電圧は巻数比、起電力は4.44fNΦ|変圧器計算の必須4公式
電験三種「機械」科目の最頻出テーマ・変圧器計算を、ファラデーの法則→誘導起電力E=4.44fNΦ→巻数比→波形値換算の4ステップで一気に攻略。電流比だけ「逆比」になる最大の罠も、電力一定の原則からスッキリ理解できます。
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この記事で身につくこと
変圧器の公式は、参考書を開くと一気に4つも5つも出てきます。、、、そこに だの だのが混ざってくる。これを全部バラバラに覚えようとすると、試験本番で「あれ、どっちが分子だったっけ」と手が止まります。
ですが、安心してください。この4つは独立した4つの暗記項目ではなく、電気が変圧器を通り抜けていく順番そのものです。順番として理解すれば、覚える量は一気に減ります。
| ステップ | 何が起きるか | 使う公式 |
|---|---|---|
| ① | 磁束が変わる | (ファラデーの法則) |
| ② | 電圧の大きさが決まる | (誘導起電力) |
| ③ | 一次・二次で電圧を変換する | |
| ④ | 波形の値を読み替える | と による換算 |
左から右へ、1本の線です。この記事を読み終える頃には、「変圧器の問題が出た → まずこの流れ図を思い出す」という状態になっているはずです。

暗記フレーズ:電圧は巻数比、起電力は4.44fNΦ
迷ったときに立ち返る一言は、これだけです。
電圧は巻数比、起電力は 4.44fNΦ
「電圧をいくつにするか」を聞かれたら巻数比。「起電力そのものはいくらか」を聞かれたら 。この2つの入り口さえ間違えなければ、変圧器の計算問題は半分片づいたも同然です。
なお、そもそも変圧器がどういう装置なのかが曖昧な方は、先に変圧器は「電気のバトン」で一発理解|電磁誘導と巻数比を読んでおくと、この先の話が驚くほどスッと入ります。急がば回れです。
ステップ①:すべては「磁束の変化」から始まる

変圧器で電圧が生まれる理由は、たったひとつ。磁束が変化するからです。
一次側に電流を流すと、鉄心の中に磁束 ができます。その磁束が時間とともに変化することで、二次側のコイルに電圧が生まれる。逆に言えば、止まっている磁束からは電圧は1ボルトも生まれません。
「変圧器は交流専用」の理由がここにある
この一点を押さえると、よく聞く「変圧器は交流専用」という説明が、暗記事項ではなく当たり前の話に変わります。直流を流すと磁束は一定のまま止まってしまい、変化しないので二次側に起電力が出ない。だから交流でなければならない、というだけのことです。
ステップ①の式:e = -N(ΔΦ/Δt) を3つに割る

見た目はゴツいですが、部品に分けると3つしかありません。
| 部品 | 意味 | 覚え方 |
|---|---|---|
| 先頭の | レンツの法則。磁束の変化を妨げる向きに発生する | 「逆」起電力だからマイナス |
| コイルの巻数 | 巻くほど電圧は大きい | |
| 磁束の変化スピード | 速く変わるほど電圧は大きい |
つまり「巻数が多いほど、変化が速いほど、電圧は大きい」というだけです。マイナスの意味さえ押さえれば、怖いところは何もありません。
右側の は、同じ現象を自己インダクタンス を使って表した形です。こちらは理論科目の電磁力で詳しく扱う内容なので、ここでは「同じことを別の言葉で言い換えた式」として頭の隅に置いておけば十分です。
ステップ②:交流を扱うための「実効値」への進化

ファラデーの法則は正しいのですが、実務でも試験でも、そのままでは使いにくい。理由は単純で、瞬間の電圧(瞬時値)はグラフのどこを読めばいいのか決まらないからです。
そこで登場するのが実効値です。刻一刻と変化する交流を、「平均してどれくらい仕事をしているか」という1つの数字に置き換える。こうすれば、電卓で計算できる値になります。
| 扱い方 | 何を表すか | 使う場面 |
|---|---|---|
| 瞬時値(ファラデーの法則) | その瞬間の電圧 | 現象の理屈を説明するとき |
| 実効値 | 平均的に効いている電圧 | 変圧器の設計・試験の計算 |
「理屈は瞬時値、計算は実効値」。この住み分けを知っているだけで、公式が2種類ある理由に納得がいきます。
ステップ②の式:E=4.44fNΦ の正体

