和動接続と差動接続の違い|自己・相互インダクタンス
和動接続は L=L1+L2+2M、差動接続は L=L1+L2-2M。なぜ2Mを足し引きするのかを、コイルの「磁束のつながり方」から理解します。自己インダクタンスの3公式、結合係数まで電験三種「理論」でつまずきやすいインダクタンスを、コイルの「磁束のつながりやすさ」というイメージから一気に攻略。自己イ
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この記事で身につくこと
インダクタンスの単元を開いた瞬間、数式がびっしり並んでいて、そっと閉じた——。そんな経験、ありませんか。
、、、。記号の種類が多く、しかも添字だらけ。「これ全部覚えるのか」と思った時点で、やる気が音を立てて消えていきます。
でも、安心してください。この分野は、覚えることが多いのではなく、一つのことを違う角度から見ているだけなんです。土台になる考え方はたった一つ、「磁束鎖交数(コイルの巻数×磁束)」。ここから枝分かれして、自己インダクタンスの3つの式も、相互インダクタンスも、和動・差動接続の符号も、全部つながっています。
この記事を読み終えると、次の状態になります。
- 公式についているマイナス符号の意味が、感覚でわかる
- 自己インダクタンスの3つの式を、問題文の条件に合わせて選べるようになる
- 巻数が2倍になったときLが何倍になるか、迷わず即答できる
- 和動接続と差動接続の±2Mを、丸暗記ではなく磁束の向きで判断できる
インダクタンスの計算問題は、電験三種の理論科目で毎年のように顔を出す重要分野です。避けて通れないからこそ、ここで一度きちんと土台を作ってしまいましょう。ずっと後回しにしてきた方こそ、今日が卒業の日です。

暗記フレーズ:自己はN2乗比、相互はk・√L1・L2、和動は足す、差動は引く
先に結論から言います。今日覚えて帰っていただきたいのは、この一言だけです。
自己はN2乗比、相互はk・√L1・L2、和動は足す、差動は引く
短いですが、この一文にインダクタンスの主要公式が全部詰まっています。分解するとこうです。
| フレーズ | 対応する内容 |
|---|---|
| 自己はN2乗比 | 自己インダクタンスLは巻数Nの2乗に比例する |
| 相互はk・√L1・L2 | 相互インダクタンス |
| 和動は足す | 和動接続の合成 |
| 差動は引く | 差動接続の合成 |
試験本番、公式をど忘れしても、このフレーズさえ口に出せば芋づる式に引っ張り出せます。声に出して、2〜3回読んでみてください。呪文のようですが、効きます。
ここから先は、このフレーズ一つひとつが「なぜそうなるのか」を、図とともにほどいていきます。意味がわかったフレーズは、忘れにくくなりますからね。
ステップ1:まずマイナス符号の正体を知る(レンツの法則)
インダクタンスの式には、しれっとマイナスがついています。

このマイナス、難しく考える必要はありません。コイルの「来るな!」という意思表示です。
磁石がコイルに近づくと、コイルを貫く磁束が増えていきます。コイルはこの変化が気に入りません。だから、その変化を打ち消す向きに起電力を生み出します。逆に磁石が遠ざかると、今度は「行かないで」と引き止める向きに起電力が出ます。近づいても遠ざかっても、変化そのものに逆らう——これがレンツの法則です。
そして、ここが試験で大事なところ。計算するときは、符号を気にせず絶対値で考えてください。
マイナスは「向き」の情報しか持っていません。大きさを求める計算に、符号は関係ないのです。ここを混同して「マイナスをつけたまま計算して答えが合わない」となる方が毎年います。向きは向き、大きさは大きさ。分けて考えれば、それだけでミスが一つ減ります。
ステップ2:すべての土台「磁束鎖交数」
「磁束鎖交数」。漢字を見た瞬間に身構えたくなりますが、中身は拍子抜けするほど単純です。

1回巻きのコイルなら、磁束φは1本ぶんだけコイルを貫きます。ではN回巻きなら? 同じ磁束φが、N回ぶん繰り返しコイルを貫くことになります。だから、
これだけです。コイルを密に巻くほど、磁束をたくさん捕まえられる。巻けば巻くほど得をする、という感覚で構いません。
単なる磁束φとの違いも押さえておきましょう。φはコイル1周ぶんの量ですが、磁束鎖交数はそれが巻数ぶんカウントされた量です。コイルを巻く行為そのものが、磁束を「増幅」しているようなもの、と考えるとしっくりきます。
地味な定義ですが、このあと出てくる公式は、全部ここから生まれます。ここだけは確実に押さえてください。
ステップ3:自己インダクタンスの3つの式は「同じもの」
ここが今日の核心です。自己インダクタンスの公式は3つありますが、3つとも同じLを、違う切り口で表しているだけです。別々の公式が3つある、と思うから覚えられなくなります。

