変圧器は「電気のバトン」で一発理解|電磁誘導と巻数比
電験三種「機械」科目で頻出の変圧器を、役割・構造・冷却方式・原理・計算まで一気に整理。アンペールの法則で磁束を作り、ファラデーの法則で2次コイルへ『鎖交』する流れを『電気のバトン』のイメージで直感理解。電圧比=巻数比の公式まで一本道でマスターできる記事です。
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「変圧器」と聞いて、なんとなく難しそうだと感じた方。安心してください。この機器の中身は、鉄のかたまりに、コイルを2つ巻き付けただけです。部品点数でいえば、機械科目のなかでも最も少ない部類に入ります。
それなのに苦手意識が生まれるのは、たいてい「役割」「構造」「原理」「計算」がバラバラの知識として頭に入っているからです。この記事では、その4つを1本の線でつなぎ直します。つながってしまえば、変圧器は機械科目のなかでいちばん安定して点が取れる単元に変わります。
この記事で身につくこと
| 学ぶこと | 到達点 |
|---|---|
| 変圧器の役割 | なぜ高圧で送って低圧で使うのか、損失の式から説明できる |
| 変圧器の分類 | 電圧の高さ・配線方式で整理し、単相と三相の用途が言える |
| 変圧器の構造 | 鉄心+2つのコイルという基本形と、内鉄形・外鉄形の違いが分かる |
| 冷却方式 | 油入式と乾式、その下の自冷・風冷・水冷を系統立てて言える |
| 電圧変換の原理 | アンペールの法則→鎖交→ファラデーの法則の流れを自分で説明できる |
| 計算の基本 | 電圧比=巻数比を使って、2次電圧を即答できる |
この記事は、変圧器シリーズの入口にあたります。ここで原理をつかんでおくと、次の計算編がびっくりするほど軽くなります。
暗記フレーズ:変圧器=電圧を変える装置、原理は電磁誘導
変圧器の学習で迷子になったら、いつでもここへ戻ってきてください。
変圧器=電圧を変える装置、原理は電磁誘導。 そして計算は、電圧比イコール巻数比。
この2行だけで、変圧器という単元の骨格は言い切れています。構造も冷却方式も分類も、すべてこの骨格に肉を付けていく作業にすぎません。

ステップ1:なぜ変圧器が必要なのか(役割)
まず「何のために存在するのか」から入ります。ここを飛ばして構造から覚えようとすると、暗記になってしまいます。

電気は、発電所から家庭に届くまでに何度も電圧を変えられています。その場面ごとに理由が違います。
| 場面 | 電圧 | そうする理由 |
|---|---|---|
| 発電所でつくる | 超高圧 | 大量の電力をまとめて送り出すため |
| 送電線で長距離運ぶ | 高圧 | 送電中のロスを減らすため |
| 工場・ビルで使う | 6600V以上 | 大きな動力をまかなうため |
| 一般家庭で使う | 100V | 人が安全に扱えるようにするため |
工場やビルは6600V以上、家庭は100V。同じ電気なのに、届け先によってこれだけ違います。各施設の負荷に合わせて電圧を調整し、安全かつ効率よく届ける。この調整役を一手に引き受けているのが変圧器です。
電圧を上げると、なぜロスが減るのか
ここは理屈で押さえておきたい部分です。送電線には抵抗があるので、電気を送るだけで一部が熱になって逃げていきます。その損失は次の式で表されます。

注目すべきは、電流が2乗で効いていることです。電流が2倍になれば損失は4倍、3倍になれば9倍。逆に言えば、電流を半分に抑えられれば損失は4分の1になります。
そこで打つ手が「電圧を上げる」です。同じ電力を送るなら、電圧を上げた分だけ電流は小さくなります。電圧を上げる → 電流が小さくなる → 損失が2乗の割合で激減する。 高圧送電はビリビリさせたいわけではなく、純粋にロス対策なのです。
ステップ2:変圧器の分類(電圧の高さと配線方式)
変圧器は、2つの軸で分類されます。表で一気に片づけましょう。