これが変圧器設計の基本式であり、電験三種でも頻出の公式です。
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| 誘導起電力(実効値) | V | |
| 周波数 | Hz | |
| 巻数 | 回 | |
| 磁束 | Wb |
4.44 という中途半端な数字はどこから来たのか
多くの人が引っかかるのがこの数字です。正体は 。この は、正弦波の実効値と平均値の比から出てくる交流特有の定数で、 という形で導かれます(詳しくはステップ④で扱います)。
つまり は、天から降ってきた謎の数字ではなく、交流波形の性質を織り込んだ結果です。由来を知っていると、桁を間違えたときに「あれ、この数字おかしいぞ」と気づけるようになります。
関係としては極めて素直で、・・ のどれが大きくなっても は大きくなる、それだけです。
ステップ③:巻数比で電圧を自由自在に操る

生まれた電圧を、目的の大きさに変換する。それが変圧器の仕事であり、ルールは拍子抜けするほどシンプルです。
電圧比 = 巻数比
たとえば一次側のコイルが巻数10で入力電圧100V、二次側のコイルが巻数5なら、出力電圧は50V。巻数が半分(2対1)なら、電圧も半分(2対1)になります。
発電所から家庭まで電気が届く途中で、何段階も電圧を下げていくのは、この原理を使っているからです。巻数を決めるだけで電圧を思い通りに操れる——変圧器が電力系統の主役である理由が、ここにあります。
ステップ③の式:最重要公式と、最大の罠

呪文のように見えますが、注目すべきはどちらが分子に来ているか、その1点だけです。
| 量 | 分子 | 分母 | 関係 |
|---|---|---|---|
| 巻数 | 一次側 | 二次側 | 比例 |
| 電圧 | 一次側 | 二次側 | 比例 |
| 電流 | 二次側 | 一次側 | 逆比 |
巻数と電圧は一次側が分子。ところが電流だけ、二次側が分子にひっくり返ります。ここが変圧器計算で最も多いミスの温床です。式を書き写すときに、電流のところだけ「逆」と唱えるクセをつけてください。
ステップ③の裏づけ:電流だけ逆比になる理由

