磁気回路のオームの法則とは?起磁力・磁束・磁気抵抗の対応
磁気回路は、電気回路のオームの法則と完全に対応しています。「起磁力=起電力/磁束=電流/磁気抵抗=電気抵抗」——この3対を押さえれば、電験三種「理論」の電磁力・磁気回路が苦手な人へ。実は磁気回路は、あなたが最初に覚えたオームの法則と完全対応しています。「起磁力=起電力/磁束=電流/磁気抵抗=電気抵抗
🎥 動画でも解説しています > YouTubeで開く
この記事で身につくこと
「磁気回路」と聞いた瞬間に、ページを飛ばしていませんか。
起磁力、磁束、磁気抵抗、透磁率、磁路長。見慣れないカタカナと記号がずらりと並び、公式集を開けば新しい式が5つも6つも出てくる。理論科目のなかでも、ここで独学を止めてしまう人は本当に多い分野です。
でも、断言します。磁気回路で新しく覚える公式は、一つもありません。
なぜなら磁気回路は、あなたがすでに知っている電気回路の丸ごとコピーだからです。中学生のころに習ったオームの法則 I=E/R。あれさえ手元にあれば、文字を3か所だけ書き換えるだけで、磁気回路の問題はそのまま解けてしまいます。
この記事を読み終えると、こうなります。
- 電気回路の知識を、そのまま磁気回路へ「翻訳」できるようになる
- 磁気抵抗Rmを、2つのルート(鉄心の形から/インダクタンスから)で自在に求められる
- 磁界に蓄えられるエネルギーの3つの公式を、基本形1つから自分で作り出せる
- 多くの受験者が引っかかる「起磁力の単位[A]の罠」を、確実に回避できる
しかも磁気回路は、理論科目だけの話では終わりません。機械科目の変圧器やモータの鉄心設計は、そっくりそのままこの理論の上に建っています。ここを固めておくと、あとで機械科目に入ったときに「これ、理論でやったやつだ」と何度もニヤリとできます。苦手分野が、そのまま得点源に変わる。そういう単元です。

なお、この記事は電磁力シリーズの最終回にあたります。磁界そのものの向きや、電流と磁界の関係があやふやなまま読み進めると途中で苦しくなるので、不安な方は先に電磁力は「右ねじ1本」で攻略できる——電流と磁界の方向に目を通しておくと、この先がぐっと楽になります。
暗記フレーズ:電気→磁気、E→NI、I→φ、R→Rm、3対セットで丸ごと変換
今日の記事の中身は、極端に言えばこの一行がすべてです。
| 電気回路 | → | 磁気回路 |
|---|---|---|
| 起電力 | → | 起磁力 |
| 電流 | → | 磁束 |
| 電気抵抗 | → | 磁気抵抗 |
覚えることは、たった3行。EとNI、Iとφ、RとRm。この対応を体に染み込ませてしまえば、あとはこれまで積み上げてきた電気回路の知識を、そのまま流用するだけになります。
実際にオームの法則を翻訳してみましょう。電気回路の基本公式は、
でした。この3文字を、上の表にしたがって置き換えます。
文字が変わっただけで、式の構造は完全に同じです。分子に「押し出す力」、分母に「通りにくさ」。この構図はまったく崩れていません。
ステップ1:土台となる電気回路のオームの法則をおさらいする
翻訳の前に、翻訳元をきちんと確認しておきましょう。

登場人物は3つだけ。起電力E、電流I、電気抵抗Rです。
三角形の図で、上にE、下にIとRを置き、求めたい文字を指で隠すと式が出てくる——あの覚え方でも構いません。大事なのは式そのものより、電圧が高いほど電流は流れやすく、抵抗が大きいほど電流は流れにくいという感覚です。
起電力が「原動力」、抵抗が「邪魔者」。この役割分担さえ握っていれば、次の磁気回路はもう半分終わったようなものです。
ステップ2:磁気回路のオームの法則に翻訳する
いよいよ本題です。

