三相同期発電機の出力と並行運転を「3倍するだけ・双子にそろえるだけ」で攻略
電験三種「機械」科目の三相同期発電機の出力P₃と並行運転の条件を解説。P₃=3VE/xs・sinδは一相分の出力を3倍しただけという導出の流れで理解し、電機子抵抗raを無視してよい理由、並行運転の5要素(大きさ・位相・周波数・波形・相順)まで、試験で確実に得点できる形に整理します。
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この記事で身につくこと
同期発電機の単元は、テキストを開いた瞬間に「うっ」となる代表格です。ベクトル図が出てきて、記号がやたら多くて、しかも公式に 3 だの sinδ だの見慣れないものが並んでいる。ここで手が止まってしまう人は本当に多いです。
ですが、安心してください。この単元でやっていることは、突き詰めると次の2つだけです。
| 前半でやること | 後半でやること |
|---|---|
| 一相分の出力を求めて、それを3倍する | 2台の発電機の起電力を“双子”にそろえる |
たったこれだけです。ベクトル図も、無数に見える記号も、この2つを説明するための道具にすぎません。
この記事を読み終えると、次のことができるようになります。
- 電機子抵抗 ra をなぜ無視してよいのかを、人に説明できる
- P₃ = 3VE/xs・sinδ を、丸暗記ではなく「導出の流れ」で書き下せる
- 並行運転の条件を、抜けやすい2つも含めて5つ言える
- 「大きさが違うと流れる横流は有効か無効か」に即答できる

暗記フレーズ:出力は一相の3倍するだけ、並行運転は起電力を“双子”にそろえるだけ
この単元は、覚えることが多いように見えて、幹はこの一言に収まります。
出力は一相の3倍するだけ、並行運転は起電力を“双子”にそろえるだけ
前半の「3倍するだけ」は、公式の 3 がどこから来たのかを教えてくれます。天から降ってきた 3 ではなく、単に相が3つあるから3倍しただけ。後半の「双子にそろえる」は、並行運転の条件が「2台をそっくり同じ電圧にする作業」だと思い出させてくれます。
このフレーズを唱えられれば、公式を半分忘れていても再構成できます。それでは、順番に見ていきましょう。
ステップ1:電機子抵抗 ra は、なぜ無視してよいのか

同期発電機の等価回路には、本来なら電機子巻線の抵抗 ra と、同期リアクタンス xs の両方が入っています。ところが試験問題では、たいてい「電機子抵抗は無視できるものとする」と書かれています。
理由は単純で、同期機では ra が xs に比べて桁違いに小さい からです。
| 記号 | 正体 | 大きさの感覚 |
|---|---|---|
| ra | 電機子巻線そのものの抵抗 | 非常に小さい |
| xs | 電機子反作用+漏れリアクタンス | ra よりずっと大きい |
同じ回路の中に、大きい要素と極端に小さい要素が並んでいるとき、小さいほうを残しても答えはほとんど変わりません。それどころか計算だけが複雑になります。だから思い切って落としてしまう、というのが同期機の作法です。
「無視していいのか不安」と感じるのは真面目な人ほどよくあることですが、ここは xs ≫ ra だから省く と割り切ってしまってください。試験でも実務でも、この扱いが標準です。
ステップ2:負荷角δとは何者か

出力の式に出てくる δ(デルタ)は、内部誘導起電力 E と端子電圧 V の位相差です。
発電機の中では E という電圧が発生していますが、端子から外に出てくる電圧 V は、同期リアクタンスでの電圧降下のぶんだけ E とはズレます。大きさもズレますし、位相もズレます。この位相のズレが δ です。
δが大きい=仕事をしている
覚え方としては、こう捉えると腑に落ちます。
| δの様子 | 発電機の状態 |
|---|---|
| δ = 0 | 電力を送り出していない(ぶら下がっているだけ) |
| δが大きくなる | 送り出す電力が増えている |
| δ = 90° | 出力が最大 |
つまり δ は「この発電機、いまどれだけ踏ん張っているか」を表すメーターです。負荷が重くなるほど δ が開いていく、と考えてください。
ベクトル図そのものが怪しいという人は、先に同期発電機のベクトル図と三相短絡曲線を「引き算の電圧・ほぼ比例の直線」で攻略を読んでおくと、この先の見通しが一気に良くなります。
ステップ3:一相分の出力 P₁ を3段階で導く

