直流電動機の制動法、9割が混同する3方式を「エネルギーの行方」で完全攻略
電験三種「機械」科目の頻出論点、直流電動機の制動法(発電制動・回生制動・逆転制動)を、3方式の違いを『エネルギーがどこへ向かうか』という1つの視点で完全整理。なぜ回生制動が最良と言われるのか、その理由まで一気にマスターできる1本です。
🎥 動画でも解説しています > YouTubeで開く
この記事で身につくこと
直流電動機の分野で、意外と多くの人が最後まで曖昧なまま試験に行ってしまうのが「制動法」です。発電制動・回生制動・逆転制動。名前は3つとも聞いたことがあるのに、いざ選択肢に並ぶと「あれ、抵抗で消費するのはどっちだったかな」と手が止まる。この単元は、そういう取りこぼしがとても起きやすい場所です。
しかし裏を返せば、整理の軸を1本持つだけで、一気に得点源に変わる単元でもあります。計算がほとんど要らず、覚える公式もない。にもかかわらず本試験ではきちんと出題される。これほどコストパフォーマンスの良いテーマは、機械科目のなかでもそう多くありません。
この記事を読み終えると、次のことができるようになります。
| 身につくこと | ゴールの状態 |
|---|---|
| 3方式の全体像 | 発電制動・回生制動・逆転制動を、迷わず言葉で説明できる |
| 整理の軸 | 「エネルギーの行方」という1本の軸で3つを並べられる |
| 2方式の共通点 | 発電制動と回生制動が同じ原理の仲間だと分かる |
| 回生が最良の理由 | なぜ回生制動が最も効率が良いのかを、理由つきで答えられる |
| 逆転制動の位置づけ | なぜこれだけ別系統なのか、なぜ小型機で多いのかを説明できる |
覚えることは、たった一言です。「止め方3つ、回生が最良」。ここから枝を伸ばしていきましょう。
暗記フレーズ:止め方3つ、回生が最良
この単元は、次の一言を土台にすると驚くほど頭に残ります。
止め方3つ、回生が最良
「止め方は3種類ある」「そのなかで一番優秀なのは回生制動」。この2つの事実さえ握っておけば、あとは各方式の中身を後からぶら下げるだけで済みます。試験会場で真っ白になったとき、まずこのフレーズを思い出してください。3つあると分かっていれば、選択肢を3つの箱に仕分ける作業に持ち込めます。
そして、その3つを区別する視点も一つに絞れます。エネルギーはどこへ行くのか。ブレーキとは要するに、走っている物体が持っている運動エネルギーをどこかへ追い出す作業です。追い出し先が「熱」なのか「電源」なのか、それとも「そもそも別の力でねじ伏せる」のか。この違いがそのまま3方式の違いになります。

ステップ1:なぜ電動機Mが発電機Gに変わるのか
制動法の話に入る前に、どうしても押さえておきたい前提があります。それは、回転している電動機は、電源を切った瞬間から発電機に化けるということです。
動画の冒頭スライドでも、電動機を表す M から発電機を表す G へ矢印が伸びていました。今日のテーマは電動機なのに、なぜ発電機の記号が出てくるのか。そこに引っかかった人は、良い勘をしています。
電動機と発電機は同じ機械
直流機は、電気を入れれば回り、外から回せば電気を出します。構造としてはまったく同じもので、どちらの向きに使うかが違うだけです。ですから、回転中の電動機から電源を切り離しても、羽根車のように慣性で回り続けている間は、界磁の磁束を切って電機子に起電力が発生し続けます。
この「勝手に発電してしまう性質」を、邪魔者としてではなくブレーキの道具として使うのが制動法です。発電するにはエネルギーが要ります。そのエネルギーは回転体の運動エネルギーから持ち出されるので、発電させればさせるほど回転は弱まる。つまり発電させること自体がブレーキになるわけです。
制動法は2系統に分かれる
ここまで理解すると、3方式が自然に2つのグループに割れます。
| グループ | 該当する方式 | やっていること |
|---|---|---|
| 発電させて止める | 発電制動・回生制動 | 電動機Mを発電機Gとして運転する |
| 力でねじ伏せる | 逆転制動 | 結線を入れ替えて逆向きのトルクを出す |
3つを横一列に暗記しようとすると混乱しますが、「2+1」で捉えれば負担は半分以下です。そして仲間である発電制動と回生制動の違いは、発電した電力を最後にどこへ流すか、それだけになります。
ステップ2:発電制動──エネルギーを熱として捨てる
1つ目は発電制動です。電動機Mとしての運転をやめ、発電機Gとして運転させます。そこで発生した電力を抵抗器に流し込み、熱に変えて捨ててしまう方式です。