電圧の高さによる分類
| 区分 | 電圧の範囲 |
|---|---|
| 高圧変圧器 | 6600V 〜 2万V |
| 特高変圧器 | 2万 〜 11万V |
| 超高圧変圧器 | 11万V以上 |
上にいくほど扱いに大きな注意が必要になります。そして街中に近づくほど、出力の小さい変圧器が増えていく。発電所から家庭に向かって、だんだん電圧も器も小さくなっていくイメージです。
配線方式による分類
| 方式 | 主な用途 |
|---|---|
| 単相 100V | 家庭・オフィスの電灯負荷 |
| 三相 200V | 工場・商店の動力 |
家庭でも、エアコンだけは200Vということがあります。専用回路になっているのはそのためです(このあたりの詳しい規定は法規科目の範囲になります)。
ステップ3:変圧器の基本構造(鉄心+2つのコイル)
いよいよ中身です。ここは拍子抜けするほど簡単です。

| 部品 | 役割 |
|---|---|
| 鉄心(コア) | 磁束の通り道 |
| 1次コイル | 入力側。ここに交流を加える |
| 2次コイル | 出力側。ここから電圧を取り出す |
| 絶縁材 | 各部を電気的に隔てる |
| 冷却装置 | 発生した熱を逃がす |
鉄心に、コイルを2つ巻き付けただけ。 これが変圧器です。
見落とすと損をするポイント
ここで1つ、意外に気づかれないことがあります。1次側と2次側は、電気回路としてつながっていません。 導線でつながれてはおらず、両者を結んでいるのは鉄心の中を通る磁束だけです。
この「電気的には切れているのに、電力は渡っている」という点が、次の計算編(等価回路や損失の話)で効いてきます。いま押さえておく価値のある一点です。
ステップ4:内鉄形と外鉄形(鉄心とコイルの位置関係)
鉄心とコイルの組み合わせ方には、2つの形があります。

| 形式 | 鉄心とコイルの関係 |
|---|---|
| 内鉄形(ないてつがた) | 鉄心がコイルに覆われている。鉄心が内側 |
| 外鉄形(がいてつがた) | 鉄心がコイルの外側にあり、コイルを抱え込む形 |
覚え方はシンプルで、鉄心が「中」にあるか「外」にあるか、それだけです。名前がそのまま構造を表しています。
なお、この項目が試験で正面から問われることは多くありません。「こういう形があるんだな」という程度で通過して大丈夫です。深追いは不要な場所を見きわめるのも、独学では大事な戦略です。
ステップ5:冷却方式は「2階建て」で覚える
冷却方式は用語が多くて敬遠されがちですが、2階建ての構造だと分かれば一瞬で整理できます。

1階:何に浸すか(大分類)
| 方式 | 内容 |
|---|---|
| 油入式(ゆにゅうしき) | 油に浸して冷却する。最も一般的 |
| 乾式(モールド) | 樹脂で固め、空気やガスで冷却する。近年増加中 |
2階:どう熱を逃がすか(細分類)
油入式・乾式のどちらも、さらに冷やし方で3つに分かれます。
| 方式 | 冷やし方 | 特徴 |
|---|---|---|
| 自冷式 | 油や空気の自然対流 | 動力不要。もっとも手軽 |
| 風冷式 | 外部ファンで強制冷却 | よく冷えるが、別途電源が必要 |
| 水冷式 | 冷却水を循環させる | 大型機向け |
自然対流 → 風 → 水、と冷却力が段階的に上がっていく並びになっています。変圧器のサイズや設置場所によって、最適な方式が選ばれます。
ここも試験での出題は多くありません。「大分類が2つ、細分類が3つ」という枠組みだけ持っておけば十分です。
ステップ6:電圧変換の原理①──アンペールの法則で磁束をつくる
ここからが本題です。変圧器がどうやって電圧を変えているのか、2つの法則をバトンでつなぎます。

