電位差は『山の高低差』!高い→低いで電気は流れる
電験三種「理論」の回路計算すべての土台、電位差を完全図解。回路図を平らな2D線でなく『高低差のある3D地形』として捉えれば、なぜ電流が流れるのかが物理イメージで一発理解。オームの法則 V=IR からキルヒホッフ第2法則まで自然につながります。
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この記事で身につくこと
「オームの法則は暗記した。キルヒホッフも公式は書ける。でも、問題を前にすると手が止まる」——独学でここに引っかかっている方は、本当に多いです。
原因は、公式を覚えていないことではありません。回路図を「平らな紙の上の線」として見ていることにあります。平らな線には、電気が動く理由がどこにも描かれていません。理由が見えないまま公式だけを当てはめようとするから、どの式を使えばいいのか分からなくなるのです。
この記事では、回路図を高低差のある「3Dの地形」として見直します。読み終わったときには、次の状態になっているはずです。
| 読む前 | 読んだ後 |
|---|---|
| 回路図=平らな線の絵 | 回路図=高低差のある山の地形 |
| なぜ電流が流れるのか説明できない | 「高い→低いだから流れる」と即答できる |
| V=IR を丸暗記している | V・I・R が山の何にあたるか言える |
| キルヒホッフの第2法則が呪文 | 「一周したら高さはゼロ」と言い換えられる |
回路記号そのものがまだ曖昧だという方は、先に計算問題の土台!回路図の基本記号10個を『機能別ファミリー』で攻略に目を通しておくと、この先の地形の話がすんなり入ります。

暗記フレーズ:高い→低いで電気は流れる
今日ここだけ持ち帰るなら、この1行で十分です。
高い→低いで電気は流れる
たったこれだけ。でも、この1行が電位差・オームの法則・キルヒホッフの第2法則という理論科目の主要テーマを、全部つなぐ背骨になります。以降のステップは、この1行を体に染み込ませるための道のりだと思って読んでください。
発想の転換:回路図は「平ら」ではない
まず、これまでの見方を一度手放します。
| 見方 | 中身 | 結果 |
|---|---|---|
| ❌ 多くの初心者のイメージ | 紙の上に描かれた2Dの線 | なぜ電気が動くのかが見えない |
| ⭕ 実際の回路の姿 | 高低差のある3Dの地形 | 電気は「見えない山」を下っている |

紙に描かれている以上、回路図が平らに見えるのは当たり前です。しかし実際の回路の中では、電気にとっての「高さ」がはっきり存在しています。その高さの差があるから、電気は動く。逆に言えば、高さの差がゼロなら電気は一歩も動きません。
ここから3ステップで、その見えない山を自分の手で組み立てていきます。
ステップ1:基準となる「低い場所」を作る

最初に置くのは、山の頂上ではなく麓です。
- 低電位=電気的な高さが低い場所
- 山でいえば、地面・麓にあたる
- 回路を考えるときの「基準」になる場所
なぜ低い場所から作るのか。理由はシンプルで、基準がなければ「差」が測れないからです。標高を語るには海面という基準が要るのと同じで、電気の高さを語るにも基準となる低い場所が要ります。この低電位があってはじめて、次のステップで登場する「高さの差=電位差」が意味を持ちます。
ステップ2:そびえ立つ山が現れる ── 電位差=電気を流す高低差

麓ができたところに、山が立ち上がります。
| 用語 | 山でいうと | 意味 |
|---|---|---|
| 高電位 | 頂上 | 電気的な高さが高い場所 |
| 低電位 | 麓 | 電気的な高さが低い場所 |
| 電位差 | 山の高さそのもの | 高電位と低電位の差 |
ここが今日の一番の勘所です。電位差とは、高電位という点でも低電位という点でもなく、その2点の「差」です。山が高いほど電位差は大きく、頂上と麓が同じ高さなら電位差はゼロになります。
そして、この高低差こそが電気を流す力の正体です。
ステップ3:だから電気は流れる!
高い場所にボールを置けば、坂を転がり落ちます。電気もまったく同じです。
高い→低いで電気は流れる
電流は、高電位から低電位へ向かって流れる。落差が大きいほど、転がり落ちるボールは勢いを増します。動画では、山の頂上から炎をまとったボールが低電位に向かって転がり落ちる図で表現していますが、落差が大きい=勢いが強いという感覚が、そのまま「電位差が大きいほど電流が流れやすい」につながります。
言い換えると、電気が流れないときは必ず理由があります。それは「道が塞がっている」か、「高低差がない」かのどちらかです。
単なる「高さ」ではない ── そこに潜む力