抵抗に電流が流れれば発熱します。その熱の分だけ、回転体からエネルギーが抜けていく。だからブレーキが効く。仕組みとしては非常に素直です。
メリットとデメリット
| 観点 | 発電制動の評価 |
|---|---|
| 構造 | 抵抗器を用意して切り替えるだけで、電源側の条件を問わない |
| エネルギー | 発電した電力を全部熱にして捨てるため、効率は良くない |
| 位置づけ | 回生制動と原理は同じだが、行き先が「熱」なので最良ではない |
せっかく苦労して発電したのに、それを熱として空中に逃がしてしまう。もったいない、と感じたならその感覚が正解です。この「もったいなさ」こそが、次に出てくる回生制動との決定的な差になります。
ステップ3:回生制動──エネルギーを電源へ戻す
2つ目が、3方式の主役である回生制動です。電動機Mを発電機Gとして運転するところまでは、発電制動とまったく同じ。違いはその先にあります。発電した電力を抵抗で燃やすのではなく、電源側へ送り返すのです。

電池へ向かう緑の大きな矢印が、この方式のすべてを物語っています。捨てるはずだったエネルギーが、電源に戻って再び使える形になる。だから3方式のなかで最も効率が良いと言われます。
発電制動との差はここだけ
| 項目 | 発電制動 | 回生制動 |
|---|---|---|
| 電動機の扱い | 発電機Gとして運転 | 発電機Gとして運転(同じ) |
| 電力の行き先 | 抵抗器で熱として消費 | 電源へ戻して再利用 |
| 効率 | 低い(廃棄) | 高い(有効利用) |
表にすると一目瞭然です。動作原理の行は同じ文言、行き先の行だけが違う。試験でこの2つを取り違えるのは、ほぼこの一点の記憶があやふやなときです。「回生」という言葉は「生き返らせる」と書きます。エネルギーを生き返らせるから回生。名前がそのままヒントになっています。
なお、ここで戻せる電圧の大小や、電機子電流の向きがどうなるかを追いたくなった人は、電動機の基本式に戻ると腑に落ちます。速度と電圧・磁束の関係が怪しい人は、先に〈直流電動機の速度制御は「どこを変えるか」だけ─抵抗・界磁・電圧の3方式を数式で攻略〉を通しておくと、この節の理解が一段深くなります。
ステップ4:逆転制動──結線を入れ替えて逆トルクを生む
3つ目の逆転制動は、前の2つとは発想からして別物です。発電機に切り替えるのではなく、3端子のうち2端子を入れ替えて結線を変えることで、回転方向と逆向きのトルクを電動機自身に発生させます。

前へ進もうとしている物体に、後ろ向きの力を直接ぶつける。当然、止まり方は乱暴になります。だからこの方式は「急ブレーキ」と説明されるのです。
大型機で敬遠される理由
| 規模 | 採用のされ方 | 理由 |
|---|---|---|
| 小型の電動機 | 採用が多い | 結線を入れ替えるだけで済み、仕組みが単純 |
| 大型の電動機 | 採用は少ない | 初期電流が大きくなり、故障や発火の原因になる |
「単純だから小型機で好まれ、電流が大きくなりすぎるから大型機では避けられる」。この一往復を押さえておけば、逆転制動の特徴を問う設問はほぼ対応できます。
なお、逆トルクという言葉にピンと来ない場合は、そもそも直流電動機のトルクがどう決まるかを押さえ直すのが近道です。〈直流電動機のトルクと出力|ωT=EaIa『最強の等式』で機械が解ける〉で、トルクが磁束と電機子電流の積で決まることを確認しておくと、「電流の向きが変われば力の向きが変わる」という理屈が体感的に分かります。
ステップ5:なぜ回生制動が「最良」なのか
ここで、暗記フレーズの後半「回生が最良」を、理由つきで固めておきます。