① 定義から
磁束鎖交数Nφを、電流Iで割る。ステップ2でやった土台がそのまま出てきましたね。Lの「意味」を理解するための式です。
② 磁気回路から(★試験で出やすい)
は磁気抵抗、つまりコイル周りの磁気回路の通りにくさです。この式が、電験三種の計算問題では最頻出。優先的に頭に入れてください。
③ 形状から
透磁率、断面積A、巻数N、コイルの長さℓ——実際の寸法から求める式です。記号が多くてひるみますが、求めているものは①②とまったく同じLです。
使い分けは、こう考えてください。
| 問題文に与えられている条件 | 使う式 |
|---|---|
| 磁束φと電流I | ① |
| 巻数Nと磁気抵抗 | ② |
| 透磁率・断面積・長さ | ③ |
①で意味を理解し、②で計算し、③で形状の影響を考える。 この行き来ができるようになると、少しひねられた応用問題でも手が止まらなくなります。
なお、ここで出てくる透磁率μの扱いに不安がある方は、先に静電気と電磁力は「双子の公式」——εをμに替えるだけで全部解けるを読んでおくと、記号の意味がすっと入ってきます。
ステップ4:巻数2倍で、Lは「4倍」
ステップ3の②の式をよく見てください。Nが2乗になっていますね。ここから、直感を裏切る法則が出てきます。

巻数を2倍にすると、インダクタンスは2倍——ではありません。4倍です。
| 巻数の変化 | インダクタンスの変化 |
|---|---|
| 2倍 | 4倍 |
| 3倍 | 9倍 |
| 5倍 | 25倍 |
| 0.5倍(半分) | 0.25倍(4分の1) |
巻数を半分にすると、Lは半分ではなく4分の1まで落ち込みます。減らすほうも、思った以上に効くわけです。だからこそ、実際のコイル設計では巻数の調整が非常に重要になります。
試験で怖いのは、これを知らずに「巻数が2倍だからLも2倍」と処理してしまうこと。巻数が絡んだら、必ず2乗。この癖を、今のうちに刷り込んでおきましょう。ちなみにこの2乗の考え方は、機械科目の変圧器の巻数比を扱うときにも再登場します。今ここで身につけておくと、後で楽になりますよ。
ステップ5:相互インダクタンスと結合係数k
ここまでは、コイル1個の話でした。ここからはコイル2個の関係——相互インダクタンスです。

主役は結合係数kです。これは、片方のコイルが作った磁束を、もう片方がどれだけ捕まえられたかの割合で、0から1の値をとります。
- k = 1:磁束を100%キャッチする完全結合
- k = 0:磁束がまったく届かない状態
変圧器のように「エネルギーをしっかり受け渡したい機器」は、このkが高いほど性能がよい、というわけです。kはコイル同士の仲の良さ、と捉えてしまって構いません。
相互インダクタンスMの求め方は2ルートあります。
① 磁気抵抗から
② 結合係数から(★超重要)
暗記フレーズの「相互はk・√L1・L2」がこれです。kと、それぞれの自己インダクタンスさえわかれば、あとは代入するだけ。試験ではkは問題文で与えられるのが普通です(実際のkはコイルの配置や距離、鉄心の有無から決まる値なので、自分で計算する必要はありません)。安心しましたか。
なお、磁束が2つのコイルの間をどう行き来するのかがピンとこない方は、電磁力は「右ねじ1本」で攻略できる——電流と磁界の方向で磁界の向きの決め方を確認しておくと、図が読めるようになります。
ステップ6:和動接続は「協力」だから足す
ここからは、暗記フレーズの後半です。2つのコイルを直列につないだとき、合成インダクタンスがどうなるかという話。

和動接続は、2つのコイルの磁束が同じ向きに揃って協力し合う接続です。矢印が仲良く同じ方向を向いている状態、とイメージしてください。合成磁束は、素直に足し算になります。
磁束が協力しているのだから、相互インダクタンスMも協力する側——つまり加算されます。
フレーズどおり「和動は足す」ですね。ここで見落とされがちなのが、Mの前についている「2」です。お互いのコイルが影響を与え合うから2倍。この「2」を落とすと、答えが盛大にずれます(後述の「間違える人が多い」で詳しく触れます)。
実務では、2つのコイルを直列にして大きなインダクタンスを作りたいときに、あえて和動接続にすることがあります。磁束が協力する向きに意図的につなぐわけです。
ステップ7:差動接続は「打ち消し」だから引く
和動の逆パターンが差動接続です。