高電位にある電気は、ただ静かに止まっているわけではありません。
崖の端でプルプルと震えているボールを思い浮かべてください。まだ落ちてはいない。けれど、エネルギーが今にも解き放たれそうな状態です。道が開いた瞬間、一気に流れ出す準備ができています。
この「秘めた力」があるからこそ、スイッチを入れた瞬間に電流が流れ出します。高電位とは、単に位置が高いだけの場所ではなく、エネルギーを内側にため込んだ場所なのです。
高電位側に潜む「押し出す力」

このイメージをもう一段はっきりさせるなら、圧縮されたバネです。
- 高電位側には、電気を前へ前へと押し出す力が常に働いている
- だから電気は、高電位から低電位へ「必ず」流れる
- 流れるかどうかは気分次第ではなく、力が働いている以上の必然
「押す力」という言葉にピンときた方は鋭いです。電圧とは押す力である——この感覚は、この先オームの法則は「公式円」で攻略!V=RIで電験計算の9割が片付くで公式を扱うときにそのまま効いてきます。
回路計算における絶対ルール

ここまでを一つの掟にまとめます。
電流は必ず、高から低に流れる
逆向きには流れません。水が低いところから高いところへ勝手に逆流しないのと、まったく同じです。
計算問題で電流の向きを問われたとき、迷ったらこのルールに戻ってください。「どちらが高電位か」を先に決めれば、電流の向きは自動的に決まります。向きが決まれば、あとは数字を入れるだけの作業になります。
この高低差が、法則の理解に直結する