左が発電制動=エネルギーの廃棄、右が回生制動=エネルギーの再利用。同じ量のエネルギーを扱っているのに、片方は炎と煙になって消え、もう片方はリサイクルされて電池に戻ります。
エネルギーの流れを一列に書くと
制動中のエネルギーの変換は、次のように並びます。
途中まではまったく同じ道を通り、最後の分岐だけが違う。「最良かどうか」を決めているのは、この最後の一歩だけなのです。ここが腹落ちすると、2方式を取り違えることはまずなくなります。
なお、発電機と電動機で電圧の式がどう入れ替わるのかを整理し直したい人は、〈直巻式 直流機を「一直線」で攻略!発電機と電動機の電圧公式の違い〉が効きます。「同じ機械を、どちら向きに使っているか」という視点は、制動法の理解とそのまま地続きです。
ステップ6:試験対策・3つの制動法の比較まとめ表
ここが本番で使う一枚です。動画でも「スクリーンショット推奨」と念を押していた場面にあたります。
| 制動法 | 動作原理 | 電力の行方と特徴 |
|---|---|---|
| 発電制動 | 電動機を発電機として運転 | 抵抗で電力消費、熱として捨てる |
| 回生制動 | 電動機を発電機として運転 | 発電した電力を電源へ戻す、有効利用 |
| 逆転制動 | 3端子の内、2端子を入替え | 逆トルクを発生させる、急停止 |
この表の読み方には、コツが1つあります。真ん中の列(動作原理)を縦に見ることです。
上の2行はまったく同じ文言、3行目だけが別物。つまり、選択肢に「電動機を発電機として運転」と書かれていたら、その時点で候補は発電制動か回生制動の2つに絞られます。あとは右の列を見て、熱なら発電制動、電源へ戻すなら回生制動と決まる。これで3択が実質2択、さらに1択へと収束します。
まとめ
直流電動機の制動法は、次の一言に集約されます。
止め方3つ、回生が最良
そして、その3つを見分ける物差しは「エネルギーの行方」でした。最後にもう一度だけ、頭のなかの整理棚を確認しておきましょう。
| 覚えること | 中身 |
|---|---|
| 全体の数 | 制動法は3つ(発電制動・回生制動・逆転制動) |
| グループ分け | 「発電させる2つ」+「力でねじ伏せる1つ」 |
| 発電制動 | 発電した電力を抵抗で熱にして捨てる |
| 回生制動 | 発電した電力を電源へ戻す。最も効率が良い |
| 逆転制動 | 2端子を入れ替えて逆トルク。急停止・小型機向き |
公式の暗記も、複雑な計算も要りません。それでいて本試験ではきちんと問われる。独学で時間をやりくりしている方にとって、これほど費用対効果の高い単元は貴重です。今日はここまで来られた自分を、素直に認めてあげてください。
⚠ ここを間違える人が多い
この単元で失点する原因は、知識の量ではなく「似ているものの区別」に集中しています。よくある取り違えを3つ挙げます。
❌ 発電制動と回生制動を、動作原理で見分けようとする
✅ 正しくは: 動作原理はどちらも「電動機を発電機として運転」で共通です。見分けるべきは動作原理ではなく、発電した電力の行き先。ここを混同していると、「電動機を発電機として運転する方式はどれか」という問い方をされたときに、片方しか選べず点を落とします。原理は同じ、出口だけが違う——この一文で覚え直してください。
❌ 回転の向きと電流の向きを、まとめて逆になると思い込む
✅ 正しくは: この2つは別々に考える必要があります。制動に入っても、回転体は慣性でそれまでと同じ向きに回り続けているのが普通です。回る向きが同じなら、電機子に生じる起電力の向きも変わりません。変化するのは、その起電力によって流れる電流の向きのほうです。「回っている向き」と「流れている向き」を1つの矢印でまとめてイメージしてしまうと、正誤問題で足をすくわれます。動いている向きと、電気が流れる向き。この2本の矢印を頭のなかで必ず分けて描きましょう。
