変圧器の並列運転|4条件は「循環電流」だけで全部つながる
電験三種「機械」科目で頻出の変圧器の並列運転を、極性・変圧比・%Z・r/x比という4つの条件まる暗記から解放する1記事。「ズレると循環電流が流れる」という魔法のフレーズで芋づる式に整理し、文章題・穴埋め問題を確実な得点源に変えます。
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この記事で身につくこと
変圧器の並列運転は、機械科目のなかでも「教科書を読んだのに頭に残らない」代表格です。理由ははっきりしています。教科書が条件を4つ並べて終わっているからです。
極性が一致していること/変圧比が等しいこと/%インピーダンスが等しいこと/抵抗とリアクタンスの比が等しいこと
これを4回音読しても、試験本番では「あれ、何が等しいんだっけ」となります。文字の羅列を覚えようとしているからです。
この記事では、4条件をバラバラに覚えるのをやめて、「循環電流」というたった1つのキーワードで全部つなげるやり方を扱います。読み終わったときに、こうなっているのがゴールです。
| ここが変わる | 読む前 | 読んだ後 |
|---|---|---|
| 4条件の覚え方 | 4つを別々に暗記する | 1つの軸から芋づる式に出てくる |
| 条件を忘れたとき | 思い出せずに終わる | 「ズレると何が起きるか」から逆算できる |
| 文章題・穴埋め | 選択肢を見て迷う | 症状と条件が対応づいていて即答できる |
暗記量が4分の1になる、というより、覚える対象がフレーズ1本に変わります。ここまで来れば、並列運転は苦手分野ではなく、むしろ確実な得点源です。

暗記フレーズ:4条件がズレると循環電流が流れる
今回の魔法のフレーズはこれだけです。
4条件がズレると循環電流が流れる
短いですが、この一文には並列運転の全部が入っています。ポイントは、条件そのものを覚えるのではなく、「一致しないとどうなるか」から逆算するという発想の切り替えにあります。
「極性を一致させる」と覚えるのは苦しい。でも「極性がズレたら短絡する」なら、危険な絵が浮かぶので忘れません。人間の記憶は、無味乾燥なルールより、まずいことが起きる場面のほうが圧倒的に残るのです。

なぜ「循環電流」が軸になるのか
並列運転というのは、2台以上の変圧器を横に並べて、1つの負荷をみんなで担ぐことです。担ぐ相手が同じである以上、性能がバラバラだと事故になる。これは電気に限らず、荷物を2人で運ぶときとまったく同じ理屈です。
そして、性能のズレはほぼすべて「余計な電流が流れる」という形で表面化します。だから循環電流が軸になるわけです。
ステップ1:教科書の4条件を、いったん「症状」で見る
まずは教科書の書き方と、この記事の見方の違いを並べておきます。

| 教科書の書き方(覚えにくい) | この記事の見方(忘れない) |
|---|---|
| 極性が一致していること | ズレたら短絡する |
| 変圧比が等しいこと | ズレたら循環電流が流れる |
| %Zが等しいこと | ズレたら片方が過負荷になる |
| r と x の比が等しいこと | ズレたら力率が違って分担が偏る |
右の列は、どれも「危ないこと」しか書いてありません。だからこそ頭に残ります。左の列を覚えようとして挫折した経験があるなら、今日からは右の列だけを覚えてください。左は右から復元できます。
ステップ2:条件① 極性の一致 ─ 間違えたら一発で短絡

4条件のなかで、危険度が飛び抜けて高いのがこの極性です。
ルール
並列につなぐ2台の極性を一致させます。実務でも試験でも、確認は対角線上の極性で行います。
ズレるとどうなるか
電圧の大きさがまったく同じでも、向きが逆になると、2台の電圧が打ち消し合うのではなく足し合わさる形で回路をぐるりと回ります。結果は完全な短絡(ショート)状態です。
負荷をつないでいるかどうかは関係ありません。つないだ瞬間に設備が壊れるレベルの電流が流れます。他の3条件が「効率が悪い」「片方に負担が寄る」という話なのに対して、極性だけは事故に直結する安全条件だと理解しておいてください。
ステップ3:条件② 変圧比が等しい ─ 電圧差が生む危険なループ