ここからが本番です。頭の中に作った山の地形を、そのまま回路図に「翻訳」します。
| 山の地形 | 回路図の部品 | 役割 |
|---|---|---|
| 電流が駆け下りる坂道 | 抵抗 | 高さ(電圧)を消費して下る場所 |
| 高低差を生み出すポンプ | 電源 | ボールを高い場所へ持ち上げる装置 |
坂道=抵抗、ポンプ=電源。この1対1の対応が頭に入ると、回路図を見た瞬間に「どこで高さが上がって、どこで下がるのか」が読めるようになります。回路図は、山の断面図なのです。
オームの法則 V=I×R の真の姿
丸暗記していたこの式に、地形の意味を入れます。
| 記号 | 名前 | 山でいうと |
|---|---|---|
| 電圧・電位差 | 山の高さ | |
| 電流 | 転がり落ちるボールの数と勢い | |
| 抵抗 | 坂道のデコボコ具合 |
読み下すとこうなります。電圧 で作った山の落差エネルギーを、転がり落ちるボールの数(電流 )と坂道のデコボコ具合(抵抗 )で消費してしまう。
デコボコが多い坂ほどボールは進みにくく、同じ高さでも流れる量は減る。つまり が大きいほど は小さい。式を変形しなくても、地形を思い浮かべるだけで大小関係が見えます。
電気は目に見えません。だからこそ、常に目に見えるもので置き換えてイメージすることが、独学では効きます。
キルヒホッフの第2法則も「山登り」と同じ
名前が難しいだけで、中身は山登りです。
そもそも第2法則とは
電気回路の中で、一つの輪っか(閉回路)をぐるっと一周したとき、電源で上昇した電圧と、各抵抗で下がった電圧を全部足すとゼロになる。これが第2法則です。
山でいえば、電源というエレベーターで山に登り、抵抗という坂道を下って元の場所に戻れば、高さの合計は必ずゼロになる、ということ。当たり前ですよね。出発地点に戻ってきたのですから。
数字で確かめる
| 通過する場所 | 高さの変化 |
|---|---|
| Base(出発点) | 0 m |
| 電源(エレベーター) | +100 V |
| 抵抗1(坂道) | −40 V |
| 抵抗2(坂道) | −60 V |
| Base(帰着) | 合計 0 V |
きれいにゼロになりました。100V 上がって、40V 下がって、60V 下がる。一周すれば元の高さです。
この「一周したら高さの合計はゼロ」という感覚さえあれば、複雑な回路でも符号を追いかけられるようになります。回路計算における最強の武器です。
まとめ
完全保存版・電位差マスター・マトリクスです。ここだけスクリーンショットしておけば、外出先の復習に使えます。
| 概念 | 物理的なイメージ | 暗記フレーズ | 次のステップ |
|---|---|---|---|
| 電位差(高電位と低電位) | 電気を流す高低差と押し出す力 | 高い→低いで電気は流れる | オームの法則・キルヒホッフの法則への適用 |
要点をもう一度、順番に並べておきます。
- 回路図は平らな線ではなく、高低差のある3Dの地形
- まず基準となる低電位(麓)を置く
- 高電位(頂上)との差が電位差=電気を流す力
- 電流は必ず高から低へ。逆流はしない
- 坂道=抵抗、ポンプ=電源として回路図に翻訳する
- V=IR は「高さ・ボールの勢い・坂のデコボコ」の関係式
- 一周したら高さの合計はゼロ=キルヒホッフの第2法則
⚠ ここを間違える人が多い
この単元は、理解した気になった直後の計算問題で足をすくわれます。実際に多い取り違えを3つ挙げます。
❌ 電源の電圧が、回路のどこにでもそのままかかっていると思ってしまう
❌ 電源が100Vなら、途中の抵抗にも100Vがかかる ⭕ 手前の抵抗で下がった分を引いた残りが、その先にかかる電圧
山で考えれば当然です。頂上が標高100mでも、途中の坂を50m下ったあとの地点は標高50m。そこから先の高低差は50mしか残っていません。電圧は使うほど減っていく——これを忘れて電源電圧を使い回すと、答えが必ずずれます。
❌ 電源から出た電流が、そのまま全部その抵抗に流れると思ってしまう
❌ 全体に5A流れているのだから、この抵抗にも5A ⭕ 枝分かれ(並列)があれば、そこで電流は分かれている
道が2本に分かれれば、ボールも2手に分かれます。分流している以上、注目したい抵抗を通る電流は全電流より少ない。枝分かれを見つけたら「ここで分かれる」と印をつける習慣をつけてください。
❌ 高低差そのものと、高さの基準点を混同してしまう
❌「A点の電位が20V」と「AB間の電位差が20V」を同じものとして扱う ⭕ 電位は基準点からの高さ、電位差は2点間の差
同じ「20V」でも意味が違います。基準(麓)をどこに置いたかで電位の数値は変わりますが、2点間の電位差は基準をどこに置いても変わりません。問題文が「電位」を聞いているのか「電位差」を聞いているのか、必ず読み分けましょう。
過去問ではこう出た
電位差は単独の暗記問題として出るというより、回路計算の土台として毎回どこかに顔を出すテーマです。実際に、次のような出題があります。
| 年度 | 問番号 |
|---|---|
| 平成29年 | 問7 |
| 平成30年 | 問6 |
| 令和1年 | 問6 |
| 令和2年 | 問6 |
| 令和3年 | 問7・問8 |
| 令和4年下期 | 問15 |
| 令和5年下期 | 問5 |
| (動画にひも付けられた過去問・電験ジムの収録範囲で 23問) |
傾向はおおむね2つです。1つは、直列と並列が混ざった回路で「指定された2点間の電位差」や「ある抵抗にかかる電圧」を求めさせるもの。もう1つは、複数の閉回路をキルヒホッフの第2法則で立式させるものです。どちらも、高低差のイメージが頭にあるかどうかで解答スピードがはっきり変わります。
手を動かして確かめたい方はこちらへどうぞ。
よくある質問
Q. 電圧と電位差は、違うものなのですか?
実質的には同じものを指しています。厳密に言えば「電位差」は2点間の電位の差、「電圧」はその差を電気を押し出す力として捉えた呼び方ですが、電験三種の問題を解く上では同じものと考えて構いません。単位もどちらもボルト[V]です。山の高さを「高低差」と呼ぶか「登る大変さ」と呼ぶかの違い、くらいに思っておけば十分です。
Q. 電位の基準(0V)は、どこに置いてもいいのですか?
置いてかまいません。標高の基準を海面に取るか自分の家に取るかで数値は変わりますが、2点間の差は変わらないのと同じです。ただし問題を解くときは、途中で基準を変えないこと。電源のマイナス側やアース記号のある点を0Vに固定するのが一般的で、これが一番迷いにくい選び方です。
Q. 高低差の話は分かりましたが、実際の回路では何が「山」を作っているのですか?
電源です。電池でも発電機でも、役割は低い場所にある電気を高い場所まで持ち上げるポンプです。ポンプが電気を持ち上げ、その落差を使って電流が坂道(抵抗)を駆け下りる。この循環が回路の正体です。ちなみに、坂道を下りやすくするか下りにくくするかは材料でも決まります。この観点に興味が湧いた方は、「一番は銀、現場は銅」── 抵抗率2位の銅が電線の王様になった理由が面白く読めるはずです。
苦手意識の強かった回路計算も、「見えない山を下っている」という一枚の絵を手に入れれば、まったく違って見えてきます。焦らず、高い→低いで電気は流れる——この1行だけを、まず体に染み込ませてください。そこから先は、驚くほど自然につながっていきます。
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