三相同期電動機の原理を「回転磁界に引っ張られるだけ」で丸暗記から卒業
電験三種「機械」科目の三相同期電動機の原理を解説。固定子の回転磁界に回転子の磁石が引っ張られて回る仕組みと、始動トルクがゼロになる理由を図でイメージ。3つの始動法(自己始動法・始動電動機法・低周波始動法)を「自分・助っ人・スロー」で整理し、誘導電動機との違いや脱調まで、試験で確実に得点できる形にまとめます。
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この記事で身につくこと
「同期電動機」と聞いた瞬間に、身構えてしまう人は多いと思います。発電機のほうでベクトル図に苦しめられた記憶があると、電動機まで来て「またあれか……」と気が重くなるのも無理はありません。
ですが安心してください。三相同期電動機の原理そのものは、この科目の中でもかなり素直なほうです。 中身をひと言でいえば、こうなります。
固定子がつくる回転磁界に、回転子の磁石が引っ張られて回る。それだけ。
磁石と磁石が引き合う、という小学校の理科と同じ話です。難しく感じるのは、原理ではなく「なぜ始動トルクがゼロなのか」「始動法が3つもあって覚えられない」という2点に集中しています。逆にいえば、そこさえ押さえれば、この単元は得点源に変わります。
この記事を読み終えると、次のことができるようになります。
| 身につくこと | ゴールの状態 |
|---|---|
| 同期電動機が回る仕組み | 回転磁界と回転子の引き合いとして説明できる |
| 始動トルクがゼロの理由 | 「速すぎて力が打ち消し合う」と自分の言葉で言える |
| 3つの始動法 | 名前と中身をセットで即答できる |
| 誘導電動機との違い | 滑りの有無で整理して答えられる |
| 脱調とは何か | 追従できなくなった状態、と説明できる |

暗記フレーズ:始動は「自分・助っ人・スロー」の3択
この単元の山場は、3つの始動法の名前が混ざってしまうことです。試験本番で「始動電動機法ってどっちだっけ」と迷った経験がある人ほど、次のフレーズが効きます。
始動は「自分・助っ人・スロー」の3択
| 合言葉 | 始動法の名前 | やっていること |
|---|---|---|
| 自分 | 自己始動法 | 自分の中の巻線で自力で加速する |
| 助っ人 | 始動電動機法 | 外部の電動機に押してもらう |
| スロー | 低周波始動法 | 回転磁界の速さを落として合わせる |
「自分でやるか、人に頼むか、相手にゆっくりしてもらうか」——人間の困りごとの解決法と同じ並びです。この3択の形で頭に入れておけば、選択肢に並んでいても取り違えません。
そしてもう一つ、原理側の合言葉も持っておきましょう。
同期電動機の始動トルクはゼロ
これは「欠点」として何度も問われるポイントです。裏返せば、始動法が3つも用意されている理由そのものでもあります。
ステップ1:回転磁界に引っ張られて回る、それだけ

固定子の三相巻線に三相交流を流すと、回転する磁石が中にいるのと同じ状態になります。これが回転磁界です。その真ん中に磁石(回転子の磁極)を置くと、N極とS極が引き合って、磁石は回転磁界にくっついて回ります。
同期電動機の原理は、本当にこれだけです。
回転子は「必ず」同期速度で回る
回転磁界の速さは、周波数と極数だけで決まります。
回転子はこの回転磁界に貼りついて回るので、回転子の速度=同期速度になります。負荷が軽かろうが重かろうが、速度は変わりません。ここが同期電動機の最大の特徴です。
| 項目 | 同期電動機 |
|---|---|
| 回転速度 | 常に同期速度 Ns |
| 滑り | ゼロ |
| 負荷が増えたとき | 速度は変わらず、磁石の「ずれ角」が大きくなる |
負荷が重くなっても速度が落ちない代わりに、回転磁界と回転子のあいだの角度(負荷角)が開いていきます。ゴムひもで引っ張られている、とイメージすると分かりやすいです。ひもは伸びますが、引っ張る側の速度は変わりません。
ステップ2:始動トルクがゼロになる理由