❌ 逆転制動を「大は小を兼ねる万能な急ブレーキ」と考える
✅ 正しくは: 逆転制動が向いているのは小型の電動機です。仕組みが単純なので小型機では広く使われますが、大型機で同じことをやると初期電流が大きくなりすぎ、故障や発火につながります。「急ブレーキ=強力=どこでも使える」ではなく、乱暴だからこそ使える範囲が限られる、と押さえてください。
過去問ではこう出た
この単元は、平成29年 問2で出題されています。制動法は計算問題として問われることが少なく、多くは各方式の説明文の正誤を判断させる形で登場します。
出題のされ方には、はっきりした傾向があります。
| 問われ方 | 対策 |
|---|---|
| 方式名と動作原理の対応 | 「発電機として運転」の2方式を先にセットで覚える |
| 電力の行方(熱か電源か) | 発電制動=熱、回生制動=電源、で即答できるようにする |
| 向きに関する説明文の正誤 | 回転の向きと電流の向きを分けて読む |
つまり、この記事の比較まとめ表がそのまま採点基準になっているような単元です。表を1枚頭に入れておけば、選択肢を上から順に照合していくだけで答えが出ます。逆に言えば、曖昧なまま本番に行くと、もっともらしい説明文にそのまま引っかかります。
知識として入れたあとは、必ず本物の問題文で試してください。読んで分かった気になることと、選択肢を前にして選べることは別物です。
よくある質問
Q. 制動をかけている間、電動機は本当に発電しているのですか?
はい、発電しています。直流機は電気を入れれば回り、外から回せば発電する、同じ構造の機械です。制動に入った時点でも回転体は慣性で回り続けているため、界磁の磁束を電機子が切り続け、起電力が生じます。発電にはエネルギーが必要で、それは回転の運動エネルギーから持ち出されます。だから発電させるほど回転が弱まり、結果としてブレーキになるわけです。「発電させることが、そのままブレーキになる」——この因果関係が、発電制動と回生制動を理解する土台になります。
Q. 回生制動が最も効率が良いなら、なぜ発電制動や逆転制動が残っているのですか?
回生制動は、発電した電力を受け取ってくれる電源側があって初めて成立します。戻す先が確保できない状況では、抵抗器で熱にして捨てる発電制動のほうが確実です。また逆転制動は、素早く止めたい小型の電動機で「結線を入れ替えるだけ」という単純さが強みになります。効率だけで優劣が決まるのではなく、用途と設備の条件によって使い分けられている、と理解しておくと選択肢の読み方が変わります。試験対策としては、「エネルギー利用の観点では回生制動が最良」という限定つきの評価として覚えるのが正確です。
Q. 3つの名前がどうしても覚えられません。何かコツはありますか?
名前を字面で覚えようとすると混ざります。やっていることから名前を逆算するのがおすすめです。発電させて捨てるから「発電制動」、エネルギーを生き返らせるから「回生制動」、逆向きに回そうとするから「逆転制動」。どれも名前が動作をそのまま説明しています。そのうえで、暗記フレーズ「止め方3つ、回生が最良」を入口にすれば、3つの箱と主役の位置がすぐ思い出せます。まず箱を3つ用意し、中身は名前から引き出す。この順番が、いちばん崩れにくい覚え方です。
Webの何倍も覚えやすい
紙のフルラミネート加工の
暗記シートがあります
実績2,000部突破。
お風呂や電車のスキマ時間でサクッと勉強できます。
付属の練習用紙で無限に練習できます♪

🛒関連教材ショーケース
学習の効率を上げる、紙の本格教材ラインナップ。


この記事を読み終えたら、進捗を記録しましょう




