ベルヌーイの定理を「水版・エネルギー保存の法則」で攻略
電験三種「電力」科目の水力発電で必須となるベルヌーイの定理を、流体力学ではなく『位置・圧力・速度の3エネルギーの和は一定』というエネルギー保存則として捉え直して解説。水頭表記の公式も視覚的に整理し、計算問題で確実に得点するための1記事です。
🎥 動画でも解説しています > YouTubeで開く
「ベルヌーイの定理」。この名前を見た瞬間に、ページを閉じたくなった方も多いのではないでしょうか。流体力学、聞き慣れないギリシャ文字、分数だらけの式……。電力科目の一番はじめに出てくるのに、ここでつまずいて「水力発電は捨てよう」と決めてしまう方が本当に多いところです。
でも、安心してください。ベルヌーイの定理でやっていることは、たった一つです。
3つの数を足したら、いつも同じ数になる。
これだけです。難しい微分も積分も出てきません。足し算です。しかも、その3つが何なのかも、日常の感覚でイメージできるものばかり。この記事を読み終えるころには、「なんだ、そういうことか」と肩の力が抜けているはずです。
この記事で身につくこと
| 身につくこと | ゴールの目安 |
|---|---|
| ベルヌーイの定理の正体 | 「エネルギー保存の法則の水バージョン」と説明できる |
| 3つのエネルギー | 位置・圧力・運動の3つに分解できると即答できる |
| 水頭の式 | h + p/(ρg) + v²/(2g) = 一定 を書き出せる |
| 3つの呼び名 | 位置水頭・圧力水頭・速度水頭を式と対応させられる |
| 増減の読み方 | 管が細くなる・高さが下がるとき、何が増えて何が減るか答えられる |
| 単位の意味 | なぜ全部が[m]なのか、なぜ「水頭」と呼ぶのか説明できる |
水力発電の計算問題は、この定理を土台にして組み立てられています。ここが固まると、有効落差・水車出力・比速度といった後続の単元が、まるで別物のようにスムーズに入ってきます。逆に言えば、ここを飛ばすと後がずっと苦しいということでもあります。最初の一歩として、丁寧に押さえていきましょう。
暗記フレーズ:位置・圧力・速度、足して一定がベルヌーイ
まずはこれだけ、声に出して覚えてしまってください。
位置・圧力・速度、足して一定がベルヌーイ
試験会場で式が思い出せなくなっても、この一言が出てくれば「あ、3つ足すんだった」と手が動きます。実際、ベルヌーイの定理を問う問題の多くは、この3つのうち「どれが増えて、どれが減るのか」を問うだけの、非常にシンプルな構造をしています。
ステップ1:ベルヌーイの定理の正体は「エネルギー保存の法則」
名前に惑わされないこと
ベルヌーイという人名がついているせいで、何か特別で難解な法則のように見えてしまいます。しかし中身は、高校物理で誰もが習ったエネルギー保存の法則そのものです。
エネルギー保存の法則とは、「エネルギーは姿を変えるだけで、勝手に増えたり消えたりしない」というものでした。振り子が、高い位置での位置エネルギーを、一番下では速さ(運動エネルギー)に変えている――あのイメージです。
ベルヌーイの定理は、これと同じことを水の流れに当てはめただけ。ただそれだけなのです。
水は3種類のエネルギーを持っている
流れている水が持つエネルギーを分解すると、次の3つになります。
| エネルギーの種類 | 何によって生まれるか | 日常のイメージ |
|---|---|---|
| 位置エネルギー | 高いところにあること | 高い場所の水はいずれ落ちてくる |
| 圧力エネルギー | 押される力を受けていること | ホースを握ると水が強く押し出される |
| 運動エネルギー | 速く動いていること | 勢いよく飛ぶ水は手に当たると痛い |
そして、この3つの合計が常に一定である――これがベルヌーイの定理の核心です。