ここが最初の関門です。「磁石が引き合うなら、止まっていても回り出すのでは?」と思いますよね。ところが止まっている状態からは回り出せません。
理由はシンプルで、回転磁界が速すぎるからです。
止まっている回転子から見ると、回転磁界は目の前をものすごい速さで通り過ぎていきます。N極が来た瞬間は引っ張られ、次の瞬間にはS極が来て逆向きに押される。この切り替わりが1秒間に何十回も起こるため、回転子は「引かれる・押される」を交互に受けるだけで、平均すると力がゼロになってしまうのです。
電車が目の前を高速で通り過ぎるとき、手をつかんでもらおうとしても届かない。あの感覚に近いのが始動時の同期電動機です。
「ゼロ」の意味を取り違えない
ここでつまずく人が多いので、はっきり書いておきます。始動トルクがゼロというのは、「永久に回らない」という意味ではありません。
| 状態 | 回転磁界に追従できるか |
|---|---|
| 停止している | ❌ 速度差が大きすぎて追従できない |
| 同期速度近くまで加速済み | ⭕ 引き込まれて同期する |

つまり、何らかの方法で同期速度の近くまで持っていってやりさえすれば、あとは磁石が勝手に引き込んでくれるわけです。だから始動法という考え方が必要になります。この順番で理解しておくと、次の3つの始動法が「なぜ存在するのか」まで含めて頭に入ります。
ステップ3:始動法①「自分」=自己始動法

1つ目は、外部の手を借りずに自分で加速する方法です。
回転子に制動巻線というかご形の巻線を仕込んでおきます。始動時はこの巻線がかご形誘導電動機の回転子として働き、誘導電動機の原理でぐんぐん加速します。同期速度の近くまで上がったところで界磁を励磁すると、回転磁界に引き込まれて同期運転に入る、という流れです。
始動のあいだだけ誘導電動機として動き、走り出したら同期電動機に切り替わる。二刀流の始動法です。
この制動巻線は、運転中は乱調(回転のふらつき)を抑える役目も持ちます。名前が「制動」なのはこちらが由来です。始動と制動の二役、と覚えておくと混乱しません。
ステップ4:始動法②「助っ人」=始動電動機法

2つ目は、別の電動機に押してもらう方法です。同じ軸につないだ始動用の電動機で回転子を回し、同期速度の近くまで上げてから、同期電動機を電源につなぎます。
名前がそのまま中身なので、「始動のための電動機を用意する方法」と読めば迷いません。
| 比べる観点 | 自己始動法 | 始動電動機法 |
|---|---|---|
| 加速する力の出どころ | 自分の制動巻線 | 外部の別の電動機 |
| 追加設備 | 不要(巻線を内蔵) | 始動用の電動機が要る |
| イメージ | 自力 | 助っ人 |
自転車を押してもらってから乗り込むのと同じで、走り出しさえすればあとは自分で走れる——同期電動機の性格をよく表した方法です。
ステップ5:始動法③「スロー」=低周波始動法