丸暗記だと本番で混乱するので、理由まで押さえておきましょう。答えは一行です。
変圧器はエネルギーを増やす魔法の箱ではない(P = 一定)
一次側に入った電力と、二次側から出ていく電力は(損失を無視すれば)同じです。電力は「電圧 × 電流」ですから、電圧を2倍にすれば、電流は必ず1/2になる。天秤やシーソーと同じで、片方が上がれば片方は下がるのです。
エネルギー保存の法則そのものだと思えば、もう間違えません。「電流だけ逆」ではなく、「電力が一定だから電流はそうならざるを得ない」と理解しておくと、記憶が長持ちします。
なお、この巻数比αは、等価回路でインピーダンスを一次側に換算するときに という形で再登場します。そこまで踏み込みたい方は、変圧器の計算は「α²」で全部解ける──L形等価回路と一次換算の極意へ進んでください。この記事の内容がそのまま土台になります。
ステップ④:交流がもつ「3つの顔」
同じ1つの波なのに、読み取り方が3つあります。ここを混同するのが、電験三種で最も多い失点パターンのひとつです。
| 呼び名 | 何を表すか | 波形のどこ |
|---|---|---|
| 最大値(ピーク) | 波の頂点の高さ | 一番上 |
| 実効値(RMS) | 実際にしている仕事量 | 頂点よりやや下 |
| 平均値(アベレージ) | 波をならした高さ | 実効値よりさらに下 |
問題文が「最大値」を聞いているのか「実効値」を聞いているのかを、まず線を引いて確認する。これだけで取りこぼしがかなり減ります。
ステップ④の式:換算ルートマップ
3つの値は、次の順番で並んでいます。
逆向きに戻したいときは、割り算を掛け算に変えるだけです。
| 変換したいもの | やること |
|---|---|
| 最大値 → 実効値 | |
| 実効値 → 最大値 | |
| 実効値 → 平均値 | |
| 平均値 → 実効値 |
そしてキーになる数値がこれです。
お気づきでしょうか。この こそ、ステップ②の に潜んでいた数字です。波形の換算と誘導起電力の公式は、同じ でつながっている——ここが今日いちばん腑に落ちてほしいポイントです。
まとめ
4つのステップを、もう一度1本の線でつなぎ直します。
| ステップ | 起きること | 公式 | ひとこと |
|---|---|---|---|
| ① | 磁束が変化する | 電圧の「種」が生まれる | |
| ② | 実効値として大きさが決まる | 4.44 = 4 × 1.11 | |
| ③ | 一次・二次で変換する | 電流だけ逆比 | |
| ④ | 波形の値を読み替える | 、 | 1.11が②とつながる |
バラバラの暗記項目が4つあるのではなく、電気が変圧器を通り抜けていく1つの物語があるだけです。そして迷ったら、いつでもこの一言に戻ってきてください。
電圧は巻数比、起電力は 4.44fNΦ
⚠ ここを間違える人が多い
独学で進めていると、同じ場所で毎回つまずきます。ここで先回りしておきましょう。
❌ 電流も一次側が分子だと思ってしまう
これが最頻出のミスです。巻数と電圧を書いた勢いのまま、電流も と書いてしまう。
✅ 正しくは 。 電力が一定である以上、電圧を上げれば電流は下がる。式を書くときは、電流の行だけ手を止めて「電力一定、だから逆」と確認する習慣をつけてください。
❌ 力率が下がると効率も同じ割合で下がると思ってしまう
「効率98%の変圧器で力率0.8なら、%」——という計算をやってしまう人が非常に多いところです。
✅ 正しくは、力率が変わっても損失(鉄損・銅損)は変わりません。 全負荷であれば電流の大きさは同じなので銅損も同じ、電圧が同じなら鉄損も同じ。効率の式で変わるのは分子の出力だけであり、分母の損失は据え置きです。したがって効率は下がりますが、力率に比例して下がるわけではありません。ここは選択肢に必ず「掛け算しただけの値」が用意されているので、要注意です。
❌ 短絡試験で求めた V/I をリアクタンスだと思ってしまう
短絡試験の電圧と電流から を計算して、それをそのままリアクタンス として答えてしまうパターンです。
✅ で求まるのはインピーダンス です。 リアクタンスが欲しいなら、消費電力から を出し、 として求める必要があります。「 と は別物」——変圧器に限らず、交流計算全体に効く感覚です。この直角三角形の関係が怪しい方は、直流機の考え方から交流機へ橋渡しをした直流電動機のトルクと出力|ωT=EaIa『最強の等式』で機械が解けるで、公式を「意味」で捉える練習をしておくと効いてきます。
過去問ではこう出た
変圧器は、機械科目の中でも出題頻度が飛び抜けて高い単元です。テーマで照合した範囲で、電験ジムには38問が収録されています。
| 年度 | 問題番号 |
|---|---|
| 令和7年 上期 | 問9 |
| 令和7年 下期 | 問9、問15 |
| 令和6年 上期 | 問8、問9 |
| 令和6年 下期 | 問8、問9 |
| 令和5年 上期 | 問15 |
並べてみると傾向がはっきり見えます。問8〜問9のA問題(配点10点)に、ほぼ毎回顔を出しているのが変圧器です。上期・下期を問わず出るので、「今年は出ないかもしれない」という単元ではありません。
加えて、令和7年下期・令和5年上期のようにB問題(問15)で出ることもあります。B問題は配点が大きいぶん、この記事の4ステップを1本の線として理解できているかどうかが、そのまま点差になります。
よくある質問
Q. 4.44 は、暗記してしまってよいのでしょうか?
はい、試験対策としては暗記で構いません。ただし「」という分解だけは一緒に覚えておいてください。理由は2つあります。ひとつは、 が波形の換算でも出てくるので記憶が二重に補強されること。もうひとつは、うろ覚えで や と書いてしまったときに、分解を知っていれば自力で復元できることです。丸暗記でも、根っこを1本だけ残しておくと折れにくくなります。
Q. 式のマイナス符号は、計算のときに必ず付けるのですか?
大きさを問う計算では、実務上あまり気にしなくて構いません。マイナスはあくまで「向き」の情報で、レンツの法則(磁束の変化を妨げる向きに発生する)を表しているものです。ただし、向きや位相を問う問題では意味を持ちます。「マイナス=向きの話、数値計算では大きさに集中」と切り分けておくのが実戦的です。
Q. 変圧器の周波数が50Hzから60Hzに変わると、何が起きますか?
を見てください。(電源電圧)が同じままで が上がると、 は下がります。つまり磁束に余裕が生まれる方向です。逆に60Hz用の変圧器を50Hzで使うと磁束が増えて鉄心が飽和しやすくなり、危険側に振れます。「50Hz用は60Hzでも使えるが、逆は要注意」という現場の常識も、この式ひとつから説明できるわけです。公式が実物とつながる瞬間なので、ぜひ味わってください。
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