鉄心に導線をN回巻いたコイルに、電流Iを流します。このとき生まれる起磁力 は、
電流Iと巻き数Nの掛け算です。これが電気回路の起電力Eにあたる「押し出す力」になります。
そして鉄心の中を通るのが磁束 。これが電流Iにあたります。鉄心という通り道にも「通しにくさ」があり、それが磁気抵抗 です。
ここで一つ、よくある不安に先回りしておきます。「磁束φって、そもそも何なのか分からない」。
磁束φは、鉄心の断面を貫く磁力線の本数のようなものだとイメージしてください。電流Iが「電子の流れの量」なら、磁束φは「磁力線の流れの量」です。たしかに目には見えません。でも、電流だって目には見えないのに、あなたはもう何十問も解いてきたはずです。見えないものを式で扱うという点では、両者にまったく差はありません。
なぜこの対応が成り立つのか、根っこも押さえておきましょう。電気回路では起電力Eが電子を押し出しました。磁気回路では、コイルに電流を流すことで生まれた起磁力Fmが、鉄心の中に磁束を押し出します。「押し出す力」と「通しにくさ」という役割分担が、電気と磁気で完全に一致している。だから式の形も一致するのです。
ここまで来ると、磁気回路の公式は「覚えるもの」ではなく「電気回路から導けるもの」に変わります。
ステップ3:対応表をもう一段深くする(導電率σ↔透磁率μ)
翻訳できるのは、E・I・Rの3対だけではありません。抵抗の中身まで、まるごと翻訳できます。

電気抵抗は、実は次の式でも表せます。
lは導線の長さ、σ(シグマ)は導電率、Aは断面積です。導電率σは「電気の通しやすさ」を表す材料固有の値で、銅なら大きく、ゴムなら小さくなります。
そして、このσに対応するのが透磁率μ(ミュー)です。
σがμに変わっただけで、式の形はそっくりそのまま。ここが今日いちばん重要な対応関係です。
| 項目 | 電気回路 | 磁気回路 |
|---|---|---|
| 押し出す力 | 起電力 | 起磁力 |
| 流れるもの | ||
| 通りにくさ | ||
| 材料の性質 | 導電率 | 透磁率 |
数字で動きも確かめておきます。電気抵抗は、導線を2倍の長さにすれば2倍、断面積を2倍にすれば半分になりました。磁気抵抗もまったく同じで、鉄心を2倍の長さにすればRmは2倍、断面積を2倍にすればRmは半分です。長さと太さが、抵抗を反対方向に動かすという感覚は、そのまま使い回せます。
ステップ4:磁気抵抗を決める三大要素
磁気抵抗Rmの式に出てくる3つの記号を、あらためて整理しましょう。

- 磁路長 … 磁束の通り道の長さ。長いほど通りにくいので分子
- 断面積 … 通り道の太さ。太いほど通りやすいので分母
- 透磁率 … 素材の磁束の通しやすさ。大きいほど通りやすいので分母
lとAは「道の形」、μは「道の素材」。道が長いと大変で、道が太いと楽。ここは電気抵抗のときに培った直感がそのまま通用します。
ステップ5:透磁率μの正体をつかむ
三大要素のうち、いちばん実感を持ちにくいのが透磁率です。

mは磁極の強さ、Hは磁界の強さ、Aは断面積です。磁界の強さHで素材を磁化させたとき、どれだけ強い磁極mが生まれるか。その比率が透磁率μだと考えてください。
言い換えれば、透磁率とは「磁石になりやすさ」です。μが大きい素材ほど、同じ磁界でも強く磁化される。つまり磁束を通しやすい素材だ、ということになります。単位は [H/m](ヘンリー毎メートル)。
鉄やニッケルのような磁性体はμが非常に大きく、磁束をぐいぐい引き込みます。逆に木やアルミ、空気はμが小さく、磁束をほとんど通しません。変圧器やモータの鉄心が木ではなく鉄でできているのは、当たり前のようでいて、ちゃんとこの理由があるのです。
そして、この感覚が握れていれば、 でμが分母に来ている理由も自然に思い出せます。通しやすさが大きいほど、通りにくさは小さくなる。それだけの話です。
なお、磁界の強さHや磁束密度Bのあたりが怪しい方は、先に静電気と電磁力は「双子の公式」——εをμに替えるだけで全部解けるを読んでおくと、この記事の「翻訳」という考え方が二重に効いてきます。
ステップ6:磁気抵抗のもう一つの求め方(インダクタンス直結ルート)
Rmを求めるルートは、鉄心の形からだけではありません。インダクタンスLからも求められます。