ルール
変圧比、つまり巻数比を等しくします。
ズレるとどうなるか
二次側に出てくる電圧が揃わなくなり、電圧差が生まれます。電圧差があるところには電流が流れる。これが循環電流です。高い方から低い方へ、2台の変圧器の間をぐるぐる回り続けます。
イメージは水です。
水位の違うタンクをパイプでつなぐと、誰も何もしなくても水が勝手に流れ出す。
この「勝手に流れる」がまさに循環電流で、負荷がゼロでも流れます。しかも、この電流は何の仕事もしていません。ただ変圧器を熱くするだけです。当然、負荷分担も不均等になりますが、それ以前に設備の故障につながるのが怖いところです。
なお、この「どちらがどれだけ負荷を持つか」という分担の計算そのものは、変圧器の負荷分担は『相手の%インピーダンス』で一瞬攻略で扱っています。並列運転の条件と分担の計算はセットで出るので、まだ読んでいなければ先に目を通しておくと、この先が一気に楽になります。
ステップ4:条件③ %Zが等しい ─ 電流が片方に集中する

ルール
%インピーダンス(%Z)を等しくします。%Zは、定格電流を流したときのインピーダンス降下が定格電圧の何%にあたるかを表す値です。
ズレるとどうなるか
電流の分担が偏ります。しかも偏る向きが決まっていて、%Zが小さい変圧器のほうに電流が集中します。集中した側は過負荷、最悪の場合は焼損です。
例えるなら、抵抗が少ない道に人が殺到するのと同じ現象です。片方が渋谷のスクランブル交差点、もう片方が人気のない路地裏、という状態になってしまいます。
ここで大事なのは、%Zは容量とは別の話だということ。容量が違う変圧器同士でも並列運転はできますが、そのときも%Zは揃えます。「容量が違うのだから%Zも違っていい」と考えてしまうのが典型的な失点パターンです。
ステップ5:条件④ r/x の比が等しい ─ 力率のズレで分担が乱れる

4つ目は少しだけ玄人向けですが、考え方は今までと同じです。
ルール
抵抗 r とリアクタンス x の比を等しくします。r や x そのものの大きさではなく、比である点に注意してください。
ズレるとどうなるか
r と x の比が違うと、インピーダンスの角度(位相)が変わります。角度が変わるということは、力率が違うということ。すると、
| ズレたときに起きること | 中身 |
|---|---|
| 電流が偏る | 力率が違うので、電流の向き(位相)が揃わない |
| 電圧変動率が異なる | 負荷をかけたときの電圧の落ち方が2台で違う |
| 負荷分担が不安定 | 結果として、狙った通りの分担にならない |
インピーダンスを直角三角形で描いたとき、2台の三角形の角度がそろっているかを見ればいい、と覚えておくと図で思い出せます。%Zの大きさが同じでも、三角形の形が違えば揃ったことにはならない、というわけです。
ステップ6:不一致の症状一覧表 ─ ここだけスクショしてもいい