こちらは、2つの磁束が逆向きにぶつかって打ち消し合います。合成磁束は引き算です。
磁束が打ち消し合うのだから、Mも減算されます。
和動の式と見比べてください。プラスマイナスが入れ替わっただけで、形はまったく同じです。逆に言えば、この符号を一つ間違えるだけで答えが変わってしまう。ここで失点する方が本当に多いところです。
条件によっては、打ち消し合いが効きすぎて合成磁束がほぼゼロになることもあります。実務でも、外部からのノイズを打ち消したいときや、あえてインダクタンスを小さく抑えたいときに、この「打ち消す」性質を積極的に利用します。和動と差動は、どちらが優れているという話ではなく、目的に応じた使い分けなんですね。
ステップ8:符号は「丸暗記」ではなく「向き」で決める
和動と差動を、表で並べて整理しておきましょう。
| 和動接続 | 差動接続 | |
|---|---|---|
| 磁束の向き | 同方向(協力) | 逆方向(衝突) |
| 合成磁束 | ||
| 相互インダクタンス | 加算 | 減算 |
| 合成インダクタンス |
ここで一つ、強く申し上げておきたいことがあります。
「和動はプラス、差動はマイナス」と言葉だけで丸暗記しないでください。
これをやると、本番で「あれ、どっちが和動だっけ」と迷子になります。問題文に「和動接続である」と親切に書いてあるとは限らず、図だけ与えられることのほうが多いからです。
正しい覚え方はこうです。まず図を見て、磁束の向きを確認する。同じ向きなら協力するから +2M、逆向きなら打ち消し合うから -2M。
向きで判断する癖さえつけば、用語を取り違えても符号は間違えません。試験問題では図が与えられることが多いので、問題を見たらまず磁束の矢印を追う——この手順を体に入れておきましょう。
なお、そもそも磁束の向きを図から読み取るのが不安、という方は、電磁力の前に「磁石の正体」:同種は反発・異種は引き合うを一発理解に戻って、磁束の基本的なふるまいを確認しておくと確実です。遠回りに見えて、これが一番の近道になります。
ステップ9:身近な応用——変圧器とワイヤレス充電
公式の話が続いたので、少し息抜きを。実は今日学んだ内容、身の回りで普通に使われています。
電柱の上に載っている変圧器。あれは、相互インダクタンスの応用そのものです。結合係数k = 1、つまり完全結合のとき、相互インダクタンスは
となり、理想変圧器の巻数比の関係がそのまま成立します。ステップ5でやった式が、そっくりそのまま現実の機器につながっているわけです。
もう一つ。スマホのワイヤレス充電も、相互インダクタンスの応用です。送電側と受電側のコイルが、磁束を通じてエネルギーをやり取りしている。ケーブルがないのに充電できる理由は、今日の内容で説明がつきます。
さらに、「コイルを密に巻くほど磁束鎖交数Nφが増えてLが大きくなる」という性質は、リアクトルや電力用フィルタの設計で、インダクタンス値を調整する際の土台になっています。
勉強のためだけの公式ではない。 そう思えると、頭への残り方が変わってきます。身近なところに、電験は隠れているんです。
まとめ
長い道のりでしたが、整理してみるとシンプルです。
- マイナス符号はレンツの法則、「変化を妨げる向き」の意味。大きさの計算は絶対値でOK
- 磁束鎖交数 Nφ が、すべての公式の土台
- 自己インダクタンスは、定義・磁気回路・形状の3通りで表せる。同じLを違う角度から見ているだけ
- 自己インダクタンスは巻数の2乗に比例。2倍で4倍、半分で4分の1
- 相互インダクタンスは 。kは0〜1の結合の割合
- 和動接続は +2M、差動接続は -2M。符号は磁束の向きで判断する
そして最後にもう一度、魔法の一言を。
自己はN2乗比、相互はk・√L1・L2、和動は足す、差動は引く
本番で公式が飛んでも、これさえ思い出せれば引っ張り出せます。記事を閉じる前に、もう一度だけ口に出してみてください。
最初は数式だらけで頭を抱えていた分野が、コイルと磁束の図ひとつで見えるようになったはずです。ここまで読み進めた時点で、あなたはもうこの分野の「避けて通る側」ではなくなっています。
⚠ ここを間違える人が多い
この単元は、理解できていても最後の一手で落とすタイプの失点が多いところです。よくある3つを挙げておきます。
