コイルに働くトルクを「ドアノブ」で攻略する ── 電磁力 T=BIℓDcosθ
電験三種「理論」でつまずきやすい電磁力とトルクを、ドアを開けるイメージで完全攻略。フレミングの左手の法則で生まれる力Fと、回転力トルクTの違い、そして公式 T=BIℓDcosθ の cosθ がなぜ付くのかを、傾いたコイルの図でスッキリ理解。モーターが回る本当の理由が腹落ちします。
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「モーターが回るのは磁石と電流のおかげ」──ここまでは、なんとなく分かる。でも、いざ試験で T=BIℓDcosθ という長い公式が出てきた瞬間、「なんで文字が5つもあるんだ」「cosθって急に何?」と、手が止まってしまう。そんな経験、ありませんか。
大丈夫です。この公式、実はドアを開けるときの感覚そのものなんです。難しそうに見える電磁力とトルクも、身近なイメージに置き換えれば、驚くほどスッと頭に入ります。今日で「モーターが回る理由」を、自分の言葉で説明できるようになりましょう。
この記事で身につくこと
- 導体1本に働く力 F=BIℓ(フレミングの左手の法則)の意味
- 回転力である トルク T=BIℓDcosθ の公式を、ドアのイメージで理解できる
- 多くの人がつまずく 「cosθ がなぜ付くのか」 の答え
- F と T の違い、そして D は直径 という試験で差がつくポイント
暗記フレーズ:「B・I・ℓ・D・cosθ」
まず、今日のゴールを1本の呪文にしておきます。トルクの公式は、この5つをただ順番にかけ算するだけです。
T = B(磁束密度)× I(電流)× ℓ(コイル長)× D(直径)× cosθ(傾き補正)
長く見えても、やっていることは「かけ算」だけ。ひとつずつ、意味を分解していきましょう。
ステップ1:まずは導体1本の力「F=BIℓ」
トルクの前に、その土台となる 電磁力 F から始めます。磁石のN極とS極の間に導線を1本置いて電流を流すと、その導線はグイッと押される力を受けます。これが電磁力です。
大きさは、たったの3つのかけ算で決まります。
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| 導体に働く力 | ニュートン [N] | |
| 磁束密度(磁界の強さ) | テスラ [T] | |
| 電流 | アンペア [A] | |
| 磁界の中にある導体の長さ | メートル [m] |
そして力の向きは、有名なフレミングの左手の法則で決まります。左手の親指・人差し指・中指を直角に開いて、「中指=電流」「人差し指=磁界」「親指=力」。この順番だけ覚えておけば、向きに迷いません。
ここでのポイントは、**F はあくまで「導体1本を押す力」**だということ。まだ「回転」の話は出てきていません。ここが次のトルクとの分かれ道です。
ステップ2:力を「回転」に変える ── トルク T の登場
さて、モーターの中では導線が四角いコイルになってグルグル回っています。コイルの片側は上向きに押され、反対側は下向きに押される。この2つの力がシーソーのように働いて、コイルが回転するわけです。
この「回す力」こそがトルク T。ここで大事なのが、ドアのイメージです。
ドアを開けるとき、ノブ(一番遠い端)を押せば軽く開きますが、蝶番(回転軸)のすぐ近くを押しても、いくら力を入れてもビクともしません。同じ力でも、押す場所が軸から遠いほどよく回る。この「軸からの距離」を腕の長さと呼びます。
コイルの場合、腕の長さはコイルの直径 に関係します。導体1本の力 に、この腕の長さを掛け算すれば、回転力トルクの出来上がりです。
ステップ3:完成形「T=BIℓDcosθ」と、cosθ の正体
いよいよ公式の完成です。腕の長さを直径 と傾き で表すと、トルクはこうなります。
ここで多くの人が「cosθ って一体なんだ?」で止まります。でも、これもドアで考えれば一発です。
コイルは回転しながら、磁界に対してだんだん傾いていきます。コイルが磁界に対してまっすぐ立っている(θ=0°)ときは、腕の長さがフルに となり、回す力は最大。ところがコイルが寝てきて磁界と平行(θ=90°)になると、腕の長さがゼロになり、トルクもゼロになってしまいます。
この「傾きによって腕の長さが に縮む」という補正が、cosθ の正体です。
| 傾き θ | cosθ | トルク T | イメージ |
|---|---|---|---|
| 0°(垂直) | 1 | 最大 | 一番よく回る |
| 60° | 0.5 | 半分 | 回りにくくなる |
| 90°(平行) | 0 | ゼロ | まったく回らない |
「急に三角関数が出てきて苦手…」と身構える必要はありません。cosθ は“傾いた分だけ力が減る”という、ただの割引率だと思えば十分です。
ステップ4:ここだけは間違えない ── F と T、そして「D は直径」
最後に、試験で差がつく2つの注意点を押さえておきます。ここを知っているだけで、ケアレスミスが激減します。
① F と T を混同しない
- [N]…導体1本にかかる「力」
- [N·m]…それに腕の長さ()を掛けた「回転力(モーメント)」
単位をセットで覚えるのがコツです。[N]なら力、[N·m]なら回転力。単位を見れば、どちらの話か一瞬で区別できます。
② D は「直径」であって半径ではない
公式の は直径(D=2r)です。問題文で半径 が与えられていると、うっかりそのまま代入して、答えがきっちり半分になってしまう人が続出します。「 は直径、半径なら2倍する」──これだけは、赤ペンで囲んでおいてください。
おまけ:現場ではどうやってトルクを上げている?
試験の外の話ですが、少しだけ。産業用モーターでトルクを上げたいとき、公式を見ると「磁束密度 を強くする」か「電流 を増やす」かの2択です。ただし電流を増やすと熱損失()が一気に増えるため、大型モーターでは磁石(B)を強化する設計が主流。また、電車や工場で使われるインバーター制御(VVVF)は、電流と周波数を同時に操ってトルクを保つ技術です。今日学んだ公式が、そのまま現場設計の土台になっているんですね。
まとめ
お疲れさまでした。長い公式に見えた電磁力とトルクも、分解すればこれだけです。
- 導体1本の力:(フレミングの左手の法則)
- 回転力トルク:(Fに腕の長さDcosθを掛ける)
- cosθ は「傾いた分だけ力が減る割引率」。垂直で最大、平行でゼロ
- F は[N]の力、T は[N·m]の回転力。D は直径(半径なら2倍)
「モーターの公式は文字が多くて苦手」だったところから、今日はドア1枚で全部つながったはずです。呪文「B・I・ℓ・D・cosθ」を口ずさめば、本番でも迷いません。あなたはもう、モーターが回る理由を自分の言葉で語れます。この調子で、一歩ずつ合格へ進んでいきましょう。
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