いよいよ公式の中身です。ここは丸暗記しようとすると必ず崩れるので、流れで押さえます。
① 出発点はおなじみの電力の式
一相分の電力は、電圧×電流×力率です。
ここまでは理論科目でさんざん見てきた形ですね。特別なことは何もしていません。
② 電流 I を、同期リアクタンスで書き換える
電機子抵抗を無視すると、E と V の差を生んでいるのは xs だけです。したがって電機子電流 I は、E と V のベクトル差を xs で割ったものになります。ここでベクトル図の関係を使って整理すると、I cosθ の部分が (E sinδ)/xs に化ける、というのがこの導出の山場です。
③ まとめて一相分の出力になる
②を①に代入すると、こうなります。
これが一相分の出力です。V も E も xs も、機械が決まればほぼ動かない値なので、出力を左右しているのは実質 sinδ だけということも、この形からすぐ読み取れます。
xs や短絡比まわりがぼんやりしている人は、同期インピーダンスと短絡比を「短絡比は%Zsの裏返し」で丸暗記から卒業を先に通しておくと、この式の分母が何者なのかがはっきりします。
ステップ4:3倍すれば三相出力 P₃

ここが、この単元でいちばん拍子抜けするところです。三相なので、一相分を3倍するだけ。
公式の先頭についている 3 の正体は、これだけです。難しい理屈は一切ありません。相が3つあるから3つぶん、という足し算をかけ算にしただけです。
式から読み取れること
| 何を変えると | 出力 P₃ はどうなる |
|---|---|
| E(励磁を強める) | 比例して増える |
| V(端子電圧) | 比例して増える |
| xs(同期リアクタンス) | 大きいほど減る(反比例) |
| δ(負荷角) | sinδ に比例、90°で最大 |
「3VE/xs・sinδ」という並びを呪文として覚えるのではなく、VI cosθ → 一相分 → ×3 という道筋を覚えてください。試験本番で式があやふやになっても、この道筋さえ手が覚えていれば必ず書き戻せます。
ステップ5:並行運転とは、母線に仲間を増やすこと

ここから後半です。並行運転(並列運転) とは、すでに動いている発電機がつながっている母線に、もう1台の発電機をつないで一緒に運転することをいいます。
発電所では、需要が増えれば発電機を足し、減れば止めます。1台の巨大な機械ですべてを賄うのではなく、複数台で分担するほうが、故障時にも点検時にも融通が利くからです。
ただし、電圧を出している機械どうしをいきなりつなぐわけですから、条件がそろっていないと大変なことになります。そこで「投入してよい条件」が決められています。
ステップ6:並行運転の条件(前半3つ)

まずは、比較的思い出しやすい3つです。
| 条件 | 一致していないと | 合わせる手段 |
|---|---|---|
| ① 起電力の大きさ | 無効循環電流(横流)が流れる | 励磁電流を調整する |
| ② 位相 | 大きな横流が流れ、機械に衝撃がかかる | 原動機の回転速度を調整する |
| ③ 周波数 | 位相が合った状態を保てない | 原動機の回転速度を調整する |
ここで押さえておきたいのが、①だけが励磁の担当で、②③は原動機(回転速度)の担当という役割分担です。電気側でいじれるものと、機械側でいじるものが分かれている、と整理しておくと混乱しません。
そして、①がズレたときに流れる横流は 無効電流 です。有効電力を送っているわけではなく、ただ巻線を温めるだけの、まったくありがたくない電流です。ここは試験で狙われます。
外部特性や励磁の効き方があやふやな人は、同期発電機の外部特性曲線と自己励磁現象を「遅れは弱る・進みは強まる」で攻略を挟んでおくと、「励磁を強めると何が起きるのか」が身体に入ります。
ステップ7:抜けやすい残り2つ(波形・相順)