3つ目は発想が逆で、回転子を速くするのではなく、回転磁界を遅くする方法です。
同期速度の式をもう一度見てください。
極数 p は機械が完成した時点で固定ですが、周波数 f は電源側で変えられます。 f を下げれば回転磁界はゆっくり回るので、止まっている回転子でも追従できます。追従したまま少しずつ f を上げていけば、最終的に定格の周波数まで持っていける、という理屈です。
ゆっくり歩いてくれる人にはついて行ける。だんだんペースを上げてもらえば、最後は同じ速さで並んで歩ける。
3つの始動法を並べると、狙いどころの違いがはっきりします。
| 始動法 | 何を操作するか | 合言葉 |
|---|---|---|
| 自己始動法 | 回転子側(制動巻線で自力加速) | 自分 |
| 始動電動機法 | 回転子側(外部の電動機で加速) | 助っ人 |
| 低周波始動法 | 磁界側(周波数を下げて減速) | スロー |
前の2つは回転子を速くする。最後の1つだけ磁界を遅くする。 この分け方で覚えると、3つが一気に整理できます。
ステップ6:誘導電動機との違いと「脱調」
同期電動機を勉強していると、必ず頭をよぎるのが「誘導電動機と何が違うのか」という疑問です。ここを曖昧にしたままだと、問題文のどちらの話をしているのか分からなくなります。ひと目で分かる形にしておきましょう。
| 比べる観点 | 三相同期電動機 | 三相誘導電動機 |
|---|---|---|
| 回転速度 | 同期速度そのもの | 同期速度より少し遅い |
| 滑り | ゼロ | 滑りがないとトルクが出ない |
| 回転子 | 磁極(界磁)を持つ | かご形などの導体 |
| 始動トルク | ゼロ(始動法が必要) | 自力で始動できる |
同期電動機は「滑りゼロ」が売り、誘導電動機は「滑りがあるから回る」。 正反対の性格だと覚えると、混ざりません。
追従できなくなると「脱調」
同期電動機は回転磁界に貼りついて回りますが、負荷が重くなりすぎると、その引き合う力では支えきれなくなります。 ゴムひもが限界まで伸びて、ちぎれてしまうイメージです。こうなると回転子は回転磁界についていけず、同期がはずれます。これが脱調です。
脱調は「壊れる」というより「同期の関係が切れて、運転を続けられなくなる」状態です。始動時に追従できないのも、原理としては同じ「非同期の状態」だと整理しておくと、話がつながります。
なお、同期機の基本的な性質(同期速度・ベクトル図・励磁の効き方)が怪しいと感じたら、電動機に進む前に発電機側を固めておくのが近道です。同期インピーダンスと短絡比を「短絡比は%Zsの裏返し」で丸暗記から卒業を先に読んでおくと、この単元の計算問題がぐっと楽になります。
ステップ7:実務ではどうしているのか

