略もあわせてどうぞ。変電所の全体像がつながります。
ステップ9:設置場所——保護したい機器の「すぐ近く」に
最後に、現場の実務がそのまま試験に出るテーマです。避雷器はどこに置くのが正解でしょうか。
答えは、保護したい機器(変圧器など)のなるべく近く。離れた場所ではいけません。
なぜ離すとダメなのか
距離が離れると、進行波の影響で保護効果が下がり、変圧器にかかる電圧がかえって高くなってしまうからです。
避雷器がその場で電圧を制限しても、そこから変圧器までの距離が長いと、電圧が伝わるあいだに波形が変化します。その結果、想定より高い電圧が機器に届いてしまうのです。
明確な距離の数値は機器や電圧階級によって変わりますが、覚えるべき原則は1つだけ。
できるだけ近く、直近に設置する
「なぜ近くがいいのか」まで理解しておけば、設置距離に関する応用問題が出ても慌てずに済みます。
まとめ
避雷器の要点は、たった3つに集約できます。
| # | 要点 |
|---|---|
| 1 | 避雷器は過電圧を大地に逃がし、機器を守る門番。通常時は絶縁、過電圧時だけ放電する |
| 2 | 放電後の続流は確実に遮断する。放電中の両端電圧が制限電圧 |
| 3 | 酸化亜鉛(ZnO)の圧倒的な非直線抵抗特性により、ギャップレス化が実現した |
最後にもう一度、声に出してみてください。
過電圧が来たら流して遮る、それが避雷器。続流は切る、これが制限電圧
記事の冒頭では意味の分からなかったこのフレーズが、いまは全部つながって聞こえているはずです。丸暗記ではなく理由から理解できている——それが今日いちばんの成果です。
電力科目には、ほかにも保護や系統にかかわるテーマが続きます。系統の電圧を調整する側の話として調相設備とは?コンデンサ・リアクトル・SVCの使い分けも同じ「仕組みから理解する」姿勢で読むと、変電所まわりが一気に得意分野になります。
⚠ ここを間違える人が多い
避雷器は、選択肢の作り方が意地悪な単元です。実際に取り違えが起きやすい3点を、先につぶしておきましょう。
❌ ZnOの抵抗特性を「線形」と書いた選択肢を選んでしまう
✅ 正しくは非直線(非線形)です。「電圧に比例して電流が増える」という書き方の選択肢は、そのまま誤りだと判断してください。ZnOの価値は比例しないことそのもの。グラフが折れ曲がって直角に近づくからこそ、通常時は通さず異常時だけ通せるのです。「比例=ダメな門番」と覚えておけば迷いません。
❌ 続流と制限電圧を取り違える
✅ 続流は「電流」、制限電圧は「電圧」です。名前に答えが書いてあるのに、本番では焦って入れ替えてしまいます。問題文が「流れ続けようとするもの」を聞いていれば続流、「両端に生じるもの」を聞いていれば制限電圧。読み取りの軸を、電流か電圧かに置いてください。
❌ ギャップレスなのにギャップで続流を切ると思い込む
✅ ギャップレス避雷器には、そもそも切るためのすきまがありません。ZnO自身の非直線抵抗特性で、電圧が下がれば自動的に高抵抗へ戻り、続流が止まる——ここが旧型との決定的な差です。「ギャップレス=続流を自力で処理できる=ZnOのおかげ」と、3つを鎖のようにつないで覚えてください。ここを取り違えると、正解に見える誤答へ引き込まれます。
❌ 避雷器を機器と直列に入れると思ってしまう
✅ 避雷器は保護したい機器に対して並列に接続します。直列に入れたら通常の電流まで避雷器を通ることになり、そもそも成立しません。普段は絶縁して待機し、異常時だけ大地への「別ルート」を開く——この動作をイメージすれば、並列以外にあり得ないと分かります。
過去問ではこう出た
避雷器は、単独テーマとしても変電所設備の一部としても繰り返し問われています。テーマで照合した範囲では、次の出題が確認できます。
| 年度 | 問番号 |
|---|---|
| 令和7年 下期 | 問6 |
| 令和3年 | 問13 |
| 令和2年 | 問9 |
| 平成29年 | 問9 |
| 平成27年 | 問7 |
出題の傾向は、大きく2パターンです。1つは用語の穴埋め・正誤判定。「続流」「制限電圧」「非直線抵抗特性」「ギャップレス」といった語を入れ替えた選択肢から、正しい組み合わせを選ばせる形式です。もう1つは変電所設備をまとめて問う複合問題で、遮断器・断路器・計器用変成器などと並んで避雷器が1つの選択肢として登場します。
どちらも、この記事で扱った「通常時は絶縁/過電圧時は放電/続流は遮断/主流はZnOのギャップレス」という4点が頭に入っていれば十分に対応できます。あとは実際に手を動かして、選択肢の言い回しに慣れておきましょう。
よくある質問
Q. 避雷器は雷が落ちるたびに交換が必要なのですか?
いいえ、避雷器は動作するたびに壊れる使い捨ての部品ではありません。過電圧を大地へ流し、続流を遮断したあとは、自動的に元の絶縁状態に戻って次に備えます。とくにギャップレス避雷器は、汚れや摩耗の原因になる物理的なすきまを持たないため、劣化が少なく安定して動作し続けるのが大きな強みです。「動いたら終わり」ではなく「動いて、戻って、また待機する」——この繰り返しができるからこそ、変電所の常設設備として信頼されています。
Q. 制限電圧は、低いほど良いのですか?高いほど良いのですか?
低いほど良いと考えてください。制限電圧は、避雷器が放電しているあいだ、その両端に生じている電圧です。避雷器と並列につながっている機器には、この電圧がそのままかかります。つまり制限電圧が低いほど、変圧器などに届く電圧を低く抑えられる=しっかり守れているということ。ステップ9で見た「機器のすぐ近くに置く」という原則も、進行波の影響で機器側の電圧が上がってしまうのを防ぐための話でした。制限電圧を低く保ち、その値のまま機器に届かせる——この2つはセットの考え方です。
Q. ZnOがそれほど優秀なら、SiCの知識はもう覚えなくてよいのでは?
気持ちは分かりますが、SiCはZnOの凄さを説明するための比較対象として試験に登場します。「なぜギャップが不要になったのか」を問う問題は、SiCに漏れ電流という弱点があったことを知らないと答えられません。逆に言えば、SiCについて覚えることは「漏れ電流がある/だから直列ギャップが必要だった/グラフはなだらか」の3点だけです。ZnOの引き立て役として、この3つだけ押さえておけば十分に戦えます。
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