どこかで速度が上がれば、その分どこかで高さが下がる。どこかで高さを失えば、その分だけ押す力や勢いに変わる。水は、この3つの間で姿を変えながら流れているのです。
ステップ2:太い管から細い管へ――3つはこう入れ替わる
言葉だけでは実感が湧かないと思いますので、具体的な場面で考えてみましょう。
設定:左側に太くて高い位置にある管、右側に細くて少し低い位置にある管。水は左から右へ流れています。
このとき、左の地点と右の地点で、「3つのエネルギーの合計」は――損失を無視すれば――まったく同じになります。合計は同じでも、その内訳がガラリと入れ替わっているのです。
内訳がどう変わるか
| エネルギー | 下流(右側)での変化 | そうなる理由 |
|---|---|---|
| 位置エネルギー | 減少 | 高さhが低くなっているため |
| 運動エネルギー | 増加 | 管が細くなり流速が速くなるため |
| 圧力エネルギー | 増加 | P=F/A で分母の断面積Aが小さくなるため |
位置エネルギーが減った分を、運動エネルギーと圧力エネルギーが引き受けている――そういう構図です。合計は変わらないのですから、片方が減れば必ずどこかが増えます。この「シーソーの関係」が体に入ると、計算問題で式を立てるときに迷いがなくなります。
管が細いと、なぜ速くなるのか
「管が細くなると流速が速くなる」というのは、日常でも体験しています。ホースの先を指で押さえると、水は勢いよく遠くまで飛びますね。あれとまったく同じです。
これを式にしたのが連続の式です。
流れる水の量Q(流量)が一定なら、断面積Aと流速vの積は一定。だからAが小さくなればvが大きくなる、というだけの話です。ベルヌーイの定理と連続の式は、水力の計算問題ではほぼセットで登場します。
ステップ3:電験で使うのは「水頭」の式
なぜ割り算をするのか
3つのエネルギーをそのまま式にすると、質量mや密度ρがあちこちに顔を出して、見るからに面倒な形になります。そこで、3つの項に共通している質量(密度)と重力加速度で全部を割ってしまう、という工夫をします。
すると、驚くほどすっきりした式になります。これが電験で実際に使う形です。
- :位置水頭 [m]
- :圧力水頭 [m]
- :速度水頭 [m]
- :全水頭 [m]
呼び名が変わるので注意
ここで一つ、混乱しやすいポイントがあります。エネルギーの式では「〜エネルギー」、割り算した後の式では「〜水頭」と呼び名が変わるのです。
| エネルギーの式での呼び名 | 水頭の式での呼び名 | 式の形 |
|---|---|---|
| 位置エネルギー | 位置水頭 | h |
| 圧力エネルギー | 圧力水頭 | p/(ρg) |
| 運動エネルギー | 速度水頭 | v²/(2g) |
| 合計 | 全水頭 H | 3つの和 |
中身はまったく同じものです。「運動エネルギー」が「速度水頭」と名前を変えているだけ。ここを別物だと思ってしまうと、問題文を読んだときに固まってしまいます。運動=速度、と紐づけて覚えてください。
単位がすべて[m]になるのがポイント
割り算をした結果、3つの項の単位がすべて[m](メートル)、つまり高さにそろいます。これが「水頭(ヘッド)」という呼び方の由来です。
高さの単位にそろっていると何が嬉しいのか。落差と直接比べられるのです。水力発電では「総落差」「有効落差」といった高さの値を扱いますから、エネルギーも高さで表しておけば、そのまま足し引きできます。この扱いやすさのために、わざわざ割り算をしているというわけです。
ステップ4:「損失を無視すれば」という前提
ここまで「合計は一定」と繰り返してきましたが、正確には損失を無視すればという条件がつきます。
現実の水路や水圧管では、管の内壁との摩擦、曲がり角での渦、入口や出口での乱れなどによって、エネルギーの一部が熱となって失われます。この失われた分を高さに換算したものが損失水頭です。