第一段階は、磁束をつくること。1次コイルに交流電圧を加えると、鉄心の中に磁束が発生します。これを説明するのがアンペールの法則です。
コイルに電気を流せば磁束ができる。理論科目で一度は通った内容ですね。変圧器では、この現象を「スタート地点」として使います。まだ電圧の変換は起きていません。あくまで、磁束という中間素材をこしらえた段階です。
ステップ7:電圧変換の原理②──ファラデーの法則と「鎖交」
つくった磁束は、鉄心を通って2次コイルのところまで運ばれます。そして2次コイルと交わる。この交わることを「鎖交(さこう)」と言います。鎖で交わる、と書きます。
初めて見ると読み方に戸惑う言葉ですが、試験ではごく普通に登場する頻出用語です。読み書きを問われることはまずないので、「磁束がコイルと交わること」という意味だけしっかり持ち帰ってください。
そして、鎖交する磁束が変化すると、2次コイルに電圧が誘導されます。これが電磁誘導作用、すなわちファラデーの法則です。
アンペールの法則で磁束をつくり、ファラデーの法則でそれを電圧に変える。 ちょうど、バトンタッチのような役割分担です。
アンペールもファラデーも、もとは理論科目で学ぶ内容です。ここが曖昧なままだと変圧器の説明が丸暗記になってしまうので、怪しいと感じたら理論に一度戻ってみてください。遠回りに見えて、いちばんの近道になります。
ステップ8:原理を一連の流れでつなぐ(電気のバトン)
ここまでの内容を、1本の流れにまとめます。この4行が言えれば、変圧器の原理は理解できたと言って構いません。
- 1次コイルに交流を流す
- アンペールの法則より、鉄心に磁束が発生する
- 磁束が鉄心を通って、2次コイルへ鎖交する
- ファラデーの法則(電磁誘導作用)により、2次コイルに電圧が誘導される
鉄心が磁束を効率よく伝えることで、1次側から2次側へ「電気のバトン」が渡されていく。これが変圧器の本質です。導線でつながっていないのに電力が渡るという不思議も、この流れで説明がつきます。
なお、機械科目の他の機器も同じ発想でほどけます。たとえば直流機なら、電気と力の橋渡しを1本の等式に閉じ込めた直流電動機のトルクと出力|ωT=EaIa『最強の等式』で機械が解けるが同じ役割を果たします。「入口と出口を式でつなぐ」という読み方に慣れておくと、機械科目全体が急に見通しよくなります。
ステップ9:電圧比=巻数比(計算問題の要)
最後は計算です。といっても、覚えるのは1本だけです。
電圧の比は、巻数の比で決まる。 言葉にすればこれだけです。
数字で確かめる
| 項目 | 1次側 | 2次側 |
|---|---|---|
| 巻数 | N₁ = 1000巻 | N₂ = 100巻 |
| 電圧 | V₁ = 1000V | V₂ = ? |
巻数を10分の1にしたので、電圧も10分の1になります。
巻き数を変えるだけで、電圧を自由自在に操れる。変電所というと巨大で複雑な施設に見えますが、その中心でやっていることは、この一本の比例関係です。
ここから先は、この式に起電力の式や損失・効率の考え方が乗っていきます。計算問題として仕上げにかかる方は、電圧は巻数比、起電力は4.44fNΦ|変圧器計算の必須4公式へそのまま進んでください。この記事の内容が土台になっているので、驚くほどスムーズに読めるはずです。
まとめ
試験直前に見返す用として、要点を1枚にまとめます。
| 項目 | 押さえるところ |
|---|---|
| 役割 | 送電は高圧でロス削減、利用は低圧で安全 |
| 損失の式 | P = I²R(電流の2乗で効く) |
| 構造 | 鉄心+2つのコイル。1次と2次は電気的に絶縁 |
| 鉄心の形 | 内鉄形(鉄心が内側)/外鉄形(鉄心が外側) |
| 冷却方式 | 大分類:油入式・乾式 / 細分類:自冷・風冷・水冷 |
| 原理(前半) | 磁束の発生 = アンペールの法則 |
| 原理(後半) | 磁束の鎖交と誘導起電力 = ファラデーの法則 |
| 計算 | 電圧比=巻数比、V₁/V₂ = N₁/N₂ |