多くの人が3つ目まで言えて、そこで止まります。合否を分けるのは、残りの2つです。
| 条件 | 中身 | 調整できるか |
|---|---|---|
| ④ 波形 | 電圧波形の形(ひずみ具合)が同じであること | ✕ 設計・構造で決まる |
| ⑤ 相順 | 三相の相が回る順序が同じであること | 結線を直すしかない |
④の波形が特に厄介なのは、運転中の操作では合わせられないという点です。励磁をいくら回しても、波形の形そのものは変わりません。発電機を作った時点で決まっている固有の性質だからです。
⑤の相順は三相機ならではの条件で、単相の説明では出てきません。ここが抜けると、三相を前提とした問題文で足をすくわれます。
覚え方はシンプルに、大きさ・位相・周波数・波形・相順の5点セット。前3つが「運転しながら合わせるもの」、後ろ2つが「合っていることを確認するもの」と色分けしておくと、記憶が崩れません。
ステップ8:現場ではどうやって投入しているのか
試験には直接出ませんが、知っておくと条件の意味が一気に立体的になります。
実際の発電所では、同期検定器(同期検定盤)という計器を見ながら並列投入をしています。ランプの点滅の速さや、指針の動きで「いま位相が合った」と分かるようになっており、その瞬間を狙って遮断器を入れます。周波数がわずかにズレていると指針がゆっくり回り続けるので、合っていないことが目で見て分かる仕組みです。
そして、相順を間違えたまま投入してしまうと、大きな循環電流(横流) が流れ、発電機そのものを壊しかねない重大事故になります。教科書の「相順を一致させること」というたった一行は、現場では機械の命がかかった一行なのです。
こう知ると、5つの条件が単なる暗記項目ではなく「守らないと壊れるルール」に見えてきませんか。この感覚が持てると、忘れにくくなります。
まとめ
この単元でやったことを、一枚に畳んでおきます。
| 論点 | 結論 |
|---|---|
| 電機子抵抗 ra | xs に比べて非常に小さいので無視する |
| 一相分の出力 | P₁ = (VE/xs) sinδ |
| 三相出力 | P₃ = 3 × (VE/xs) sinδ(一相分の3倍) |
| 出力が最大になる負荷角 | δ = 90° |
| 並行運転の条件 | 大きさ・位相・周波数・波形・相順の5つ |
| 大きさがズレたとき | 無効循環電流(横流)が流れる |
| 位相・周波数を合わせる手段 | 原動機の回転速度 |
もう一度、合言葉を。出力は一相の3倍するだけ、並行運転は起電力を“双子”にそろえるだけ。ここまで来れば、この単元はもう「苦手なところ」ではありません。
⚠ ここを間違える人が多い
同じところで転ぶ人が本当に多い箇所を、3つだけ挙げておきます。
❌「位相がズレているなら極数を変えればいい」
これはやってしまいがちな勘違いです。極数は発電機を製造した時点で決まっている構造そのもので、運転中に変えられるものではありません。
✅ 位相と周波数の調整は、原動機の回転速度で行います。「電気でいじるのは大きさ(励磁)、機械でいじるのが位相と周波数(回転速度)」と役割で覚えておくと、この取り違えは起きません。
❌「起電力の大きさが違うと、有効電流が流れる」
流れるのは 無効 電流です。選択肢に「有効」と「無効」が並んでいると、なんとなく強そうな「有効」を選んでしまう人がいますが、大きさの差で生じる横流は仕事をしません。ただ巻線を温めるだけです。
✅ 大きさのズレ=無効横流。この対応だけは、条件反射で出せるようにしておきましょう。
❌「励磁を調整すれば、どの条件でも合わせられる」
励磁で動かせるのは起電力の大きさだけです。波形は発電機の設計と構造で決まる固有の性質なので、励磁電流や励磁電圧をどう操作しても形は変わりません。