つまり、実際の水路では下流に行くほど全水頭は少しずつ小さくなっていきます。試験問題では「損失を無視するものとする」と明記されることが多いので、その場合は素直に「合計は一定」で計算して構いません。
ただし、問題文にこの一文があるかどうかは必ず確認する習慣をつけてください。損失を考慮する問題では、その分を差し引かないと答えが合いません。
ステップ5:この先の単元とのつながり
ベルヌーイの定理は、それ単体で終わる話ではありません。水力発電というひとつながりの流れの、いちばん最初の土台です。
| 単元 | ベルヌーイとのつながり |
|---|---|
| 有効落差 | 全水頭から損失水頭を引いた値そのもの |
| 水車出力 | 有効落差と流量から求めるので、落差の理解が前提 |
| 比速度 | 落差の大小によって適する水車が変わる |
| キャビテーション | 圧力水頭が下がりすぎることで起こる現象 |
特に最後のキャビテーションは、ベルヌーイの定理が直接効いてくる好例です。流速が上がると速度水頭が増える。合計は一定なので、その分圧力水頭が下がる。下がりすぎて水が沸騰してしまう――これがキャビテーションの正体です。定理を理解していれば、丸暗記せずに説明できてしまいます。
落差と水車の種類の対応があやふやな方は、先に水車の比速度の大小は?プロペラ>フランシス>ペルトンに目を通しておくと、この先の学習がぐっと楽になります。
まとめ
長くなりましたので、要点を1枚の表に整理します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 定理の正体 | エネルギー保存の法則を水の流れに当てはめたもの |
| 3つのエネルギー | 位置・圧力・運動 |
| 水頭の式 | h + p/(ρg) + v²/(2g) = 一定 |
| 3つの水頭 | 位置水頭 h/圧力水頭 p/(ρg)/速度水頭 v²/(2g) |
| 合計の呼び名 | 全水頭 H [m] |
| 単位 | すべて[m](高さ)にそろう |
| 成立条件 | 損失を無視できるとき |
| 管が細くなると | 流速↑ → 速度水頭↑、その分ほかが調整される |
覚えることは、実はこれだけです。流体力学と身構えていた割に、拍子抜けするくらい少なくないでしょうか。
位置・圧力・速度、足して一定。 この一言に立ち返れば、水力発電の計算問題はもう怖くありません。
⚠ ここを間違える人が多い
ここからは、実際の試験で受験者が取りこぼしやすいポイントを整理します。知識としては知っていても、本番で引っかかるのはたいていこの3か所です。
❌ 高さの変化だけで計算を終えてしまう
❌ こう思いがち:管の中の2点で圧力を比べるとき、落差の分(ρgh)だけを足せば答えが出る。
✅ 正しくはこう:ベルヌーイの定理は3つの項すべてを対応させる式です。高さが変われば位置の項が動きますが、同時に管の太さが変わっていれば速度の項も動いています。落差の分だけを足して満足すると、速度水頭の差を引き忘れて答えがずれます。
対策はシンプルで、式を左辺・右辺で3項ずつ、必ず全部書き出してから消すこと。頭の中で省略した項が、そのまま失点になります。
❌ 「圧力が高い=速い」と思い込む
❌ こう思いがち:勢いよく水が出ているのだから、そこは圧力も高いはずだ。
✅ 正しくはこう:むしろ逆です。合計が一定なのですから、速度水頭が増えれば、その分ほかが減る方向に働きます。速い場所は圧力が下がりやすい――これがキャビテーションが起こる理由でもあります。日常感覚に引きずられやすいところなので、「合計は一定」の一言で毎回リセットしてください。
❌ 「エネルギー」と「水頭」を別物として覚える
❌ こう思いがち:運動エネルギーの話と速度水頭の話は、別々に覚えなければならない。
✅ 正しくはこう:同じものを、割り算する前と後で呼び分けているだけです。問題文で「速度水頭」と書かれていたら「運動エネルギーのことだな」と読み替えられれば十分。覚える量は3つであって、6つではありません。