❌ 合成の式を と書いてしまう
→ ✅ 正しくは 。Mの前の「2」は必須です。この2は「お互いが影響を与え合う」ことを表しているので、物理的にも落とせません。厄介なのは、2を忘れても計算自体は成立してしまい、それらしい数値が出てくること。しかもその値が選択肢に用意されていることさえあります。式を書いた瞬間に「2、ついてるな」と目視確認する癖をつけてください。
❌ 結合係数kが1を超えた答えを、そのまま提出してしまう
→ ✅ kは物理的に必ず 0 ≦ k ≦ 1 です。 和動・差動の式からMを逆算してkを求める問題で、もし k = 1.8 のような値が出たら、それは答えではなく計算ミスの警報です。ほぼ確実に「2M」の2を落としています。kが1を超えたら立ち止まる——この検算だけで、一問拾えます。
❌ 自己インダクタンスの計算で、巻数Nを掛け忘れる
→ ✅ 定義式は であって、 ではありません。Nを落とすと、巻数が1000回のコイルなら答えが1000分の1になり、選択肢のどれとも合わない値が出てきます。「近いのはどれだろう」と悩み始めたら、まずNを掛けたか、そして単位(mHとHなど)が揃っているかを疑ってください。答えが桁違いにずれるミスは、たいていこの2つが原因です。
過去問ではこう出た
インダクタンスは、電験三種・理論のなかでも出題が安定している単元です。当サイトの動画に紐づく範囲だけでも、以下の出題があります。
| 年度 | 問番号 |
|---|---|
| 平成29年 | 問3 |
| 令和4年 上期 | 問3 |
| 令和7年 上期 | 問3 |
| 令和7年 下期 | 問3 |
注目していただきたいのは、問番号がいずれも「問3」あたりに集中していることです。理論科目の序盤、電磁気分野の定位置にこのテーマが座っている、ということですね。
出題の中身は、自己インダクタンスを磁気回路の式から求めるもの、和動・差動接続の合成インダクタンスから相互インダクタンスや結合係数を逆算させるものが中心です。つまり、今日やった「±2M」と「」の2本柱をしっかり握っておけば、かなりの範囲をカバーできます。令和7年は上期・下期の両方で出ている——それだけ「出す側にとって扱いやすいテーマ」だと考えてよいでしょう。
読んで理解した気になっても、手を動かさないと本番では出てきません。実際の問題で試してみてください。
よくある質問
Q. 結合係数kは、自分で計算しなければいけませんか?
いいえ、試験では問題文で与えられるのが基本です。実際のkは、コイル同士の距離や配置、鉄心の有無といった条件から実験的・設計的に決まる値なので、机上で計算して出すものではありません。試験で問われるのは、「与えられたkを公式に正しく当てはめられるか」、あるいは「和動・差動の測定値からkを逆算できるか」です。逆算のときは、 を使い、出てきた値が1以下かどうかを必ず確認してください。
Q. 自己インダクタンスの3つの式、どれから覚えればいいですか?
優先順位をつけるなら、磁気回路の式 からです。電験三種の計算問題でもっとも使う頻度が高い形だからです。次に定義式 ——これは意味を理解するために不可欠ですし、Lが何者かを説明する式なので、忘れると応用が利かなくなります。形状の式は記号が多いので後回しで構いませんが、「透磁率・断面積・長さが与えられたらこれ」と、使う場面だけ紐づけておけば十分です。3つを平等に暗記しようとすると挫折します。
Q. 和動接続と差動接続、問題文のどこを見れば見分けられますか?
まず図の磁束の矢印を見てください。2つのコイルの磁束が同じ向きなら和動、逆向きなら差動です。矢印が描かれていない場合は、コイルの巻き方向と電流の向きから磁束の向きを判断します(右ねじの法則の出番です)。用語で「和動接続」「差動接続」と明記されている問題もありますが、言葉だけに頼ると危険です。図から向きを読み取る手順を身につけておけば、どちらの出題形式でも対応できます。なお、コイルにはたらく力の向きそのものが怪しい方は、コイルに働くトルクを「ドアノブ」で攻略する ── 電磁力 T=BIℓDcosθを先に確認しておくとよいでしょう。
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