出発点は、自己インダクタンスの定義です。
ここに、さきほど手に入れた磁気回路のオームの法則 を代入します。
分子と分母のIが打ち消し合って消え、Nの2乗が残りました。これをRmについて解き直すと、
つまり、磁気抵抗は巻き数の2乗に比例し、インダクタンスに反比例する。
ここで「巻き数を増やすとRmが大きくなるの? 直感と逆では?」と引っかかった方は、鋭いです。注意してほしいのは、鉄心の形が変わらない限りという前提。磁路長l・断面積A・透磁率μが一定なら、Rmはその3つだけで決まる値であって、変わりません。実際には巻き数Nを増やせばインダクタンスLも一緒に増えるので、Rmの値そのものは動かないのです。
この式は「Rmの正体が変わる」という話ではなく、「NとLが分かっていればRmを逆算できる」という計算上の近道を示しています。
単位でも検算しておきましょう。Lの単位はヘンリー[H]、巻き数Nは無単位。N²をLで割れば[H⁻¹]、つまり磁気抵抗の単位ときれいに一致します。
試験では「Nを2倍にしたらLは何倍か」というひっかけも出ます。鉄心の形が同じでRmが一定なら、 からLは4倍。油断すると2倍と答えてしまう定番です。丸暗記ではなく から毎回導けるようにしておけば、どんな形で出題されても揺らぎません。
ステップ7:磁界に蓄えられるエネルギー、3つの顔
頻出テーマです。公式が3つあるように見えて、実は基本形は1つだけです。