そして最後にもう一度。変圧器=電圧を変える装置、原理は電磁誘導。 この一文が言えれば、あなたはもう変圧器の全体像を持っています。
⚠ ここを間違える人が多い
変圧器の学習でつまずきやすいのは、たいてい次の3か所です。
❌ 1次側と2次側が導線でつながっていると思い込む
❌「1次コイルの電気が、そのまま2次コイルへ流れていく」 ✅ 電気そのものは渡っていません。渡っているのは磁束です。1次側で電流→磁束、2次側で磁束→電圧、と2回の変換をはさんでいます。ここを取り違えると、後で学ぶ等価回路や絶縁の話がすべて曖昧になります。
❌ 「高圧で送るのは電力を大きくするため」と覚えてしまう
❌「電圧を上げれば、送れる電力が増えるから高圧送電する」 ✅ 目的は損失を減らすことです。同じ電力を送るとき、電圧を上げれば電流が下がり、I²R の損失が電流の2乗の割合で小さくなる。着眼点は電力ではなく電流にあります。
❌ アンペールとファラデーの担当範囲が入れ替わる
❌「磁束から電圧が生まれるのがアンペールの法則」 ✅ 順番は固定です。アンペール=磁束をつくる(前半)/ファラデー=磁束の変化から電圧を生む(後半)。 「作るのがアンペール、受け取るのがファラデー」と、バトンの向きで覚えてしまうのが確実です。
そして共通して言えるのは、用語だけを丸暗記すると必ずどこかで入れ替わるということ。流れで覚えた人は、入れ替わりません。
過去問ではこう出た
変圧器は、機械科目のなかでも出題頻度が高い分野です。この単元に関連する過去問として、次の出題があります。
| 年度 | 問番号 |
|---|---|
| 平成27年 | 問7 |
| 平成28年 | 問7 |
| 平成30年 | 問9・問15 |
| 令和2年 | 問8・問9 |
| 令和4年 上期 | 問8 |
| 令和4年 下期 | 問9 |
出題のされ方には傾向があります。構造や冷却方式は文章の正誤問題として、電圧比・巻数比は計算問題として問われる形が中心です。また、変圧器の特殊なタイプ(磁気漏れ変圧器や単巻変圧器など)や、結線方式にからむ出題も見られます。
いずれにしても、この記事で扱った「役割・構造・原理・巻数比」が下地になります。土台ができたら、あとは実際に手を動かして問題に当たるのがいちばん早い仕上げ方です。
よくある質問
Q. 変圧器は直流でも使えますか?
使えません。変圧器が電圧を変えられるのは、鎖交する磁束が「変化する」からです。直流を加えると磁束は一定になってしまい、変化がないので2次側に電圧は誘導されません。「交流専用の機器」という点は、原理から必ず説明できるようにしておきましょう。
Q. 鉄心はなぜ必要なのですか。空気ではだめですか?
原理上は空気中でも磁束は通りますが、通りにくいのです。鉄心は磁束が非常に通りやすく、1次コイルでつくった磁束を無駄なく2次コイルまで導いてくれます。バトンで言えば、鉄心は「取り落とさないための確実な受け渡し路」にあたります。これが無いと、磁束の多くが途中で逃げてしまいます。
Q. 「鎖交」は読めなくても大丈夫ですか?
漢字を書かせる問題はまず出ませんので、読めれば十分です。ただし問題文には普通に出てきますので、見た瞬間に「磁束がコイルと交わること」と意味が浮かぶ状態にしておいてください。用語の意味が浮かばないと、問題文を読むだけで時間を取られてしまいます。
Q. 内鉄形・外鉄形や冷却方式は、どこまで覚えればいいですか?
いずれも出題頻度は高くありません。名前と特徴が1対1で結びつく程度で十分です。時間をかけるなら、原理と巻数比の計算に回してください。機械科目は範囲が広いので、どこに力を入れないかを決めることも得点戦略のうちです。同じように「似た用語の混同」で苦しみやすい単元として直流電動機の制動法、9割が混同する3方式を「エネルギーの行方」で完全攻略もありますので、混同グセに心当たりのある方はあわせてどうぞ。
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