過去問ではこう出た
ベルヌーイの定理と、その土台となる水力発電の基礎は、電力科目のほぼ毎回どこかに顔を出す定番中の定番です。実際の出題を並べてみます。
| 年度 | 問番号 |
|---|---|
| 令和3年 | 問2 |
| 令和4年上期 | 問1/問15 |
| 令和4年下期 | 問1/問11 |
| 令和6年下期 | 問1 |
| 令和7年上期 | 問1 |
| 令和7年下期 | 問2 |
動画にひも付けられた過去問・電験ジムの収録範囲だけで9問。この本数の多さが、そのまま重要度を表しています。
傾向としては、問1〜問2という冒頭に置かれることが非常に多いのが特徴です。つまり、試験開始直後の一番緊張している時間帯に出会う問題ということ。ここを落ち着いて取れるかどうかが、その後のペース配分にも効いてきます。
出題形式は、定理の意味や水力発電の方式を問う文章題と、2点間の圧力・流速を求める計算問題の両方。文章題では発電方式や供給力の分類とセットで問われることもあるため、水力発電まわりの用語は幅広く押さえておくと安心です。
よくある質問
Q. 3つの水頭のうち、どれが一番よく問われますか?
出題の入口としては速度水頭と圧力水頭のシーソー関係がもっとも多く狙われます。位置水頭は「高さが下がれば減る」と直感的に分かりやすいのに対し、残り2つは日常感覚と食い違うことがあるためです。
学習の順番としては、まず位置水頭で「高さ=エネルギー」の感覚をつかみ、次に速度と圧力の関係に進むのが結局は近道です。
Q. 単位が全部[m]になるのが、どうしても腑に落ちません。
「エネルギーを、高さに翻訳している」と考えてみてください。
たとえば「圧力水頭が10m」というのは、その圧力は、水を10mの高さまで押し上げられるだけの力に相当するという意味です。エネルギーの大きさを、水柱の高さという物差しで測り直しているわけですね。
水力発電では落差という高さを扱いますから、すべてを高さの物差しにそろえておけば、単位換算をせずにそのまま足し引きできます。面倒に見える割り算は、後の計算を楽にするための下準備なのです。
なお、水力発電全体の設備の姿がまだ頭に入っていない方は、迷ったら重力!ダムの3大分類『重力式・アーチ式・ロックフィル』完全攻略を先に読んでおくと、水がどこを通ってどう落ちるのかのイメージが立体的になります。
Q. 実際の試験で、この定理を使って計算するところまで求められますか?
はい、求められます。ただし、要求されるのは定理を素直に立式して整理するレベルまでで、複雑な流体解析ではありません。
計算問題での手順は、おおむね次のとおりです。
- 2つの地点を決める(多くは問題図に指定されている)
- それぞれの地点で3つの水頭を書き出す
- 「左辺=右辺」で等式を立てる
- 分かっていない1つの値について解く
このとき、流速が分からなければ連続の式 Q = A·v で先に求める、という組み合わせが定番です。逆に言えば、この2つの式さえ手が覚えていれば、水力の計算問題は十分に戦えます。
水車そのものの構造や種類が問われる問題も同じ分野から出ますので、水車の種類は『衝動 vs 反動』で9割攻略まで押さえておくと、水力分野は面白いように得点源になります。
流体力学という言葉に一度は怯んだかもしれませんが、ここまで読んでくださったあなたは、もう「3つ足したら一定」という本質をつかんでいます。あとは繰り返すだけです。焦らず、一つずつ積み上げていきましょう。
Webの何倍も覚えやすい
紙のフルラミネート加工の
暗記シートがあります
実績2,000部突破。
お風呂や電車のスキマ時間でサクッと勉強できます。
付属の練習用紙で無限に練習できます♪

🛒関連教材ショーケース
学習の効率を上げる、紙の本格教材ラインナップ。


この記事を読み終えたら、進捗を記録しましょう