4つの条件と症状を、1枚の表にまとめます。並列運転の問題は、結局この表のどこかを聞いてきます。
| 条件 | ズレた原因 | 引き起こされる危険な結果 |
|---|---|---|
| ① 極性 | 向きが逆になる | 短絡状態(最悪の事態) |
| ② 変圧比 | 電圧差が発生する | 循環電流が流れる |
| ③ %Z | 電流が偏る | %Zが小さい方に集中して過負荷 |
| ④ r/x 比 | 力率に差が出る | 不均等分担・最悪の場合は焼損 |
この表を眺めていると、あることに気づくはずです。要するに「並列するなら条件を揃えなさい」と言っているだけなのです。
4条件は、別々の4つのルールではありません。「同じ性質の変圧器同士で並べる」という1つの方針を、極性・電圧・大きさ・位相という4つの角度から言い直しているだけ。そう捉えられた瞬間、暗記の負担は激減します。
ステップ7:Q&Aで定着を確認する
問題 容量の異なる変圧器を並列運転した。%Zが「小さい方」の変圧器はどうなるか。
考えてから読み進めてください。
解答 電流が集中して過負荷になり、焼損の危険がある。
%Zが小さいということは、電流が流れやすいということ。流れやすい側に電流が集まるので、そちらが先に音を上げます。容量が違っても%Zを一致させるのが並列運転の鉄則、という結論はここから来ています。
この「%Zが小さい方が多く負担する」という関係は、負荷分担の計算問題でもそのまま使います。並列運転の4条件を押さえたら、次は三相の話へ進むのが自然な流れで、変圧器の三相結線を「魔法のフレーズ」で一発攻略に進むと、この記事で触れた位相の話が結線の形で出てきます。
まとめ
| 覚えること | 内容 |
|---|---|
| 魔法のフレーズ | 4条件がズレると循環電流が流れる |
| 本質を一言で | 並列運転は「同じ性質の変圧器」同士で行う |
| 極性がズレると | 短絡 |
| 変圧比がズレると | 循環電流 |
| %Zがズレると | 過負荷(小さい方に集中) |
| r/x 比がズレると | 力率差による不均等分担 |
条件を4つ暗記する必要はありません。「ズレると何が起こるか」を思い出せれば、条件は後からついてきます。
最初から全部がスッと入る人はいません。一度で理解しようと気負わなくて大丈夫です。動画を何度か見返して、フラッシュカードを回して、少しずつなじませていってください。並列運転は、そうやって付き合えば必ず得点源になる単元です。
⚠ ここを間違える人が多い
同じところで足を取られる人が多いので、代表的な3つを挙げておきます。
❌ 容量が違うなら%Zも違っていい → ✅ 容量が違っても%Zは揃える
これが一番多い勘違いです。並列運転する変圧器の容量は、違っていても構いません。しかし%Zは別問題で、容量が何kV·Aであろうと%Zは一致させるのが条件です。%Zを揃えていれば、それぞれの容量に応じた比率で素直に負荷を分け合ってくれます。「容量が違う=条件を満たさない」でもなければ、「容量が違うから%Zも自由」でもありません。ここは切り分けて覚えてください。
❌ %Zが大きい方に負担が寄る → ✅ 小さい方に電流が集中する
直感に反するのか、逆に覚えてしまう人がかなりいます。%Zが小さいということは、その変圧器のなかで電圧が落ちにくい=電流が流れやすいということ。流れやすい側に電流は集まります。「小さい方に集中して過負荷」とセットで唱えて、逆向きに覚えないようにしましょう。
❌ 位相のことは条件に入っていない → ✅ 三相では位相のズレが並列運転を妨げる
三相変圧器の並列運転になると、結線の組み合わせによって一次と二次の電圧に位相のズレ(角変位)が生まれます。この角変位が違う組み合わせ同士は、他の条件をどれだけ揃えても並列運転できません。文章題では「角変位が一致しないと並列運転できない」という原則部分は正しく書いておいて、続く具体例のほうが誤り、という出し方をされることがあります。原則の一文だけ読んで正しいと判断せず、挙げられている結線の組み合わせが本当に位相まで揃うのかを最後まで確認してください。三相の結線ごとの位相については、V-V結線は2台で三相|0.866と0.577の正体を完全攻略も合わせて読んでおくと、結線の形と位相の話が結びつきやすくなります。
過去問ではこう出た
変圧器の並列運転は、計算問題より文章題・正誤判定での出題が中心です。
| 年度 | 問番号 |
|---|---|
| 令和5年 上期 | 問8 |
出題のされ方には、はっきりした傾向があります。ひとつは、4条件のうち1つだけをすり替えて「これは並列運転できるか」と問う形。もうひとつは、条件の説明そのものは正しいのに、添えられた具体例が条件を満たしていないという形です。後者は選択肢の前半を読んだ時点で正しいと感じてしまうため、最後まで読み切る姿勢が点数を分けます。
対策はシンプルで、この記事の症状一覧表を頭に入れておくことです。選択肢を読みながら「これがズレたら何が起きる?」と自問すれば、条件を満たしていない選択肢は自然に浮き上がってきます。
よくある質問
Q. 容量の違う変圧器を並列運転してもいいのですか?
構いません。容量が違っていても、%Zをはじめとする4条件が揃っていれば、それぞれの容量に応じた比率で負荷を分担してくれます。並列運転で揃えるべきなのは「大きさ」ではなく「性質」だと考えると腑に落ちるはずです。逆に言えば、容量が同じでも%Zが違えば分担は偏ります。
Q. 循環電流は、負荷をつないでいないときも流れるのですか?
流れます。ここが循環電流のやっかいなところです。変圧比がズレていると二次側に電圧差が生じ、その差だけで2台の変圧器の間を電流が回り続けます。負荷に電力を届けているわけではないので、この電流は完全な無駄で、変圧器を熱くするだけです。無負荷でも流れる、と押さえておくと、文章題での引っかけに強くなります。
Q. r/x の比まで本当に揃える必要があるのでしょうか?
試験の答えとしては「必要」です。%Zの大きさが同じでも、r と x の比が違えばインピーダンスの位相が違い、力率が揃いません。力率が違うと、電流はベクトルとして単純に足し合わさらないため、狙った分担にならず、電圧変動率にも差が出ます。実務では多少の差は許容されますが、試験では4条件のひとつとして問われるので、他の3つと同じ重みで覚えておいてください。
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