基本形はこれです。
Bは磁束密度、Hは磁界の強さ。ここから2つの形が枝分かれします。
形①: を代入する(Bを消す)
形②: を代入する(Hを消す)
大事なのは、与えられた量に合わせて使い分ける視点です。
| 問題文で与えられている量 | 使う形 |
|---|---|
| と | |
| と | |
| と |
3つを別々に丸暗記する必要はありません。基本形 と、橋渡し役の の2つだけを持っておけば、試験本番でどちらの形にも自在に変形できます。公式を1個覚えれば、実質3個ぶん使える。丸暗記が苦手な人ほど、この作戦が効きます。
ステップ8:例題で手を動かす
理屈が分かったつもりでも、手が動かなければ試験では0点です。1問だけ解いてみましょう。
問題 巻き数 回のコイルに、電流 [A] を流した。この磁気回路の磁気抵抗が [H⁻¹] のとき、鉄心を通る磁束 を求めよ。
手順はたった2ステップです。
① 起磁力 を求める
② 磁束 を求める
答えは 0.5 [Wb](ウェーバ)。
やったことは、起磁力を出して磁気抵抗で割っただけ。電気回路で を計算するのと、手順がまったく同じです。新しい公式は、やはり一つも使っていません。
なお①で出した200 [A] という数字は、正確には「電流×巻き数」で決まるアンペア回数です。ここが次の節で扱う、いちばんの落とし穴になります。
まとめ
今日の結論は一つ。磁気回路は翻訳で攻略する、これに尽きます。
| 覚えること | 内容 |
|---|---|
| 3対変換 | / / |
| 磁気のオームの法則 | |
| 磁気抵抗(形から) | |
| 磁気抵抗(Lから) | |
| 磁界のエネルギー | (+ で変形) |
一見すると5行ありますが、新しく暗記した公式はゼロです。3対変換さえ握っていれば、上から2つは電気回路のオームの法則そのもの。3つ目は のσをμに替えただけ。4つ目は定義式から導いたもの。5つ目は基本形1つから枝分かれさせたもの。
電気回路の知識を磁気に翻訳しただけ——これが、この単元の正体です。この視点さえあれば、初見の応用問題が出てきても慌てる必要はありません。
⚠ ここを間違える人が多い
この単元でつまずく人には、はっきりした共通パターンがあります。3つ挙げますので、自分に当てはまらないか確認してください。
❌ 起磁力の[A]を、ふつうの電流のアンペアだと思い込む → ✅ Fmの[A]は「電流×巻き数」の意味です。同じ記号でも中身が違います。「[A]と書いてあるから電流のことだな」と反射的に判断すると、単位換算のところで必ず足をすくわれます。記号ではなく式の中身で考えるクセをつけてください。
❌ 磁気抵抗の単位[H⁻¹]の意味を、深追いして時間を溶かす → ✅ ヘンリーの逆数と言われてもピンとこないのが普通です。ここは割り切って、 という式の形だけを頼りにしてください。「電気抵抗 と形が完全に同じ」と同一視してしまえば、単位の哲学を考える必要はありません。試験で問われるのは形のほうです。
❌ 鉄心の中が空洞だと、磁束はそこを避けて外を通ると考える → ✅ 逆です。透磁率が高い鉄心は磁束にとっていちばん通りやすい道なので、磁束はむしろ鉄心に引き込まれ、その内部を集中して通ります。「中が空洞なら通れないはずだ」という日常感覚は、ここでは通用しません。磁束は が小さい経路を選ぶ——この一点で判断してください。
❌ 透磁率μが大きいほど、磁界の強さHも大きくなると考える → ✅ ですから、Bが同じならμが大きいほどHは小さくなります。反比例です。比透磁率の大きい鉄心のほうがHも大きいはず、と直感で選ぶと、複数の鉄心を比較させるタイプの問題で答えが丸ごと入れ替わります。
共通しているのは、単位記号や日常感覚だけで判断してしまうという姿勢です。記号を見たら、その裏にある式の意味までセットで思い出す。それだけでケアレスミスはほぼ消えます。
なお、この「形が同じなら中身も同じ」という発想は電磁力全体に共通するものです。静電気と電磁力は「鏡うつし」:QとmでわかるEとHの対応表を合わせて読むと、対応表を覚える負担がさらに軽くなります。
過去問ではこう出た
磁気回路は、理論科目でコンスタントに出題されている分野です。実際に、次の回で出題されています。
| 年度 | 問番号 |
|---|---|
| 平成28年 | 問4 |
| 平成29年 | 問17 |
| 令和3年 | 問3 |
| 令和5年 上期 | 問3 |
| 令和5年 下期 | 問3 |
問われ方には傾向があります。一つは、磁気抵抗Rmを求めさせて磁束φを計算させる、この記事のステップ8そのままのタイプ。もう一つは、鉄心の形状や透磁率を変えたときに磁束・磁界の強さがどう変わるかを比較させる、定性的な判断を問うタイプです。後者は計算量こそ少ないものの、「ここを間違える人が多い」で挙げた思い込みをそのまま突いてくるので、正答率が下がりやすい傾向にあります。
平成29年の問17のように、B問題(配点の大きい問題)で出ることもあります。取りこぼすと痛い分野だと考えて準備しておくのが得策です。
よくある質問
Q. 磁束φと磁束密度Bは、何が違うのですか?
φは「通っている磁力線の総量」、Bは「単位面積あたりの量」です。断面積Aの鉄心なら の関係になります。同じ磁束φでも、鉄心が細ければBは大きく、太ければBは小さくなる、というイメージです。
問題文が「磁束を求めよ」なのか「磁束密度を求めよ」なのかで答えが変わるので、解き始める前にどちらを聞かれているかを必ず確認してください。単位もφは[Wb]、Bは[T]と別物です。
Q. 磁気抵抗を求めるとき、 と のどちらを使えばいいですか?
問題文に何が与えられているかで決めます。磁路長・断面積・透磁率という鉄心の寸法が並んでいれば前者、巻き数とインダクタンスが並んでいれば後者です。
どちらも同じRmを求める式なので、答えが食い違うことはありません。2つのルートを持っておくと、片方の情報が欠けている問題でももう片方から攻められるので、単純に手札が増えたと考えてください。
Q. 鉄心の途中に空気の隙間(エアギャップ)があると、どうなりますか?
磁気抵抗が一気に跳ね上がります。 空気は透磁率μがきわめて小さいため、 の分母が小さくなり、わずかな隙間でもRmが大幅に増えてしまうのです。
これは試験だけの話ではありません。変圧器やモータの鉄心設計、さらにはMRI装置や精密センサの世界でも、ギャップの管理は性能を左右する核心技術になっています。今日学んだ式が、そのまま最先端の現場で使われている——そう思うと、少し勉強に身が入りませんか。
なお、電磁力シリーズ全体を通した力の計算に不安が残る方は、コイルに働くトルクを「ドアノブ」で攻略する ── 電磁力 T=BIℓDcosθも押さえておくと、機械科目に入ったときの理解がまったく違ってきます。
Webの何倍も覚えやすい
紙のフルラミネート加工の
暗記シートがあります
実績2,000部突破。
お風呂や電車のスキマ時間でサクッと勉強できます。
付属の練習用紙で無限に練習できます♪

🛒関連教材ショーケース
学習の効率を上げる、紙の本格教材ラインナップ。


この記事を読み終えたら、進捗を記録しましょう