試験に直接は出ませんが、知っておくと理解が立体的になる話を2つ。
| 現場の話 | 中身 |
|---|---|
| 主流は自己始動法 | 制動巻線を兼ねた自己始動法が最も一般的。追加設備が要らずコストが低いため広く使われている |
| 始動時の大電流 | 大型の同期電動機は始動時に大きな電流が流れるため、電力会社との協議が必要になる場合がある |
「なぜ3つのうち自己始動法ばかり出てくるのか」も、コストの話として腑に落ちます。3つ覚えるのは試験のためですが、実物として一番よく見かけるのは自分で始動するタイプ、と知っておくと記憶が定着します。
まとめ
三相同期電動機は、原理だけ見れば「磁石が磁石に引っ張られて回る」という素直な機械です。難所は始動まわりに集中しているので、そこを押さえれば得点源になります。
| 押さえる点 | 結論 |
|---|---|
| 回る仕組み | 回転磁界に回転子の磁極が引っ張られる |
| 回転速度 | 常に同期速度 Ns=120f/p、滑りゼロ |
| 始動トルク | ゼロ(回転磁界が速すぎて力が打ち消し合う) |
| 始動できる条件 | 同期速度の近くまで加速できればよい |
| 始動法 | 自分(自己始動法)・助っ人(始動電動機法)・スロー(低周波始動法) |
| 追従できないとき | 脱調(非同期の状態) |
始動は「自分・助っ人・スロー」の3択
この一言さえ持ち帰れば、始動法の問題で迷うことはなくなります。
⚠ ここを間違える人が多い
原理が分かっていても、計算問題で足をすくわれる箇所があります。よくある3つを挙げておきます。
❌ 回転速度[min⁻¹]のままトルクを計算してしまう
トルクは「入力(出力)電力÷角速度」で求めますが、ここで使う角速度は[rad/s]の同期角速度です。
✅ 正しくは、まず極数と周波数から同期速度 Ns を出し直し、それを上の式で[rad/s]に直してから割ります。分あたりの回転数をそのまま割ると、桁が大きくずれた値になり、その値が選択肢に用意されていることもあります。単位換算を1行はさむだけで防げるミスなので、答案には必ず ω を書く癖をつけましょう。
❌ 線間電圧をそのまま1相の式に代入してしまう
Y結線の機器では、与えられているのが線間電圧なのか相電圧なのかで答えが変わります。
| 与えられた値 | 1相分の計算で使う値 |
|---|---|
| 線間電圧 V | V/√3(相電圧に直す) |
| 相電圧 | そのまま使える |
✅ 誘導起電力を求める前に、まず√3で割る。この一手を忘れると、電圧が√3倍ずれたまま最後まで進んでしまいます。計算過程は正しいのに答えだけ合わない、というときはここを疑ってください。
❌ 発電機のベクトル図をそのまま持ち込んでしまう
電動機と発電機では、電圧の関係式の向きが逆になります。
| 機器 | 関係式 |
|---|---|
| 同期発電機 | Ė = V̇ + j x_s İ |
| 同期電動機 | V̇ = Ė + j x_s İ |
✅ 電動機は電源から電流が流れ込む側なので、端子電圧 V が「誘導起電力+リアクタンス降下」になります。発電機の式のままベクトル図を描くと、リアクタンス降下の向きが逆を向き、力率の遅れ・進みが反対に見えてしまいます。図を描く前に「今は電動機か発電機か」を口に出して確認するのが確実です。
このあたりのベクトル図に不安が残る人は、同期発電機の外部特性曲線と自己励磁現象を「遅れは弱る・進みは強まる」で攻略で「遅れ・進み」の感覚をつかんでおくと、電動機側でも迷いにくくなります。
過去問ではこう出た
同期電動機は、機械科目で安定して出続けているテーマです。実際の出題を並べると次のようになります。
| 年度 | 問番号 |
|---|---|
| 令和8年上期 | 問15 |
| 令和6年上期 | 問6 |
| 令和5年下期 | 問5 |
| 令和4年下期 | 問4 |
| 令和3年 | 問5・問7 |
| 令和2年 | 問5 |
| 令和1年 | 問5 |
テーマで照合すると、電験ジムの収録範囲だけで39問が該当します。ほぼ毎年どこかで顔を出す計算になります。
出題の傾向は大きく2通りです。ひとつは始動法や特徴を問う知識問題で、この記事の「自分・助っ人・スロー」がそのまま効きます。もうひとつはB問題での計算で、同期速度からトルクを求めたり、ベクトル図から誘導起電力を求めたりする形です。知識問題は落とせない、計算問題は単位換算と結線の確認で差がつく——この2本立てで対策すると効率的です。
よくある質問
Q. 始動トルクがゼロなら、そもそも同期電動機を使う意味はあるのですか?
始動さえ乗り切れば、負荷が変わっても速度が一定という大きな長所があります。誘導電動機は負荷が重くなると滑りが増えて少し遅くなりますが、同期電動機は同期速度のまま回り続けます。速度を厳密に保ちたい用途では、始動の手間を払ってでも選ぶ価値がある、というわけです。加えて、界磁の励磁を調整することで力率を改善できるという使い方もあります。
Q. 自己始動法のとき、なぜ最初から界磁を励磁しておかないのですか?
始動中の回転子は同期速度より遅く回っている状態です。ここで界磁を励磁してしまうと、回転磁界との速度差によって引く力と押す力が交互にかかり、加速の邪魔になります。加速中は誘導電動機として動かし、同期速度に近づいてから磁石として振る舞わせる——この順番だからこそスムーズに引き込めます。役割を切り替えるタイミングが肝心、と理解しておきましょう。
Q. 脱調してしまったら、電動機は壊れるのですか?
脱調そのものは「同期の関係が切れた状態」であって、必ず壊れることを意味するものではありません。ただし回転が乱れて正常な運転が続けられなくなるため、放置してよい状態でもありません。試験では負荷が重すぎて追従できなくなる現象の名前として問われることが多いので、まずは用語と意味をセットで押さえておけば十分です。
Q. 三相同期発電機と同期電動機は、別々に覚え直す必要がありますか?
いいえ、同じ機械を逆向きに使っているだけです。電力を入れて回転を取り出すのが電動機、回転を入れて電力を取り出すのが発電機で、構造も同期速度の式も共通です。違うのは電圧の関係式の向き(前述のベクトル図)くらいだと考えて構いません。発電機側を先に固めておくと電動機の理解が一気に進むので、三相同期発電機の出力と並行運転を「3倍するだけ・双子にそろえるだけ」で攻略もあわせて読んでおくと、この分野がまとめて自分のものになります。
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