✅ 「励磁で合わせられるのは大きさだけ」と線を引いておけば、「励磁調整で波形も合わせられる」という一見もっともらしい記述を、落ち着いて誤りと判定できます。
計算問題での落とし穴
並行運転で2台の分担を問う計算では、A機の力率を求めるのに B機の電流を代入してしまう取り違えが起きます。どちらの機械について聞かれているかを、式を書く前に指差し確認してください。また三相なので、電力の式は √3 が付いた形(P = √3 V I cosφ)を使います。ここで √3 を落とすと、当然ながら答えが合いません。
過去問ではこう出た
この単元は、電験三種「機械」で安定して出題され続けている定番です。近年だけでも、次のように繰り返し登場しています。
| 年度 | 問番号 |
|---|---|
| 令和8年上期 | 問5 |
| 令和7年下期 | 問6 |
| 令和7年上期 | 問6 |
| 令和6年下期 | 問5・問6 |
| 令和4年上期 | 問4 |
| 令和1年 | 問15 |
| 平成29年 | 問4 |
出題のされ方には、はっきりした傾向があります。ひとつは並行運転の条件を並べて正誤を問う文章問題で、波形や相順、横流の性質(無効か有効か)が引っかけの中心になります。もうひとつは2台の発電機の負荷分担を計算させる問題で、こちらは B問題(問15など)で腰を据えて解かせる形も出ています。つまり、条件の暗記だけでも、計算だけでも足りず、両輪で仕上げておく必要があるということです。
テーマで照合すると、この単元に関係する過去問は33問あります。まずは条件5つを完璧にしたうえで、負荷分担の計算に手を広げていくのが効率的です。
よくある質問
Q. P₃ の公式に出てくる V と E は、線間電圧ですか?相電圧ですか?
相電圧です。一相分の出力 P₁ = VE/xs・sinδ を3倍して三相ぶんにしている、という導出の流れを思い出してください。一相分の話をしているのですから、そこで使う電圧は当然、一相あたりの電圧=相電圧です。線間電圧が与えられている問題では、√3 で割って相電圧に直してから代入します。ここは「3倍するだけ」の意味を理解していれば、迷わずに処理できるところです。
Q. 電機子抵抗を無視すると、答えがズレて減点されませんか?
なりません。問題文に「電機子抵抗は無視できるものとする」と明記されているのが通例で、それは出題側が「無視した前提で解いてください」と指定しているということです。そもそも同期機では xs ≫ ra なので、ra を残しても結果はほとんど変わりません。真面目な人ほど「省略していいのか」と気にしますが、ここは指定どおり堂々と落としてください。
Q. 並行運転の5条件、どうしても波形と相順が出てきません。
順番に理由づけをすると定着します。前半の3つ(大きさ・位相・周波数)は、運転しながら合わせにいくもの。後半の2つ(波形・相順)は、合わせにいけないので、合っていることを確認するもの。この性格の違いで2グループに分けてしまえば、「調整できない側が2つあったな」という手がかりから思い出せます。相順は三相機だけの条件なので、「三相ならもう1個ある」と紐づけておくのも有効です。
Q. 負荷角δは、実際にどれくらいまで大きくなるものですか?
試験で問われるのは、P₃ が sinδ に比例し、δ=90°で最大になるという関係です。式のうえでは 90°で出力が頂点に達し、それを超えると sinδ が減っていきます。まずは「δが大きいほど踏ん張っている」「90°が頂点」という2点を押さえてください。この関係が入っていれば、グラフを示して最大出力を問うタイプの設問にも対応できます。
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